アウトソーシング
(画像=PIXTA)

近年、業務効率化やコスト削減につながるという理由で、アウトソーシングを導入する企業が増加している。自社に取り入れてみようと考えている企業も多いのではないだろうか。

しかし、アウトソーシングにはメリットとデメリットがあり、十分に考慮した上で導入しなければ、コスト増などさまざまなリスクを負いかねない。アウトソーシングの基礎知識やメリット・デメリットを解説し、導入事例とおすすめの企業も紹介する。

目次

  1. アウトソーシングとは
    1. 人やサービスを外部委託すること
    2. 人材派遣との違い
  2. アウトソーシングのメリット4つ
    1. 経費の抑制
    2. 業務の効率化
    3. 組織のスリム化
    4. 本業に集中できる
  3. アウトソーシングのデメリット4つ
    1. ノウハウが社内に蓄積しない
    2. 情報漏えいのリスク
    3. ガバナンスの弱体化
    4. コスト増になることも
  4. アウトソーシングを検討するポイント
    1. アウトソーシングに向いた業務
  5. アウトソーシング会社の選び方とおすすめ3社
    1. アウトソーシングのおすすめ企業3社
  6. アウトソーシングの導入事例3つ
  7. アウトソーシングで効率化を図ろう

アウトソーシングとは

アウトソーシングとは何か、言葉の意味を解説する。よく比較される人材派遣との違いも確認しておこう。

人やサービスを外部委託すること

アウトソーシングを直訳すると、「外部(アウト)から調達(ソーシング)する」という意味になる。本来、社外から購入した全てのモノやサービスは、アウトソーシングである。しかし、現在使われているアウトソーシングという言葉は、「人やサービスを外部委託する」という意味で主に使われている。

アウトソーシングの目的は、コストの削減や業務の効率化など、企業や業種によりさまざまだ。人事・経理・開発・生産・物流など、さまざまな業務がアウトソーシングの対象となり得る。アウトソーシングでは、自社における特定の業務を、社外のプロに依頼するのが一般的である。

人材派遣との違い

人材派遣とは、人材を欲している会社からの依頼に対し、派遣会社が人材を派遣するサービスである。外部のリソースを活用して自社の業務を代行してもらう点においては、アウトソーシングと人材派遣は同じである。

両社の違いとして、アウトソーシング会社は委託された業務を遂行するのに対し、人材派遣会社は人材を提供するのみであることが挙げられる。したがって、アウトソーシングでは業務結果や納品物のクオリティが評価の対象となるが、人材派遣では人材そのものに対価が発生する。

スタッフの受け入れ態勢にも違いがある。人材派遣のスタッフには、自社で働いてもらうための環境を整える必要がある一方で、業務を丸ごと委託するアウトソーシングの場合は、基本的に自社で受け入れ態勢を整える必要がない。

アウトソーシングのメリット4つ

アウトソーシングにより、ヒト・モノ・カネといった経営資源を効率よく活用できるようになる。具体的なメリットを以下に紹介する。

経費の抑制

専門業務をアウトソーシング会社に委託することで、人件費を業務内容に応じて変動させられるため、人件費の削減につながる可能性がある。高い給料を支払っている社員に対し、人材不足を理由に単調なバックオフィス業務を任せている会社など、アウトソーシングで人件費を抑制できる会社は少なくないだろう。

短期間しか使わない設備を導入しなければならない業務であれば、アウトソーシングすることで、設備投資にかかる費用も抑制できる。人件費を含めた固定費全体の削減につなげられることは、アウトソーシングの大きなメリットである。

業務の効率化

特定の業務に特化したアウトソーシング会社は、その業務に関するプロであり、優れたスピードや品質を期待できる。それぞれの社員をマルチに働かせているような企業なら、業務ごとのスピードや品質は、アウトソーシング会社には到底適わないだろう。

業務の効率化につながるだけでなく、自社だけでは取り込みにくい知識やノウハウを生かせることも、アウトソーシングのメリットといえる。アウトソーシング会社は多くの企業から業務を請け負っているため、横断的に知識やノウハウを吸収し、業務に活用している。

組織のスリム化

事業を拡大していくと、組織は肥大化しやすい。計画性を伴わずに肥大化した企業には無駄が発生しやすくなり、コスト増などで経営が圧迫されるだろう。しかし、増えていく業務をアウトソーシングすれば、組織のスリム化につながり、企業を再構築できる。

大企業では、組織が肥大化する過程で特定の業務を子会社化し、アウトソーシング会社として独立させるケースもある。親会社からの業務を請け負いつつ、他社の専門業務もこなしていけば、より専門性が高まるためメリットは大きい。

本業に集中できる

少ない社員で多くの業務を回しているような企業では、能力が高い人材も単純作業に従事せざるを得ないケースが多く、本業に割ける時間を確保しにくくなるというデメリットが発生しやすい。

しかし、アウトソーシングで簡単な業務を外部に委託すれば、自社の人材が本業に集中できるようになるだろう。仕事に対する効率化が見込めることや、残業を減らせることなども、メリットとして挙げられる。

アウトソーシングのデメリット4つ

アウトソーシングにはデメリットもあるため、導入を検討する際は、メリットと合わせて理解しておく必要があるだろう。

ノウハウが社内に蓄積しない

アウトソーシングは業務を外部に丸投げする形であるため、その業務に関するノウハウは社内に蓄積できない。将来的に自社で本格的に取り組みたい業務であれば、自社で人材を育てた方が良いだろう。アウトソーシング会社が倒産したり、取り扱う業務を変更したりするリスクも考慮する必要がある。

情報漏えいのリスク

人事関連・情報システムの構築・カスタマーサポートなど、アウトソーシングでは個人情報や機密情報を扱う業務も多い。基本的には、アウトソーシング会社側で徹底したセキュリティ対策がなされてはいるものの、サイバー攻撃やモラル低下などによる情報漏えいのリスクは、ゼロではないことを頭に入れておく必要がある。

ガバナンスの弱体化

社内業務を外部に委託することで、社内の業務内容を把握しにくくなり、ガバナンスが弱体化してしまうリスクがある。業務の効率化が損なわれたり、品質管理をコントロールしにくくなったりしかねないだろう。ガバナンスの弱体化を防ぐには、委託した業務内容の可視化や、アウトソーシング会社との綿密なコミュニケーションが求められる。

コスト増になることも

アウトソーシングでは、業務の遂行や成果物などに対価を支払わなくてはならない。自社である程度効率化できていた業務を委託してしまうと、コスト増になる可能性もあるだろう。適正コストの判断が難しいため、導入する際はさまざまな角度から検討し、合理的な根拠を示すことが重要である。

アウトソーシングを検討するポイント

アウトソーシングする業務を検討する際は、収益の柱になっていない業務を選択しよう。自社にとってのコア業務を外部に委託してしまうと、自社のノウハウを外部に知られることになり、ひいては同業他社にそのノウハウを知られてしまうことにもなりかねない。また、該当分野における自社での成長も妨げてしまうだろう。

アウトソーシングに向いた業務

あらゆる業務がアウトソーシングの対象とはなり得るものの、向き不向きは存在する。アウトソーシングに向いた業務をチェックしておこう。

1.経理・法務・事務

データ入力など単純作業が多い上、忙しい時期と暇な時期の波ができやすいため、人件費の最適化や業務効率化が期待できる。

2.人事

専門性の高い仕事であり、採用代行や新人研修などについてアウトソーシングを活用すれば、良い人材が育ちやすくなるだろう。給与計算や勤怠管理などのルーチン作業も任せられる。

3.IT

急速に発展している分野でありながら、人材の育成が追い付いていないのが現状である。社内のIT業務を、全てアウトソーシングしている企業も多い。

4.カスタマーサービス・コールセンター

自社で大規模な顧客対応を行おうとすると、場所・設備・人員の確保が必要となる。人材の育成も必要な上、忙しさの波も大きい。積極的に外部委託を検討したい業務といえる。

アウトソーシング会社の選び方とおすすめ3社

アウトソーシング会社を探す際は、過去の実績を確認しながら、納得できるコストの会社を選ぶようにしよう。安さを売りにしている会社は、実績が伴っていない可能性がある。得意分野の知識や経験が豊富にあるかという点もチェックが必要だ。

セキュリティ対策が十分になされているかも確認しておこう。ある程度候補が絞られたら、営業担当ではなく運用担当と面談を行えば、実際の業務に関する知識や経験をより深く確認できる。

アウトソーシングのおすすめ企業3社

アウトソーシングのおすすめ会社を以下に紹介する。

・トランスコスモス株式会社

コールセンター・デジタルマーケティング・ECサービス・情報分析など、さまざまな分野の業務のサービスを提供している。数多くの大手企業に導入実績を持つ。

・NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社

新規参入組が多い業界の中で、20年以上の実績を有する会社である。人事・総務・経理など、管理部門の分野に強い。

・株式会社ニット

オンラインアシスタントサービス「HELP YOU」を提供している会社である。専属アシスタントが窓口となるため、複数の人とコミュニケーションをとる必要がない。

アウトソーシングの導入事例3つ

・株式会社キーエンス

センサーや測量機器の製造を手掛けるキーエンスは、製造工程についてアウトソーシングを活用し、商品開発とコンサル営業をコア業務としている。自社で工場を持たないことにより、開発・営業・販売に集中できるため、高水準の営業利益をキープできている。

・プルデンシャル生命保険

営業社員の人事関連業務を、「NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社」が提供する常駐型アウトソーシングでまかなうことにより、業務量や品質の向上に成功している。

・株式会社ガイアックス

ソーシャルメディアマーケティング事業部において、「株式会社ニット」のオンラインアシスタントサービスを導入し、月に約900時間分の作業時間の削減を実現している。議事録などの資料作成・タスクのリマインドやスケジュール管理・新人社員の業務に関するフィードバック・添削などを委託している。

アウトソーシングで効率化を図ろう

アウトソーシングは、コスト削減や業務効率化を図れる経営手法である。より本業に力を集中するためにも有効な手段といえるだろう。

単純作業に追われ、本来の業務に携わる時間を確保できないという問題を抱えている会社は、アウトソーシングの導入を検討する価値がある。メリットとデメリットをしっかりと理解し、自社に合った委託先を選んでみよう。

文・八木真琴(ダリコーポレーション ライター)

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