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相続財産に不動産(土地や建物)が含まれている場合には、相続が行われた後に法務局で相続登記(名義変更の手続き)という手続きを取るのが一般的です。

すぐに売却をするようなケースであっても、先に故人から相続人さんへの名義変更をします。

この不動産の名義変更、「登記」を専門にするのが司法書士です。

相続登記は期限が決められているわけではありません。

また登記を変更していないことに対する罰則もありません。

ではなぜ登記変更をする必要があるかというと、下記のような理由があげられます。

①登記をしないと所有者(権利者)が誰かわからなくなる

②将来、相続人の間で誰が相続したかで争いになる恐れがある

③不動産を売却する際には、正しい所有者での登記が必要になる

こういった理由から、多くのケースでは相続と一緒に登記の変更を行います。

特に③の点は注意が必要です。

将来的に土地を売却することがある際に、故人の名義になっていると、そのタイミングで相続登記を行うことになりますが、長い年数が経過した場合遺産分割協議書が行方不明になっているなどの想定外のことが発生していることがあります。

その時点で遺産分割協議書を作成するのは時間もかかりますし、相続人全員が集まるのが困難なこともあります。

また土地を担保に融資を受けるような場合があれば、抵当権設定の登記ができません。

このように不動産の登記上の名義を変えておかないと発生する問題がありますので、名義は確実に変更することをお勧めします。

登記が完了しますと、新しく所有者となる相続人さんに登記識別情報が発行されます。

登記識別情報は、以前は「登記済権利証」と言われたものです。

多くの場合、相続登記は司法書士などの専門家に依頼して手続きを行いますが、相続人が自分で手続きを行うことも不可能ではありません。

ここでは相続登記を行う際の手続きの流れについて解説させていただきます。

近い将来に土地や建物の相続に関わる予定の方は参考にしてみてくださいね。

相続登記の3つのパターンとは

不動産を相続した場合に行う相続登記には、3つのパターンがあります。

遺産を引き継ぐ相続人を定める方法には、以下の2つがあります。

(1)遺言書のとおりに遺産を分ける場合
(2)相続人の話し合いによって遺産を引き継ぐ人を決める場合

遺言書に従って遺産を分けた場合と、遺言書がないために遺産分割協議を行う場合とでは、相続登記の方法や必要となる書類に違いがあるので、それぞれ別に考えなければなりません。

また、遺産を特定の相続人が引き継がず、相続人全員の共有として登記する場合もあります。

亡くなった人が保有していた不動産は、相続が発生した直後には相続人が法定相続割合に応じて共有していることとなります。

しかし、相続人全員で共有している不動産は、共有者全員の同意がなければ売却することができないうえ、その不動産を利用する際にも制約を受けることになってしまいます。

そのため、通常は不動産を相続する特定の人を決めるのです。

不動産を相続する人を決める際に、亡くなった人が遺言書を残しているのであれば、その遺言書の内容に従って相続する人が決まります。

亡くなった人の意思を表示した遺言書は、相続人が遺産分割を行う際に最も優先されるのです。

この場合、「不動産を相続させる」と遺言書に書かれた人が単独で登記を行うことができます。

ただ、遺言書があっても相続人全員がその遺言書に従わないことで同意した場合は、遺言書に書かれた内容とは異なる方法で遺産分割をすることができます。

この時に相続人どうしで行われるのが、遺産分割協議です。

遺産分割協議は、相続人全員で話し合い、亡くなった人の遺産を相続人間で分割する方法を決めるものです。

遺産分割協議が行われるのは、遺言書の内容に従わないことを決めた場合のほか、もともと遺言書がない場合や、遺言書があっても一部の遺産について記載がない場合などです。

遺産分割協議が成立したら、どの遺産を誰が相続するのか誰が見ても分かるように、遺産分割協議書を作成します。

この遺産分割協議書は不動産の相続登記だけでなく、金融機関での払い戻しや名義変更などの際にも必要となる大切な書類です。

ただし、遺産分割協議はスムーズに成立する場合ばかりではありません。

特定の相続人が相続することに反対する人がいて遺産分割協議が成立しないのであれば、全員の共有とするしかないのです。

遺産分割協議を成立させるための方法

遺産分割協議にはすべての相続人が参加し、全員が遺産分割協議書に印鑑を押さなければなりません。

ところが、すべての相続人が納得する形で遺産分割をすることは簡単ではありません。

それは、遺産全体に占める不動産の比率が高いケースが多いためです。

不動産を単独で相続すると、不動産を相続しなかった人はわずかな預貯金などしか相続できません。

そのため、単に遺産をそのままの形で相続する方法(現物分割)だけを考えていても、遺産分割協議は成立しないのです。

そこで、土地自体を分筆して複数の相続人で不動産を分ける方法や、不動産を相続した人が不動産を相続しなかった人に対して、差額を現金で支払う方法(代償分割)などを検討することとなります。

2-1. 分筆による方法

分筆を行うと、1つの土地を共有ではない状態で2人以上の相続人が相続することができるため、遺産分割協議が成立しやすく、その後の利用や売却にも支障は出にくいです。

しかし、土地を2つ以上の土地に分筆する方法はかなり広い土地でなければ利用をおすすめできません。

例えば80坪の土地を2人で40坪ずつに分筆してしまうと、その後の利用価値は大きく低下してしまい、自分で使うことも売却することも難しくなってしまいます。

また、分筆すること自体に費用がかかることもデメリットです。

さらに、自宅を相続して住み続ける人がいる場合、分筆という方法を選択することはできません。

2-2. 代償分割

代償分割を行えば、不動産を相続した人はそのままの状態で不動産を利用することができます。

特に自宅を相続して住み続ける場合に有効な方法です。

一方、不動産を相続した人が自身で現金を保有していなければ、この方法を利用することはできません。

不動産以外の遺産が少ないほど代償金として支払う額も大きくなるため、代償分割を行うか決める前に、不動産の評価額とその他の遺産の額がどれくらいあるのか調べる必要があります。

2-3. 換価分割

この2つの方法でも遺産分割協議が成立しない場合は、不動産を売却することも考えなければなりません。

不動産を売却し、その売却代金を各相続人に分けることを換価分割といいます。

換価分割を行う際は、亡くなった人の名義のままでは売却ができないためいったん相続登記を行うこととなります。

もし法定相続割合にもとづいて換価分割を行うのであれば、いったん相続人全員が法定相続割合にもとづいて土地を相続したものとして相続登記を行った後、その土地を売却して代金を法定相続割合で分けることとなります。

換価分割を行う際にも相続登記が必要なこと、そして相続した割合に応じて共有割合を決定し、その割合に応じて売却代金も分けなければならないことに注意しましょう。

相続登記の流れ【遺言書がない場合】

相続登記の実際の流れは、遺言書がない場合とある場合とで異なります。

以下では遺言書がない場合の手続きの流れについて確認しておきましょう。

遺言書がない場合には、法律上当然に相続人となる家族が、遺産分割協議という話し合いを経て持分を決め、最終的に相続登記を行うことによって権利関係を第三者に対しても明示するという形で手続きが完了します。

具体的には、相続登記が完了するまでは以下のような流れで手続きを進めていくことになります。

3-1. 相続した物件の状況を確認する

まず、相続した不動産物件の状況を確認することから始めます。

よくあるケースが、相続財産の不動産が、自分の父親の名義になっていると思っていたら、実は祖父の代から名義変更がされていなかったというようなケースです。

だれがいつ不動産を取得したか等の情報は、その物件の登記簿謄本(登記事項証明書ともいいます)を法務局で取得することで正確に確認できます。

また、登記簿謄本を取得するためには、調べたい土地の地番や、建物の家屋番号を知る必要がありますが、これらの情報は固定資産税の納税通知書を見ると確認することが可能です。

3-2. 誰が相続人となるのかを確認する

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亡くなった方が遺言書を残していない場合には、その人の家族が相続人となります。

法律上、当然に相続人となる人のことを法定相続人と言いますが、法定相続人にはいわゆる優先順位がありますので、どのような人が法定相続人となるのかは正しく理解しておかなくてはなりません。

法定相続人の優先順位は以下のように考えます(なお、配偶者は常に以下の人たちと共同で相続人となります)。

第一順位:亡くなった人の直系卑属(子や孫)
第二順位:亡くなった人の直系尊属(父母や祖父母)
第三順位:亡くなった人の兄弟姉妹

例えば、相続が発生した時点で被相続人に子供と父親と配偶者がいるというような場合では、相続人となるのは配偶者と子だけで、父親は相続人とはなりません。

また、被相続人に母親と弟、配偶者がいるという場合では、配偶者と母親だけが相続人となって弟は相続人とはならないことになります。

相続登記の手続きは、最終的に相続人となる全ての人の同意を得た上で行わなくてはなりませんから、相続人となるのは誰なのか?を確定するために次のような作業を行わなくてはなりません。

◼︎相続人の戸籍謄本等を取得する

相続人となる人がわかったら、それら全ての人について戸籍謄本と住民票、印鑑証明を取得しておきます。

◼︎亡くなった人のすべての戸籍を取得する

相続人の範囲については民法が定めていますが、正確な家族関係を把握するために亡くなった人の戸籍謄本等を取得しておきましょう。

なお、ここでいう戸籍謄本等とは、戸籍謄本、改正原戸籍、除籍謄本、付票などが必要です。

亡くなった人について、出生時の情報にまで遡ることができる全ての戸籍謄本(亡くなった人が生まれた時に入っていた戸籍の情報まで)を取得しなくてはなりません。

実際には役所に行って「この人の相続に関する手続きを行いたいので、出生してから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を取得したい」というふうに相談すると対応してもらえます。

3-3. 書類を作成する

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相続財産についての情報がわかり、さらに相続人となる人を確定することができたら、いよいよ相続登記についての書類作成にとりかかります。

ここで作成する書類は「遺産分割協議書」と「登記申請書」の2つです。

◼︎遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議書は、相続人となる人全員が連名で作成する、相続財産の分配方法についての合意書です。

最終的にすべての相続人が署名捺印を行うことで有効になります(相続人が1人だけである場合には遺産分割協議書を作成する必要はありません)。

遺産相続をめぐっては家族同士が財産をとりあう…といったような事態になることも少なくありませんが、トラブルになるのはこの遺産分割協議がうまくいかない場合です。

親族同士が遠方に住んでいて連絡をとりあうこともままならなかったり、亡くなった方の生前の介護に関わった親族とそうでない親族がいる…というような場合、遺産分割協議がうまくまとまらないことになってしまう可能性が高くなります。

親族同士では感情的なもつれから本来まとまる話もまとまらない…ということが往々にして起こります。

そのような場合には他人である専門家に間に入ってもらうことで遺産分割協議を円滑に進めることを検討してみると良いでしょう。

遺産分割についての協議は税理士や弁護士といった法律の専門家に相談するのが適切です。

遺産分割協議書については決まった形式があるというわけではなく、法律上求められている項目についての事項が全て含まれているのであればどのような書式で作成しても問題ありません。

遺産分割協議書には以下のような内容を含める必要があります。

被相続人の本籍と住所
被相続人の氏名
相続発生の日(亡くなった日)
どの不動産について誰が相続するのか(不動産の情報については詳細に)
遺産分割協議が成立した日
相続人となる人全ての住所氏名の署名、実印での押印(印鑑証明が必要です)

◼︎登記申請書を作成する

登記申請書にも決まった書式があるわけではありませんが、A4の用紙で以下のような内容を含める必要があります。

登記の目的:相続登記の場合は「所有権移転」
登記の原因:「〜月〜日 相続」といったように書きます
相続人の氏名と住所、押印、相続財産の持分
添付書類の名称
申請日と申請を行う法務局の名称
課税価格と登録免許税の金額
不動産の情報(登記簿の情報から作成します)

3-4. 法務局で登記申請を行う

申請申請には「登記申請書」と言われる書類の作成が必要になります。

登記の目的や原因、相続人、添付書類、申請日、課税価格など登記に必要な情報を記載して申請します。

完成した登記申請書は、不動産のある場所を管轄する法務局で登記申請をします。

申請後、不備がなければ登記は実行されます。

この場合は法務局から特に連絡はなく、 1週間程度で「登記識別情報通知書」と「登記完了証」が送付されてきます。

もしも登記申請に不備があり受理されなかった場合、「補正」と「却下」の2つのケースがあります。

「補正」とは、不備を修正したり追加で資料を出すことで、問題点を是正すれば登記されるものです。

補正の場合は法務局から連絡が入りますので、いつまでに何をしないといけないのかを確認して、 直ぐに対応をする必要があります。

「却下」は、法律で定めれらた却下事項に該当することで、また新たに登記申請をし直す必要があります。

◼︎必要書類は?

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
:被相続人の本籍地の市区役所・町村役場

・被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
:被相続人の住所地の市区役所・町村役場

・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
:相続人それぞれの本籍地、住所地の市区役所・町村役場

・対象不動産を取得する相続人の住民票
:不動産を取得する相続人の住所地の市区役所・町村役場

・検認済みの遺言書または遺産分割協議書
:遺産分割協議書は相続人が作成

・対象不動産の登記簿謄本(全部事項証明証)
:どこの法務局でも取得可能

・対象不動産の固定資産評価証明書
:不動産所在地の都税事務所(東京23区の場合)、または市区役所・町村役場

◼︎かかる費用は?

・登記事項証明書代
:1通600円ほど

・戸籍、住民票、評価証明書代など
:数千円

・郵送で申請する場合は郵送代
・登録免許税=相続登記する不動産の固定資産評価額の0.4%
たとえば固定資産評価額が3000万円の物件の場合、3000万円×0.4%=12万円となる

ここまで書類が揃ったら、管轄の法務局で登記申請を行いましょう。

登記申請の内容に問題がある場合には登記官から連絡が入りますから、連絡先の電話番号が明確にわかるように申請書を作成しておかなくてはなりません。

なお、不動産の固定資産税の1000分の4の金額を登録免許税として納めなくてはなりませんから、法務局の窓口で印紙を購入して納めましょう。

相続登記の流れ【遺言書がある場合】

亡くなった方が遺言書を残している場合には、相続登記を行う場合に家庭裁判所の検認を受けたことの証明文が必要になります。

ただし、公正証書遺言の形で遺言書が残されている場合には家庭裁判所の検認を受ける必要がありませんから証明文は必要ありません。

また、次で説明する「遺産分割協議によって遺言書と異なる相続財産の分割を行なった場合」にも家庭裁判所による検認の証明文は必要ないことになります。

4-1. 遺言書と異なる内容の相続分を決められる?

被相続人が遺言書を残している場合には、基本的にその遺言書の内容に従って相続財産の分割を行い、最終的に遺言書で指定された相続人が相続財産の登記を行なって名義人となります。

遺言書は亡くなった人の生前の意思を表すものと言えますが、遺言書の通りに遺産分割を行うことがかえって公平感を欠き、遺族間でのトラブルを生じてしまうことも考えられます。

そこで、相続人となる人が全員で集まって行う遺産分割協議によって遺言書と異なる内容の遺産分割を行うことが合意され、全員の署名捺印がある遺産分割協議書が作成された場合には、遺言書と異なる内容の遺産分割を行うことが可能になります。

ただし、遺言書によって遺言執行人となる人が指定されている場合には、相続人は遺言書と異なる相続財産分割を行うことについて遺言執行人の同意を得る必要がありますから注意しておきましょう。

相続登記はいつまでに行う?

相続が発生した後には、相続税の申告や相続登記といった役所で行う手続きが発生します。

相続税の申告については相続が発生してから(つまり親族が亡くなってから)10ヶ月以内に行わなければならないというルールがあるのですが、相続登記に関しては「いつまでにやらなくてはならない」というルールは特にありません。

しかし、相続登記を行なっておかないと、次で説明するようなデメリットを受けてしまう可能性がありますから、取引の安全を確保する意味でも相続登記による不動産の名義変更を行なっておくのが適切です。

10年前に起こった相続に関する相続登記はできる?

相続登記には法的な期限はありません。

つまり、10年前に起こった相続に関する相続登記を今になってからするということも可能です。

ただ、あまり前に起こった相続については役所関係の書類の保存期間が過ぎているなどの事情から添付書類のすべてを揃えることが難しい場合もあります。

そうなると代替する「上申書」を準備しなくてはならないなど、無駄な手間と費用がかかることもあるのです。

なんで相続登記が必要なの?

なぜ、複雑な手続きを経てまで相続登記を行わなくてはならないのか、についても理解しておきましょう。

相続財産は必ず相続登記を行わなくてはならないというわけではなく、実際に相続登記をせずに済ませているケースも少なくありません(上でも説明させていただいた通り、いつまでに相続登記を完了しなくてはならないといったルールはありません)。

しかし、相続登記を行っておかないと、以下のような不利益が生じてしまう可能性がありますので注意が必要です。

7-1. 権利関係が複雑になる

第一に、相続発生後にいつまでたっても権利関係が確定しないというデメリットがあります。

相続登記を行なっていないと、もしあなた以外の相続人が勝手に不動産を売却してしまったような場合に、その取引の無効を主張することができなくなってしまうのです。

7-2. 売却や担保として差し入れることができない

不動産の売買や担保提供(お金を借りるために抵当権を設定すること)を行う時には、取引の相手方はその不動産の登記情報をチェックした上で取引関係に入るのが普通です。

もし取引を行う時点で不動産登記がされていなかったとすると、せっかくのビジネスチャンスを逃したり、必要な現預金を確保するといったことができなくなったりする可能性があります。

7-3. 他の相続人の事情により差し押さえられる可能性も

相続登記がされていないと、相続財産である不動産は相続人全員の共有という状態になります。

もし相続人の中の一人に借金の返済ができなくなってしまった人がいる場合、その人の債権者が借金のカタに不動産の共有持分を差し押さえてしまう可能性があります。

結果としてまったくの他人と不動産を共有することになってしまい、権利関係がさらに複雑になってしまう可能性があります。

相続登記を専門家に依頼した場合の費用はどのぐらい?

上でも少し説明させていただきましたが、相続登記に関する手続きは法律の専門家に代行してもらうことができます。

不動産登記に関しての法律家というと、第一には司法書士が考えられます。

司法書士に相続登記の代行を依頼した場合の費用は、不動産1件ごとにおよそ数万円から数十万円程度が相場です(不動産の固定資産税評価額を目安に費用を計算することが多いです)。

ただし、数年前と違って司法書士の報酬体系はそれぞれの司法書士事務所が自由に定められるようになっていますから、どの司法書士に依頼するかによって費用は大きく異なります。

実際に司法書士に相続登記を依頼する時には、複数の司法書士事務所に見積もりを依頼してみて、信頼できそうなところを見極めるのが良いでしょう。

登記手続きを依頼できる専門家としては、司法書士のほかにも弁護士も考えられますが、登記についての実務は基本的に司法書士がメインの職業領域としているのが実情です。

不動産の相続登記は早めに済ませる!

上記のように、相続登記の期限がないからといって放置してしまうと役所関係の書類が取れずに手続きに苦心することがあります。

また、不動産が被相続人の名義のままであると速やかに売却する必要が出てきたときでもそのまま売却することができなかったり、銀行からの借り入れが必要な時も担保に入れることができなかったりとさまざまな不都合が起こってきます。

一番厄介なのは相続人も亡くなっていて次の世代に移っているため、人数が増えてしまって遺産分割協議自体ができなくなるなど、深刻な事態を招くことがあるという点です。

相続登記には期限がないとはいえ、早く済ませておかなければ上記のように名義変更が困難になる事態が生じることもありますので、預貯金解約など他の手続きと同時に速やかに行うことが大切です。

9-1. よくある質問

Q. 不動産の名義変更はいつまでに済ませないといけないのでしょうか?
A. 相続の名義変更の登記は期限は設定されていません。また罰金などもございません。
ですが、所有権が決定していないと、他の人との間で所有権の争いになったり、
売却するときに問題になったりしますので、登記をしておくことを強くおすすめします。

Q. 登記に必要な書類はどこの役所で取得すればよろしいでしょうか?
A. 主な手続きに必要な書類は下記の場所で取得ができます。
戸籍・・・本籍地の市区町村役場
固定資産評価証明書・・・不動産の所在地の市区町村役場
固定資産税課税明細書・・・不動産の所在地の市区町村役場
印鑑証明書・・・住所地の市区町村役場
住民票・・・住所地の市区町村役場
不動産登記事項証明書・・・法務局(全国どこの法務局でも可能)

Q. 登記簿謄本を取得する際に、交付申請書に記入する不動産の住所が、
普段郵便などが届く「住所」ではなく、「所在・地番・家屋番号」を記入するように
言われました。この「所在・地番・家屋番号」はどこを見れば載ってますか?

A. 「所在・地番・家屋番号」は普段の郵便の宛先などで使用する住所と異なることがあります。
その場合は、固定資産税の課税明細書や、不動産の売買契約書などを見ると記載されています。

Q. 相続登記をしないでいることのデメリットは何ですか?
A. 相続登記をしなければ、不動産を売却することはできません。
また、その不動産を担保に入れて融資を受けることもできません。
また相続登記をしないうちに、万が一相続人の一人が亡くなってしまうと、相続人の数も増えてしまうことになりますので、
遺産分割協議がまとまりにくくなったり、必要となる書類が更に増えたり、役所の廃棄処分で必要な書類の収集が不可能になることにもなります。

Q. 登記申請時に戸籍謄本を送ったら、他の手続でも利用したい場合、
また戸籍謄本を取得しないといけないんですか?

A. ベンチャーサポートでは、法務局から原本を返してもらえる書類については全て原本還付の手続を取りますので、銀行での預金の払戻しなど、同じ書類を利用することができます。

Q. 権利証が見当たらないんですがどうすれば良いでしょうか?
A. 相続登記の申請の際には、一般的には権利証を原則、添付する必要はありません。
ただし、権利証がない場合には、その他の書類で遺産分割協議書や申請書に記載する不動産の内容を確認しなければいけませんので、慎重に書類を作成する必要があります。

まとめ

相続による土地建物の名義変更(相続登記)のやり方

1. 相続登記するには?

相続した不動産の登記上の名義を変更することを「相続登記」といい、法務局での手続きが必要。遺言書がない場合は、相続人全員の押印がある遺産分割協議書が必要になる。

2. いつまでにすればいい?

相続登記には期限はないものの、そのまま放置しておくと、ほかの相続人に名義を変えられるなどのトラブルが発生しがち。対象不動産を取得する相続人が決まったら、早めに手続きをした方がいい。

3. 必要書類は?

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本:被相続人の本籍地の市区役所・町村役場

・被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの):被相続人の住所地の市区役所・町村役場

・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書:相続人それぞれの本籍地、住所地の市区役所・町村役場

・対象不動産を取得する相続人の住民票:不動産を取得する相続人の住所地の市区役所・町村役場

・検認済みの遺言書または遺産分割協議書:遺産分割協議書は相続人が作成

・対象不動産の登記簿謄本(全部事項証明証):どこの法務局でも取得可能

・対象不動産の固定資産評価証明書:不動産所在地の都税事務所(東京23区の場合)、または市区役所・町村役場
4. かかる費用は?

・登記事項証明書代:1通600円ほど

・戸籍、住民票、評価証明書代など:数千円

・郵送で申請する場合は郵送代

・登録免許税=相続登記する不動産の固定資産評価額0.4%

たとえば固定資産評価額が3000万円の物件の場合、3000万円×0.4%=12万円となる

◼︎専門家からのアドバイス

相続サポートセンター
行政書士:田中千尋
手続き期限のない相続登記も早めに手続きを

相続税と違って相続登記に申請期限がないため、放置する人は少なくありません。しかし、その代償は大きく、実際に手続きを行う相続人にとっては非常に大きな負担となります。

当初相続人であった方が手続きせずに亡くなると次の相続人が出現します。これを繰り返すことで、シンプルであった権利関係は複雑化し、また当事者の人数も増える可能性があります。さらにその中に認知症の方や行方不明者がいるとますます手続きは難航します。そのため、売却や担保提供ができなかったり、他の相続人の事情で差し押さえられたりする可能性もでてくるので注意が必要です。手続きの円滑化及び紛争防止の側面からも相続登記は早急に進めましょう。

以上、相続登記の手続きの流れについて解説させていただきました。

相続財産に不動産が含まれる時には、権利関係を早期に確定し、将来的に売却や担保提供を行う時にスムーズに取引を行うことができるように相続登記を速やかに行っておくのが適切です。

また、相続登記には相続人となる家族間で相続を巡るトラブルを未然に防ぐという意味合いもあります。

本文でも解説させていただきましたが、不動産の相続登記を行わず、共有状態で放置してしまうと相続人の一部に借金などの問題を抱えている人がいる場合には将来的に不動産の処分が思うようにできなくなってしまう可能性があります。

もし相続登記の手続きに不備があると、過去に苦労してまとめた相続についての話し合いが水のあわ…なんてことにもなりかねませんから、できれば専門家のアドバイスを受けがなら手続きを行うのが望ましいと言えます。
(提供:相続サポートセンター