2019年度のパチンコ関連機器市場は前年度比83.9%の6,365億円、1,217億円のマイナス成長
~新規則機の販売低迷・コロナ禍による市況悪化により、市場は急速に縮小~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のパチンコ関連機器市場を調査し、現況、製品セグメント別の市場規模、メーカー動向、将来展望を明らかにした。
パチンコ関連機器市場規模推移
1.市場概況
2019年度のパチンコ関連機器(パチンコ機、パチスロ機、周辺設備機器)の市場規模は6,365億円(メーカー売上金額ベース)となり、前年度比で83.9%、1,217億円のマイナスとなった。大分類別(パチンコ機、パチスロ機、周辺設備機器)ではパチンコ機の市場規模は3,450億円(前年度比68.4%)、パチスロ機は2,197億円(同130.3%)、周辺設備機器は717億円(同84.3%)となり、パチンコ機市場が大幅に減少した。
2019年度のパチンコ機の市場規模は、2018年2月の規則改正以降、遊技機の型式試験の適合率が中々高まらずに新機種のリリースが停滞したこと、射幸性に勝る旧規則機と新規則機が併設されることによって新たに導入される新規則機の稼働実績が思うように伸びないこと、折からのパチンコホール全体の稼働率低迷、収益性の高い旧規則機を設置可能な期限ギリギリまで使用したいパチンコホール側の事情が重なり、2018年度から大幅減となった※。
※日本遊技機工業組合が集計している証紙枚数(遊技機一台ごとに貼付され、新台供給数の目安になる)は前年度比105.6%の132万枚(台)と前年度増であったが、同証紙枚数の集計期間が各年4月~3月であるのに対し、当社集計期間が各社の決算期を基準にしていることによる差異が要因である。
なお、新型コロナウイルスの影響によって新規則機への入替が困難な状況が続いたことにより、旧規則機の設置期限が2021年1月末から2021年11月末まで延長されたため、旧規則機との併設状態が更に伸びることになったが、それによって、パチンコホール経営企業での新規則機の購買マインドが低迷する状況が今後も続くものと考えられる。
一方で、パチスロ機は前年度増となったが、比較する2018年度が極端に低調であったため、2019年度の市場が本来的に回復基調に突入したとは言えない。販売台数も2007年の4号機完全撤去後の低水準を下回る状況であるが、新規則での型式試験での適合率が思うように上がらず、新機種のリリースが大きく停滞したことが要因となっている。また、パチンコ機と同様に、パチンコホールの収益を支える旧規則機が併設されていることで新規則機の稼働実績が低迷し、それによってパチンコホール経営企業の6号機への購買マインドは極端に冷え込んでしまっている。
2.注目トピック
遊技機新台販売市場は急速に低迷、コスト体質の改善が急務
旧規則機の撤去期限が2021年11月まで延期されたことを受け、新規則機の新台販売は厳しい状況が続くであろう。その環境下、遊技機(パチンコ機、パチスロ機)メーカー間での開発競争によって製品の開発費、製造原価は年々高騰し、遊技機メーカーの利益率は急速に低下している。そう言った経営環境に対応すべく、遊技機メーカー主導でのコスト改善がこの数年で進んでいるが、単なる下請け企業への値下げ要請であったり、単純に企画を削減してのコストカットとなる場合も多い。
遊技機市場の縮小トレンドが継続するなか、本来は優先度や効率性を精査した費用管理が必要になる。また、原価圧縮や開発費の削減によるコストダウンは進んでいるが、最もインパクトがあるのは開発スケジュールの精緻化であろう。遊技機の開発費におけるリテイク費用(やり直し費用)はおよそ総開発費の半分程度に上る場合もあり、企画段階での緻密な検討と最短距離での開発を実現することで、遊技機の開発費は大幅に低減される。
パチンコホールの収益悪化と反比例するように遊技機の販売価格は高騰し続けているが、コロナ禍での営業自粛での収益ダウン、緊急事態宣言解除以降も稼働が回復し切らない状況を踏まえれば、1台あたり40万円、高いものであれば50万円もの製品を買い続ける余力がある企業ばかりではない。遊技機価格の高騰はパチンコホール経営企業の収益を圧迫し、遊技者(パチンコ・パチスロファン)の負担増にも繋がる。パチンコ・パチスロ参加人口が更に減少して、パチンコホールの閉店が増加することで、回りまわって遊技機メーカーの販売台数が減少するという負のスパイラルを断ち切ることが急務である。
3.将来展望
コロナ禍で新規則機への入替が困難な状況が続いたことを踏まえて、旧規則機の撤去期限が2021年1月末から2021年11月末に延長された。パチンコホール側としては新規則機よりも収益性の高い旧規則機を使用できる期間が伸びたことは歓迎されるものであるが、遊技機メーカー側にとっては、旧規則機と併設で新規則機を販売していく状況が長引き、導入された新機種の稼働実績が振るわない状況が続くことになる。パチンコホール経営企業での購入機種の選定はより厳しいものになり、新規則機への移行に必要な最低限での導入を指向する様になるであろう。
数万台の大規模販売がもはや不可能になった市場環境に適応するために、近年、遊技機メーカーは多品種小ロットを指向する様になっていたが、一機種あたりの販売台数が更に低下してるため、多品種をラインアップすることも厳しくなっている。遊技機メーカーは、5万台と言わずとも2万台クラスや少なくとも1.5万台程度の販売が見込める中規模タイトルを複数で用意していく必要があるが、そのためには有望な版権、大きな開発投資が必要になる。
そう言った投資が可能な資金力と組織力を持つ遊技機メーカーと、そうでないメーカーでの二極化が急速に進展する見込みで、下位・中堅メーカーの生き残りは今後さらに厳しいものになるであろう。
調査要綱
1.調査期間: 2020年6月~8月 2.調査対象: 遊技機(パチンコ機、パチスロ機)メーカー、周辺設備機器メーカーほか 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用 |
<パチンコ関連機器市場とは> パチンコ関連機器市場とは、パチンコ機市場、パチスロ機市場、周辺設備機器市場の総称で ある。また、周辺設備機器市場とは、ホールコンピューター、玉補給機器などのホール内の設備機器の市場の総称である。 |
<市場に含まれる商品・サービス> パチンコ機、パチスロ機、遊技機部品、ホールコンピューター、景品POS、計数機(玉・メ ダル)、景品自動払出機、会員管理システム、呼出ランプ、玉補給システム、メダル補給システム、台間玉貸機、台間メダル貸機 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 パチンコ関連メーカーの動向とマーケットシェア |
発刊日 | 2020年08月27日 |
体裁 | B5 321ページ |
定価 | 125,000円(税別) |
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