会社清算
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風間 啓哉
風間 啓哉(かざま・けいや)
監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けのサービスを得意とする会計事務所にて、各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証一部)へ参画。主に管理部門のマネジメント及び子会社マネジメントを中心に、ホールディングス化、M&Aなど幅広くグループ規模拡大に関与。同社取締役CFOを経て、会計事務所の本格的立ち上げに至る。公認会計士協会東京会中小企業支援対応委員、東京税理士会世田谷支部幹事、㈱デジタルハーツホールディングス監査役(非常勤)。

会社は、一定の手続きによって解散や清算を行うことができる。会社の清算手続きは、会社法や税法などの法律で定められたルールと期限内で対応しなければならない。ここでは、会社解散・清算業務をスムーズに行うためにも、これらの煩雑な手続きのポイントと進め方を解説する。

目次

  1. 会社の清算とは?会社清算の意味
  2. 会社清算の2つの種類
    1. 1.通常清算
    2. 2.特別清算
  3. 会社清算手続のスケジュールと発生する費用は?
    1. 1.株主総会で解散について決議する
    2. 2.解散の実施と清算人の登記をする
    3. 3.解散の届出(異動届)を提出する
    4. 4.清算人会・(臨時)株主総会を開催する
    5. 5.債権申出の官報広告または会社債権者への通知する
    6. 6.解散した事業年度の確定申告書を作成・提出する
    7. 7.清算事業年度の確定申告書を作成・提出する
    8. 8.残余財産を分配する
    9. 9.決算報告の作成及び株主総会の承認(清算結了)を得る
    10. 10.清算決了の登記
    11. 11.残余財産確定事業年度の確定申告書の作成提出
    12. 12.清算結了届の提出
    13. 13.清算人による帳簿資料の保存
  4. 会社清算に係る費用及び料金
  5. 会社解散・清算の税務のポイント3つ
    1. 1.事業年度の区切りと確定申告書
    2. 2.消費税
    3. 3.残余財産の分配とみなし配当
  6. 会社清算における注意点

会社の清算とは?会社清算の意味

「清算」とは、会社が解散をする際に、法律面はもちろん経済的な関係も整理する手続をいう。清算に関わる業務が全て完了すると、会社は法人格を失うため「消滅」することになる。

ここで、「清算」の前に行われる「解散」についても触れておきたい。

「解散」とは、会社の法人格を消滅させる原因となる法律事実のことであり、「会社法」等によって、会社は以下のような場合に「解散」すると定められている。

1.定款で定めた会社の存続期間が満了した場合
2.定款で定めた解散につながる事由が発生した場合
3.株主総会で解散することが決議された場合
4.合併された場合(吸収される会社のみ)
5.会社が破産してしまった場合
6.裁判によって解散命令や解散判決があった場合
7.休眠会社の「みなし解散」(注1)に該当した場合
8.特別法上(注2)の解散原因が発生した場合

(注1)株式会社の場合、登記起算日から12年の間、登記申請もされていない「休眠会社」は、廃止していない届出申請を公告された2ヵ月以内に行わなければ、解散したものとみなされる。
(注2)銀行法・保険業法等

会社清算の2つの種類

会社の「清算」は、一般的に「通常清算」と「特別清算」の2つの「法定清算」に区分することができる。

1.通常清算

取締役に代わって清算人を選任し、清算人が財産整理手続きを進め、関係人がこれを承認して終結する手続をいう。

2.特別清算

清算を遂行する際に、著しく支障をきたすような特別な事情があるときや、債務超過の疑いがあるときに、債権者・清算人・監査役・株主の申立てにより裁判所の監督の下に進められる清算手続をいう。

会社清算手続のスケジュールと発生する費用は?

一般的な清算手続のスケジュールは以下の通りとなる。

1.株主総会で解散について決議する

株式会社の解散を決定するには、株主総会で特別決議(注1)が必要となる。株主総会では、会社の清算人の選任も同時に行う。この解散決議をもって会社の営業自体は終了するが、解散決議以降、清算手続きが終了するまでは「清算中の会社」として存続することになる。

2.解散の実施と清算人の登記をする

解散の日から2週間の間に、法務局に解散と清算人選任登記の申請をする必要がある。この時、定款や株主総会の議事録も添えなければならない。

3.解散の届出(異動届)を提出する

会社解散の事実を以下の役所へ提出する必要がある。

  • 税務署
  • 都道府県税事務所、市町村役場
  • 社会保険事務所
  • ハローワーク
  • 労働基準監督署 など

4.清算人会・(臨時)株主総会を開催する

清算人は、解散時点において会社財産の調査を行った上で「財産目録」と「貸借対照表」を作成し、(臨時)株主総会を開催して書類の承認を得なければならない。

5.債権申出の官報広告または会社債権者への通知する

会社が解散した時は、債権者にその旨を通知(「催告」という)する必要がある。そのため、清算人は、2カ月を下らない一定期間内にその債権を申し出るように官報に公告しなければならない。また、帳簿等で判明している債権者に対しては、個別に申出の催告を行うことになる。

6.解散した事業年度の確定申告書を作成・提出する

解散日から2ヵ月以内に、事業の開始日から解散日までを「みなし事業年度」として、確定申告(「解散事業年度の確定申告」という)を行う必要がある。

7.清算事業年度の確定申告書を作成・提出する

解散の日の翌日からの1年間までの期間を「みなし事業年度」として、確定申告(「清算事業年度の確定申告」という。)を行う必要がある。これまでの事業年度が変更されることが多いので、注意が必要である。

8.残余財産を分配する

残余財産とは、解散会社の債務を完済した後に残った財産のことを指す。残余財産は、解散会社の持ち主であった株主に分配しなければならない。

9.決算報告の作成及び株主総会の承認(清算結了)を得る

清算人は、残余財産の分配が終了後、速やかに決算報告書を作成し、株主総会を開催して株主の承認を受けなければならない。これをもって「清算結了」となる。

10.清算決了の登記

「清算結了」後、2週間以内に清算結了登記を申請する必要がある。清算結了の登記が終われば、会社の登記簿は閉鎖される。

11.残余財産確定事業年度の確定申告書の作成提出

残余財産が確定した事業年度に該当する確定申告書を、残余財産が確定した翌日から1ヵ月以内に、税務署へ提出する必要がある。

12.清算結了届の提出

清算結了した後、所轄税務署か地方公共団体へ異動届出書を提出しなければならない。

13.清算人による帳簿資料の保存

清算人は,清算会社の帳簿やその事業経営や清算に関わる重要資料を、清算結了登記の申請を終えてから10年間保存しなければならない。

会社清算に係る費用及び料金

会社清算に伴い発生する費用としては、「登録免許税(=3.9万円)」「官報の広告費用」「登記事項証明書等の取得費用・郵送料」などがある。

また、上記以外にも各種の登記や清算手続きを司法書士に依頼すると、別途司法書士に支払う報酬が必要となる。また、会社の解散・清算に伴って確定申告書を提出する際に税理士に依頼すると、さらに税理士報酬が必要となる。

したがって、法務や税務の専門家に会社生産の関連手続きを依頼することを前提とした場合には、会社清算に伴う費用総額として50万円程度を見積もっておくことが望ましい。

会社清算において必要な費用は、所有する設備や在庫などはもちろん会社規模によっても変わるため、会社解散を決断する前にある程度の見積もりを行うことも検討しよう。

会社解散・清算の税務のポイント3つ

1.事業年度の区切りと確定申告書

会社が解散をした場合には、その事業年度開始の日から解散の日までが一つの事業年度(解散事業年度)とみなされ、その後は解散の日の翌日から1年ごとの期間が清算中の事業年度(清算事業年度)となる。

清算中の事業年度の途中で残余財産が確定した場合は、その事業年度の開始の日から残余財産の確定の日までが一つの事業年度(残余財産確定事業年度)となる。

確定申告書は、それぞれの事業年度ごとに提出する必要があるため、3月決算を例として整理すると以下のようになる。

会社清算

2.消費税

一般的に、消費税の課税事業者となるかどうかは、2期前の課税売上高で判定される。そのため、解散事業年度や清算事業年度1期目には、消費税の課税事業者に該当している場合が多い。

清算事業年度は営業活動が行われないため、基本的に売上が計上されることはないが、建物等の固定資産を売却した場合には、売却収入が課税売上となる。他方、経費の発生は少ないと予想されるため、資産売却などを行う場合は、消費税の納付が必要となるケースも考えられる。そのため、消費税の申告・納税にも十分留意する必要がある。

3.残余財産の分配とみなし配当

会社を解散した際に生じる残余財産の分配は、定款の定めに従うほか、各株主が所有する株式数に応じて行う必要がある。なお、株主に対する残余財産の分配は、原則として会社の債務を弁済した後でなければ行うことができない。

会社の解散によって株主が残余財産の分配を受けた場合、税務上の「みなし配当」に該当するか否かを確認しておく必要がある。「みなし配当」とは、実際には配当を受けていない株主が、配当を受取ったものとみなされて課税されることを指す。

みなし配当の金額は下記の計算式により算出される。

(計算式)
みなし配当金額 = 残余財産分配額 - 払戻等対応資本金額等の額(注)

※1.残余財産を株主等に分配する直前の資本金額
※2.解散する会社の前期末の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を控除した金額

解散会社は、残余財産を分配する事由が生じた日や分配を実施する事実に加え、所有する株式の1株当たりみなし配当金額を、分配対象の株主に通知しなければならない。

また、配当支払いの際に徴収する源泉所得税は上記のみなし配当にも適用されるため、残余財産を分配する際には、源泉徴収額が適切に計算されているか確認する必要がある。

会社清算における注意点

会社清算には、さまざまな法務・税務対応が必要となるほか、消費税の納税や残余財産の株主等への分配に伴うみなし配当課税など、思い掛けないタイミングで課税等が発生することもある。

会社清算は複雑な手続きが伴い、定められた期間内に対応しなければいけないこともある。時間的にも金銭的にも余裕があるうちに、できうる限り事前検討を含めて計画的に行うことが重要である。

また、会社清算手続において、債権放棄などを受けると、税務上は益金として算入されることなり、課税所得が発生する場合がある。そのような場合は、過去の欠損金を利用することで、課税所得の発生を抑えることもあるので、税務や法務の専門家を適切に活用して問題をクリアにしていただきたい。

文 ・風間啓哉(公認会計士・税理士)