矢野経済研究所
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2030年度の新電力事業者による販売電力量を198,120千MWhと予測

~2023年度を底に、販売電力量全体に占める割合は再度増加基調に転じる見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の電力小売市場を調査し、市場動向や有力プレイヤーの動向、将来展望について明らかにした。ここでは、2030年度の国内電力小売市場に占める新電力事業者販売電力量の予測について、公表する。

新電力事業者及びみなし小売電気事業者の販売電力量推移・予測

新電力事業者及びみなし小売電気事業者の販売電力量推移・予測
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1.市場概況

国内における2024年度の販売電力量(全体)は前年度比102.4%の821,800千MWhを見込み、そのうち新電力事業者は構成比20.0%にあたる163,980千MWh、みなし小売電気事業者(旧一般電気事業者)は同80.0%にあたる657,820千MWhの見込みである。

電力・ガス取引監視等委員会資料によると、2016年の電力市場全面自由化以降、新電力事業者の販売電力量は着実に増加してきた。しかし、2022年度から2023年度にかけて燃料価格の高騰とそれに起因する卸電力市場価格の上昇を背景に、多くの新電力事業者が事業撤退や倒産に追い込まれた。そのため、特別高圧・高圧分野の電力市場を中心に、みなし小売電気事業者への顧客の回帰が発生した。その結果、新電力事業者の販売電力量は2年度連続で減少したが、2024年度に入り卸電力市場環境が改善してきたことで、再度増加基調に転じる見込みである。

2.注目トピック

新電力事業者を取り巻く市場環境の変化

2022年の世界的な燃料価格高騰により、新電力事業者は大きな影響を受けた。ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、液化天然ガスや石炭の調達価格が急上昇し、新電力事業者の電力調達コストが増加した。電力の仕入価格が販売価格を上回る状況に陥った新電力事業者の多くが、法人向け新規営業や家庭向けの新規契約受付を一定期間停止する対応を取った。
また、資源エネルギー庁によると、2022年から2023年にかけて83社の新電力事業者が休止・廃止・解散に至ったとされており、特に卸電力市場からの電力調達に依存していた新電力事業者ほど、大きな打撃を受けたとみられる。

3.将来展望

2030年度の販売電力量(全体)を840,870千MWhと予測し、そのうち新電力事業者は約24%にあたる198,120千MWh、みなし小売電気事業者は約76%にあたる642,750千MWhを占める見通しである。
販売電力量全体では、人口減少やカーボンニュートラル実現に向けた省エネルギー推進といった販売電力量の減少要因を、データセンターや半導体工場の新設に加えて、既存工場等におけるエネルギー転換(電化)の進展といった電力需要の増加要因が上回ることで、2030年度に向けて緩やかに増加すると予測する。
こうした中で、新電力事業者は2023年後半以降の電力調達環境の改善を受けて、再び顧客獲得競争を活発化させると考えられ、徐々に国内販売電力量における構成比率を上昇させていく見込みである。

調査要綱

1.調査期間: 2024年12月~2025年3月
2.調査対象: 電力小売事業などを展開している企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話調査、ならびに文献調査併用
<販売電力量について>
2023年度までの販売電力量(新電力事業者及びみなし小売電気事業者)は経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会資料より引用、2024年度見込値、2025年度・2030年度予測値は矢野経済研究所による推計値である。
<市場に含まれる商品・サービス>
電力小売市場

出典資料について

資料名2025 新電力 ~3.0時代に向けた戦略と展望~
発刊日2025年03月28日
体裁A4 189ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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