
2024 年度の芝刈機・草刈機・刈払機の合計市場は301 億円(前年度比100.7%)
~人手不足、作業者の高齢化などが喫緊の課題となるなか、省人化・省力化に資するロボット式やリモコン式・ラジコン式機器に期待~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内における造園・緑化市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
芝刈機・草刈機・刈払機市場規模

1.市場概況
昨今、気候変動の激化に伴い、真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数等が増加することが予測されている。
なかでも都市部においては、都心部の気温が郊外と比べて島状に高くなる「ヒートアイランド現象」が発生し、東京では100年前と比較して、年平均気温が約3度も上昇しているという。日中の酷暑や夜間の高温などの影響で、熱中症など高温に起因する健康被害が懸念されており、国や自治体が対策を進める中、緑化が解決策の一つとして注目されている。
緑地は、植物による日差しの遮断や、土壌面や植物体から大気中に水蒸気が移動する蒸発散作用等により、気温の上昇を抑える機能を有し、ヒートアイランド現象の緩和に効果を発揮するとみられている。
さらに、大規模な緑地では、クールアイランドと呼ばれる冷涼な空気のかたまりを形成する。昼間に熱の発生源となることに加え、夜間に気温が下がりにくい市街地において、日射の遮断や冷気の形成等により、気温の低減が期待される。
気候変動への対策が国際的な急務となるなか、国土交通省は、緑豊かな国土の形成を図るうえで、特に緑の多様な機能を活かした生活環境づくりの推進と、国民の身近な緑に対するニーズの高まりへの対応が課題ととらえ、「緑の基本計画」のもと、緑化関連業界における施工管理体制の強化を図っている。
東京都は2024年4月より、臨海副都心など湾岸部の新規開発時に求める緑化率を40%から50%へ引き上げた。緑の空間を増やし、環境負荷の低減や市街地環境の向上、脱炭素化を図る狙いとみられる。緑地の整備・増加によって、CO2 の削減・吸収、温暖化の抑制を目指す取組みが行われている。
2.注目トピック
芝刈機・草刈機・刈払機の動向 ~電動式機器の性能が向上、ハイパワー製品も上市~
造園・緑化用のメンテナンス機器として、芝刈機・草刈機・刈払機が使用されている。これら機器の定義は各メーカーによって差があるが、本調査における芝刈機・草刈機・刈払機の定義は以下となる。
芝刈機は、芝を美しく均一に刈ることを目的とした機械で、草丈の高い雑草には不向きである。草刈機は雑草を手早く刈ることに特化した機械で、比較的に草丈の高い雑草も処理可能である。刈払機は、肩掛け式または背負い式で比較的狭い場所での使用を想定した小型の機械で、取り付けた刃を高速回転させて、雑草や山林の下草を刈り取る機械である。
芝刈機・草刈機・刈払機は、近年、小型で扱いやすい充電式の機器のラインナップが強化され、徐々にその割合を高めている。
業界関係者によれば、2017年ごろの一時期、充電式の製品が盛り上がりをみせたが、実際に機械を動かしてみると10~15分程度しか動かないなどのユーザーの声があり、ブームが盛り下がってしまった経緯があるという。当時は、性能面でユーザーの満足感が得られなかったとみられる。発売当初は、「電動式はバッテリーの持ちも悪く、パワーがない」などのマイナスイメージがあり、実際に業務用としてはパワー不足の面があった。
しかし、最近ではパワーの面でもエンジン式と遜色ない製品が出てきており、性能の向上から、イメージは変わりつつある。
3.将来展望
芝刈機・草刈機・刈払機市場では、人手不足や作業人員の高齢化は喫緊の課題となっている。
さらに、気候変動による酷暑が年々激化しており、気温上昇など環境の変化による作業環境の悪化や、高温化により雑草の生育が増すことから、草刈回数の増加などにも対応が必要となっている。
これらの課題への対応策として、作業の省人化・省力化を行うことで作業者の負担を軽減することが考えられ、緑化メンテナンス機器メーカーにおいては、ロボット式機器や、遠隔操作が可能な機器などの研究開発が進んでいる。
調査要綱
1.調査期間: 2024年10月~2025年2月 2.調査対象: 造園・緑化事業に参入する企業および研究機関 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材及び電話・メール等による間接調査、電話アンケート調査 |
<造園・緑化市場とは> 本調査における造園・緑化市場とは、屋上緑化・壁面緑化の関連資材・工法および緑化メンテナンス機器(芝刈機・草刈機・刈払機)が含まれる。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 屋上緑化・壁面緑化関連資材・工法、緑化メンテナンス機器(芝刈機・草刈機・刈払機) |
出典資料について
資料名 | 2025年版 造園・緑化ビジネスの市場実態と将来展望 |
発刊日 | 2025年02月28日 |
体裁 | A4 280ページ |
価格(税込) | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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