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不動産を相続すると、いったいどのような手続きをするのでしょうか。

また、そのためにどのような準備をしたらよいのでしょうか。

そこで、不動産を相続するときに知っておくべきこと、やらなければならないことをご紹介します。

1. 不動産相続の手続きにはどのようなものがあるか

不動産の相続ときいて、まず多くの方が思い浮かべるのが相続税の納税だと思います。

自分が不動産を相続したら相続税はかかるのか、かかるとしたらどのくらいかかるのか、不安になると思います。

それに名義変更(登記)もしなければなりませんから、各種専門家に頼んだ場合、費用はどのくらいかかるのかも心配になると思います。

他にも農地や森林などを相続した場合、やらなくてはならない手続きがあります。

そこで、時系列に順を追ってやるべきことを説明してまいります。

2. 不動産を相続したら各種手続きのための準備をする

被相続人が亡くなり、その所有する不動産が誰のものになるか、多くの場合、相続人の間で遺産分割協議という話し合いをすると思います。

そして、その内容を用紙に記載したものを遺産分割協議書といいます。

あるいは故人が遺言書を残している場合もあるでしょう。

このように、誰が相続をするかについて決まったことが記載してある書類が各種相続手続きには必要になります。

ただし、法律で定められた分ずつで相続する場合は必要ありません。

他に法務局で相続の対象となる不動産の登記事項証明書、市区町村役場で被相続人(亡くなった人)の出生から死亡するまでの戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、当該不動産を相続する人の住民票、対象不動産の固定資産評価証明書、遺産分割協議書を作成した場合は、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。

ただし、名義変更などの手続きを専門家に依頼する場合は、印鑑証明書以外の書類は各種業者が職権で取得できます。

3. 相続したらかかってくる税金

不動産に関わらず、相続したら多くの方が気になるのは相続税です。

ところが統計上、相続税が課税されるのは8%程度の人であり、すべての人に課されるわけではありません。

相続税の計算をするにはまず、基礎控除というものがあり、相続財産の評価額から差し引くことができます。

これにより、多くの人が相続税の課税から免れているということができます。

この基礎控除額は以下の式で求めることができます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の人数

この控除額がすべての相続財産の評価額を加えた金額よりも大きければ相続税はかかりません。

例えば相続人が3人だった場合、基礎控除額は3,000万円+3×600万円=4,800万円になります。

相続財産の評価額が3,000万円であれば相続税は課税されませんし、5,000万円であれば、差し引きしきれず残ってしまった200万円に相続税が課税されます。

相続財産の評価額を算定するには、預貯金などの金融資産については、額面通りでかまいません。

土地や株式については少しややこしい計算が必要になります。

土地の評価は路線価がついている地域ではその路線価に敷地面積をかけたものにさらにいろいろな補正値をかけあわせたもので評価されます。

路線価がない地域では倍率方式といって固定資産税評価額に適用地域・用途ごとに決められた倍率をかけあわせた金額になります。

路線価はインターネットで調べることができますし、倍率方式の場合はおおよそ固定資産税評価額に1.1倍をかけると相続税の計算上の評価額に近い金額になります。

固定資産税評価額は毎年春に固定資産税の納税所が届くと思いますが、そこに記載されている金額になります。

また、特例法により不動産の評価を大幅に下げることも場合によっては可能です。

小規模宅地等の特例といって、生前同居していた個人が当該土地や個人が事業を営んでいた場合の事業用地を相続するような場合には面積に限りがありますが、最大で80%も評価額を下げることができます。

他に、借地権といって建物を建てるために他人に貸してある土地は30~40%に評価減することができます。

逆に、建物を建てるために土地を借りている場合、借地権に課税されることになります。

借地権の評価は借地権の契約の種類により少しずつ計算方法が変わりますが、路線価などにより評価した自用地価額に借地権割合の60~70%を掛け合わせた価額がおおよその評価額となります。

建物については固定資産税評価額をそのまま利用しても差し支えありません。

貸家がある場合は入居しているものについては該当面積のみですが、借家権による評価減で70%の評価額になります。

株式の評価については上場株式と故人が役員などを勤めていた非上場の株式によって評価方法が変わります。

上場株式の評価額は次のうち一番低い金額となります。

①相続開始日の終値
②相続開始日の月の取引日ごとの終値の平均額
②相続開始日の月の取引日ごとの終値の平均額
③相続開始日の先月の取引日ごとの終値の平均額
④相続開始日の先々月の取引日ごとの終値の平均額

故人が会社の経営者であった場合、経営していた会社の株式を所有しています。

ただ、株式を上場している会社であることはあまりなく、そういった会社の株式を非上場株式といいます。

非上場株式の評価は、類似業種批准方式、純資産価額方式、配当還元方式があります。

会社の規模によって、類似業種批准方式と純資産方式のいずれかで評価します。

類似業種批准方式は複雑な計算をする必要があり、国税庁のほうで「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を用意していますので、手順に従って記入していくと評価額が計算できます。

純資産価額方式は会社の帳簿価額を利用して評価額を算定する評価方法です。

配当還元方式は株式を相続した人がいわゆる少数株主や経営者一族でない場合に配当金額をもとに評価する方法です。

以上のようにして計算した相続財産総額を各相続人が法定相続通りに分配された財産に、それぞれ金額に応じた税率をかけ、合算することによりおおよその相続税額が計算できます。

さらに詳しい金額を計算したいときは、各人がどのような財産を相続するか分配、計算して定められた金額を控除することで各々の納税額が決まります。

配偶者控除や未成年控除など各人の立場や年齢に応じた控除もあり、特に配偶者控除は1億6,000万円と大きくなっています。

ここで、相続税の税額速算表を記載いたします。

法定相続分に応じた取得価額税率控除額
1,000万円以下0.1なし
3,000万円以下0.1550万円
5,000万円以下0.2200万円
1億円以下0.3700万円
2億円以下0.41,700万円
3億円以下0.452,700万円
6億円以下0.54,200万円
6億円超0.557,200万円

ここまで相続税について説明してまいりましたが、財産の評価も含めて相続税の計算は複雑で面倒です。

そこで税理士に依頼することになりますが、その報酬額は事務所によって異なっています。

ある事務所は相続財産の総額で決まり、別の事務所ではさらに相続人の人数も影響を与えたりします。

おおよそではありますが、数十万円は準備しておく必要があります。

そのため、納税資金の準備も含めて、生命保険に加入しておくことをおすすめします。

生命保険によって得られた保険金は、相続人おのおの500万円まで課税されません。

4. それ以外に課税される税金

法律で定められた相続人以外の人が遺言書によって土地や建物などの不動産を取得した場合、不動産取得税が課税されます。

また、相続であれ、遺贈であれ、不動産を取得し所有していることで毎年固定資産税が課税されることになります。

固定資産税は各年の1月1日に当該不動産を所有している人に課税されます。

相続した土地や建物などの不動産を売却したときや、賃貸物件を相続し不動産収入があると確定申告のときにそれぞれ譲渡所得、不動産所得という所得に該当し、所得税が課税されます。

また、税金ではありませんが、不動産を所有するとその所有者には管理者責任が課されることになります。

管理者責任とは所有する不動産の不備により他人に迷惑をかけてしまった場合、責任を負わなくてはなりません。

5. 相続登記(不動産の名義の変更)

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相続税の納税と同時並行で不動産の名義の変更、つまり登記をします。

ただ、相続税は10ヵ月以内に申告・納税しなければなりませんが、登記には期限はありません。

期限があるものを優先して順におこなっていったほうが混乱することなく進められていいかもしれません。

亡くなった人の名義を相続した人の名義に変更することを特に相続登記といいます。

先にも申し上げましたが、相続登記に期限はありません。

例えばお父様が亡くなり、10年以上名義変更していなくても法的な問題はないのです。

だからといって、いつまでも放っておいていいものでもないのです。

後述するように林地を相続する場合、その届出には名義変更済みの登記事項証明書を添付する必要があります。

また、相続登記をしないで放っておくことはいくつかリスクを生じることになります。

まず、時間の経過と共に権利関係が複雑化していきます。

例えば、今回の相続の相続人が亡くなると、さらに次の相続人が登場します。

こうして多くの登場人物が現れ、中には消息不明で連絡が取れなくなってしまう人も出てくるかもしれません。

そうなってから相続登記をしようとしても相当な困難を強いられるだろうと思われますし、何度も相続を経ていると登記の回数も増えるので費用もかかります。

また、相続した当該不動産を売却したり、借り入れの担保にしようとしたりしても故人名義のままではできません。

さらに、分割協議もしていないとなると不動産は相続人の共有ということになりますから、共有者のうちの誰かに多額の借金があって、差し押さえを受ける可能性もあります。

その場合、競売を経て何ら関係のない予期せぬ共有者が現れてしまいかねません。

そのときは買い取りませんなどもできますが、余分な経費が掛かってしまいます。

こういったことから、相続登記はお早めに手続きすることをおすすめいたします。

この相続登記、専門家に依頼せずに自分でできないだろうか、と思う方もいらっしゃると思います。

登記を含め、行政手続きの多くは自分ですることが予定されています。

ただ、なかには複雑な計算や知識が必要な手続きもあるため、各種士業などの専門家が報酬を得て代理で行っているのです。

相続登記の場合はどうなのかというと、相続関係が単純なものであれば十分ご自身で対応できるのではないでしょうか。

先述の準備段階の箇所でご紹介した戸籍謄本などの書類を集め、ケースバイケースで遺産分割協議書やあれば遺言書を使用します。

書類がそろったら申請書を作成して法務局に持ち込む、あるいは郵送すれば完了します。

ただ、必要書類や申請書の書き方は相続の形態によって少しずつ変わってきます。

まず、遺言書が見つかった場合から説明します。

遺言書には大きく分けて公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公正証書遺言は個人が生前、公証役場で作成したもので、すでに公の文書としての機能を有しています。

そのため手元にあればそのまま各種手続きに使用できます。

自筆証書遺言は家庭裁判所で検認という手続きを経て、その遺言書が有効であることを証明してもらわなければなりません。

そうした手続きの後に各種相続手続きに使用できるようになります。

他に秘密証書遺言というものもありますが、こちらについても検認の手続きは必要になります。

遺言書がある場合、登記申請書は次のように作成します。

用紙についてはA4の用紙を縦に置き、横書きにして次のことを記載していきます。

① 「登記申請書」と、お題目を掲げます。
② 「登記の目的 所有権移転」
③ 「原因 令和〇年〇月〇日相続」個人が亡くなった日付を記載します。
④ 「相続人(被相続人○○○○)○市〇町〇番地〇 相続人氏名 印 連絡先電話番号」
⑤ 「添付書面 相続を証する情報 登記原因証明情報 住所証明書」ここでは遺言書、自筆証書遺言の場合は検認証明書、故人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票、相続人の戸籍謄本や住民票、当該不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明になります。これらの書類は他の相続手続きでも使用しますので原本還付といって返却してもらったほうがよいです。原本還付のやりかたは、原本と共に原本をコピーしたものを提出するのですが、コピーの一部に「この写しは原本と相違ありません」と記載し、署名押印します。
⑥ 「令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局○○出張所」申請する日付と場所を記載します。
⑦ 「課税価格 金〇〇万〇,000円」固定資産課税台帳に登録されている不動産価額で1,000円未満を切り捨てて記載します。
⑧ 「登録免許税 金〇,000円」課税価格の1,000分の4が登録免許税になり、100円未満を切り捨てた金額を記載します。
⑨ 「不動産の表示 不動産番号 ○○○○○○ ○市〇町〇番○の土地」登記事項証明書に記載されているとおりに記載します。

遺言書がなく、遺産分割により相続登記をする場合、遺産分割協議書を使用します。

遺産分割協議とは、相続人みんなで誰がどのような財産を相続するか話し合いで決めることです。

みんなで、といっても全員が一堂に会する必要はなく、個別に電話などで話し合ってもかまいません。

ただし、遺産分割協議書に実印で記名押印する必要があります。

そのため添付書面に相続人全員の印鑑証明が必要になります。

登記申請書の書き方は遺言書があった場合とほとんど変わることはありません。

ただ、共有で不動産を相続する場合、共有者全員分の住所氏名とそれぞれの持ち分を記載する必要があります。

また、申請人をそのうちの一人に定めた場合、その者の記載箇所に(申請人)と併記したうえ、他の相続人の委任状が必要になります。

このように共有名義で登記することは可能ですが、今後の利用状況にもよりますが、あまりおすすめはできません。

もし、共有をやめて単独で不動産を所有することになったら改めて登記しなければなりませんし、管理の問題も生じてくるからです。

相続対象となる不動産が複数あり、それぞれ相続人が異なる場合には、その分の申請書を作成、提出することになります。

遺言書もなく、遺産分割協議もしない場合、法律で定めた相続分で相続登記をすることになります。

おのおのの相続人に応じた相続分が割り当てられ、その持ち分で登記します。

相続分は相続人によってそれぞれ異なります。

まず、相続には優先順位があって、配偶者がいるときは必ず優先されることになります。

そのうえで第一順位は子、第二順位は直系尊属(父母や祖父母)、第三順位は兄弟姉妹です。

先順位の者がいたら後順位の人には財産は相続されません。

それぞれの場合、相続分は次のようになります。

① 配偶者と子が相続する場合、配偶者が二分の一、残りの二分の一を子の頭数で等分ずつ
② 配偶者と直系尊属が相続する場合、配偶者が三分の二、残りを直系尊属の頭数で等分ずつ
③ 配偶者と兄弟姉妹が相続する場合、配偶者が四分の三、残りを兄弟姉妹の頭数で等分ずつ

法定相続分で不動産を相続すると相続人全員の共有となります。

したがって登記申請書の相続人を記載する箇所にも全員の住所氏名を記載することになります。

他に遺贈による相続もあります。

遺贈とは一言でいうと遺言による贈与ということで、相続人以外の人に遺言書により財産を贈与することで、遺贈の相手方は法人でもよいとされています。

ただし、法律上の相続人には遺留分という最低限保証された相続分があり、その部分も侵害され、自分の権利を主張したいのであれば、遺留分侵害額請求をする必要があります。

遺贈の場合、遺言書には「相続させる」という書き方になっているかもしれませんが、実質的な取引形態は遺贈になります。

ただし、課される税金は贈与税ではなく相続税になります。

相続登記する際は、申請書の書き方が他の相続のときとやや変わってきますので注意が必要です。

遺贈は贈与契約としてみることができるため登記申請書も契約による所有権移転に近い形式になります。

まず、原因の箇所を「相続」ではなく「遺贈」と記載します。

次に、いままで「相続人」と記載してきたところを「権利者」、被相続人を「義務者 亡○○○○」と追記します。

法律上の相続人のうちの誰か、もしくはそれ以外で皆の信頼を得られる人を遺言執行者に定め、その旨とその者の住所氏名を記載します。

遺言執行者を定めて申請するときは委任状と印鑑証明書を添付書面として追加します。

他に登記識別情報といって従前の権利証に代わるものが添付書面に加わります。

遺贈の場合、受贈者の戸籍謄本は必要ありませんが、それ以外は遺言書による相続と同様の書類を用意します。

登記申請書を法務局に提出すると不備がなければ3日から一週間程度で登記は完了します。

登記が完了すると各相続人に登記識別情報、登記完了証が通知されます。

添付書面も原本還付を希望していたら戻してもらえます。

これらの書類は窓口で受け取ることもできますし、郵送してもらうことも可能です。

6. 農地、林地の手続き

個人の状況によって農地や林地が相続されることがあります。

これらの不動産についてもそれぞれ届け出が必要になります。

農地の場合、10ヵ月以内に市区町村の農業委員会に届出をしなければなりません。

申請書は役所でももらえますし、行政書士に依頼して代理して届出をしてもらうこともできます。

相続登記済の登記簿謄本など、相続したことの確認ができる書面を添付し、申請書に必要なことを記載して提出します。

林地の場合、90日以内に取得した林地が存在する市区町村に届出が必要になります。

各市町村で用意してある申請書に必要事項を記載し、登記事項証明書や権利を取得したことがわかる書類の写し、土地の位置を示す図面を添付します。

7. まとめ

以上のように、不動産を相続すると名義変更手続きをすることはもちろんのこと、相続財産の評価額によっては相続税を納税し、また、固定資産税のように毎年課される税金の納税手続きも必要なこと、不動産の形態や状況によっては農地や林地の届出など、さまざまな手続きがあることをご説明いたしました。

煩雑な手続きだけでなく、費用もかかることもおわかりいただけたかと思います。

相続は突然やってきます。

遠い将来の話や他人事の話と思わず準備を怠りなくされておくことをおすすめします。
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