相続サポートセンター
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いざ遺産分割協議を始めてみると思った通りに進まないことも多いものです。もし話し合いがこじれてしまったらどうすればよいのでしょうか。そのような時に裁判所を通じて利用することになる「遺産分割調停」について知っておきましょう。

1. 遺産分割協議が整わない場合の遺産分割調停

「うちは兄弟仲が良いから大丈夫」とか「争うような遺産もないから」と言っている人も多いのですが、被相続人(亡くなった人)の生前には争うような気配がなかった兄弟でも、相続が発生すると同時に色々な主張や不満が出てきてしまうことがあります。

兄弟間での進学、結婚での援助などの不公平感、親の介護への関与度など不満はさまざまでしょうが、兄弟でも気づいていなかった相手の感情を初めて知り、びっくりする人も少なくありません。また、兄弟の中で「何もいらない」と言っていたのに子供の進学費用が思った以上にかかり、少しでも取り分が多くなればと思って権利を主張し始めた人がいるといった事例もあります。

遺産分割が整わないというのは、実はお金持ちだけの話ではありません。実際に家庭裁判所に何らかの遺産に関する手続を申し立てる人の中で、7割が遺産総額5,000万円を超えていないというデータがあるのです。つまり、不動産と少々の預貯金程度しかない多くの家庭がこういった争いに巻き込まれていることになります。

では、実際このような状況になってしまった時の「遺産分割調停」の申し立てについて詳しく見てみましょう。

2. 遺産分割調停の申立方法

「遺産の分割について共同相続人(法律に決められたすべての相続人)間に協議が調わないとき、また協議をすることができないときは、各共同相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができる(民法907条2項)」とされています。いったん協議をしてみて物別れに終わった時はもちろん、相手に連絡しようとしても無視された、話し合おうとしないといった場合にも申し立てることができます。

調停は相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意して定めた家庭裁判所に申立書を出します。弁護士等に頼んでいればその費用はかかるものの、調停手続き自体は収入印紙1200円と裁判所が定める金額の郵便切手代くらいですのでそれほどお金はかかりません。

3. 遺産分割調停の進み方

調停の手続きでは、相続人の範囲、遺産の範囲などの前提問題をまず確定させます。預貯金などをめぐっては特に「兄弟が使い込んでいた」という主張が出るケースも多く、それらをどこまで持ち戻すかということだけで結構揉める場合もあるのです。

相続人と遺産が確定したら遺産の評価額、特別受益(被相続人から特に金銭的な恩恵を受けていた分)や寄与分(相続人の中で被相続人の財産の形成に特別の貢献をした分)などを考慮した上で具体的な分割方法について合意の形成をはかっていきます。

4. 遺産分割調停が成立した場合

もし調停の当事者全員の間で遺産分割に関する合意が成立した場合は、その内容を調書に記載したときに調停は成立することになります。この「調停調書」の内容としては、遺産の内容と取得者、被相続人関連で支出した費用(葬儀、債務の支払いなど)の負担者の確認や、今後はお互いに何らの債権債務関係もないこと、調停費用の負担割合などの定めとなります。

調停調書の記載は確定した審判と同じ効力を持つことになります。具体的に言えば、そこに書いてある給付条項(たとえばある遺産を取得する代償金として誰々が誰々にいくら支払う、といった内容)に従わなかった場合、給付を請求する権利がある人は相手方に対して強制執行をかけることもできる、つまり財産を差し押さえてそこから給付を受けることができるということです。

5.調停が不成立になったら審判になる

当事者に合意が成立する見込みがない場合、または成立した合意が相当ではない場合、調停委員会(裁判所が選んで構成した紛争解決の手伝いをする人達の集まり)は、調停が成立しないものとして事件を終了させることができます。遺産分割の場合、調停が成立しない場合には調停の申し立ての時に審判の申し立てがあったものとみなされ、当然に審判手続きに移行することになっています。「審判」というのは家庭裁判所の主導で適切な遺産の分け方を決めてもらうものです。

たとえば離婚案件であればいわゆる「調停前置主義」が適用されますので、調停をしないでいきなり訴えなどを提起するといったことはできません。しかし遺産分割については調停前置主義をとっていないため、最初から審判を申し立てることも建前上はできるのですが、実務では「調停で解決できればその方が望ましい」と考えられていることからそのような場合でもまず職権で調停に付されることになります。よって、調停が不成立とわかった時点で初めて審判を申し立てる方が流れとしては効率的です。

当事者だけでは感情的になりがちな遺産分割協議ですが、こじれそうになったら冷静な第三者である家庭裁判所に委ねてしまう方がよい場合もあります。調停を少しでも有利に進めるためにはあらかじめ法律家に主張方法などを相談しておくのもよいでしょう。
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