相続サポートセンター
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40年ぶりに改正される相続法制度について、今回は夫が亡くなっても妻がその後も安心して住み続けることのできる権利として注目されている「配偶者居住権」の詳しい内容を解説していきます。

ところで、配偶者居住権が新設されることにより、具体的にどのような効果が発生することになるのでしょうか?以下について、ポイントを絞って説明をしていきますので、今後の相続に少しでも関心をお持ちの方には、是非最後までお読み頂けますと幸いです。

1. 配偶者居住権についてポイントをまとめます!

配偶者居住権を利用することで、今後私たちはどのようなことに気を付けなければいけないのでしょうか?

具体例を元に、配偶者居住権の取得条件・配偶者居住権の財産的価値の算出、配偶者居住権と所有権との関係性について、また配偶者居住権が新設されることで相続税をどのように変動するのかについてそれぞれ検討していきます。

1-1. 具体例

例えば、Aさん家族は妻と3人の子供の5人家族です。

先日不幸にも亡くなったAさんは、1,000万円の現金、5,000万円の不動産(自宅)の相続財産を残していました。

この場合、相続財産総額は6,000万円と考えられます。

ここで、相続財産の分割方法として法定相続を想定しますと、妻は2分の1、子供はそれぞれ6分の1となりますので、妻は3,000万円、子供は1,000万円の財産を取得することになります。

すると、以前のままでは子供3人の合計取得金額3,000万円は相続財産の現金1,000万円より多い為、妻は自宅不動産を売却して子供たちに支払うお金を作り出さなければいけませんでした。

ところが、これにより妻が住む場所がなくなってしまい、相続が発生することにより生活に不便が生じることになってしまいます。

ここで、配偶者居住権を利用するとした場合に、自宅の権利を所有権と配偶者居住権の2つの権利に分けることになります。

配偶者居住権は妻だけが取得することが出来る権利となりますので、不動産としての財産価値を取得した子供たちが相続により不動産の名義を取得したとしても、配偶者居住権を理由にその後も正当に住み続けることが出来るという訳です。

更に、自宅不動産が妻以外の者の所有となる場合などにも短期の配偶者居住権を利用することが出来ます。

すなわち、直ちに自宅を手放さなければいけないのではなく、最低6ヶ月間は居住を確保することが出来るようになりました。

1-2. 配偶者居住権の取得条件

配偶者居住権の取得方法としては以下の3つが考えられています。

すなわち、(1)遺産分割により取得する方法、(2)遺言により取得する方法、(3)死因贈与により取得する方法が挙げられます。

短期の配偶者居住権であれば、特段条件もなく取得することは出来ますが、比較的保障されることとなる長期の配偶者居住権を取得する場合にはより形式的な要件が必要とされることになりました。

このため、遺産分割以外の方法で取得を検討される場合には、生前より相続対策についてよく考えておくことが求められるようになったといえるでしょう。

1-3. 配偶者居住権の価値の算出

配偶者居住権としての財産的価値は妻の年齢によって変動することとなります。

例えば、妻が配偶者居住権を80歳で取得した場合には女性の平均余命と近い年齢であるといえるため、予想される残りの居住期間を踏まえて価値が低く見積もられることになります。

一方で、妻が比較的若い50歳で配偶者居住権を取得した場合には、30近くまで自宅不動産を利用することが出来ますので、その分利用価値が高く捉えられることになるという訳です。

1-4. 配偶者居住権と所有権との関係性とは?

配偶者居住権は細かく申し上げると所有権とは別の性質を持つ権利といえます。

つまり、あくまで家の所有者とは離れることになり、妻は自宅不動産を利用の権利を与えられるにすぎないということになります。

ところが、配偶者居住権はその配偶者のみに利用が許されるものであり、子供等に譲渡することは禁止されています。

万が一、将来自宅を手放して施設等に住む場所を移ることを検討される場合にも、そのままでは利用権は消滅しないことになっています。

また、配偶者居住権は不動産登記法により、登記されることになるため第三者からも権利の内容を確認することが出来るようになります。

1-5. 相続税の変動について

配偶者居住権の新設により相続税にも影響を与えることになります。

通常の相続であれば従来と同様に処理されることになりますが、二次相続が起こった場合には妻の配偶者居住権は妻の死亡と同時に消滅してしまうことになりますので、妻の相続財産が改正後には低く算出されることになります。

このため、納税すべき相続税を抑えるための相続対策としても利用する手段としても注目されることとなると考えられます。

2. まとめ

新たに新設される配偶者居住権について、ポイント毎にご紹介致しましたが、いかがでしたでしょうか。

新制度により、相続の在り方について見直される良い機会ですので、該当する可能性のある方は、利用のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。

また、何かご不明な点がございましたら、税理士等の専門家までお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
(提供:相続サポートセンター