新規事業,補助金,注意点
(写真=glen photo/Shutterstock.com)

企業や個人事業主が成長し、経済活動の中で生き残っていくための方法として、新規の事業の立ち上げを考えることもあるだろう。しかし、新規事業を成功させるためには、アイデアはもちろんのこと資金の工面も重要だ。いくらアイデアが良くても、資金がなければ事業を展開できないからである。そこで利用したいのが、国や自治体などの補助金だ。ここでは、新規事業で使える補助金の種類やその注意点について紹介する。

新規事業に絶対必要なものは資金!

新規事業を行うためには、さまざまな費用の支払いに充てる資金が必要だ。代表的なものとしては、以下のような費用がある。

・マーケティングや市場調査の費用
・人を雇うための広告費や人件費
・新しい事務所や工場などを借りる(または建設する)ための費用
・インターネット・電話・FAXの回線などの通信費用
・パソコンや複合機・電話機・ソフトウェアなどの費用
・デスクや椅子、キャビネットなどのオフィス家具の費用
・業界特有の設備費用
・その他(文房具、業務に関係する必要書類などの雑費)

事業の形態や業種などによって異なるが、新規事業に必要な資金は、数十万円~数百万円、中には1,000万円以上必要になる場合もある。一般的に、開業資金をすべて自己資金でまかなうのは難しい。そのため、銀行などの金融機関からの融資や、国や自治体などの補助金を利用して資金を調達するケースが多い。

新規事業の補助金とは?

新規事業の資金をすべて自社でまかなうのは難しい。資金を調達する方法として挙げられるのが、銀行などの金融機関からの融資や国や自治体などの補助金である。その中でも、まず検討したいのが新規事業の補助金だ。新規事業の補助金とは、新規事業の立ち上げをサポートするために給付されるお金のことである。

補助金と金融機関からの融資の大きな違いは、返済が必要かどうかだ。融資は返済が必要であるのに対して、補助金は返済不要。もちろん利息なども支払う必要がないため、事業者にとっては圧倒的に有利である。補助金を利用する際に考慮すべきポイントは、以下の3点だ。

1補助金の種類によって目的や仕組みが違う
2補助金の種類によって金額が異なる
3補助の可否やその額について審査がある

補助金にはいくつかの種類があり、金額に上限があるものがほとんどである。また、補助金の種類によって申し込みに必要な書類なども異なる。上記のポイントを踏まえた上で積極的に情報を集め、自社に合ったものを有効活用できるようにしておこう。

補助金と助成金の違いは?

補助金と似ているものに、助成金がある。新規事業の補助金について調べていると、助成金という言葉も目にすることが多いはずだ。両者には、どのような違いがあるのだろうか。補助金・助成金のどちらも「国や地方公共団体などから給付され、返済の義務がない」という点は同じだ。両者の違いは、以下の2点である。

1目的
補助金が事業そのものについての給付であるのに対し、助成金は人材雇用や研究開発をなど特定の目的に対して給付される。

2審査
補助金は、給付を受けるために審査に通る必要がある。また、補助金を給付目的以外に使用した場合には罰則が科せられる。助成金には審査がなく、一定の条件を満たせば必ず支給される。

補助金と助成金には上記のような違いはあるが、補助金として支出されるものの中に助成金があったり、その逆の場合もあったりして、同様に取り扱われることがあるのが実情だ。

起業家が活用できる主な補助金一覧

補助金は、目的によってさまざまなものがある。ここでは、新規事業に活用できる代表的な補助金を紹介しよう。なお、補助金は一年ごとに見直しや変更がある。現在は募集されていない、または終了したものも参考として合わせて紹介する。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者などが行う設備投資などに対する補助金で、中小企業の大部分が対象となる。新事業へのチャレンジ・生産ラインの増強・サービスの質の向上などを考えている事業者向けの補助金であり、設備投資は生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行うという目的に限られる。

ものづくり補助金には、主に「一般型」「小規模型(設備投資のみ)」があり、それぞれ上限額が異なる。定期的に募集を行っており、その都度要件や金額などが変わる。2019年8月現在は一般型が1,000万円、小規模型が500万円だ。「ミラサポ」の会員ページ内にあるリンク「ものづくり補助金電子申請システム」から申請する。
ミラサポ:https://www.mirasapo.jp/

・対象者
生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行う中小企業・小規模事業者など ・補助率
2分の1~3分の2 ・補助金の上限額
一般型1,000万円、小規模型500万円

全国中小企業中央会
平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の二次公募について

創業助成事業(東京都中小企業振興公社)

創業助成は、都内で創業を予定している人や、創業5年未満の中小企業などを対象とした補助金だ。創業初期に必要な人件費や賃借料、専門家謝金、産業財産権出願・導入費、広告費、備品費の一部を助成している。助成対象と認められる経費の3分の2が補助され、金額は100万~上限300万円。申請は、公益財団法人東京都中小企業振興公社へ郵送で行う。

・対象者
創業予定者・創業5年未満の中小企業者など
・補助率
経費の3分の2
・補助金の額
100万~上限300万円

東京都産業NET
創業助成金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画に沿って販路開拓などに取り組むために要する経費の一部を補助するものである。ホームページを作成し商品を広告するなど、ブランド力を高めたい場合に利用したい補助金だ。定期的に募集が行われているため、募集期間などの確認を常にしておきたい。補助金額は原則50万円までで、申請は商工会議所を通じて行う。

・対象者
商工会議所地区で事業を営む小規模事業者
・補助率
経費の3分の2
・補助金の額
原則50万円(上限)

日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助するものだ。ITで業務の自動化や経営状況の見える化をしたい場合に有効な補助金と言える。定期的に募集が行われているため、常に情報を確認しておくことをおすすめする。

IT導入補助金は、導入するITパッケージの内容などによりA類型とB類型に分かれており、補助金の額が異なる。申請は、IT導入支援事業者を通じて行う。

・対象者
中小企業・小規模事業者など
・補助率
2分の1以下
・補助金の額
A類型:40万~150万円未満
B類型:150万~450万円

IT導入補助金2019

地方創生推進交付金

地方創生推進交付金とは、自主的・主体的で先導的な事業を記載して作成した地域再生計画に基づく事業の実施に必要な経費に充てるため、国が地方自治体に交付する交付金である。地方自治体では、認定された地域再生計画に基づいてさまざまな施策を行っている。地方創生推進交付金による地方自治体の施策や補助金の内容については、各自治体のホームページで確認してもらいたい。

下請中小企業・小規模事業者自立化支援対策費補助金

下請中小企業・小規模事業者自立化支援対策費補助金は、親事業者の生産拠点の閉鎖・縮小(予定を含む)などの影響で売り上げが減少する下請小規模事業者等が、新分野の需要を開拓するために実施する事業の費用を一部補助するものである。試作・開発、展示会出展などの費用の補助を希望する場合に有効な補助金だ。

定期的に募集が行われているため、常に募集期間などを確認しておく必要がある。補助対象となる経費は、産業財産権等取得費などの「事業費」、展示会費用などの「販路開拓費」、「試作・開発費」の3つに限られる。申請は、事業所の所在地を所轄する経済産業局の担当窓口または郵送で行う。

・対象者
下請小規模事業者など
・補助率
3分の2以内
・補助金の額
100万~500万円

下請中小企業・小規模事業者自立化支援対策費補助金(下請小規模事業者等新分野需要開拓支援事業)

インキュベーション施設整備・運営費補助事業

インキュベーション施設整備・運営費補助事業は、東京都が実施する「インキュベーション施設運営計画認定事業」として認定された事業者が、施設の整備改修費や運営費など、必要経費の一部の補助を受ける制度である。セミナーや勉強会の開催や、入居者の創業を後押しする環境整備などを考えている場合に有効な補助金だ。

補助対象となる経費は、工事費などの「整備改修費」、人件費などの「運営費」があり、それぞれに受けられる補助金の額が異なる。申請は事前に電話で予約の上、東京都産業労働局商工部創業支援課で行う。(郵送不可)

・対象者
「インキュベーション施設運営計画認定事業」に認定された事業のうち、優れた取り組みを行う事業者(大企業を除く)
・補助率
3分の2以内(区市町村の場合は2分の1以内)
・補助金の額
整備改修費:上限5,000万円(区市町村の場合4,000万円)
運営費:上限年2,000万円(区市町村の場合年1,500万円)

インキュベーション施設整備・運営費補助事業

ふるさと名物応援事業補助金(JAPANブランド育成支援事業)

ふるさと名物応援事業補助金(JAPANブランド育成支援事業)は、複数の中小企業などが連携および優れた素材や技術などを活かし、世界に通用するブランドの確立を目指す取り組みに要する経費の一部を補助するものだ。地域の中小企業が海外においてブランドの確立を図る場合などに有効な補助金だ。定期的に募集が行われているため、常に募集期間などを確認しておきたい。

戦略策定支援事業とブランド確立支援事業があり、それぞれに受けられる補助金の額が異なる。申請は、事業所の所在地を所轄する経済産業局の担当窓口または郵送で行う。

・対象者
中小企業(4者以上)、商工会、商工会議所、組合、NPO法人など
・補助率
戦略策定支援事業:3分の2以内
ブランド確立支援事業:1年目、2年目は3分の2以内、3年目は2分の1以内
・補助金の額
戦略策定支援事業(1年限り):200万円以内(下限100万円)
ブランド確立支援事業(1~3年目):2,000万円以内(下限200万円)

中小企業庁 JAPANブランド育成支援事業

海外ビジネス戦略推進支援事業

海外ビジネス戦略推進支援事業とは、中小企業の海外での販路開拓や海外拠点設立のための専門家の支援、海外調査や外国語WEBサイトの作成などの補助金が受けられる事業である。2018度予算で成立した事業のため現在は公募を終了しているが、今後定期的に実施される可能性もあるため、常に情報を得られるようにしておきたい。

海外展開支援の最新情報については、以下のホームページで確認できる。

中小企業庁 経営サポート「海外展開支援」

事業承継補助金

事業承継補助金は、事業承継やM&Aにより経営革新などを行う場合に必要な経費の一部の補助を受けられる制度である。2018年度予算で成立した事業のため現在は公募を終了しているが、今後定期的に実施される可能性もあるため、常に情報を得られるようにしておこう。最新情報は、以下のホームページで確認できる。

中小企業庁 財務サポート 「事業承継」

補助金を申請する際に気をつけることは?

新規事業で使える補助金は事業者に有利なものばかりだが、申請の際に注意すべきことがあるので以下で確認してほしい。

人気の補助金は倍率が高い

補助金は、基本的に国や地方自治体の予算で成り立っている。補助金の額は予算内に納めなければならないため、申請者すべてが補助金を受けられるとは限らない。特に人気の高い補助金は、倍率も高くなる。申請する補助金を受けられなかった場合に備えて、別の補助金や金融機関の融資なども考えておくべきだろう。

期限が決められている

補助金は、申請の期限があるものがほとんどなので、申請の際は募集期限に注意したい。補助金は、募集期間が1ヵ月程度と短いものも多い。その補助金の存在を知ったのが募集期間の途中だった場合、残された時間はさらに短くなる。そのため、迅速に申請できるよう新規事業計画をあらかじめ立てておいたり、常時補助金の情報に対してアンテナを高くしたりしておくことが重要だ。

自己資金がゼロでは厳しい

補助金は、経費の全額が補助されるものは少ない。経費の一部が補助されるものがほとんどなので、自己資金がゼロでは新規事業を始めることは難しいだろう。また原則補助金は後払いなので、先に自己資金で経費を支払ってから、後にその一部を補助金でまかなうことになる。その意味でも自己資金がゼロだと厳しい。自己資金がゼロの場合は、金融機関の融資などを検討する必要がある。

新規事業における助成金や補助金の申請手順

ここからは、新規事業における助成金や補助金の申請手順を見ていこう。補助金の申請には、補助金を知ることから交付を受けるまで、以下の5つのステップがある。

・ステップ1 知る
・ステップ2 申請する
・ステップ3 交付が決定される
・ステップ4 事業を実施する
・ステップ5 補助金が交付される

・ステップ1 知る
まずは「どのような補助金があるか」を知るところから始めることになる。補助金の多くは、国や地方自治体のホームページに掲載されている。今回紹介した補助金を中心に、国や地方自治体のホームページで自身の事業に該当する補助金の内容を確認することから始めよう。

・ステップ2 申請する
利用したい補助金が見つかったら、申請期限を確認し申請書を作成して、指定された窓口などに申請する。申請書の用紙や募集要項などは、ホームページからダウンロードできることが多い。ただし、申請書を郵送でも提出できるものと、窓口での提出が必須のものがあるので注意が必要だ。

・ステップ3 交付が決定される
補助金の申請が受理されると、各補助金事務局の審査委員会などで申請書が審査される。補助金の交付を受けられることが決まったら、選定結果通知や補助金交付規程、補助金交付申請書を受け取り、補助金交付申請書と経費相見積もり(書)を作成し提出する。問題がなければ交付決定通知書が発行され、補助金交付が決定される。

・ステップ4 事業を実施する
補助金の交付が決定したら、認定された内容で事業を開始する。補助金の多くは、事業の途中で実施状況について事務局のチェックを受ける必要がある。補助金の対象となる経費については、領収書や証拠書類をすべて保管しておく必要があるので覚えておこう。

・ステップ5 補助金が交付される
事業が終了したら実施内容や経費を報告するため、実績報告書や経費を支払ったことがわかる書類を補助金事務局に提出する。提出された書類をもとに補助金事務局が実施状況を確認し、問題がなければ補助金額確定通知が発行される。それを受け取ったら請求書を補助金事務局へ送付し、補助金を受け取る。

※今回紹介した手順は、あくまで一般的なものである。補助金の種類によっては、異なる場合もあるため、詳細は募集要項を確認してほしい。

補助金は積極的に情報収集し早めの申請を

補助金は返済する必要がないため、事業者にとっては非常に有利な制度である。新規事業を開始する際には多くの資金が必要なので、条件に当てはまる補助金があれば、積極的に申請するべきだろう。常に補助金の情報を確認し、申請漏れがないようにしてほしい。

文・長谷川よう(金融ライター)