矢野経済研究所
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2032年度の非破壊検査世界市場(装置・機器及び受託業務)は6兆1,766億円を予測

今後AIやIoTなど先端技術活用が進展するなか、徐々に実装フェーズへ

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、非破壊検査市場を調査し、装置・機器及び受託業務の世界及び日本市場の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

非破壊検査世界市場規模(装置・機器及び受託業務)推移と予測

非破壊検査世界市場規模(装置・機器及び受託業務)推移と予測
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1.市場概況

2024年度の非破壊検査世界市場規模(装置・機器及び受託業務、事業者売上高ベース)は3兆6,966億円と推計した。そのうち、装置・機器世界市場は1兆2,044億円、受託業務世界市場は2兆4,922億円である。2025年度の非破壊検査世界市場規模は前年度比107.2%の3兆9,621億円の見込みである。

また、2024年度の非破壊検査日本市場規模(同、世界市場規模の内数)は2,376億円と推計した。そのうち、装置・機器日本市場は1,057億円、受託業務日本市場は1,319億円である。2025年度の非破壊検査日本市場規模は前年度比103.3%の2,454億円の見込みである。

非破壊検査は、一つの検査手法が最適である場合もあるが、多くの場合、2種類やそれ以上の複数検査を組み合わせて検査対象の状態を把握し、総合的に評価、判断していくことになる。一例では、外部の表面や外観の状態と内部の状態を連携させる検査、同一箇所の経年状態を確認するための検査や、スクリーニング(予備検査)と本検査というように同一個所における重点箇所を特定するような検査もある。非破壊検査は、検査対象物を適切に維持管理することが目的であるため、各検査手法の特徴やその適合性を考慮し、最適な方法で実施、運用していくことが重要である。

世界における非破壊検査は国や地域の状況によって大きく需給状況が異なっている。社会インフラ施設や設備の構築途上にある新興国では設置年数が短い場合や更新頻度が高いため、非破壊検査自体の必要性が低い場合がある。一方、日本国内をはじめ、社会インフラが整備されている先進諸国では非破壊検査は必要不可欠であり、市場は成熟期にある。非破壊検査需要は、基本的には当該国内や経済領域内であることから、それらの経済規模に連関して推移することとなる。

日本国内における非破壊検査需要は横ばいから成長基調で推移しており、なかでも再稼働が増える原子力関連施設や予防保全を重視する土木・橋梁などを対象とした分野が成長していくとみる。

2.注目トピック

放射線透過試験(RT)装置機器の購入検討につながるX線撮影受託業務サービス

日本国内において、放射線透過試験(RT)に関連したX線撮影の受託業務サービスが活発になってきている。RT装置機器は初期投資コスト、ならびに維持・運用コストの負担が重く、概してユーザー企業が自社で所有し、活用していくことが難しいとされる。そのため、ユーザー企業にとってX線撮影の受託業務サービスは有用である。撮影対象は工業製品に関わらず、食品など多岐に渡っている。X線撮影の画像から様々なものの内部構造が可視化されることで、問題や課題に対する原因追及や品質改善などにつなげていくことができる。こうしたX線撮影の受託業務サービスの裾野が徐々に広がることで、その重要性が認識されるものと考える。将来的にはユーザー企業においてRT装置機器の購入検討につながり、同機器を所有する企業が増えることが期待される。

3.将来展望

2032年度の非破壊検査世界市場規模(装置・機器及び受託業務、事業者売上高ベース)は6兆1,766億円、このうち、装置・機器世界市場は2兆2,656億円、受託業務世界市場は3兆9,110億円になると予測する。2032年度の非破壊検査日本市場規模(同、世界市場規模の内数)は2,945億円、このうち、装置・機器日本市場は1,584億円、受託業務日本市場は1,361億円になると予測する。

今後、非破壊検査装置・機器におけるハードウエアはAIの活用やIoTの導入、デジタル化の流れを受けて進展するなかで、検査原理の新規開発などは中長期的な観点での取り組みが必要となる。一方、ソフトウエアの領域に関しては、ハードウエアと比較すると、検査データや画像の分析・解析能力の進化は顕著であり、AIなどを活用した非破壊検査システムが目立ってきている。

また、非破壊検査受託業務については、社会インフラ施設や設備等への非破壊検査自体が各国の法令等に準拠し実施されていることから、安定的な検査需要がある。こうした需要はある程度、産業構造の変化を受けるものとみられるが、現時点では各産業分野における大きな変動要因はみられないことから、今後も先進諸国を中心に老朽化した社会インフラ施設や設備等における安定した非破壊検査需要に支えられ、市場全体は堅調に推移するものとみる。

調査要綱

1.調査期間: 2025年3月~5月
2.調査対象: 非破壊検査装置・機器メーカー、非破壊検査受託企業、関連する外郭団体、研究機関等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)および文献調査併用
<非破壊検査市場とは>
非破壊検査は対象物を破壊・分解せずに表面や内部の状態確認や評価を行う検査手法である。本調査における非破壊検査市場とは、非破壊検査装置・機器市場及び非破壊検査受託業務市場で構成され、事業者売上高ベースで算出した。

装置・機器市場には、放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ET)等の検査に使用される装置・機器に加え、これらの付属装置・機器及び消耗品が含まれる。また、受託業務市場は前述の装置・機器を使用した受託検査業務を対象としている。

但し、医薬や食品、農業分野で使用される非破壊検査装置・機器、およびそれらの分野の受託業務は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
非破壊検査装置・機器 【 放射線[X線]透過試験装置(熱源及びフィルム含む)や超音波 探傷試験装置(プローブ含む)、磁粉探傷試験装置(磁粉探傷剤含む)、浸透探傷試験装置 (浸透探傷剤含む)、渦電流探傷試験装置(プローブ含む)等 】、前述の装置・機器を使 用した受託検査業務。

出典資料について

資料名2025年版 非破壊検査市場の現状と将来展望
発刊日2025年05月30日
体裁A4 142ページ
価格(税込)220,000円 (本体価格 200,000円)

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