マクニカは、未来にタネまくメディア勉強会「フィジカル空間とサイバー空間の連携で2025年問題に挑む、人を楽にする先端リモートテクノロジー」を12月10日に開催した。今回の勉強会では、同社が提供するサイバーフィジカルシステム(CPS)ソリューションの中から、物理的な距離や肉体的な制約を超えて、複数の現場を効率的に管理し、作業の生産性を大幅に向上させることができる「遠隔操作・監視技術」ソリューションの現在地について紹介した。
まず、マクニカ イノベーション戦略事業本部 本部長の佐藤篤志氏が、サイバーフィジカルシステムを提供する背景やソリューション概要について説明した。「超高齢化社会の進展によって引き起こされる『2025年問題』が、いよいよ来年、現実のものとなろうとしている。国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる超高齢化社会では、日本全体の経済力は低下していく一方であり、国民生活の質が大きく損なわれると考えられている。人手不足の深刻化は避けられず、人力だけでは社会の需要をまかなえなくなる未来に向けて、テクノロジーと人間の共存が急務となっている」と、目前に迫る「2025年問題」に向けた課題を指摘する。「こうした課題に対して当社では、サイバーフィジカルシステムに注目。実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析・知識化を行い、そこで創出した情報・価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を目指している」と、実世界と仮想空間が綿密に連携するサイバーフィジカルシステムが課題解決のカギになると訴えた。
「サイバーフィジカルシステムは、半導体事業、セキュリティ&ネットワーク事業に続く、第3の事業領域に位置づけられる。現在は、スマートシティ&モビリティ、スマートマニュファクチャリング、サーキュラーエコノミー、ヘルスケア、フード&アグリテック、AI・DXといった領域でサイバーフィジカルシステムを展開している」とのこと。「当社が提供するサイバーフィジカルシステムのソリューションは、 東京大学 大学院工学系研究科 教授の梅田靖氏が提唱する『デジタルトリプレット(D3)』の考え方をベースにしている。単に仮想空間と現実空間をデジタル連携するだけでなく、人のノウハウや特殊技能などの暗黙知を形式知化し、サイバーフィジカルシステムに融合させている」と、人の知を主体としたデジタルトリプレット(D3)のフレームワークを採用したソリューションを提供しているのだと強調した。
「サイバーフィジカルシステムの中でも、遠隔操作・監視技術に関するソリューション事例としては、神奈川県の湘南ヘルスイノベーションパーク (湘南アイパーク)において医療MaaSの実証実験を行った。この実験では、自動運転バスが、外来患者の心電図・脈拍・酸素濃度などのバイタルデータを自動計測し、基礎カルテ情報を医師に送信することで、患者の待ち時間短縮とサービス向上を図った。また、慈恵会との取り組みでは、青森県唯一のユニット型介護老人保健施設『青照苑』において入浴介護デジタルツインを構築し、入浴の待ち時間やスタッフの業務時間の短縮を実現した」と、先端リモートテクノロジーの代表的な導入事例を紹介。「この他にもさまざまな領域に、サイバーフィジカルシステムのソリューションが広がりつつある。当社では今後も、人間中心の安全・安心で豊かな社会を支えるDX基盤として、サイバーフィジカルシステムを展開していく」との考えを示した。
続いて、マクニカ フィネッセカンパニー 第2統括部 プロダクトセールス第2部 部長の大川賢司氏が、今年9月に発表した車両/貨物の位置追跡・状態監視ソリューション「Macnica Tracks」について説明した。「物流業界は、ドライバーの高齢化に加え、時間外労働の上限規制にともなうドライバー不足など、全産業と比較しても労働力不足が深刻な状況にあり、物流全体の効率化の加速が求められている。また、コールドチェーン市場における温度/品質管理要求の高度化に対して、現場では、担当者によるデータのアナログ管理が行われており、作業負担の増加や必要なデータ(位置+温度)の分散化・煩雑化、リアルタイムのデータ監視といった課題を抱えている」と、物流業界が直面している課題を挙げる。
「これらの課題を解決するサイバーフィジカルシステムのソリューションとして『Macnica Tracks』の提供を開始した。同ソリューションは、ワールドワイドでシームレスに車両および貨物の位置追跡と状態監視が可能なクラウドサービス。当社の取り扱いメーカーであるQualcomm社で実績のある携帯電話通信技術を使ったモニタリング端末(QTSシリーズ)と当社開発のクラウドサービスおよびダッシュボードで構成されている」と、「Macnica Tracks」ソリューションの全体像を解説。「コールドチェーン向けの温度管理や衝撃検知、紛失・盗難防止や運行管理など、多岐にわたる機能を備えている。また、位置情報に加えて、温湿度・気圧・照度などのセンサーデータ、貨物への衝撃や落下・開封などのイベント情報が、クラウドを通じてオリジナルのダッシュボードで可視化することができるため容易かつ低コストで導入できる。これによって、商品や資産の輸送・保管時の状態をリアルタイムに監視し、追跡可能になると共に、ドライバーや現場担当者の作業負担も軽減できる」と、導入メリットをアピールした。
次に、マクニカ クラビスカンパニー ビジネスソリューション第2統括部 カスタマーサクセス室 室長の小川雅央氏が、警備業界向けのAI画像解析ソリューションについて紹介した。「警備業界では、少子高齢化の進展にともない、人手に頼らない効率的な警備体制の構築が求められており、AI画像解析による監視カメラ映像の活用に注目が集まっている。その中で当社は、AI画像解析ソリューションの取り扱いについて、既存カメラの活用を前提としていること、多数のカメラを少数の警備員でリアルタイムに監視できることをコンセプトに選定している」と、同社が取り扱うAI画像解析ソリューションのコンセプトに言及。「将来的にAI画像解析の技術は自動化に向かっていくが、現状では人を必要とする部分的な自動化と位置づけている。例えば、AI画像解析を活用することで、人を人にしかできない業務に集中させることができる。また、24時間365日、カメラの台数に関わらず、AIによる見守りが可能となる」と、現状のAI画像解析が貢献できるポイントを指摘した。
AI画像解析の具体的な導入事例については、「当社が提供している異常検知ソリューション『icetana』は、国内の大手ディベロッパー8社に導入されており、警備会社による活用実績は6社となっている。同ソリューションは、特定行動・状態に加え、各現場カメラ映像を自律学習することで事前に定義・想定しにくいさまざまな事象を検知でき、人の目に近く幅広い、精度の高い異常発見を実現する。これによって、警備品質を維持しつつ、巡回の一部を代替することで省人化や効率化を支援している」とのこと。「また、特定人物検知向け顔認証ソリューションでは、要注意人物リストとホワイトリストを併用することで、セキュリティ高度化とリピーター獲得を同時に実現。要注意人物を特定することで施設の安全性を高めると共に、属性やリピーターを検知することで効率的な店舗運営や販売促進活動に活かすことができる」と、AI画像解析を活用することで警備の省人化、高度化および効率化を図ることができると訴えた。