
企業活動において、「オペレーション」は会社の生産性を左右する重要なものだ。なかにはオペレーションを見直すことで、強大な競争力を確立した企業も存在する。そこで今回は、オペレーションの概要や意味に加えて、具体的なプロセスなどを解説していく。
目次
ビジネスシーンにおける「オペレーション」とは?
ビジネスシーンにおける「オペレーション」とは、業務目標を達成するために企業の運営体制や業務の遂行手順を定めることだ。ケースによっては、別部門同士のつながりを構築する必要もあるので、「業務連鎖」と言い換えられることもある。
「オペレーション」を使用する例
もう少しイメージをつかむために、以下ではオペレーションを使った例文をいくつか見ていこう。
- オペレーションに不備があった影響で、業務や資金調達が遅れそうだ
- オペレーションを見直すことが、業務の効率化につながる
- オペレーションミスにより、業務に深刻なトラブルが生じた
基本的にオペレーションは単体で使われる用語だが、場合によっては上記の「オペレーションミス」のように他の単語と一緒に使用される。ちなみに、オペレーションミスとは運営体制や業務の遂行手順に、致命的な欠陥などを抱えている状態を意味する。
オペレーションには他にどんな意味がある?
上記では「ビジネスシーンにおけるオペレーション」について紹介したが、実はオペレーションには他にもさまざまな意味がある。そこで以下では、ビジネスシーン以外におけるオペレーションの意味を簡単にまとめた。
使用される主な業界など | 「オペレーション」の意味 |
---|---|
・建設業界 | 機械や設備などの操作、運転、操業。 |
・医療業界 | 外科手術のこと。「オペ」と省略する場合も。 |
・投資や金融の世界 | 証券売買による市場操作のこと。 |
・数学の世界 | 演算や運算演算、データ処理のこと。 |
上記に関係する業界で事業を営んでいる場合は、オペレーションの意味が変わってくる可能性もあるので、該当する経営者は他の意味も合わせて覚えておこう。
オペレーションの意味は業界によって異なる?
ビジネスシーンで「オペレーション」という言葉を使う場合であっても、実は使用する業界によって意味合いが若干変わってくる。そこで次からは、「IT業界・飲食業界・イベント業界」の3つに分けて、オペレーションの意味を詳しく解説していこう。
1.IT業界におけるオペレーションの意味
IT業界におけるオペレーションは、主にソフトウェアやハードウェアの管理・操作・実行を意味する。また、事業としてソフトウェアなどを操作・運用する場合に、その工程全体を「オペレーション業務」と呼ぶことも合わせて覚えておきたい。
細かく見るとオペレーション業務の内容は幅が広く、ケースによってはシステムの修正作業やウイルス対策なども含まれる。
2.飲食業界におけるオペレーションの意味
飲食業界では、店舗運営の作業手順や管理方法を指すものとして「店舗オペレーション」という言葉が使用されている。また、細かい業務内容によって、以下の3つのオペレーションに分けられている点も飲食関係者は覚えておきたい。
オペレーションの種類 | 概要 |
---|---|
・キッチンオペレーション | 厨房内の業務や作業手順、食材・食器の管理方法のこと。 |
・フロアオペレーション | オーダーの取り方や会計手順のこと。接客方法や接客マナーを指す場合もある。 |
・バックヤードオペレーション | 在庫管理や注文管理をはじめとした、バックヤードにおける作業方法のこと。ほかにも、スタッフ調整やキャンペーンの計画なども含まれる。 |
いずれの店舗オペレーションも、店舗をスムーズに回すためには必要なものだ。上記のように3つのオペレーションに分けて、それぞれの業務内容や作業手順などを見直せば、飲食店の運営環境は大きく改善される可能性がある。
3.イベント業界におけるオペレーションの意味
イベント業界では、イベントの進行手順全体をオペレーションと呼んでいる。では、具体的にどのようなものが該当するのか、以下でいくつか例を見てみよう。
- 何人のスタッフを配置するのか?
- それぞれのスタッフをどこに配置するのか?
- 各スタッフが、どのような業務をこなすのか?
- 当日はどのようなスケジュールで進めるのか?
- 設営や撤去にどれくらいの時間をかけられるのか?
費やせる時間が限られているイベント業界では、上記のようにさまざまな業務を細かく見直す必要がある。
企業活動におけるオペレーションの重要性とは?
世の中の企業にとってオペレーションは、業務の効率化やコスト削減、リスク防止を実現する鍵となるものだ。では、企業がオペレーションを見直すと、具体的にどのようなメリットが発生するのだろうか。
企業がオペレーションを見直す主なメリット4つ
オペレーションを見直すにあたって感じるメリットは後述の4つに分けられる。
- ムダな作業を省くことで、労力やコストを節約できる
- 手の空いた人材を、最適な業務に再配置できる
- ルーチンワークをマニュアル化することで、トラブルのリスクを防げる
- ルールに変化を加えることで、従業員のモチベーションや意識を変えられる
これまで当たり前のようにこなしていた業務でも、細かく見直すと意外なムダや欠陥が見つかることは多い。そのようなムダや欠陥をひとつずつ改善するだけで、企業には上記のようなメリットが発生する。
つまり、オペレーションの見直しは、企業全体の生産性を高めることにつながるため、これまで意識してこなかった経営者はぜひこの機会に見直すことをおすすめしたい。
オペレーションマネジメントとは?基本的なプロセスについても解説
ここからは、オペレーションを見直す具体的なプロセスを紹介していこう。
社内の経営資源を活用し、求められている成果をあげることは「オペレーションマネジメント」と呼ばれている。このオペレーションマネジメントを成功させるには、手順に注意しながら丁寧に運営体制などを見直すことが必要だ。
もちろん、業界によって実際の流れは異なるが、以下では一般的な企業におけるオペレーションマネジメントのプロセスを紹介していく。
【STEP1】実行計画の立案(プランニング)
最初に取り組むべきことは、実行計画の立案だ。実行計画がないと、「どの部分を見直すべきか?」や「何から取り組むべきか?」が全く見えない状態になるので、効率的にオペレーションマネジメントを進めることが難しくなる。
したがって、まずはオペレーションマネジメントの正しい方向性を見極めるために、ゴールとなる「目標」を設定しておきたい。明確な目標が見つかったら、その目標を達成するために「どんな部分の見直しが必要になるのか?」を判断しながら、ひとつずつ丁寧に実行計画を立てていこう。
【STEP2】全体的なスケジュールの決定
効率的にオペレーションマネジメントを進めるには、「全体のスケジュール」をあらかじめ決めておくことも必要だ。また、時間的なスケジュールだけではなく、コストや人員、設備資源の割り当て方もこの段階で決めておきたい。
オペレーションマネジメントで必要になるリソースは、現運営体制や会社の規模、業種などによって異なる。そのため、【STEP1】で立案した実行計画と見比べながら、慎重に各リソースを割り当てていこう。
【STEP3】4つのオペレーションを見直し、改善に取り組む
スケジュールを含めた計画が固まったら、いよいよオペレーションの見直しを始めていく。実際に見直すオペレーションは企業によって異なるが、一般的な企業で見直しが必要になるものは以下の4つだ。
見直しが必要になるオペレーション | 概要 |
---|---|
・生産オペレーション | 生産をする現場のオペレーションのこと。必要なリソースの配置を見直し、より生産性が高まるようにコントロールする必要がある。 |
・保全オペレーション | 施設や設備を保全するオペレーションのこと。効率性だけではなく、安全性や信頼性にも注意しながら見直す必要がある。 |
・品質オペレーション | 標準仕様や品質測定など、商品・サービスの品質に関わるオペレーションのこと。顧客の要求に応えられるよう、高い品質を維持できる体制を整える必要がある。 |
・在庫オペレーション | 棚卸や発注など、在庫管理に関するオペレーションのこと。出荷スケジュールの確認だけではなく、生産現場に在庫を報告するなど、生産オペレーションとの連携も重要なポイントになる。 |
上記4つのオペレーションに分けてマネジメントを進めれば、どこに課題や問題を抱えているのかが判明しやすくなる。いきなりオペレーション全体を見直すと混乱してしまう恐れがあるので、運営体制を見直す際には4つのオペレーションに分けた上で、それぞれを細かくチェックしていこう。
【STEP4】データ共有と評価・改善
会社の運営体制をより良くするためには、実行したオペレーションマネジメントについても見直す必要がある。期待した効果が表れなければ、費やしたコストや時間を無駄にしてしまうので、マネジメントの後には「データ共有」と「評価・改善」に取り組むことが必須だ。
各オペレーションのデータを取得・共有したら、そのデータをもとに「どんな効果が表れたのか?」を冷静に分析し、改善できる部分が見つかったら積極的に手を加えていこう。
オペレーショナル・エクセレンスとは?運営体制を構築するポイント4つ
「オペレーション・エクセレンス」とは、度重なるマネジメントによって各オペレーションを徹底的に磨き上げること。会社をこの状態へと近づかせるには、さまざまなポイントを押さえた上でマネジメントに取り組む必要がある。
その中でも、以下では経営者が特に押さえておきたい4つのポイントをまとめた。
1.オペレーションマネジメントを進化させるサイクルを構築しているか
オペレーション・エクセレンスの状態を目指すには、オペレーションマネジメントを日々進化させることが必要だ。つまり、マネジメントの全体の流れを見たときに、以下の「PDCAサイクル」が構築されるように実行計画を練る必要がある。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
基本的なことに思えるかもしれないが、例えば日本の大企業のなかにも、PDCAサイクルを徹底することで世界的な競争力を確立した企業が見受けられる。どんなにオペレーションを見直しても、時代や流行の変化により新たな課題や欠陥が見つかることは多々あるので、オペレーションマネジメントは改善しながら何度も繰り返すことを意識しよう。
2.顧客の要望のみを重視しすぎていないか
質の高い商品・サービスを提供する上で、顧客の要望を実現させることは非常に大切だ。しかし、顧客の要望のみを重視しすぎると、生産の効率が著しく下がってしまうため、会社をスムーズに成長させることが難しくなる。
したがって、生産オペレーションや品質オペレーションを見直す際には、「顧客の要望」と「生産効率」のバランスを取らなくてはならない。いずれか一方に傾くと、コストの増加や需要低下などを引き起こしてしまうため、最適なバランスを維持できるように慎重に各オペレーションを見直そう。
3.社内全体でオペレーションマネジメントの重要性を意識できているか
経営者だけがオペレーションマネジメントに取り組んでも、従業員にその考えが浸透していなければ、本当の意味で運営体制を整えることはできない。改善するオペレーションによっては、従業員からの協力も必須になるので、オペレーションマネジメントの重要性は社内全体できちんと共有することが重要だ。
生産性を高める設備やツールを導入しても、結局それらを使用するのは従業員であるため、各従業員との意識共有は忘れずに取り組んでおきたい。
4.IT技術を上手く活用できているか
現代のオペレーションマネジメントにおいて、やはりIT技術の活用は欠かせない。IT技術を導入すると、これまで手作業で行ってきた業務を自動化したり、より効率的で安全な生産ラインを構築したりできる。
IT技術の導入にはコストがかかるものの、導入後に節約できる人件費や備品代などを考えれば、総合的に運営コストを抑えられるはずだ。近年ではさまざまな分野にIT技術が浸透してきているので、業務効率化やコスト削減を目指している経営者は、これを機に自社の業務体制を見直してみよう。
オペレーションマネジメントは、生産性の向上につながる
今回紹介したように、オペレーションを見直すことは生産性の向上につながる。会社を成長させるために、オペレーションマネジメントへの取り組みは必須とも言えるので、これまで意識してこなかった経営者は自社のオペレーションを今一度チェックしておきたい。
ただし、間違った方向性でマネジメントを進めると、投入したコストや時間が無駄になる恐れがあるため、行動の前には必ず実行計画を策定しておこう。
文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)