
Web3技術を不動産業界に融合させ、革新的なビジネスモデルを展開するNOT A HOTEL。
2024年10月には、RWAで日本発となるNOT A HOTEL COIN(NAC)のIEOを行い、計20億円もの資金を調達したことで業界を賑わせました。
前編では別荘×NFTの新しい形を紹介しましたが、今回の後編ではNOT A HOTEL DAO株式会社と、そのプロジェクトの中核となるNOT A HOTEL COIN(NAC)に焦点を当てて、岡本伊津美さんに詳しく伺っていきます。
岡本 伊津美(おかもと いずみ) NOT A HOTEL株式会社 Web3コミュニティマネージャー 専修大学文学部卒業後、外食やFintech、不動産業界で幅広く活躍。 暗号資産バブル期にbitFlyerで金融庁検査、改善命令プロジェクトを担当。 BINARYSTAR株式会社では創業メンバーとして管理部門を構築 株式会社サクラエクスチェンジビットコイン取締役COOとして企業買収やPMIプロジェクトを牽引 現在はNOT A HOTEL株式会社でNFT事業やインサイドセールス、カスタマーサービスを統括 |
小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役 2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。 2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。 「NFTビジネス活用事例100連発」著者 ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得 |
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目次
NOT A HOTEL DAOの概要
小林:続いては、NOT A HOTEL DAOについてお聞きしたいのですが、創業は2025年でしたでしょうか。
岡本:いえ、正確には2023年に設立されました。
小林:本格稼働が今年(2025年)の4月からということですね。どのようなチーム構成で運営されているのでしょうか。

岡本:NOT A HOTEL DAO株式会社は、NOT A HOTEL株式会社の100%子会社でNOT A HOTEL DAO/COINのサービスに特化した事業会社です。
会社を分けた理由はいくつかあるんですけれども、設立目的・活動内容はNOT A HOTEL DAOのサービス運営に特化させるためです。
具体的にいうと、NOT A HOTELには 「みんなで保有、みんなで利用」というコンセプトがあります。
NOT A HOTEL COIN(NAC)をIEOして調達した資金で、NOT A HOTEL DAO株式会社が代表してNOT A HOTELという物件を買いに行きます。そして、買った宿泊権をコインを持つ方々に配るという仕組みです。
なので、そのNACでNOT A HOTELを買うもしくは新しい土地を買って、そこにNOT A HOTELを作る、つまりNACを持つお客様専用の代表窓口みたいなイメージです。
小林:なるほど、そういうことなのですね。NOT A HOTEL DAOに所属するメンバーの構成・役割を教えていただけますか。

岡本:チームの役割的には、大きく3つに分けられると思っています。
一つはNOT A HOTEL DAO/COINを使ったサービスを設計しているチームです。これはNOT A HOTEL本体とのつなぎの仕事、バランスをとる仕事なので、NOT A HOTEL全体のサービスの調整をしながらサービス設計しているチームがあります。
二つ目が、アプリやサービスの開発、NACの管理を行う開発チームですね。
そして、最後は私が担当するコミュニティー/マーケティングサポートという、お客様と直接やり取りさせていただくチームがもう一つあります。
NOT A HOTEL COIN(NAC)の特徴、NFTとの違いとは
小林:続いて、NOT A HOTEL COIN(NAC)の概要についてお伺いさせてください。
NACの発行目的は、NOT A HOTEL DAOが物件購入資金を集めるため、そして集まった資金で物件を購入し、NACを保有している方に宿泊権を提供するということで正しいでしょうか。
岡本:はい、間違いありません。

小林:従来のNOT A HOTEL NFTとの違いや、なぜトークン発行に至ったのかについても教えていただけますでしょうか。
岡本:まず、NOT A HOTEL NFTと今回のNACについては、どちらが良い悪いということは全く考えていません。両方とも良いサービスだと自信を持っています。
それぞれの特徴を説明させていただくと、NFTは年1回必ず泊まれる会員権ですが、日付と場所が選べず、購入という形なので消費扱いとなります。
一方、NACは宿泊数に制限はありますが、NOT A HOTEL NFTの在庫に関係なくお客様を増やすことが可能です。

岡本:NACを一定量お持ちの方には、そのNACを貸し出していただくことで、NOT A HOTEL DAOが持っている在庫から宿泊権をお渡しします。この宿泊権では日付も場所も選べるようになっています。
ただし、貸し出しているだけなので消費ではありません。一方でNOT A HOTELが持っている宿泊枠には限りがあるので、NACを保有する場合でも宿泊できない方が一定数いらっしゃいます。
小林:宿泊以外でNACを保有するメリットは何かありますか。
岡本:NACを保有することで金利のような収入が得られる定期預金のようなサービスがあります。また、コインの保有数に応じて、毎月5名の方にランダムで宿泊権がエアドロップするキャンペーンも実施しています。
さらに、NACは暗号資産なのでNOT A HOTELでの決済に使用できますし、NOT A HOTEL DAOのコミュニティに参加して、新しいサービスを一緒に作るといったことも可能です。
小林:まさに「DAO」という名の通り、宿泊体験だけでなく、体験やイベントなどすべてを含めてサービス化しているということですね。よく分かりました!
Web3×ラグジュアリーホテルの課題
小林:NOT A HOTEL COIN(NAC)の立ち上げで特に苦労された点があれば教えていただけますか。
岡本:二つあります。一つ目は、ラグジュアリーホテルのサービスなので、Web3という要素を導入しても、サポートのクオリティを落とせないという点です。どうしてもWeb3は初めての方にとってわかりづらい部分があります。

岡本:例えば、スマートフォンに初めて切り替えた時の「なんだこれ。ボタンが...ない...。」という感覚に似ていると思います。慣れてしまえば何も迷わないのですが、最初のハードルを越えるサポートをNOT A HOTELのホスピタリティに合わせて提供しなければなりません。
鍵(THE KEY)の管理についても、紙に3枚書いていただくなど、必ずなくさせない工夫を徹底しています。
小林:おっしゃる通りですね。Web2とWeb3の違いは情報の管理方法にあって、Web3では自分の情報を自分で管理する責任が出てきます。とはいえ、ブランドとしての価値を保ちながら、そのギャップを埋めていくのは難しそうですね。
岡本:はい、そこは本当に難しかったです。もう一つの課題は、リアルワールドアセット(RWA)に関する部分です。
Web3ゲームであれば、デジタルアイテムのプレゼントは自由にできますが、私たちの場合は1泊10万円を超えるラグジュアリーホテルなので、景品表示法の規制を受けます。
さらに、不動産の規制や金融としての規制、暗号資産としての新しい規制や税制など、様々な規制との調整が必要で、他のデジタルサービスよりも考慮すべき点が多かったと思います。

小林:今の話を聞いて思ったのが、価値が上がることで「いくらでもいいから欲しい」という人が出てくる可能性は大いにあるかなと思っています。
となると、良いコミュニティーを作り続けたり、場所以外のコミュニティも含めて、サービスを提供することが、価格の維持・上昇に寄与するのかなと思います。
社内では、この部分について何か議論とかされたんですか。
岡本:一番議論したポイントは、既存の事業とのバランスをどう取るかっていうところですね。お客様に過度な期待をさせちゃいけないし、ただ、やはりワクワクするサービスを提供したい気持ちもありました。なので、バランスを取るというのが一番よく考えたところですね。
一方で、「短期の投資には向かないが、長期的な投資としては価値があるよね」というコメントもいただきまして、これはありがたいと思いましたね!
ただクリプトを作っている、この市場を盛り上げていきたいというトレーダーの方は多くいらっしゃいます。その方々に「ダメだ」ではなく、僕たちのニーズには合う合わないあるけどこういうのが増えるといいよねって、大きく声を上げていただいたのはすごい励みになりました。
今後の展開・目標について
小林:NOT A HOTEL COIN(NAC)の今後の戦略や、目標について教えていただけますでしょうか。
岡本:はい。昨年2024年10月31日からGMOコインでIEOの申し込みを開始し、おかげさまで12月7日の申し込み締め切りまでに目標額の20億円を達成することができました。多くの方々にご支援いただき、本当に感謝しています。
12月13日の市場への上場を経て、現在はNACを使ったサービスを本格的に展開している段階です。
そして次の戦略として、ホワイトペーパーに記載している通り、無限発行トークンとして追加EOを計画しています。

小林:追加EO…。初めて聞く言葉ですね。もう少し具体的に教えていただけますか。
岡本:NOT A HOTEL DAOでは、皆さんから集めた資金で新しい物件を開発したり、既存の物件を購入したりしていますが、ユーザー数が増えると、提供できるサービスが不足してしまいます。
そこで、集めた資金でサービスとなる資産を取得した後、さらなるサービス拡張のために追加でNACを発行する計画です。株式でいう新株発行のような形をクリプトの世界で実現しようと考えています。
懸念として、価値の希薄化という課題はありますが、調達した資金で新たな物件やサービスを提供できるため、ユーザー数も増えていくと考えています。これは世の中で誰も挑戦していない取り組みなので、実現に向けて努力していきたいと思います。
小林:バランスが難しそうですが、とても興味深い取り組みですね。楽しみです!
Web3事業を目指す方々へのメッセージ
小林:次に、岡本さんの個人的な部分や考え方を聞きたいなと思います。
お仕事される上で大切にしている価値観や考え、こういうのを大事にしようなど考えてることはありますか。
岡本:ビジネスマンとしての仕事をする上で、基礎になったのは飲食業の接客です。
今回もコミュニティマネージャーをやらせていただいていますが、イベント等を通じて同じ価値観を共有する方々をつなげていきたいとか、リアルな繋がりを一番大事にしているところですかね。
小林:なるほど、スタートから大事にされてきていることが今も変わらず大事ってことなんですね。
岡本:まあ結果論な気もしますけどね(笑)。

小林:いえいえ、ありがとうございます(笑)。そんな岡本さんから、今後Web3・NFTのサービスを作りたいと考える方に、苦労した点やアドバイスなどをいただけますでしょうか。
岡本:アドバイスというより、私の経験からお伝えしたいのは、まずユーザーとして実際に体験することの重要性です。そもそもWeb3の経験が全くない、もしくは十分でない方が多いように感じます。
市場調査はできると思いますが、「現地・現物・現場」という実体験が最も大切だと考えています。私自身、ICOで投資した経験があり、その時の感触があるからこそ、現在のサポート業務ができているのです。
小林:その通りですね。NFT Mediaでも様々なご相談を受けますが、「NFTを買ったことがありますか。」と聞くと、「まだなくて...。」という回答が多いです。これから事業を始めようという方は、まずNFTを購入するなど、実際に触れてみることをお勧めします。
岡本:はい、ぜひ体験していただきたいですね!

小林:貴重なアドバイスをありがとうございました。最後に、ワークライフバランスについても少しお伺いできますか。
岡本:基本は土日休みです。ただ、私自身はワークエンゲージメントというか、仕事をしている方が満足感を得られるタイプですね。
とはいえ、24時間働いているわけではなく、普通に休む時は休んでいます。ただし、緊急の場合は土日でも対応します。僕の顔を見て購入していただいたお客様もいらっしゃいますので。
小林:ストレスが溜まりすぎないよう、上手く調整できているのですね。
では、NOT A HOTEL DAOの岡本さんから、最後に視聴者の方へメッセージをお願いできますか。
岡本:ありがとうございます。もちろん大変なことはありますが、だからこそ楽しく、やりがいがあります。何かやり切りたい、楽しんで働きたいという方は、ぜひご連絡いただけると嬉しいです。
小林:ということで、本日はNOT A HOTEL株式会社の岡本さんにお越しいただきました。ありがとうございました。
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