矢野経済研究所
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

発熱診療の効率化に向けたAI導入意向、医療機関の多数が前向き姿勢

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、発熱患者を受け入れている診療所(クリニック)を対象に、業務効率化や待ち時間短縮の現状と課題、技術革新による新たな検査手法に関する法人アンケート調査を実施した。ここでは、AIを活用した感染症検査の導入意向と、それにより見込まれる診療時間の短縮効果についての分析結果を公表する。

AIを活用した感染症検査の導入意向

AIを活用した感染症検査の導入意向

感染症AI検査を用いた場合の発熱患者1人当たりの診察時間の変化予測

感染症AI検査を用いた場合の発熱患者1人当たりの診察時間の変化予測
(画像=矢野経済研究所)

1.調査結果概要

< 市場概況 >
近年、新型コロナウイルスやインフルエンザに加えて、マイコプラズマ肺炎など複数の感染症が同時に流行することが増え、発熱患者への対応がこれまで以上に必要とされている。こうした状況の中、複数の感染症を一度に調べられる検査の利用も広がっている。また、「急性呼吸器感染症」が2025年4月から5類感染症に位置づけられたことを受けて、身近な診療所(クリニック)における発熱診療の役割がさらに重要になっていくことが推察される。

診察をより円滑に行い、患者の満足度を高めるための取り組みが求められるなか、こうした課題への対応として、人工知能(AI)を活用した診療支援への関心が高まっている。特に、医療機器ソフトウェアとしてのSaMD(Software as a Medical Device)※1は感染症領域でも開発が加速しており、新たにAIを活用したSaMDは従来の診療・検査フローを変革し、より迅速かつ効率的な診断を可能にするツールとして期待されている。

※1 SaMD(Software as a Medical Device)とは、 医療機器として機能するソフトウェア(プログラム)をさす。画像解析や診断支援、検査判定などを行うシステムが含まれ、AI技術を組み込んだSaMDは近年、感染症やがんなどの診療領域でも開発が進んでいる。

< 注目トピックス > ~AI検査、約9割の医療機関が導入に前向き~
本調査では2025年1月~2月に発熱外来を行っている全国の診療所(クリニック)を対象に法人アンケート調査を実施した。

本調査にあたっては、事前に「感染症AI検査」について、AIを活用したSaMDを用いて症状や身体所見をもとにデータ解析を行い、即時に判定結果を提供し、その上で、患者の身体的負担を軽減しながら診療の効率化を図る検査フローと定義した。

なお、感染症AI検査は、従来検査と同様の感度・特異度※2、同等の点数での保険適用がなされ、検査は同程度の費用で行えるものと仮定し、感染症AI検査に関する導入意向や期待される業務効率化の程度についてアンケート調査を実施した。

その結果、インフルエンザと新型コロナウイルスを同時に検出可能な感染症AI検査の導入について、「積極的に検討する」と回答した診療所(クリニック)は16.5%、「条件次第で検討する」が72.4%と、全体の約9割が導入に前向きであった。一方で、「検討しない」と回答した割合は11.1%にとどまり、否定的な意見は少数派であった。

インフルエンザと新型コロナウイルスを同時に検出する感染症AI検査の導入による診察時間の変化については、診察時間が短縮すると考える診療所(クリニック)の割合は合計で80.1%であった。なかでも「30~50%程度の時間短縮」(31.5%)が最も多く、次いで「10~30%程度の時間短縮」(29.2%)となっており、多くのクリニックが診療の効率化を期待していることが伺える。

※2 感度、特異度とは、病気の有無を調べる検査の性能を示す指標である。感度は病気がある人を検出する能力、特異度は病気ではない人を検出する能力を指す。検査は感度、特異度を組み合わせて精度(検査の能力)を示す値として使われる。

< 調査要綱 >
1.調査期間:2025年1月~2月
2.調査対象:地方厚生局の保険医療機関・保険薬局の指定一覧および届出受理医療機関名簿(2025年1月時点)をもとに、下記条件に該当する診療所3,000機関を無作為に抽出し、アンケート調査を実施した。有効回答数は261機関。
【抽出条件】
・施設区分:診療所
・診療科:内科、小児科、耳鼻咽喉科のいずれか1つ以上を標ぼうしている
・届出:外来感染対策向上加算を取得
3.調査方法:郵送およびwebアンケート調査


< 発熱外来における診療効率化に関する法人アンケート調査とは >
近年、複数の感染症が同時に流行することが増え、発熱患者への対応がこれまで以上に必要とされている。「急性呼吸器感染症」が2025年4月から5類感染症に位置づけられたことを受けて、身近な診療所(クリニック)における発熱診療の役割がさらに重要になっていくことが推察される。こうしたなか、本調査では2025年1月~2月に発熱外来を行っている全国の診療所(クリニック)を対象に法人アンケート調査を実施した。ここでは、AIを活用した感染症検査の導入意向と、それにより見込まれる診療時間の短縮効果についての分析結果を公表する。

本調査におけると感染症AI検査とは、AIを活用したSaMDを用いて 症状や身体所見をもとにデータ解析を行い、即時に判定結果を提供し、その上で、患者の身体的負担を軽減しながら診療の効率化を図る検査フローと定義する。

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2025 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。