
車載用(xEV用)SiCパワーモジュール世界市場はBEVの普及にともない、2035年に7,586億円に達すると予測
~2030年以降はPHEVの一部モデルでも適用が進み市場拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載用(xEV用)パワーモジュール世界市場の調査を実施し、市場概況や採用動向、個別メーカーの事業戦略を明らかにし、2035年までの世界市場規模を予測した。
車載用(xEV用)SiCパワーモジュールの世界市場規模予測

1.市場概況
xEV(ハイブリット車/プラグインハイブリッド車(HEV/PHEV)/電気自動車(BEV))の世界的な販売拡大を背景に、2024年のxEV用SiC(炭化ケイ素)パワーモジュール(Power Module 以下、PM)の世界市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年比27.2%増の3,040億7,900万円に達する見込みである。
これまで、SiC-PMを搭載するインバータ(SiCインバータ)は、高級・大型BEVや、新興BEVメーカーの車両に限られていた。しかし、2025年後半から2027年にかけて投入される新型BEVへの搭載が進むことで、今後はより広範な車種に採用が広がっていくとみる。
2.注目トピック
BEVにおけるSiCパワーモジュールの採用動向
SiC-PMの車両1台あたりの搭載個数は、BEVの駆動方式(モータの構成)によって異なる。BEVの駆動方式には、前後にモータを配置する全輪駆動(AWD)、前方または後方のいずれかにモータを配置する前輪駆動(FWD)および後輪駆動(RWD)がある。
AWDは主に高級・大型BEVに採用されており、前後にそれぞれ1基ずつインバータが必要となるため、SiC-PMの搭載数は最大で2個となる。前後両方のモータ用インバータにSiC-PMを適用するケースでは1台あたり2個、いずれか一方にのみSiC-PMを適用し、もう一方にはSi(シリコン)パワーモジュール(Si-PM)を用いるケースでは1個の搭載となる。
一方、FWDおよびRWDの車両のインバータは1個であり、小型・中型のBEVに広く採用されており、xEV用パワーモジュールとしてコストダウンが進んでいるSi-PMが搭載されている。ただし、一部の自動車メーカーにおいては、インバータの性能向上(電池からモータへの電力供給における損失の低減)、それによる航続距離の延長を目的として、SiC-PMの導入が進んでいる。
3.将来展望
2035年のxEV用SiCパワーモジュール(PM)世界市場規模はxEVの普及拡大が続くために、メーカー出荷金額ベースで7,586億6,800万円に成長すると予測する。
2020年代後半からは、自動車メーカー各社が開発を進めているBEVを中心としたプラットホームのeAxle(モータと減速機、インバータを統合した駆動ユニット)でSiCインバータの採用が広がり、SiC-PM市場の需要拡大を加速させる。高級・大型BEVだけでなく、AWDを採用するSUVタイプの中型BEVでもSiC-PMを搭載したインバータの本格的な採用が進む見通しである。
SiC-PMは電力損失が少なく高効率であるため、1回の充電で走れる距離の延長が期待できる。また、PMの発熱が少ないことで冷却機構の簡素化が可能になり、インバータを薄く設計できる。これにより、eAxleの小型化が進み、レイアウトの自由度が高まることで、車内空間の拡大にもつながる。
さらに、2020年代後半からは、パワー半導体メーカーによる生産能力の拡大や、デバイスの量産技術の進展によりSiC-PMのコストダウンが進む見通しである。これにともない、BEVだけでなくPHEVへの採用も拡大すると考える。
PHEVでは、電気走行(電池によるモータ走行)の効率向上が求められており、高効率なSiC-PMをインバータに搭載することで、電気走行距離の延長や燃費の改善が可能となる。特に中国市場においてPHEVの販売台数が増加傾向にあるとされ、自動車メーカーは次世代PHEVの開発(電気走行距離を重視した設計)を進めている。
このため2030年以降、PHEVの一部モデルでも適用が進むなど、SiC-PMのPHEV向けの需要が本格的に立ち上がり、xEV用SiC-PMの世界市場規模を後押しするものと予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2024年9月~2025年1月 2.調査対象: 自動車メーカー、一次部品メーカー、パワー半導体メーカー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用 |
<車載用パワーモジュールとは>
車載用パワーモジュール(Power Module:PM)はクルマの「電力変換」で必要となるコンポーネントであり、主にハイブリッド車(HEV)/電気自動車(BEV)のインバータで使われている。HEV/BEVでは、電池の直流電流(DC)から制御用駆動モータの3相交流電流(AC)に変換するインバータが必要である。インバータは車載用パワーモジュール、各種受動部品、制御基板、冷却器などで構成されており、車載用パワーモジュールはパワー半導体チップ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)をモジュール化したものである。 また、電力変換効率を向上するための技術革新が進んでおり、従来のSi(シリコン)パワー半導体のIGBTだけでなく、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体を採用した車載用パワーモジュールの搭載が注目されている。 HEV/BEVでは「駆動用モータ」「減速機」「インバータ」が一体化された駆動ユニット(eAxle:イーアクスル)がフロント、リアに搭載されており、SiCパワーモジュールはeAxleに内蔵されている。 |
<市場に含まれる商品・サービス>
xEV用パワーモジュール(Siパワーモジュール、SiCパワーモジュール)、Siパワー半導体、SiCパワー半導体 |
出典資料について
資料名 | 2024年版 車載用SiCパワーモジュールの市場展望 |
発刊日 | 2025年01月31日 |
体裁 | A4 157ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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