矢野経済研究所
(画像=Petro/stock.adobe.com)

気候変動による社会的要請を背景に、市場は近年急速に拡大

～なかでも熱中症対策商材や機能複合化商品が市場拡大を牽引～

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長：水越孝）は、国内のウェザープロテクションサービス・アイテム市場の調査を実施し、アイテム（商品）・サービス別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概要

地球温暖化に伴う気候変動の影響により、日本でも猛暑やゲリラ豪雨等が増加している。これらの気候・気象から身を守るためのアイテムやサービスの需要の高まりを背景に、ウェザープロテクションアイテム・サービス市場は年々拡大している。

とりわけ熱中症対策関連の市場拡大が目立つ。気象庁の観測データによると、日本では猛暑日（最高気温35 度以上）の年間日数が増加傾向にあり、特に2023 年、2024 年は記録的な猛暑となった。この気象変化に伴い熱中症リスクが深刻化している。近年の“災害級”とも言われる暑さを回避し、熱中症予防をすることや、快適性を追求することに関連する対策アイテムに関心が高まっている。

熱中症予防の観点で市場拡大がみられるアイテムの1つとして日傘が挙げられる。日傘を含む2024年の傘・レインウェア市場規模は、前年比13.0%増の拡大を見込む。同市場の伸長には日傘の需要拡大が大きく寄与している。日傘は、暑さ指数（WBGT）の低減効果が高く、熱中症予防アイテムとして周知されている。以前日傘は主に女性が使用するアイテムというイメージが強かったが、昨今は深刻化する猛暑を背景に、熱中症予防対策グッズとしての利用が促進されており、若年層や男性といった今までにない客層の広がりが追い風となっている。

そのほかにも、一般消費者に向けた電動ハンディファンやネッククーラー、冷感アイテムなど、比較的近年誕生した熱中症予防対策アイテム市場は、需要自体の拡大に連動するように参入企業数も増加傾向にあり、市場規模は急速に拡大している。また、2025年6月からは職場での熱中症対策が法的義務となることから、法人向けの熱中症対策に関連するアイテム・サービスへの新規参入企業も増加傾向にある。

なお、熱中症による身体への影響を受けやすいのは概して高齢者であることから、超高齢化社会の状況下においては、こうした対策需要は今後も高まっていくものと考える。さらに、上述の労働安全衛生に関する規制強化や企業における健康経営の推進も追い風になっている。特に建設業や製造業、農業など、高温環境での作業が多い業種では、熱中症対策が労働者の安全確保のための最重要課題となっている。

このような社会的要因等を背景に、熱中症対策を中心としたウェザープロテクション市場は今後も成長基調にあると予測する。

2.注目トピック

機能複合化が進むウェザープロテクションアイテム

ウェザープロテクションアイテムにおいては、以前は日よけや雨よけなど単一機能が主流だったが、現在はUV カット機能と冷感機能を兼ね備えたアームカバーや、防水性と通気性を両立させた帽子など、一つの商品で複数の天候リスクに対応できる商品が近年増加し、人気を集めている。

技術の進歩により新素材開発が進んでいることが背景となっており、吸湿速乾性と紫外線カット機能を併せ持つ繊維なども開発され、異なる機能性の両立が実現している。参入企業においても、他社の商品との差別化を図るため、既存機能に新たな価値を付加する動きが活発となっており競争は激化している。

調査要綱

1.調査期間： 2025年1月～4月
2.調査対象： ウェザープロテクションアイテム・サービスを取り扱う有力企業および業界団体、関連省庁等
3.調査方法： 当社専門研究員による直接面談（オンライン含む）、電話によるヒアリング、アンケート調査ならびに文献調査併用
＜ウェザープロテクションアイテム・サービス市場とは＞
本調査におけるウェザープロテクションアイテム・サービスとは、「さまざまな気候や気象環境（暑さ、寒さ、雨、風、紫外線、湿度、乾燥等）によって人体に生じる被害の予防や軽減、または、その環境下でも快適性を担保してくれるアイテム・サービス」としている。直接的に人体への被害を防ぐアイテム・サービスではないものでも、被害予防の目的で使用・利用されるもの（例：測定器や予報のサービス等）もウェザープロテクションアイテム・サービスとしている。
なお、ウェザープロテクションアイテム・サービスという枠組は、明確な定義があるわけではないため、アイテム・サービスの用途や目的などを考慮した上で矢野経済研究所独自の基準で定義している。
＜市場に含まれる商品・サービス＞
ネッククーラー、電動ハンディファン、保冷剤、制汗剤、電動ファン付ウェア、測定器（WBGT測定器／温湿度計）、日焼け止め、UVカットカバー、インナー・レッグウェア、傘・レインウｪア、機能性素材、帽子、靴・履物、アイウェア、ベッドリネン・寝具、清涼飲料水、飴・タブレット、ペット用品、その他アイテム（ポップアップテント／保冷アイテム）、気象情報サービス、その他サービス（保険サービス／熱中症予防サービス）

出典資料について

資料名2025 ウェザープロテクションアイテム・サービス市場 ～気候変動に"適応"する消費者向けビジネスの最前線～
発刊日2025年04月30日
体裁A4 316ページ
価格（税込）198,000円　（本体価格 180,000円）

お問い合わせ先

部署マーケティング本部　広報チーム
住所〒164-8620　東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress＠yano.co.jp

©2025 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。