国内調剤薬局市場,2018年
(写真=wavebreakmedia/Shutterstock.com)

調剤薬局は調剤報酬改定の影響を受けて利益率が低下し、業績回復は2019年度にずれ込む見通し

~大手調剤薬局チェーンはM&Aを含む積極的な新規出店展開で業績拡大の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の調剤薬局市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概要

2017年度の国内調剤薬局市場は、調剤報酬改定および薬価改定の影響を受け減収企業が多かった2016年度と比較すると増収を達成した企業が多い。しかし、増収を達成した企業も、これまでと比較して伸び率が鈍化している企業が多数見られる。さらに、利益については各種加算の取得に努めたことや、業務効率化の推進などを図ったことで増益を達成した企業が多いものの、減益を余儀なくされた企業も少なくない。2018年度も調剤報酬改定および薬価改定は実施されており、調剤薬局経営企業は2年毎の改定への対応に追われる状況にある。

これまでの調剤薬局市場の動きをみると、2015年度までは積極的な新規出店やM&Aによる店舗数の拡大、薬学管理料への対応や後発医薬品調剤体制加算の算定、在宅・介護施設の患者調剤などへの対応による処方箋枚数の獲得など、調剤薬局経営企業の多くが好調な業績を継続してきた。しかし、2016年度以降は調剤報酬改定および薬価改定の影響が顕著で、全般的に業績が伸び悩み、悪化傾向が鮮明となっている。今後も引き続き薬価改定に加え、調剤報酬が見直される中で、大手調剤薬局チェーンを除けば新規出店数は減少傾向にあり、調剤薬局経営企業は業績の二極化が顕著になるものと予測する。

2.注目トピック

大手調剤薬局チェーンはM&Aを含む積極的な新規出店展開で業績拡大の見込

これまで、大手の調剤薬局チェーン経営企業は、店舗数の拡大による処方箋応需枚数の増加を売上拡大戦略の中心として、積極的な新規出店展開を図ってきた。しかし、医薬分業率の上昇に伴い、新たに院外処方箋を発行する医療機関が減少するなど、調剤薬局の新規出店の余地は確実に減少している。

一方、2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、2016年度の調剤報酬改定においては、かかりつけ薬剤師指導料が新設されるなど、調剤薬局はかかりつけ薬剤師・薬局機能を担うことを強く求められている。さらに、2018年度の調剤報酬改定においては、地域支援体制加算が新設されるものの、調剤基本料の見直しに加え、基準調剤加算の廃止や後発医薬品調剤体制加算などの算定要件が厳しくなるなど、調剤薬局を取り巻く経営環境は大きく変化している。

2016年10月から敷地内薬局(病院の敷地内にある調剤薬局)が解禁され、新たな形態による出店が可能となったことで、これまでの新規出店戦略を見直す動きや、出店を抑制し既存店舗のかかりつけ機能の強化を図ることで既存店売上高を拡大し成長を目指す動きも増加している。一方、各社ともドミナント戦略強化や出店地域の拡大などを目的に新規出店展開を図り、従来通り自社開発による事業規模の拡大を目指している。但し、自社開発のみでは迅速にかつ多数の新規出店を実現するのには限界があることや、M&Aの場合にはすでにドミナントが形成されている、あるいは固定客が確保されているなどのメリットがあることから、M&Aも重要な成長戦略の柱となってきている。こうした中で、大手調剤薬局チェーン経営企業は、M&Aを含む積極的な出店展開により比較的、安定的に業績を拡大する見込みである。