組織
(画像=Flamingo Images/Shutterstock.com)
久能 克也
久能 克也(くのう・かつや)
Opty.G.K.代表。「社長が自分で自分をクビにできる」メソッドを伝える。2002年東京外国語大学を卒業後、大手人材会社に入社し3,000人の組織にてマーケティング業務を経験。退社後単身中国上海に渡り、コンサルティング会社を起業し共同経営者に就任した。帰国後、自社や顧問先の経営を劇的に変えたEOS®(Entrepreneurial Operating System/起業家のための経営システム)の普及活動に従事している。10年後のビジョン達成のために「今」すべきことだけに集中し、経営者の負担を軽くしながら業績アップさせるコンサルティングが得意。座右の銘はLess Is More。
訳書:TRACTION トラクション 〜ビジネスの手綱を握り直す中小企業のシンプルイノベーション〜

年商1億円や2億円はパワフルで営業力のある社長なら自分の力だけで実現できてしまいます。ヒット商品を生み出すアイデア・商品開発力のある社長も同じでしょう。しかし、3億円、5億円を超えて年商10億円となると社長一人の力では無理です。組織を使って「社長のパワー」にレバレッジをかけることが必須です。

この記事では経営のOSとして、全米で高く評価されているEOS®の考え方を応用して、年商1億~2億円どまりの社長が、年商10億円をラクラク突破する「最強組織」の作り方のエッセンスを紹介します。

社長のコピーはいない

一般的な社長が陥ってしまうのが、「オレのコピーがもう一人欲しい」という思考です。自分くらい、いやその半分でもデキる奴がいれば、売上をもっと伸ばせる・・・これは確かに正しいですが、問題は「あなたのコピーはいない/見つからない」という事実です。なぜならあなたほど仕事がデキて野心のある人物なら、自分で事業を持ちたいと思うはずだからです。あなたのもとに「修行」にくる人はいるでしょうが、彼らは早晩辞めて独立していきます。

また、社長のコピーを求めるあまりに、見込みのある部下に過剰な要求をしてしまうケースも多いです。「オレはこれくらいデキるんだから、お前も」というスタンスで接するといくら基礎能力が高い部下でも受け止めきれずに潰れてしまいます。

まず「最強の組織」を描く

考え方を切り替えましょう。年商1億~2億円の社長のもとには「社長のコピー」は現れませんし、育ちません。全く違う能力、適正を持った人材を入社させるのです。ではどんな人材を入れたらいいか?その指針になるのが「アカウンタビリティ・チャート」です。

アカウンタビリティ・チャートの基本形

チャート

「ああ、組織図ね。ウチにもあるよ」と思うかも知れませんがもちろん普通の組織図とは違います。それは「あるべき姿から描く」という点です。「組織図」を作ろうとすると今いる人材にどういう役割を与えようか、という思考になってしまいますが、順番が逆です。「オレの会社を10億円規模にするためには、どういう役割が必要か?」とまずは「最強の組織」を描くのです。たとえばWEBを活用してガンガン集客してくれるマーケティングの役割が必要だと思えばそう描いてしまいます。たとえあなたの周りにそんな人がいなくても構わず、「社長が考える最強の組織」を(最初は紙の上だとしても)まずは描いてしまうのです。

アカウンタビリティ・チャートの作り方

EOSでは、アカウンタビリティ・チャートを作る際3つの機能を根幹に据えるべきと教えています。それがセールス/マーケティング・オペレーション・ファイナンスです。なぜこの3職種かというとどのビジネスにも不可欠な3要素を司っているからです。もっと言うと、EOS®(起業家のための経営システム)では経営にはこの3つの要素しかない!と定義されています。現状では、社長のあなたがこの3つのほとんど(あるいは全て!)を担当しているかも知れません。しかしそれでは、社長のコピーがいない以上、売上は伸びていきません。

・セールス/マーケティングは仕事を取る。セールスがないとビジネスが始まらない
・オペレーションは納品をする。オペレーションがないとお客さんに価値を届けられない
・ファイナンスはお金を守る。ファイナンスがないと利益が生まれない

アカウンタビリティ・チャート①

チャート

社長は良質な見込み客を安定的に発見していくことが必要だと考え、セールスとマーケティングを分けて強化することにしました。下図のようになります。

アカウンタビリティ・チャート②

チャート

ひとつの「席」が果たす役割は5つだけ!

次に、1つの「席」に果たすべき役割を5つ書き入れます。この5つは慎重に考えてください。考える際のポイントは「その席の責任の80%がカバーできる5つの役割は何か?」という質問をすることです。100%の役割をすべて記述しようとすると膨大な時間とページ数が必要になります。それを作るのは過剰品質というものです。80%でOK、と割り切るとたったの5つで済みますし、5つなら覚えやすいです。

具体的には、以下のように書き入れます。

アカウンタビリティ・チャート③

チャート

この5つの役割をすべての「席」について描き入れます。繰り返しますが、「今、その席に座っている人が何をやっているか」ではなく、目標・ビジョンを達成するためには「その席に座る人には何をやってもらうべきか」と逆算思考で描きだしてください。

アカウンタビリティ・チャートができたら、次にそこに座る人を考えます。おそらくですが、社内にいる人材ではほとんどの席が埋まらないでしょう。社長が兼務するか、社長でも無理ならいったん空席にしておくしかありません。極端な話、以下のようになってしまうかも知れません。

アカウンタビリティ・チャート④

チャート

「それでいいのか?」と感じるかも知れませんが、それが現実なのです。つまり、いまの御社には10億円突破するだけの人材がいない、ということが分かります。非情なようですが、

その現実を直視することから年商10億円突破、ひいては社長のビジョン達成への道のりがスタートします。近年では、経験豊富なマーケターを時給単位や月単位で雇えるサービスもあります。そうしたサービスを活用しながら、社内人材を急ぎ育成するもしくは採用するべきでしょう。

まず目標を決める→それを達成できる理想のアカウンタビリティ・チャートを描く→一つ一つ理想に近づけていくという順番であなたの夢を叶えてしまってください。

文・久能克也(Opty.G.K.代表)