経営
(画像=PIXTA)

会社の譲渡を検討している経営者もいることだろう。会社譲渡は、後継者問題の解決や創業者利益の取得を目的として行われることが多い。買い手候補の企業を見つけて交渉を進めるとともに、会社の株式を譲渡するための手続きも必要になる。この記事では、会社譲渡の方法や事業譲渡との違い、メリット・デメリットなどについて詳しく解説する。

目次

  1. 会社譲渡とは?
    1. 会社譲渡の目的
    2. 事業譲渡との違い
  2. 会社譲渡の全体の流れ
    1. 1. 社内で検討
    2. 2. M&A仲介会社を選び契約
    3. 3. 自社の価値を算定
    4. 4. 買い手企業の候補を選択
    5. 5. トップ面談
    6. 6. デューデリジェンスの実施
    7. 7. 最終合意契約を交わす
  3. 会社譲渡手続きの方法
    1. 1. 株式譲渡の承認請求
    2. 2. 臨時株主総会の招集
    3. 3. 臨時株主総会で譲渡を承認
    4. 4. 株式譲渡契約の締結
    5. 5. 株主名簿の書き換え請求
    6. 6. 株主名簿記載事項証明書の交付
  4. 会社譲渡の必要書類
  5. 会社譲渡のメリット・デメリット
    1. メリット
    2. デメリット
  6. 会社譲渡における売却価格の主な算定方法
    1. コストアプローチ
    2. インカムアプローチ
    3. マーケットアプローチ
  7. 会社譲渡を成功させるポイント
    1. 自社の強みをアピールする
    2. 事前準備を行いタイミングを誤らない
    3. 自社の適正価値を把握する
    4. 簿外債務などはあらかじめ把握する
  8. 会社譲渡はM&A仲介会社に相談しよう
  9. 会社譲渡は確実に進めよう

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会社譲渡とは?

会社譲渡とは、会社の経営権を第三者に譲り渡し、その対価を得ることである。会社譲渡の具体的な方法は、会社の株式を売却することだ。このことから、会社譲渡は一般に「株式譲渡」と呼ばれている。

会社譲渡の目的

会社譲渡は、以下の目的で行われることが多い。

・後継者問題の解決

「後継者問題の解決」を目的として会社譲渡が行われるケースは多い。経営者が高齢化している中小企業では、事業承継が火急の課題となっている。しかし後継者が見つからず、廃業を選択せざるを得ない企業は多い。会社を第三者に譲渡できれば、後継者問題を解決し、従業員の雇用を維持することができる。

・創業者利益の取得

会社を第三者に譲渡すれば、大多数の株式を保有する創業者は、株式の売却益を得られる。得られた利益で、その後の人生を気楽に過ごすこともできるだろう。創業者利益の取得も会社譲渡の主な目的だ。なぜならば、廃業してしまえば創業者利益は得られないからである。

・アーリーリタイヤ

比較的若い創業社長が、アーリーリタイヤを目的として会社譲渡を行うこともある。得られる創業者利益が大きければ、その後数十年間、仕事をせずに暮らすこともできるからだ。会社をしかるべき企業に譲渡すれば、創業社長がリタイヤしても事業や従業員の雇用は維持され、場合によっては発展することもある。

事業譲渡との違い

会社譲渡と似た言葉に「事業譲渡」がある。会社譲渡が会社のすべてを譲渡するものであるのに対し、事業譲渡では会社の事業の一部を譲渡する。買い手の「この事業だけ買収したい」というニーズにも応えられるため、会社譲渡だけでなく事業譲渡を選択肢に入れると、会社を売却できる可能性は高まる。

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会社譲渡の全体の流れ

会社譲渡の全体の流れを見ていこう。

1. 社内で検討

最初に、社内で会社譲渡が最善の方策なのかどうか、また譲渡の方針や期日を検討する。ただし、役員や従業員に会社を譲渡することが伝わると、不安になって退職してしまうかもしれない。会社譲渡を事前に相談するのは、信頼できる少数の人に絞るべきだ。

2. M&A仲介会社を選び契約

会社譲渡の買い手を見つけ、契約などの手続きをスムーズに進めるためには、専門家である M&A仲介会社の協力が欠かせない。信頼できる M&A仲介会社を選んで、契約しよう。

3. 自社の価値を算定

会社譲渡の交渉を有利に進めるには、自社の企業価値を把握しておくこと必要がある。自社価値の算定は、 M&A仲介会社が行ってくれるケースもある。

4. 買い手企業の候補を選択

M&A仲介会社の協力を得ながら、買い手企業の候補を選ぶ。買い手企業は、従業員を含めた自社のすべてを託すことになるため、公式ホームページなども参照しながら慎重に選ぼう。

5. トップ面談

買い手候補企業のトップと面談を行う。自社の強みをしっかり伝えるとともに、譲渡した場合の会社・従業員の取り扱いもよく確認しよう。トップの人柄を確認することの重要だ。

6. デューデリジェンスの実施

トップ面談で基本的に合意したら基本合意契約を交わし、買い手企業がデューデリジェンスを実施する。デューデリジェンスとは、会社に財務・法務などについての問題がないかを調査することである。

7. 最終合意契約を交わす

デューデリジェンスで問題がないことがわかったら、最終合意契約を交わす。譲渡価格や支払い方法、従業員の処遇、スケジュールなどがここで決まることになる。

最終合意契約を交わしたら、会社の株式を譲渡する手続きを行う。手続きの方法は、以下で詳しく見ていく。

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会社譲渡手続きの方法

会社の株式を譲渡するための手続きについて、詳しく見ていこう。

1. 株式譲渡の承認請求

最初に、会社に対して株式譲渡の承認を請求する。ただし、会社の経営者と大株主が同一人物である中小企業の場合は、承認請求をする前にすでに承認されていることになる。

2. 臨時株主総会の招集

譲渡承認の請求を受けた会社は、臨時株主総会の招集を決定し、株主に通知する。招集通知は、株主総会の1週間前までに行う必要がある。

3. 臨時株主総会で譲渡を承認

臨時株主総会で株式譲渡の承認決議を行う。承認決議は普通決議で行われる。

4. 株式譲渡契約の締結

株式譲渡が承認されたら、株式の譲渡人(株主)と譲受人との間で株式譲渡契約を締結する。

5. 株主名簿の書き換え請求

契約が締結されたら、会社に対して株主名簿の書き換えを請求する。

6. 株主名簿記載事項証明書の交付

新しい株主は、株主名簿に自分の名前が記載されていることを確認するため、会社に対して株主名簿記載事項証明書を請求する。請求されたら、会社はこれを交付する。

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会社譲渡の必要書類

会社譲渡の際に必要な書類は、以下のとおりだ。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株主総会招集に関する取締役の決定書
  • 臨時株主総会招集通知
  • 臨時株主総会議事録
  • 株式譲渡承認通知
  • 株式譲渡契約書
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書
  • 株主名簿記載事項証明書

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会社譲渡のメリット・デメリット

会社譲渡のメリットとデメリットを見てみよう。

メリット

会社譲渡のメリットは以下のとおりだ。

・後継者問題を解決できる

前述のとおり、会社譲渡の主なメリットは後継者問題を解決できることだ。近年は、事業承継をしたくても後継者が見つからないケースが多い。会社譲渡は、後継者問題を解決するために有効と言える。

・創業者利益を得られる

創業者が大株主である場合は創業者利益を得られることも、会社譲渡のメリットだ。創業者利益は、その後の人生のために自由に使うことができる。

・企業が存続・発展する

会社を廃業するのではなく譲渡することで、会社は存続する。大企業の傘下に入った場合は、その豊富な資金やインフラによって、会社がこれまで以上に発展することもある。

・従業員の雇用や技術・ノウハウを維持できる

廃業すれば失われてしまう従業員の雇用や自社の独自技術・ノウハウを、会社譲渡によって守ることができる。

・個人保証が解消する

中小企業経営者にとって、金融機関に対する個人保証は重荷だろう。会社譲渡によって、個人保証は解消する。

デメリット

会社譲渡のデメリットは、以下のとおりだ。

・譲渡後も会社に拘束される可能性がある

前経営者がすぐにいなくなってしまうと会社が回らなくなると判断される場合は、譲渡後複数年にわたって会社に残るよう求められることがある。

・役員や従業員の処遇が変わる可能性がある

会社譲渡後、役員や従業員の処遇について交渉時の約束が守られない可能性がある。そのようなことが起こらないよう、交渉はしっかり行うことが重要だ。

・社名が変わる可能性がある

会社譲渡後、会社名が変わる可能性がある。

・買い手が見つからない可能性がある

会社譲渡は、買い手あってのものである。希望する買い手が見つからず、会社譲渡ができないこともある。

・破談になる可能性がある

買い手候補と交渉を進めたものの、簿外債務の発覚や情報漏えいなどによって破談になることもある。

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会社譲渡における売却価格の主な算定方法

会社譲渡における売却価格の算定方法を見てみよう。主な算定方法は、以下の3つだ。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

コストアプローチ

コストアプローチは、会社の純資産をもとに売却価格を算定する方法である。決算書から算出できるため客観的であることがメリットだが、デメリットは将来生み出す利益が価格に反映されないことだ。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、会社が将来生み出すと見込まれる利益を、現在価値に割り引くことで価格を算定する方法だ。将来の利益を加味できるため、会社譲渡時の売却価格算定において一般的な方法となっている。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、同一業種・同一規模の他企業と比較して価格を算定する方法である。ただし、会社譲渡の売却価格算定よりも相続税算定で使われることが多い。

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会社譲渡を成功させるポイント

会社譲渡を成功させるポイントを見ていこう。

自社の強みをアピールする

会社譲渡を成功させるためにまず重要なのは、交渉時に自社の強みをしっかりアピールすることだ。買い手企業にとっての買収メリットを、きちんと伝える必要があるだろう。

事前準備を行いタイミングを誤らない

社内で会社譲渡の目的や手法を明確にしておくなど、事前準備をしっかりと行うことが会社譲渡の成功には不可欠だ。また、 M&Aの市場環境は常に変化しているため、タイミングを誤らないことも大切だ。

自社の適正価値を把握する

自社の適正価値を把握しておくことで、買い手から過小評価されることを避けられる。

簿外債務などはあらかじめ把握する

簿外債務などはあらかじめ把握しておき、交渉時に買い手候補に正しく伝える必要がある。

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会社譲渡はM&A仲介会社に相談しよう

会社を譲渡するためには、スケジュールや戦略を決定し、買い手候補の企業を見つけ、交渉やさまざまな手続きを進めていかなければならない。多くの企業経営者にとって、これまで経験したことがないことばかりだろう。したがって、会社譲渡を成功させるためには、専門家である M&A仲介会社の協力が不可欠だ。

M&A仲介会社は、それぞれ手数料の算出方法が異なる。予想外の費用が発生しないよう、料金体系がシンプルなところを選ぶのがおすすめだ。

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会社譲渡は確実に進めよう

会社譲渡は、経営者としての最後の仕事と言えるだろう。禍根を残さぬよう確実に進め、会社とそこで働く役員や従業員に明るい未来をプレゼントするようにしたい。

そのためには、 M&A仲介会社など専門家の力を借りよう。また、買い手企業の経営者とはしっかりと交渉し、役員や従業員の処遇について確約を取ることが重要である。

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文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)

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