
2024年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比6.1%増の8,208億円を予測
~基幹業務システムの標準化が本格化~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、サービス提供事業者の動向などを明らかにした。
自治体向けソリューション市場規模推移・予測

1.市場概況
2024年度の自治体向けソリューション市場規模は事業者売上高ベースで8,208億円、前年度比6.1%増と予測する。2024年度は基幹業務システムの標準化対応が本格化し、市場規模を押し上げた。
2024年度に入り、国が定めた2025年度末の期限まで残り2年となったタイミングで、移行作業が本格的に始まった。こうした影響を受け、基幹業務システムの標準化対応に準じた標準準拠システムを提供するベンダーでは、売上が大幅に伸びている。
ただし、2024年度に実施された移行作業は全体の一部にとどまっており、ほとんどの作業が2025年度に集中する予定である。標準準拠システムの稼働を開始している自治体は少なく、2025年度に移行が本格化する状況にある。そのため、2025年度の市場は2024年度を大幅に上回る成長が見込まれ、前年度比17.7%増の9,660億1,000万円に達すると予測する。
2.注目トピック
対応の遅れが懸念される標準準拠システム移行
政府は自治体が抱えるコスト削減などを目的に2025年度末までに自治体の基幹業務(住民情報系)システムを統一・標準化し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。現在、基幹業務システムを提供するベンダーは期限までの移行に向けて多くの人的資源を投入して対応している。
2024年に入り、一部の自治体では標準準拠システムの本稼働が開始された。ただし、その数は限定的であり、ほとんどの自治体は2025年度中の移行を予定している。具体的なスケジュールとしては、自治体の繁忙期を避けた2025年度夏頃から順次移行が始まり、秋から冬にかけてピークを迎える見込みである。対応件数の多いベンダーでは、複数自治体の同時移行も想定されている。
自治体の基幹業務システムの移行が進められる一方で、期限内の移行が困難なケースも存在する。その主な要因として、現行システムが個別開発であることや、既存ベンダーの撤退により移行作業が滞ることが挙げられる。特に、標準準拠システムの開発やガバメントクラウドへの対応には、技術的な対応負荷や先行投資が伴う。こうした対応を断念し撤退するベンダーが一定数存在する。当該自治体では新たなベンダーの選定やシステムの再構築に時間を要し、移行の遅延を招いている。加えて、全国一斉の標準化対応や制度改正への対応が重なり、ベンダー側の人的資源も逼迫している。
こうした状況を受け、国は2024年12月、いわゆる「特定移行支援システム」に該当する自治体に対し、実質的に5年間の期限延長を認める措置を発表した。この制度は、移行難易度が高く、標準準拠システムへの対応が間に合わない自治体を対象とした支援策であり、国が例外的に移行期間を延長しつつ、段階的な対応を可能とするものである。移行要件が複雑なシステムを抱える大規模な自治体や、既存ベンダーの撤退により移行作業が滞った自治体では、2026年度以降の移行となる見通しである。
3.将来展望
標準化対応が進む中で、自治体向けソリューション市場は今後大きく構造変化を迎える。2025年度は既存ユーザーである自治体の移行対応が中心だが、2026年度以降は、特定移行支援システムに該当する自治体や、新たに基幹業務システムの乗り換えを検討する自治体が対象となる。移行実績やサポート体制の充実度が、次のベンダー選定における重要な要素となる。
標準化対応後に注力されることになるのが自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)である。既に自治体による窓口業務やオンライン申請、電子契約に関するソリューションに対するニーズが高まっている。また、自治体内部のデジタル化に加えて、住民生活の向上を目指した取り組みも進められている。こうした影響を受け、モビリティ、金融、ヘルスケアなどの産業界からの異業種参入が進んでおり、新たな参入企業が増えている。さらに、生成AIなどの技術を活用した提案が活発化しており、既存ベンダーは業務ノウハウを強みに、これらの新規参入企業との連携や役割分担が求められる。
調査要綱
1.調査期間: 2024年12月~2025年3月 2.調査対象: 自治体向けソリューションを提供するITベンダー、自治体 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用 |
<自治体向けソリューション市場とは> 本調査における自治体向けソリューションとは、地方自治体で導入される情報システムを指す。市場規模には、ハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、ベンダー(サービス提供事業者)などからの要員派遣費などを含む。地方自治体側の費目でみると、機器購入費、委託費、安全対策費、各種研修費用、BPOサービス費などを含むが、自治体職員の人件費は含まない。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 地方自治体向けの基幹系(住民情報系)ソリューション、内部情報系ソリューション、現場向けソリューション、自治体DX関連ソリューションなど |
出典資料について
資料名 | 2025年版 自治体向けソリューション市場の実態と展望 |
発刊日 | 2025年03月31日 |
体裁 | A4 250ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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