矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

がん罹患数は増加傾向にあり、放射線治療市場は緩やかに成長する見込

~放射線治療機器・関連機器の更新実施は約4割にとどまる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の放射線治療市場を調査し、放射線治療市場推移、放射線治療施設の動向、放射線治療機器メーカー動向、将来展望を明らかにした。ここでは、放射線治療施設における治療機器の更新調査の結果について公表する。

放射線治療機器の更新(リプレース)状況について

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1.市場概況

国立がん研究センター資料によると、2019年のがん罹患数は101万7,200例、2020年~2024年のがん罹患数が108万3,590例と予測されており、増加傾向にある。その背景としては、がん検診の受診率上昇、がん診断機器の性能向上などがんの早期発見、早期治療の進展が挙げられる。

2.注目トピック

放射線治療機器市場は更新需要が中心であるが、治療機器の更新は約4割にとどまる

2016年10月~11月の調査で判明した放射線治療機器・関連機器233台の追跡調査を2020年1月~2月に実施したところ、更新(リプレース)された機器の台数は88台(37.8%)にとどまり、残り145台(62.2%)については継続使用されていた。
同時期に実施した放射線治療施設に対する郵送アンケート調査結果では、「患者数増加が見込まれない」、「専門スタッフが不足している」などの課題が挙げられており、放射線治療機器の更新の遅れにも影響しているものと考える。

3.将来展望

国によるがん対策としては、2018年から「第3期がん対策推進基本計画」が進められており、がんゲノム医療を中心に、手術、放射線、薬物・免疫療法の充実化を図ることが明記されている。放射線治療については、粒子線治療の充実、緩和的放射線治療の普及、放射線治療の均てん化、都道府県を越えた連携体制、医学物理士等の人材育成などが挙げられている。
今後のがん罹患者数の増加により、がん症状の緩和的放射線治療の普及、分子標的薬剤やがんゲノム医療との相互作用の確立、都道府県を越えた連携体制の構築などが進み、放射線治療市場は継続的に成長していくと考える。