アリババ
(画像=zhu difeng/stock.adobe.com)

孫正義氏が、中国のEC(電子商取引)最大手アリババの取締役を退くことを発表した。同社創業者のジャック・マー氏のCEO退任に合わせたものだ。アリババは中国の巨大企業へと育った。このサクセスストーリーは、マー氏の「商才」、そして孫氏の「嗅覚」なしには語れない。

孫氏、第40回定時株主総会でアリババ取締役の退任を発表

2020年6月25日、ソフトバンクグループは第40回定時株主総会を開いた。その株主総会の場で、孫正義氏はアリババの取締役を退任することを発表した。それと同時に、ジャック・マー氏のソフトバンクグループ取締役の退任についても明らかにされた。

今後、両氏がどのような形でアリババに関わっていくかは気になるところだが、マー氏がアリババのCEOを退任し、孫氏もアリババの取締役から外れることで、アリババをここまで巨大企業へと急成長させた盟友が、揃ってアリババの第一線を退くこととなる。

孫氏とマー氏はどのように出会ったのか

孫氏とマー氏が最初に出会ったのは2000年ごろだ。いまもそうだが、その頃も出資先を探していた孫氏は、多くの企業経営者と短時間の面談の機会を設け、その経営者の成功の可能性を探りながら、有望なスタートアップ企業やベンチャーを探していた。

マー氏もそのような企業経営者の一人として孫氏と会い、孫氏はわずかな時間でアリババに出資することを決めたという。会ったのは中国の首都・北京にあるホテルだと言われている。そのときから孫氏とマー氏のストーリーが始まった。

そしてその後、アリババは急成長を果たし、最近でもアリババの売上高の増加は続いている。2019年3月期の売上高は5兆9,000億円まで膨れあがり、2020年3月期も8兆円まで売上高が増えた。純利益も右肩上がりで、2020年3月期は前期比42%の2兆1,000億円だ。

ソフトバンクグループの成功はアリババの成功抜きには語れない

アリババへの出資は、ソフトバンクグループにとって最も成功を果たした投資案件となった。2020年6月24日時点でソフトバンクグループが保有している株式の価値は30兆円で、そのうちアリババは16.2兆円に上る。全体の54%だ。

<2020年6月時点のソフトバンクグループの保有株式と価値>
16兆2,000億円:アリババグループ
4兆1,000億円:ソフトバンク
3兆6,000億円:Tモバイル(米通信大手)
2兆6,000億円:アーム(英半導体大手)
2兆6,000億円:ソフトバンクビジョンファンド(SVF)
9,000億円:その他

孫氏の出資は、アリババの成功に大きく貢献したが、ソフトバンクグループもアリババの成功で大きく成長することができたのだ。持ちつ持たれつの関係で、2人は2000年代の世界経済における注目の人物となった。

孫氏とマー氏はアリババの第一線からは退くが…

マー氏がアリババのCEOを退任したことと孫氏が取締役を退任したことで、アリババを舞台にした両氏のストーリーはいったんここで歩を止めることとなる。ただ、孫氏は6月25日の株主総会で「アリババ株はできるだけ長く持ち続けたいと思っている」と話しており、完全に孫氏とアリババの関係が終わるわけではない。

マー氏もアリババの個人筆頭株主であることから、経営の第一線から退くことにはなるものの、アリババへの影響力を今後も持ち続けることは確実だ。その影響力を行使するかどうかは別な話だが、孫氏もマー氏も今後は役職がつかない株主としてアリババに関わっていくことになる。

場合によっては、アリババを新たに率いるダニエル・チャン氏に対し、よりアリババが成長するための出資を両氏が今後実行する可能性もある。アリババにとって孫氏とマー氏は今後もよき理解者であり、支援者であり続けるのだろう。

名コンビの復活をついつい期待したくなる

ここまで巨大企業に成長し、前述の通り、売上高も純利益も右肩上がりの状況のアリババだが、だからといって今後もずっとアリババが安泰かと言えば、それは誰にも分からないことだ。

新たな技術革新によって多くのユニコーン(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)が誕生し、虎視眈々とアリババのような業界トップの座を狙っている。いずれアリババが苦しむ時代が来たとき、孫氏とマー氏の名コンビが復活し、アリババを窮地から救うかもしれない。

2人のサクセスストーリーを振り返ってみると、このようについつい名コンビの復活をいまから期待したくなる。

名コンビの復活はマー氏の新たなビジネスで起こり得るかもしれない。マー氏は今後、教育分野に取り組むことを2019年9月にアリババ社内のイベントで語っており、もしマー氏が教育をビジネスとして手掛けていくのなら、孫氏がまたお金を出す可能性もゼロではない。

孫氏とマー氏が今後新たにどのようなストーリーを紡いでいくのか、気になるところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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