不祥事、そしてコロナ禍など、あのレオパレス21が今、破綻の可能性をうわさされるほどの厳しい状況に陥っている。希望退職者の募集もせざるを得ない状況となった。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げたレオパレス21だが、今後どうなってしまうのか。
レオパレス21の最新の決算発表の数字
まずレオパレス21の最新の決算発表の数字から見ていこう。
2020年11月13日に発表した2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は、売上高が前年同期比5.8%減の2,086億4,700万円で、営業利益は126億1,600万円の赤字、経常利益も128億5,400万円の赤字となっている。最終損益は175億7,100万円の赤字で、2021年3月期の通期では80億円の赤字に着地する見通しだという。
レオパレス21は、2018年に明らかとなった施工不備の不祥事以降、既存物件の改修費用がかさんでいる。また、賃貸アパートの入居率の低下による賃貸収入の減少にも苦しんでおり、今年の9月には約170億円の債務超過に陥った。すでに米ファンドから支援を受けて債務超過は解消されているものの、経営的に厳しい状況には変わりはない。
ちなみに決算資料によると、入居率の期中平均は2018年3月期の90.59%をピークに、2019年3月期は88.34%、2020年3月期は80.78%へと低下している。2021年3月期の期中平均の入居率が最終的にどのようになるのか気になるところだ。
決算資料によれば、2020年4~9月の入居率の平均は79.26%、直近の10月単月では77.46%となっているという。この77.46%という入居率は過去最低の数字だ。
業績不振の理由を改めて整理すると・・・
まず、レオパレス21の業績を数字面から分析してきたが、業績不振の理由を改めて整理すると、施工不備の対応が長引いていること、そして新型コロナウイルスの影響によって十分な営業ができていないことなどが挙げられる。これらのことが要因となり、業績悪化に歯止めがかからない状況となっているわけだ。
業績への不安が募る中、レオパレス21はコスト削減に向けた抜本的な事業戦略の再構築のため、2020年6月に希望退職者を募集したことを発表している。35歳以上の社員約1,000人の希望退職者を募集し、結果的に予定を上回る1,067人の応募があった。希望退職者には特別退職金も支給した上で、再就職の支援も行う。
応募者は2020年8月末で退職しており、これによりレオパレス21の社員数が20%弱減った形となる。単純計算すると、レオパレス21に勤める人の約5人に1人が退職したのだ。不祥事によるブランド力の低下が進めば、さらに業績が悪化することも考えられ、再び希望退職者を募集するかもしれない。
ちなみに、民間調査会社の東京商工リサーチによると、2020年に早期・希望退職者を行った上場企業の中で募集人数が1,000人を超えたのは、レオパレス21を含む2社のみとなっている(もう1社は日立金属)。
レオパレス21が進めている再発防止策とその進捗は?
レオパレス21は業績改善に向け、まずは施工不備の対応、そしてブランド力の回復に粛々と取り組んでいくしかない。同時に、同じような不祥事を再び起こさないよう再発防止策を徹底することも求められる。同社は2021年3月期第2四半期の決算発表において、再発防止策の内容と取り組みの進捗状況を説明しており、2019年8月に発表した施策のうち92%の改善・見直しをすでに進めていることを明らかにした。
再発防止策は「企業風土の抜本的改革」「コンプライアンス・リスク管理体制の再構築」「建築請負事業体制の見直し」の3点に大別されている。現在取り組み中の項目としては、建築請負事業体制の見直しにおける「トリプルチェック体制の強化・保管体制の見直し」などが挙げられ、写真による検査記録の運用のほか、検査手法や実効性の検証もスタートしているという。
ちなみに以下が現在取り組み中の項目の一部だ。
- コンプライアンス委員会の運営方法の見直し
- リスク管理方法の見直し
- 社内への情報発信を行うルールを策定
- クレーム対応マニュアルの整備
- トリプルチェック体制の強化・保管体制の見直し
- 検査項目と運用ルールを制定
不祥事を乗り越えての復活も決して不可能ではない
施工不備という不祥事を引き金に、レオパレス21は厳しい状況に陥っているが、過去には大手企業や上場企業の中にも不祥事を乗り越えて復活した企業も少なくない。企業としての失敗を糧に再発防止策の徹底に努めれば、今後の復活も十分に考えられる。
次の決算発表は2021年2月ごろとなる予定だ。すぐにレオパレス21の業績が改善するわけではないが、再発防止策の取り組みに進展があったのかなど、注目したい点は多い。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)