まるばつ
(画像=buritora/Shutterstock.com)

こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

小規模宅地の特例には租税特別措置法第69条の4第6項において当初申告要件(最初に提出する申告書で適用をする旨を記載する要件)が定められているため、基本的には更正の請求時には適用ができません。ただし、パターンによっては更正の請求でも適用できる可能性があります。

※追記:
小規模宅地等の特例について、基本的な情報をわかりやすくまとめた記事を新たに作成いたしましたので、ぜひご覧ください。
小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額

1.未分割申告後、適正に手続きしている場合

【概要】

当初申告において遺産分割が確定していなかったため未分割申告とした場合において、遺産分割確定後4ヶ月以内に更正の請求をしたときは、その更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は認められますか?

【回答】

小規模宅地の特例の適用は可能です。

【解説】

当初申告において申告期限後3年以内の分割見込書(以下、「分割見込書」)を添付し、かつ、申告期限から3年以内に分割が固まらない場合には遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書(以下、「承認申請書」)を提出しその承認を得た場合に限り小規模宅地の特例の適用が可能です。すなわち、適正に手続きをしている場合にのみ例外的に更正の請求でも特例の適用が出来るということです。

2.分割確定から4ヶ月以内に更正の請求をしなかった場合

【概要】

当初申告において未分割申告をして、その4年後に遺産分割が確定したため更正の請求をしましたが、遺産分割確定から6ヶ月経過していました。この場合において、その更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は可能ですか?承認申請書の手続きは適正にしています。

【回答】

小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】

分割確定日から4ヶ月以内に更正の請求をした場合のみ例外的に小規模宅地の特例の適用を認めていますので、その期限を徒過した場合には適用はできません。なお、配偶者の税額軽減については、この4ヶ月という期限を徒過したとしても相続税の申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能となります。なぜ、似たような特例なのに小規模宅地の特例はダメで、配偶者の税額軽減は認められるかというと、キーワードは「当初申告要件」です。小規模宅地の特例には当初申告要件があり、配偶者の税額軽減には当初申告要件がないため、4ヶ月を過ぎた更正の請求であっても適用が可能となるのです。こちらの相続税法基本通達32-2が根拠となります。

3.承認申請書の提出を忘れた場合

【概要】

未分割申告をした後3年を経過しても遺産分割が固まらないような場合には、その3年経過後2ヶ月以内に承認申請書を税務署に提出し、その承認を受けなければならないらしいですが、その承認申請書の提出を忘れてしまいました。なんとかなりませんでしょうか。

【回答】

小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】

承認申請書の提出に関しては、宥恕規定(税務署長がやむを得ない事情があると認められる場合には緩く考えてもらえる規定)が設けられていないため、提出を失念した場合にはどうあがいても小規模宅地の特例の適用はできません。

4.遺贈により取得した土地について小規模宅地の特例をしなかった場合

【概要】

父が「長男に自宅の土地と建物を相続させる」旨のみの遺言を残して死亡しました。父は自宅以外に貸駐車場も所有していましたが、こちらについては、長女と長男で遺産分割が確定していないため未分割として申告しています。また、自宅については、当初申告で小規模宅地の特例の適用をせずに、全ての遺産分割が固まった後の更正の請求時に貸駐車場と合わせて小規模宅地の特例の適用をしようと考えていたからです。この場合において、遺産分割確定した後の更正の請求時に自宅について小規模宅地の特例の適用が可能ですか?

【回答】

小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】

何度も解説しているように小規模宅地の特例には当初申告要件が存在します。当初申告において自宅については長男が相続することが決まっていて未分割財産には該当しないため当初申告の時に小規模宅地の特例の適用をしなければ機を逸してしまうことになります。なお、当初申告で未分割財産とした貸駐車場については更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は可能です。

5.遺留分減殺に伴う更正の請求の場合

【概要】 被相続人である父は、すべての土地を長男に、その他の財産を次男に相続させる旨の遺言を残して死亡しました。その遺言に基づいて長男及び次男は相続税申告書を期限内に提出しています。土地評価合計が5億円、その他の財産評価合計が5,000万円程度です。

長男が相続した土地には、A土地(特定居住用宅地)とB土地(貸付事業用宅地)が存在し、共に小規模宅地の特例の要件を満たしています。長男は当初申告においてA土地につき小規模宅地の特例を適用しています。

この場合において、次男が遺留分減殺請求し、B土地を取得したときは、次男はB土地につき小規模宅地の特例の適用は可能でしょうか?

【回答】

次男の修正申告においてB土地につき小規模宅地の特例の適用は可能です。また、長男の更正の請求においてもA土地について小規模宅地の特例の適用も可能です。すなわち、原則的には認められていない選択替えが可能となります。

【解説】

当初申告要件が存在する小規模宅地の特例については、適用対象宅地から別の適用対象宅地への選択替えは出来ないこととなりますが、本件のような遺留分減殺請求という相続固有の後発的事由が生じた場合には、更正の請求又は修正申告においても特例の適用が認められることとなります。(提供:税理士法人トゥモローズ