企業活動において、「オペレーション」は会社の生産性を左右する重要なものだ。なかにはオペレーションを見直すことで、強大な競争力を確立した企業も存在する。そこで今回は、オペレーションの概要や意味に加えて、具体的なプロセスなどを解説していく。
目次

オペレーションとは?ビジネスシーンにおける意味
ビジネスシーンにおける「オペレーション」とは、業務目標を達成するために企業の運営体制や業務の遂行手順を定めることだ。ケースによっては、別部門同士のつながりを構築する必要もあるので、「業務連鎖」と言い換えられることもある。
「オペレーション」の使い方
もう少しイメージをつかむために、以下ではオペレーションを使った例文をいくつか見ていこう。
・オペレーションに不備があった影響で、業務や資金調達が遅れそうだ
・オペレーションを見直すことが、業務の効率化につながる
・オペレーションミスにより、業務に深刻なトラブルが生じた
基本的にオペレーションは単体で使われる用語だが、場合によっては上記の「オペレーションミス」のように他の単語と一緒に使用される。ちなみに、オペレーションミスとは運営体制や業務の遂行手順に、致命的な欠陥などを抱えている状態を意味する。
オペレーションの類義語は?
ビジネスシーンで「オペレーション」という言葉を使いこなすには、他の類義語との違いを理解しておく必要がある。ここでは、オペレーションと特に混同しやすい類義語の意味と使い方を紹介する。
1.マネジメント
マネジメントは、日本語で「経営管理」という意味であり、ビジネスシーンでは「人」や「資金」などの経営資源を適切に管理することを指す。一般的には「プロジェクトをマネジメントする」というように使われるが、シーンによっては以下の「経営手法」という意味で用いられるため、注意が必要だ。

これらの事例から分かるように、「経営手法」としてのマネジメントを見直すことで、企業の生産性や業務効率を高められる。マネジメントはオペレーションとも深く関連しているため、余裕のある経営者は、自社のマネジメント体制を見直すことも考えたい。
2.ディレクション
ビジネスシーンにおけるディレクションとは、製品づくりに関する進捗管理や製作指示を意味する。基本的には「上司から細かなディレクションが入った」のように単体で使われるが、他の言葉と組み合わせて使用されるシーンも多い。

会社全体のオペレーションを改善するには、各部署のディレクションを見直すことも重要になる。特に総指揮者となる人物に問題があると、プロジェクトのスムーズな進行が難しくなってしまう。
3.コントロール
「調節」や「制御」を意味するコントロールは、オペレーションとほぼ同じ意味合いで用いられる。ただし、他の言葉と組み合わせた用語を見てみると、オペレーションよりも幅広いシーンで使われていることが分かる。

一方でオペレーションという言葉は、製品づくりに直結するプロセスで使用されることが多い。少しややこしいが、うまく使い分けることで説明やプレゼンが分かりやすくなるため、微妙なニュアンスの違いも押さえておこう。
4.ハンドリング
ビジネスシーンにおけるハンドリングとは、プロジェクトの進行や従業員の動きをうまく調整することだ。オペレーションやコントロールとの違いを分かり易くするために、例文をいくつか紹介する。
・プロジェクトがうまく進むように、部下の動きをハンドリングする
・経営のハンドリングを間違えなければ、この商品の売上は伸びるはずだ
・新入社員をうまくハンドリングすることが、優秀な人材を育てることにつながる
なお、IT業界でハンドリングという言葉を用いる場合は、ソフトウェアやプログラムに対して「適切な処置をすること」を表すケースが多い。例えば、特定の事象が発生した場合の対処は「イベントハンドリング」、プログラムのエラーに対する処置は「エラーハンドリング」と呼ばれている。
もちろん、一般的な意味でハンドリングという言葉が使われることもあるので、特にIT業界関係者は注意しておこう。
業界・分野別:オペレーションの意味と使い方
ビジネスシーンで「オペレーション」という言葉を使う場合であっても、実は使用する業界によって意味合いが若干変わってくる。そこで次からは、「IT業界・飲食業界・イベント業界」の3つに分けて、オペレーションの意味を詳しく解説していこう。
1.IT業界
IT業界におけるオペレーションは、主にソフトウェアやハードウェアの管理・操作・実行を意味する。また、事業としてソフトウェアなどを操作・運用する場合に、その工程全体を「オペレーション業務」と呼ぶことも合わせて覚えておきたい。
細かく見るとオペレーション業務の内容は幅が広く、ケースによってはシステムの修正作業やウイルス対策なども含まれる。
2.飲食業界
飲食業界では、店舗運営の作業手順や管理方法を指すものとして「店舗オペレーション」という言葉が使用されている。また、細かい業務内容によって、以下の3つのオペレーションに分けられている点も飲食関係者は覚えておきたい。
いずれの店舗オペレーションも、店舗をスムーズに回すためには必要なものだ。上記のように3つのオペレーションに分けて、それぞれの業務内容や作業手順などを見直せば、飲食店の運営環境は大きく改善される可能性がある。
3.イベント業界
イベント業界では、イベントの進行手順全体をオペレーションと呼んでいる。では、具体的にどのようなものが該当するのか、以下でいくつか例を見てみよう。
- 何人のスタッフを配置するのか?
- それぞれのスタッフをどこに配置するのか?
- 各スタッフが、どのような業務をこなすのか?
- 当日はどのようなスケジュールで進めるのか?
- 設営や撤去にどれくらいの時間をかけられるのか?
費やせる時間が限られているイベント業界では、上記のようにさまざまな業務を細かく見直す必要がある。
4.金融業界
中央銀行による金融調節の主な手段をオペレーションと呼ぶ。具体的な金融調節取引としては、民間金融機関との間で実施したり、国債などの売買や資金貸し付けしたりするなどの取引がある。他の業界とは異なり、業務や作業手順などとは違う意味になるため、注意したい。略して「オペ」とも表現するほか「公開市場操作」とも呼ばれる。
資金供給オペレーション(買いオペ)や資金吸収オペレーション(売りオペ)は、日本の中央銀行(日本銀行)が実施する代表的なオペレーションだ。これらのオペレーションにより、中央銀行は金融市場の資金量を調整し、金融調整を行う。買いオペは、景気低迷時に金融市場に資金供給量を増やして金利を下げる施策だ。
一方売りオペは、景気が加熱している場合に資金量を減らし金融引き締めを行い、金利を上げる施策である。2022年現在、日本銀行が行っている金融緩和政策は買いオペなどの金融緩和政策であり、米国や欧州の中央銀行は、インフレ対策として政策金利引き上げによる金融引き締め政策を実施している。
5.建設業界
建設業界では、機械の操作や運転をオペレーションと呼ぶ。例えば建築現場でオペレーションと言えば、建設用の機械や重機の操作を指す。また建築物の設計段階でCAD(Computer Aided Design:コンピュータによる設計支援)の操作は「CADオペレーション」と言う。
オペレーションを行う人は、オペレーターと呼ばれる。求人情報などで「CADオペレーター」とある場合は、CADの操作により建築設計を補助する作業を担当する人を指す。
6.医療分野
医療分野においては、外科手術のことを「オペレーション」と呼ぶ。単純に「オペ」と省略されることも多い。手術室のことは「オペ室」と呼ばれる。オペ室では、外科医・麻酔医・看護婦(機械出し・外回り)、臨床工学士らが在室し、手術解除・機器の整備など手術にまつわる業務全般を行う。
7.数学分野
数学分野では、計算や数学の記号に沿って数値を求めることや、データ処理などをオペレーションと呼ぶ。「数を操作する」と考えれば、オペレーションの基本的な意味に沿った使われ方だと言える。
企業活動におけるオペレーションの重要性とは?
世の中の企業にとってオペレーションは、業務の効率化やコスト削減、リスク防止を実現する鍵となるものだ。では、企業がオペレーションを見直すと、具体的にどのようなメリットが発生するのだろうか。
企業がオペレーションを見直す主なメリット4つ
オペレーションを見直すにあたって感じるメリットは後述の4つに分けられる。
- ムダな作業を省くことで、労力やコストを節約できる
- 手の空いた人材を、最適な業務に再配置できる
- ルーチンワークをマニュアル化することで、トラブルのリスクを防げる
- ルールに変化を加えることで、従業員のモチベーションや意識を変えられる
これまで当たり前のようにこなしていた業務でも、細かく見直すと意外なムダや欠陥が見つかることは多い。そのようなムダや欠陥を一つずつ改善するだけで、企業には上記のようなメリットが発生する。
つまり、オペレーションの見直しは、企業全体の生産性を高めることにつながるため、これまで意識してこなかった経営者はぜひこの機会に見直すことをおすすめしたい。
オペレーションマネジメントとは?基本的なプロセスについても解説
ここからは、オペレーションを見直す具体的なプロセスを紹介していこう。
社内の経営資源を活用し、求められている成果をあげることは「オペレーションマネジメント」と呼ばれている。このオペレーションマネジメントを成功させるには、手順に注意しながら丁寧に運営体制などを見直すことが必要だ。
もちろん、業界によって実際の流れは異なるが、以下では一般的な企業におけるオペレーションマネジメントのプロセスを紹介していく。
【STEP1】実行計画の立案(プランニング)
最初に取り組むべきことは、実行計画の立案だ。実行計画がないと、「どの部分を見直すべきか?」や「何から取り組むべきか?」が全く見えない状態になるので、効率的にオペレーションマネジメントを進めることが難しくなる。
したがって、まずはオペレーションマネジメントの正しい方向性を見極めるために、ゴールとなる「目標」を設定しておきたい。明確な目標が見つかったら、その目標を達成するために「どんな部分の見直しが必要になるのか?」を判断しながら、一つずつ丁寧に実行計画を立てていこう。
【STEP2】全体的なスケジュールの決定
効率的にオペレーションマネジメントを進めるには、「全体のスケジュール」をあらかじめ決めておくことも必要だ。また、時間的なスケジュールだけではなく、コストや人員、設備資源の割り当て方もこの段階で決めておきたい。
オペレーションマネジメントで必要になるリソースは、現運営体制や会社の規模、業種などによって異なる。そのため、【STEP1】で立案した実行計画と見比べながら、慎重に各リソースを割り当てていこう。
【STEP3】4つのオペレーションを見直し、改善に取り組む
スケジュールを含めた計画が固まったら、いよいよオペレーションの見直しを始めていく。実際に見直すオペレーションは企業によって異なるが、一般的な企業で見直しが必要になるものは以下の4つだ。

上記4つのオペレーションに分けてマネジメントを進めれば、どこに課題や問題を抱えているのかが判明しやすくなる。いきなりオペレーション全体を見直すと混乱してしまう恐れがあるので、運営体制を見直す際には4つのオペレーションに分けた上で、それぞれを細かくチェックしていこう。
【STEP4】データ共有と評価・改善
会社の運営体制をより良くするためには、実行したオペレーションマネジメントについても見直す必要がある。期待した効果が表れなければ、費やしたコストや時間を無駄にしてしまうので、マネジメントの後には「データ共有」と「評価・改善」に取り組むことが必須だ。
各オペレーションのデータを取得・共有したら、そのデータをもとに「どんな効果が表れたのか?」を冷静に分析し、改善できる部分が見つかったら積極的に手を加えていこう。
オペレーショナル・エクセレンスとは?運営体制を構築するポイント4つ
「オペレーション・エクセレンス」とは、度重なるマネジメントによって各オペレーションを徹底的に磨き上げること。会社をこの状態へと近づかせるには、さまざまなポイントを押さえた上でマネジメントに取り組む必要がある。
そのなかでも、以下では経営者が特に押さえておきたい4つのポイントをまとめた。
1.オペレーションマネジメントを進化させるサイクルを構築しているか
オペレーション・エクセレンスの状態を目指すには、オペレーションマネジメントを日々進化させることが必要だ。つまり、マネジメントの全体の流れを見たときに、以下の「PDCAサイクル」が構築されるように実行計画を練る必要がある。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
基本的なことに思えるかもしれないが、例えば日本の大企業のなかにも、PDCAサイクルを徹底することで世界的な競争力を確立した企業が見受けられる。どんなにオペレーションを見直しても、時代や流行の変化により新たな課題や欠陥が見つかることは多々あるので、オペレーションマネジメントは改善しながら何度も繰り返すことを意識しよう。
2.顧客の要望のみを重視しすぎていないか
質の高い商品・サービスを提供する上で、顧客の要望を実現させることは非常に大切だ。しかし、顧客の要望のみを重視しすぎると、生産の効率が著しく下がってしまうため、会社をスムーズに成長させることが難しくなる。
したがって、生産オペレーションや品質オペレーションを見直す際には、「顧客の要望」と「生産効率」のバランスを取らなくてはならない。いずれか一方に傾くと、コストの増加や需要低下などを引き起こしてしまうため、最適なバランスを維持できるように慎重に各オペレーションを見直そう。
3.社内全体でオペレーションマネジメントの重要性を意識できているか
経営者だけがオペレーションマネジメントに取り組んでも、従業員にその考えが浸透していなければ、本当の意味で運営体制を整えることはできない。改善するオペレーションによっては、従業員からの協力も必須になるので、オペレーションマネジメントの重要性は社内全体できちんと共有することが重要だ。
生産性を高める設備やツールを導入しても、結局それらを使用するのは従業員であるため、各従業員との意識共有は忘れずに取り組んでおきたい。
4.IT技術をうまく活用できているか
現代のオペレーションマネジメントにおいて、やはりIT技術の活用は欠かせない。IT技術を導入すると、これまで手作業で行ってきた業務を自動化したり、より効率的で安全な生産ラインを構築したりできる。
IT技術の導入にはコストがかかるものの、導入後に節約できる人件費や備品代などを考えれば、総合的に運営コストを抑えられるはずだ。近年ではさまざまな分野にIT技術が浸透してきているので、業務効率化やコスト削減を目指している経営者は、これを機に自社の業務体制を見直してみよう。
オペレーションに関するQ&A
Q.オペレーションの意味は?
A.オペレーションとは、目標達成のために物事を運営したり推進したりする手順を定めることだ。幅広い業界で広く使われる言葉で業界・分野によってオペレーションの意味合いは異なる。例えば製造業界で使われるオペレーションの場合は、機械類の運転や操作を指す。一方で金融分野であれば国の中央銀行が実施する市場操作(買いオペ・売りオペ)に使われる言葉だ。
その他にも外科手術(医療分野)、数の操作(数学分野)といった意味でも使用される。
Q.オペレーションのビジネス上の意味と使い方は?
A.ビジネスシーンにおける「オペレーション」とは、業務目標を達成するために企業の運営体制や業務の遂行手順を定めることだ。使用される場面によっては、別部門同士のつながりを構築する必要もあるため、「業務連鎖」と言い換えられることもある。オペレーションの使い方は、以下の通りだ。
・オペレーションに不備があった影響で、業務が2週間以上遅延する見込みだ
・オペレーションの見直しは、業務改革の第一段階として必要な施策である
・今回の事故の原因は、製造段階のオペレーションミスだと判明した
単独での使用以外に「オペレーションミス」など他の単語と合わせて一つの意味となるケースもある。
Q.オペレーションとは何語?
A.オペレーション(operation)とは、もともと英語であるが、そのまま外来語として日本語のカタカナ表記で表現されている。
Q.オペレーションマネジメントとは?
A.オペレーションマネジメントとは、社内の経営資源を活用し、求められている成果をあげること。オペレーションマネジメントを成功させるには、手順に注意しながら丁寧に運営体制などを見直す必要がある。一般的なオペレーションマネジメントの手順は以下の通り。
- 実行計画の立案(プランニング)
- 全体的なスケジュールの決定
- オペレーションの見直し、改善に取り組む
- データ共有と評価・改善
Q.オペレーションスタッフの意味は?
A.オペレーションスタッフとは、現場で実際に作業するスタッフのこと。業種によりニュアンスは異なる。例えば製造業では、製造に関わる機械の操作や管理する人を示す。一方旅行業界におけるツアーオペレーションとは、お客様の旅行先に付き添い、現地でレストランや公共交通機関の予約などを行う人を指す。
具体的なオペレーションの内容については、業種やその会社に確認しておきたい。
Q.オペレーションの類語は?
A.「マネジメント」「ディレクション」「コントロール」「ハンドリング」は、オペレーションの類語だが、多少意味合いが異なる。各類語とオペレーションの違いを把握して、シチュエーションにふさわしい適切な言葉を選ぶようにしたい。
・マネジメント
日本語で「経営管理」という意味でビジネスシーンでは「人」や「資金」などの経営資源を適切に管理することを指す。
・ディレクション
ビジネスシーンにおけるディレクションとは、製品づくりに関する進捗管理や製作指示を意味する。
・コントロール
「調節」や「制御」を意味するコントロールは、オペレーションとほぼ同じ意味合いで用いられる。ただし他の言葉と組み合わせた用語を見てみると、オペレーションよりも幅広いシーンで使われている傾向だ。
・ハンドリング
ビジネスシーンにおけるハンドリングとは、プロジェクトの進行や従業員の動きをうまく調整することを指す。
オペレーションマネジメントは、生産性の向上につながる
今回紹介したように、オペレーションを見直すことは生産性の向上につながる。会社を成長させるために、オペレーションマネジメントへの取り組みは必須とも言えるので、これまで意識してこなかった経営者は自社のオペレーションを今一度チェックしておきたい。
ただし、間違った方向性でマネジメントを進めると、投入したコストや時間が無駄になる恐れがあるため、行動の前には必ず実行計画を策定しておこう。