不確実性が高まる現代において、1つの事業や1つの専門性、スキルを持っていれば安泰ということはありません。コロナ禍では、より多くの経営者が変化の必要性・危機感を強固にしています。
時代に適応するためには、社員の成長が必須になりますが、「気づけば何年も同じ課題から脱却できていない」「社員に危機感が感じられない」「社員研修をしてもどこか無意味な気がする」など、頭を抱える経営者は多いです。本稿では、社員の成長を会社として本気で促進させようと考える際に外せない、3つの条件をご紹介します。
成長の条件その1:成功体験
「一生懸命取り組み続けた結果、振り返れば成長している自分がいた」という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
成長に外せない1つ目の前提は、一生懸命取り組んだ結果、努力や苦労が報われたという成功体験を社員に積ませることです。これは、成長に極めて必要な要素です。
「挑戦した結果、新たに出来ることが増えた」「諦めず取り組み続けていたら、認めてもらえた」など、人はこのような成功体験を積むことで、仕事に対し意欲的になり、その結果さらなる機会を手にし成長を遂げていくからです。
この成功体験において重要なのは、何を成し遂げたかということではなく、「成功」に対する考え方、捉え方です。
いきなり大きな成功体験を積むのは難しいものですが、そこに至るまでの小さな成功体験を積み重ねられれば、大きな成功体験ができます。
例えば、運動をしていない人が、いきなりフルマラソン完走を目標に掲げても困難です。しかし、まずは最初の5km、それが成功したら次に10km、次は20km と小さな成功体験を積み重ねていけば、いつかフルマラソン完走という大きな成功体験ができそうですよね。
このように、社員に成功体験を積ませるという意味は、何か大きな事柄に挑戦させて成し遂げさせるげるという意味ではなく、小さな成功を積み重ねさせるということです。
仕事に忙殺されていたり、視野が狭くなっている社員は、自分の小さな成功を気づけない場合が多いため、社員に振り返りを促し、意識的に自分を俯瞰させるような時間やサポートをすることも、会社でできる成功体験の支援になるでしょう。
しかし、この成功体験を繰り返すためには、それが出来る物の考え方・捉え方が必要になります。これを、成長マインドセットと呼びます。次章では、この成長マインドセットについて解説します。
成長の条件その2:成長マインドセット
成功体験を積むための、成長マインドセットとはなんでしょうか。
これは、スタンフォード大学心理学教授のキャロル・ドゥエック氏が提唱した、成長に必要な考え方です。ドゥエック氏は長年の研究から、失敗への対処方法を形作る、固定マインドセットと成長マインドセットという、明らかに違う 2 つの態度があることに気付きました。
固定マインドセットの人の特徴は、上手くいかないことがあると「自分には向いていない」「自分の領域ではない」「忙しいから出来ない」「〇〇(人やモノ)に問題がある」など、自分ではなく外に目を向け成功体験を積む機会を失います。自分が変わらないので、同じ不満や問題を抱え続けるという、生産的でない傾向があります。
一方、成長マインドセットの人の特徴は、同じような状況をもっと建設的で生産的に対処します。失敗を結果と捉えず成功の仮定と捉え、自分に足りないものを謙虚に認識し、貪欲に補えるため、その結果問題がクリアされていき、新たなステージの新たな課題に取り組むことができます。
成長に必要な成功体験を積むには、この成長マインドセットが土台として必要です。
成長マインドはその人の生まれ育った環境などが大きく影響しますが、意図的に培うことは可能です。では、この成長マインドを育むには何が必要でしょうか?
成長の条件その3:自己効力感(セルフエフィカシー)
成長マインドを育むためには、「やればできるかもしれない」と信じられる気持ちが必要です。このことを、スタンフォード大学教授で心理学者のアルバート・バンデューラは自己効力感(セルフエフィカシー)と提唱しています。
自己効力感が高い人は「自分は現状を変えられる」「困難があっても乗り越えられると」考えるので、挑戦を受け入れようとします。また壁にぶつかっても、早く立ち直ることができ、諦めず努力を継続できます。
逆に自己効力感が低い人は「やっても何も変わらない」「自分にはできない」と考えるため、挑戦を避けようとします。壁にぶつかれば、すぐに無駄だと諦めます。
この自己効力感は、客観的に測定できる行動変容の先行要因であり、また変容可能な認知的変数であり、さらにその変容の結果として確実に行動変容が生じるといった特徴があるため教育・予防医学・産業と様々な分野で重要視されています。
この自己効力感は4つのポイントから生み出されるといわれています。
まとめ
自己効力感を培い、成長マインドをセットし、成功体験を積みあげ、成長を実現していくという、社員の成長促進において外せないポイントを解説しました。
高額な研修費用を負担して社員研修を行うなど、育成に力をいれているのに、社員が一向に成長しないと悩んでいる場合、これらのどこかにボトルネックがあるかもしれません。
「会社の成長はすなわち、社員の成長だ」「成長を個人に委ねず、会社として促進していかなければならない」「確実な成長を実現したい」という経営者の方は、これら3つの考え方を自社の人材育成に取り入れてみてはいかがでしょうか。
(提供:税理士法人M&Tグループ)