富士経済、サスティナブルフードと関連装置・サービス市場調査結果、2030年国内市場予測では代替タンパク食品が1473億円に

総合マーケティングビジネスの富士経済は、輸入食材の高騰や気候変動による農作物の不作、生産者の高齢化や担い手不足など「食」の現状および将来に対する危機感が高まりつつある中、「食」の持続可能性を追求しつつ消費者需要に応えるサスティナブルフードと、関連装置・サービスの市場を調査した。その結果を「食の未来を創造するサスティナブルフード市場の最新トレンドと予測 2025」にまとめた。トピックスとして、2030年国内市場予測(2024年比)では、市場規模の大きい代替乳が堅調に伸びる。代替肉や代替魚介、代替卵は大幅な需要増加が見込める代替タンパク食品が1473億円(18.9%増)に達すると予測する。また、主軸の循環式陸上養殖システムが順調に伸びる。3Dフードプリンターなどの開発も進むサスティナブルフード製造装置・システムは337億円(61.2%増)を見込む。

この調査では、フードバリューチェーンの川上から川下までフードテック領域を網羅することを目的とし、サスティナブルフードとして代替食品10品目、エコ容器食品3品目、認証食品2品目、植物工場/陸上養殖産生産物2品目、また、関連する製造装置・システム6品目、流通・消費に関わる機器・サービス4品目について市場の現状を把握し、将来を予想した。加えて、有力食品メーカー30社のGHG排出量やフードロス削減などサスティナビリティへの取り組み、環境配慮型の製品開発やアライアンス動向などR&D戦略を捉えた。

富士経済、サスティナブルフードと関連装置・サービス市場調査結果、2030年国内市場予測では代替タンパク食品が1473億円に

代替タンパク食品の国内市場では、代替肉、代替乳、代替魚介、代替卵、培養肉、培養魚肉、昆虫食・昆虫飼料、微細藻類を対象とする。

食品業界全体で価格上昇が進んだこともあり、新奇性の高い代替タンパク食品のトライアル購入が低迷しており、特に代替肉は生鮮肉と比較した優位性を発揮できず苦戦している。一方、認知度の高い代替乳はアーモンドミルクやオーツミルクの需要増加により伸びが続いている。2024年は代替乳がチーズやヨーグルト、業務用油脂の新商品が発売されたことで大きく伸び、また、微細藻類が健康食品だけでなく日常の食生活で利用できる商品が伸びたことから、市場は前年比5.1%増の1239億円となった。

2025年以降は、代替乳が飲料、加工食品ともに需要増加が予想されるほか、微細藻類も新商品の投入などメーカーの積極的な取り組みにより伸長、代替肉も中長期的には需要が増加するとみられ、2030年の市場は2024年比18.9%増の1473億円が予測される。規模は小さいものの代替魚介や代替卵は商品数の増加により市場の本格形成が期待される。

代替乳は大豆飲料・ミルクがすでに認知度が高いこともあり、現状、市場の8割以上を占めている。2023年は、飲料では大豆飲料・ミルクは苦戦したが、アーモンドミルクはファミリーサイズが伸長、オーツミルクは新たな需要獲得が進んだ。また、加工食品のチーズやヨーグルトも植物性ならではの健康価値の訴求によって新規開拓が進み、市場は拡大した。2024年はユーザー層がさらに広がっており、特に無糖タイプの需要が増えている。加工食品でもチーズやヨーグルト、業務用油脂など多様な品目で新商品が発売され、プラントベースフード(動物由来の原材料を使用せず、植物由来の原材料を使用した食品)としてだけでなく、味覚面や健康性から新たな需要を開拓し、伸びが続くとみられる。

微細藻類は健康食品が主体である。2024年は主要メーカーによる加工食品のメジャーブランドとのコラボや新商品の積極的な投入により、需要開拓が進んだため前年比10%近い伸びとなった。2025年は大阪・関西万博で微細藻類食品が展開されることや、主要メーカーの啓発活動などが進むことにより伸びが続くとみられる。

代替肉は一部製品の終売などの影響もあり低迷しているが、インバウンド需要の増加による業務用の拡大に加え、市販用も新製品の開発が予定され、2026年以降需要は回復に向かうとみられる。2025年4月より大手食肉メーカーが代替ステーキ肉の販売を予定、また、マイコプロテイン由来の代替肉などの研究も進んでおり、新たな商品投入により中長期的な伸びが期待される。

培養肉、培養魚肉はグローバルでは市場が立ち上がりつつあるが、国内では研究開発の途上であり、法制度の整備が進んでいないことから、市場の立ち上がりは2030年頃とみられる。大阪・関西万博で細胞培養技術が披露されるなど開発は着実に進展しており、今後は商用化に向けた味覚面・コスト面の改善に加え、消費者理解をどう深めていくかがポイントとなる。

代替タンパク食品の世界市場では、国内市場と同様に代替乳が市場をけん引しており、2024年時点では7割以上を占めている。動物性製品を展開する乳業メーカーが代替乳商品を強化する動きから、今後も堅調な伸びが予想される。代替肉は米国や欧米が需要の中心であり、市場は2024年時点で1兆円を超え、2025年以降も欧州を中心に堅調な伸びが予想される。微細藻類の市場も大きく、健康食品が主体となっている。その他の品目も2030年には市場が本格化するとみられる。特に代替魚介は北米や欧州で様々なスタートアップ企業が参入しており、2030年には2024年比4.5倍超の規模に拡大するとみられる。

富士経済、サスティナブルフードと関連装置・サービス市場調査結果、2030年国内市場予測では代替タンパク食品が1473億円に

サスティナブルフード製造装置・システム市場は、3Dフードプリンター、食品向けエクストルーダー、培養肉製造装置、微細藻類培養装置、人工光型植物工場、循環式陸上養殖システムを対象とする。現状、循環式陸上養殖システムが7割、人工光型植物工場が2割を占める。2024年は循環式陸上養殖システムの大規模案件が落ち着いたことから市場は縮小したが、以降は循環式陸上養殖システムが中小規模案件の増加により伸びるほか、露地やハウス栽培農家の減少により必要性が高まり人工光型植物工場の取り組みが増えることが期待される。

3Dフードプリンタや微細藻類培養装置の市場は小さいものの、国内・海外メーカー、また、産学共同プロジェクトなどによって研究開発は進んでおり、長期的な伸長が期待される。3Dフードプリンターは介護食や和洋菓子、培養肉などでの活用が進むとみられる。食品メーカーや飲食店、また、アミューズメントパークやホテルなどのほか、食のパーソナライズ化が進むことでカスタム調理が可能な食品提供機器として将来的にはCVSなどでの導入も予想される。微細藻類培養装置は、微細藻類から有効成分を抽出して利用するバイオテクノロジー関連や、種苗生産で微細藻類を活用する水産養殖などの分野を中心に採用が増えるとみられる。

富士経済、サスティナブルフードと関連装置・サービス市場調査結果、2030年国内市場予測では代替タンパク食品が1473億円に

エコ容器食品の国内市場は、再生・バイオマスプラスチックPET飲料、ラベルレス飲料、プラスチックフリー・紙化容器食品を対象とする。

現状は再生・バイオマスプラスチックPET飲料が8割近くを占めている。2010年頃から大手飲料メーカーがPETボトルの切り替えを本格化させたことによって、市場は拡大を続けている。プラスチック削減の法制度も普及の追い風となっている。多くの清涼飲料メーカーが2030年までに全製品を再生・バイオマスプラスチックPETに切り替える目標を掲げていることから、2025年以降も堅調な市場拡大が予想される。特にラベルレス飲料は既存ブランドの置き換えを中心にアイテム数が増加することなどから、廃棄の際にラベルを剥がす手間が省けることやプラスチックの削減意識が高い消費者などを中心に、大きく需要が増えるとみられる。

富士経済、サスティナブルフードと関連装置・サービス市場調査結果、2030年国内市場予測では代替タンパク食品が1473億円に

特殊急速冷凍機は、従来型の冷気による送風方法(エアブラスト方式)に改良を加え送風方法や湿度の点で優れた製品、送風に加えて電磁波や磁力によって細胞破壊を抑える製品、また、熱伝導率が高いアルコールなどの液体に浸けて凍結させる製品(ブライン方式)を対象とした。

コロナ禍で来店客が大きく減少した外食業態で、テイクアウトやデリバリー、ECなど新たな販路開拓が必要となったことや、食品ロス削減や生産効率化の観点から導入が進んだ。また、2021年頃から新規参入による積極的なプロモーションにより、特殊急速冷凍機の製品特性や製品特質とその冷凍品質の高さについて認知が進んだことも市場拡大を後押ししている。

近年はこの製品を使用した冷凍寿司がCVSで販売され話題となったほか、食品スーパーなどでもオリジナル性の高い冷凍食品の売り場拡大や人手不足解消を目的として導入が進んでおり、市場は堅調に拡大している。外食店やホテルでインバウンド需要が増えていることもプラス要因となっている。

参入企業は既存冷凍技術からの切り替えを狙いとしたプロモーションに注力するほか、冷凍品質やオペレーション向上のための研究開発を進めている。また、ユーザー側も食材原価高騰により食品ロス削減ニーズが高まっているほか、幅広い業態で人手不足が顕著であるため受け入れ余地は大きく、今後も市場拡大が続くとみられる。

[調査方法]
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
[調査期間]2024年11月~2025年2月

富士経済=https://www.fuji-keizai.co.jp