経営者
(画像=Kzenon/Shutterstock.com)

中小企業経営者の悩みには、財務や人材に関わることなど、企業の存続に直結するものがある。少子高齢化による人材不足はもちろん、「働き方改革」への対応など、中小企業経営者の悩みの種は尽きない。ここでは、中小企業経営者が抱える悩みの実情や解決のためのヒントを紹介していく。

目次

  1. 中小企業経営者の事業に関する3つの悩み
    1. 1.売上拡大の悩みに関する実情
    2. 2.コスト削減の悩みに関する実情
    3. 3.従業員の採用・育成の悩みに関する実情
  2. 中小企業経営者の雇用に関する悩み
    1. 1.人員不足で手が回らないのに休まれると困る
    2. 2.残業を減らしたくても人員が足りない
    3. 3.「同一労働・同一賃金」で人件費アップ
  3. 中小企業の経営者の悩みを解決するには?3つの方法
    1. 1.業務のムダを排除する
    2. 2.業務を定型化してスピードを上げる
    3. 3.ルーチンワークなどの業務は省略化する
  4. 雇用に関する経営者の悩み解決策
  5. 経営者の悩みは視点を変えれば解決できるかも
  6. 会社の先行きが不安な方は専門家に相談を
  7. 監修者紹介
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中小企業経営者の事業に関する3つの悩み

中小企業経営者は、「売り上げ拡大」「コスト削減」「従業員の採用・育成」といった、3つの大きな悩みを抱えている。これら3つの経営課題に対して、中小企業の経営者は具体的にどのようなことで悩み、どのような改善を期待しているのだろうか。大同生命保険株式会社が2019年12月に全国の企業経営者に対して実施したアンケート調査「大同生命サーベイ(2019年12月)」を参考に確認してみよう。

1.売上拡大の悩みに関する実情

どんなに良い製品やサービスを提供していても、景気や経済情勢によって売上に影響を受けることもある。2019年の経営環境に関する調べでは、「良かった」と回答した企業の割合は31%、「悪かった」は21%であるが、どちらの回答も前年同月に比べると悪化傾向にある。

良かったふつう悪かった
2019年12月31%(対前年5%減)48%21%(対前年4%増)
2018年12月36%48%17%

参考:「大同生命サーベイ(2019年12月)」

経営環境が「悪かった」と回答した中で最も多い理由が「売上が縮小した(41%)」であった。消費税の増税や物価上昇に伴う国内景気の変動や、米中貿易摩擦などによる世界経済成長率の減速の影響も要因として考えられる。

2020年の経営環境への期待に関する調査において、経営者の回答で最も多かったのは「個人消費の拡大(37%)」であり、経営者が売上拡大の悩みに直面している様子がうかがえる。

2.コスト削減の悩みに関する実情

売上拡大と同様に、利益の向上も事業存続には不可欠であり、中小企業の経営者にとって悩みの種となっている。経営者は同調査において、経営環境が悪かった理由として「売上縮小(41%)」に次いで「利益が縮小した(22%)」を挙げている。利益の縮小は経営者の多くが抱えている課題であるが、利益を向上させるためには、売上を増やすだけでなく、コストを削減することも重要である。

コストには原料費や人件費、燃料費、在庫管理費などさまざまな費用が関わっている。コストカットをしても生産性は維持・向上させなければならないため、どのコストからテコ入れするべきか悩みどころである。

3.従業員の採用・育成の悩みに関する実情

日本社会の現状は、少子高齢化に伴う労働人口の減少が加速しており、「人生100年時代」構想で、政府は働き方改革の実現に向けて、女性の就労および高齢者雇用を推進している。しかし、企業経営者にとっては人手不足が深刻化している実態がある。同調査でも2020年に特に注力したいこととして、「人材の確保(39%)」および「人材の育成(38%)」を挙げている経営者は多い。

労働力を確保できなければ企業の生産力は低下していくであろうし、AIやIoTなどの普及で産業構造が大きく変化している時代においては、新たな技術に対応できる社員の育成も喫緊の課題であろう。

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中小企業経営者の雇用に関する悩み

MA Channel:ちょっとためになるコラム

これまで説明してきた3つの経営者の悩みに影響を与えるのが、「人手不足」の問題だ。日本政策金融公庫の「中小企業の雇用・賃金に関する調査(2020年2月)」によると、2019年12月において正社員が「不足」と答えた企業の割合は52.9%、非正社員においても32.5%の企業が「不足」と回答している。人手不足による企業経営への影響は、以下のようなことが挙げられている。

  • 売上機会を逸失:(41.4%)
  • 残業代、外注費等のコストが増加し、利益が減少:(28.1%)
  • 納期の長期化、遅延の発生:(11.2%)など

このように、人材の確保・育成は大きな課題であり、中小企業経営者の悩みをさらに深刻化させる可能性があるのが2019年4月に施行された「働き方改革」関連法だ。一部はすでに中小企業にも適用されており、これまで大企業だけを対象としていた項目も中小企業に対して順次適用される。

「働き方改革」において、中小企業経営者が取り組まなければならない義務項目と、適用開始となる時期を確認しておこう。

  • 年次有給休暇の時季指定:2019年4月~
  • 時間外労働の上限規制:2020年4月~
  • 同一労働・同一賃金:2021年4月~

人手不足に悩む中小企業は多いが、法改正に伴う罰則規定もあるため、経営者としては取り組まなければならないのが実情だ。

1.人員不足で手が回らないのに休まれると困る

年次有給休暇の時季指定は、2019年から中小企業にも義務づけられており、すでに取り組んでいる経営者も多いだろう。人手が足りない中小企業においては、有給休暇の取得によって業務が滞ることを懸念しているかもしれない。

また、会社が各社員の有給休暇の取得時季を指定する義務があるとはいえ、タイミングに迷う経営者も少なくはないだろう。

2.残業を減らしたくても人員が足りない

人員不足の会社では、一人の社員に割り当てられる業務量は必然的に多くなる。顧客の依頼に応えたり納期の遅延を起こさないために、残業をやむなしとする中小企業もあるのではないだろうか。残業を減らすことができれば、残業代というコストは削減されるものの、一方で売上の減少につながりかねない。

2020年から中小企業にも適用される、原則「月45時間」「年間360時間」の残業時間上限の範囲内で収まるよう、業務の効率化が必要となる。

3.「同一労働・同一賃金」で人件費アップ

「同一労働・同一賃金」の法改正では、正社員と非正規社員という雇用形態の違いによる不合理な待遇差が禁止される。例えば、基本給の決め方や手当の支給などについて、労働者の能力や経験、業績や成果などが実質的に同じであれば、雇用形態に関係なく同じ支給基準としなければならない。また、職務遂行上必要な研修や教育訓練に関しても、正規社員と非正規社員の区別なく実施しなければならない。

2019年の労働力調査によれば、非正規社員の人数は2,165万人である。これら全ての非正規社員が正社員と同等の働き方をしているとは限らないが、同一労働・同一賃金が適用されると人件費は増加し、利益を圧迫する可能性が考えられる。

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中小企業の経営者の悩みを解決するには?3つの方法

人手不足の状況ではあるが、中小企業の経営上の悩み解決を目指すためには業務効率を高めて労働生産性を向上させることが必要だ。業務効率を高めるためには、以下の3つの取り組みから始めてみると良いだろう。

  • 業務のムダを排除する
  • 業務を定型化してスピードを上げる
  • ルーチンワークなどの業務は省力化する

これら3つのポイントは、「ムダ」をなくすことである。

1.業務のムダを排除する

経営における「ムダ」とは、付加価値を高めずにコストのみが発生するものだ。「不良品」や「在庫」などの売上やコストに直結するものはもちろん、「作業そのもの」も含まれる。

例えば製造業においては、必要以上に多く製造したり、必要とされるタイミングよりも早く製造したりすることは労働力と時間のムダになる。需要の読み間違いや生産管理の曖昧さによって発生する在庫もムダである。適正な在庫管理を行えば、このようなムダは省けるはずだ。

2.業務を定型化してスピードを上げる

業務の定型化については、マニュアル作成が有効である。

手順書が無いために、作業者がそれぞれに独自の方法で不要な作業をしていることもある。事務作業においても同様である。書類や資料を作成する際に、社内でフォーマットや定型文をあらかじめ作成しておけば、社員の手間を省けるのと同時に、成果物に違いがあるといった問題も防ぐことができる。

なおこれまで手作業で作成していた書類がある場合には、「システム化して自動作成する」「ITツールを取り入れる」といったこともいいだろう。

3.ルーチンワークなどの業務は省略化する

毎月の給与計算など、ルーチン化されている業務は外部委託(アウトソーシング)する方法もある。

コストを気にするあまり、外部委託を敬遠する経営者もいるかもしれない。しかし、社員の残業費なども含めた人件費を勘案すると、外部に委託した方がコストを節約できるあることもある。

ルーチンワークは外部委託を検討し、社内の人材には自社に付加価値をもたらす業務に注力させるようにしたい。

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雇用に関する経営者の悩み解決策

中小企業における雇用に対する課題には、国の助成制度である「キャリアアップ助成金」の利用も検討したい。人手不足や同一労働・同一賃金への対応を考えると、非正規社員のキャリアアップに取り組みながら「人財」として育成することも、解決策の一つになるであろう。

キャリアアップ助成金は、非正規社員の正社員化や処遇改善の取組などを実施した事業主に対して、助成金を給付する制度である。

キャリアアップ助成金には、「非正社員から正社員への転換」「賃金規定等の改定」「一定の健康診断制度新規定の創設」など、全部で7つのコースがある。

  1. 正社員化コース
  2. 賃金規定等改定コース
  3. 健康診断制度コース
  4. 賃金規定等共通化コース
  5. 諸手当制度共通化コース
  6. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  7. 短時間労働者労働時間延長コース

助成のための適用要件や助成金の金額は各コースにより異なるため、詳しい情報は厚生労働省のウェブサイトにある「キャリアアップ助成金」の関連ページで確認しよう。

経営者の悩みは視点を変えれば解決できるかも

中小企業経営者の悩みは、売上や利益といった経営上の根本的な問題だけでなく、少子高齢化の進行による社会構造の変化などを起因とする人手不足にまで及んでいる。また、「働き方改革」関連法が中小企業にも順次適用され、人材に対する中小企業経営者の悩みは深刻化しつつある。

中小企業経営者にとっての悩みを解決するためには、業務の効率化などによる労働生産性の向上はもちろん、雇用に関しては非正社員を「人財」として育てるといった対策も必要となる。

国のキャリアアップ助成金などを利用しながら、雇用に関する課題解決を目指し人材育成に取り組んでみてはいかがだろうか。

会社の先行きが不安な方は専門家に相談を

中小企業の経営者は非常にプレッシャーの大きい立場にある。競争環境の激しい現代は先行きも見通せず、不安を抱える人もいるだろう。

日本は近年、経済の成長の低迷、少子高齢化などにより、市場は縮小傾向だ。そのような環境下で、中小企業が新市場を開拓したり、既存の市場を大手の競合から奪うのは非常に難しいだろう。

そんな中、今「大手企業の傘下に入って経営を続ける」企業が多くなっている。つまり、大手企業へのM&Aだ。自社の株式を譲渡するなどして大手に会社を売却しながらも、経営者として経営を続けることも可能なため、先行き不安に悩まされることなく経営に集中できる側面もある。

もし現状や将来に得も言われぬ不安があるなら、プロの力を借りることも検討してみよう。良い相手に会社売却が成功すれば、自分にとっても社員にとっても望ましい結果を引き寄せられるはずだ。

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文・THE OWNER編集部

監修者紹介

斎藤弘樹
株式会社日本M&Aセンター 地域金融1部 部長
斎藤弘樹 (さいとう・ひろき)
一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。 2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。
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