2019年のインポートブランド小売市場は、後半鈍化するも結果的には前年比5.5%増と更なる拡大

~インバウンド消費無く年配層の来店減少などコロナ禍の2020年は、一転して20%強の市場規模縮小を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、日本国内におけるインポートブランド市場を調査し、現況、ブランド動向、将来展望を明らかにした。

国内インポートブランド(主要15アイテム)小売市場規模推移

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

 2019年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)の小売市場規模は、前年比5.5%増の2兆5,772億円と推計した。2019年は株高を背景とした日本人富裕層の消費と、ここ数年で拡大しているミレニアル世代※の消費が年間を通じて好調に推移した。一方で、前半と後半で状況が異なる様子が見られたものもあった。近年、安定的に拡大しているインバウンド(訪日外国人客)需要は、前半は好調に推移したものの、為替や政治的影響により、後半には減速が見られた。また、10月の消費増税や暖冬の影響により、増税以降は日本人中間層の消費は弱まった様子も見られた。2019年の国内インポートブランドの小売市場は、結果的には2018年から更なる拡大となったが、後半はやや減速が感じられる年でもあった。

※ミレニアル世代とは諸説あるが、本調査では1980年代~1990年代後半に生まれ、2000年頃に社会に出てきた世代とし、2020年時点では20代半ばから30代後半くらいの若者世代をさす。

2.注目トピック

コロナ禍で求められるデジタルシフト(リアルを補完する接客・販売工夫)

 新型コロナウイルス感染症拡大により、リアル店舗への今まで通りの集客・接客が難しい状況にある中で、ZOOMやLINEなどのオンラインツールを使った接客を取り入れるブランドや小売店が増加している。
ことラグジュアリーブランドに関しては、リアル店舗での購入もしくは、一度は実物を確認してから購入する客層が多いのが特徴だが、リアル店舗を利用していた客層でも、来店頻度は抑えたい、更に混雑した時間は避けたいと考えている消費者が多い。オンライン接客により、購入までの来店回数を減らすことができるだけでなく、個別対応による消費者の満足度も高い。また、リアル店舗の補完という点では、自社ECの強化や外部モールへの出店などにより、各ブランドとも販路としてのECの存在感を高めておくことが必要になる。そのためには、日本人に受け入れられるローカライズされたUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)にしていくことが好ましいが、本国主導のEC運営が多いインポートブランドにおいては、課題の多い部分でもある。

 コロナ禍においては、若者が比較的外出をしているのに対し、重症化リスクの高い年配層は、外出機会を減らしている。現在の中心客層の外出機会が減っている中で、今まで店舗を軸に行っていたコミュニケーションのあり方(ブランドの情報に触れ、興味を持ってもらえる機会の創出)も見直していく必要が出てきている。若い世代に向けてのデジタル戦略のみでなく、むしろ従来の顧客層(特に年齢が上の層)にこそ届くデジタル戦略を考える必要性が増している。

3.将来展望

 年明けからの新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、日本においても、4月上旬に政府による緊急事態宣言が発令され、不要・不急と判断されたファッションブランドはリアル店舗の休業を余儀なくされた。営業自粛明けの6月、7月の状況は、予想以上のリベンジ消費と、待ちわびていた顧客の消費の戻りも感じられたが、インバウンド(訪日外国人客)の需要が全く見込めない状況は変わっておらず、インバウンド比率の高かったブランドにとっては店舗が再開しても、その厳しさは変わらない。更に、インバウンドを抜きにしても、実質2ヵ月間の売上分を取り戻すことは至難の業で、2020年に関しては、日本人消費のみで、しかも引き続くコロナ禍において、このマイナス額をどれだけ縮小させられるかが課題となっている。

 密を避ける生活様式の中で、今まで行ってきた集客イベントや接客に制限ができるだけでなく、重症化リスクの高い高齢者を含め、年配層の店舗への来店は明らかに減っている。百貨店販路は、この層が主要顧客であるだけに、そこを主販路とするインポートブランドにとっても苦しい状況だ。また、ビジネスシーンの変化や、外出機会やイベントの減少から、一般的には消費者のファッション購入意欲は減退することが見込まれる。再び緊急事態宣言のような措置が取られることなく、コロナ禍の経済活動が継続するならば、現在の諸々の状況を加味して考えた場合、2020年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)の小売市場規模を前年比20.1%減となる、2兆585億円と予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2020年5月~8月
2.調査対象: 欧州、米国の衣料品・服飾雑貨、ウォッチ、ジュエリー、クリスタル製品・陶磁器、アイウェア、筆記具ブランドを輸入販売する商社、メーカー、小売事業者、また各インポートブランドの日本法人等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<インポートブランド市場とは>
本調査におけるインポートブランド市場とは、従来から算出していたインポートブランド市場規模(主要10アイテム分野)に5アイテムを追加し、主要15アイテム分野とした。
主要15アイテム分野とは、①「レディスウェア」、②「メンズウェア」、③「ベビーウェア」、④「バッグ・革小物」、⑤「シューズ」、⑥「ネクタイ」、⑦「スカーフ・ショール・ハンカチ類」、⑧「レザーウェア」、⑨「ベルト」、⑩「手袋」、⑪「ウォッチ」、⑫「ジュエリー」、⑬「クリスタル製品・陶磁器類」、⑭「アイウェア」、⑮「筆記具」である。尚、いずれも欧州、及び米国からの輸入品に限られる。
<市場に含まれる商品・サービス>
レディスウェア、メンズウェア、ベビーウェア、バッグ・革小物、シューズ、ネクタイ、スカーフ・ショール・ハンカチ類、レザーウェア、ベルト、手袋、ウォッチ、ジュエリー、クリスタル製品・陶磁器類、アイウェア、筆記具

出典資料について

資料名2020年版 インポートマーケット&ブランド年鑑
発刊日2020年08月28日
体裁B5 756ページ
定価135,000円(税別)

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