相続税申告にかかる税理士の報酬が高いと感じ、インターネットでできるだけ安い税理士を探したくなる気持ちは分かりますが、相続税申告の税理士報酬を見比べるにあたっては、税理士単体の料金だけでなく、
- どれだけ相続税自体の節税を考えてくれるか?
- 税務調査に入られても安心な「書面添付制度」に対応しているか?
という2点もあわせて比較しなければなりません。
この記事では、税理士報酬の相場と、どんな税理士に依頼すべきかという判断基準を示しますので、ぜひ相続税申告の税理士選びの参考にしてください。
この記事の監修者 税理士 古尾谷裕昭
1. 税理士によって相続税額が変わるってホント?
法律で決められている相続税の金額計算が、依頼する税理士によって変わるということは不思議に思うかもしれません。
しかし、税理士によって相続税の金額が変わることは事実です。
なかには税務署に質問しながら自力で相続税の申告書を仕上げてしまう方もいますが、絶対にお薦めできません。税務署は、相続税の節税について一切教えてくれないからです。
税理士によって相続税の金額が変わる代表例が、相続する土地の評価です。 相続税に不慣れな税理士ですと、検討すべき減額要素が考慮されておらず、余分な税金を払ってしまうことは実際によくあるケースです。
税理士によって相続税が変わるポイントは、土地の評価以外に、「遺産の分割方法」と「二次相続対策」などがあります。
遺産の分割方法は、相続人同士で協議して決めるものなので税理士が強く意見を出すものではないですが、財産の分け方によっては相続税が大きく減る可能性があるので、税理士の意見をもとに財産の分け方を決めるケースも少なくありません。
二次相続対策は、今回の相続税申告だけでなく、次回起こるであろう配偶者の相続税申告まで見越して、トータルの相続税額を最小化するために、将来予測まで行うということです。
ここで紹介した内容は、相続税に精通した税理士でなければ知らないこともあります。
※税理士にも専門分野がある
「税理士の選び方がよくわからない」
そんな多くのお客様に対して、私たちはよく医者のたとえ話をします。
もしもあなたが盲腸になって手術が必要となった場合、その手術は医者にお願いします。
ではその医者は何科の先生でしょうか?
もちろん外科の先生ですね。
下記の国税庁の資料を見てください。
平成29年3月末時点での税理士登録者数は76,493人、対して1年間の相続税申告件数は136,891件となっています。単純に割り算をすると、1年間に1人の税理士が何件の相続税申告を行っているかがわかるのですが、その数なんと「約1.8件」しかないのです。
税理士経験が10年、20年あったとしても、相続税の申告は全く経験がないという方が数多く存在します。
相続税は「誰が申告書を作成したか」で税額が大きく異なる税金です。 相続税申告は、相続に精通した相続専門の税理士に依頼するようにしましょう。
2. 相続に強い税理士は税務調査対策に力を入れている
2-1. 申告しても追徴金
一般的に、相続税申告を完了しても、そのうちの数割には「税務調査」が行われます。(通常の確定申告と比べて非常に高い確率です)
税務調査に入られると延滞税などの “罰金” が取られることにもなり、最終的には多くの税金を支払うことになります。
つまり、「普通に申告しても高い確率で加算税がかかる」ということなのですが、税務署側からしても、それだけ追徴金を取りやすいのが相続税だということです。
国税庁の発表によれば、2016事務年度の税務調査件数は合計で1万2116件で、申告漏れ等の非違件数は9930件。
なんと8割以上に追徴税のペナルティが発生しているというから驚きです。
(※税務署はシステムで一元管理してチェックしているため、不正をすれば確実に見つかって重加算税にもなります。
例えば、よくある節税で「毎年少しずつ贈与をする」という方法がありますが、これは贈与税を払っていても税務署に一番目をつけられる部分です。マイナンバーの活用等もあって、今後ますます監視が厳しくなると言われています)
2-2. 税理士でも難しい相続税
なぜここまで頻繁に税務調査が行われるのかというと、それは「相続税の特殊性」にあります。
厳密に言えば、税理士に依頼せずに自分で相続税申告することは不可能ではありません。
しかし、そもそも相続税というのは、税理士が学ぶ税法の中でも最難関 だと言われる科目なのです。
それだけ難しい相続税ですので、知識のない人が申告するということはまったく現実的ではなく、仮に形式上は終わらせたとしても、あとで追徴金を払わされて損する結果になるだけでしょう。
事実、申告ミスがあるだろうということで真っ先に税務調査の対象にされるのが、税理士の印鑑がない申告です。
ですので、時間的にもコスト的にも、ご自分で申告することは “絶対に” おすすめできない選択です。
続いてよくある失敗が、「専門ではない税理士に依頼すること」です。
実は、税理士に依頼しても税務調査は日常的に行われており、その度に多くの申告間違いが発生しています。(そうなると税理士に報酬を支払って、さらに税金も多くかかることになります)
2-3. 相続税が苦手な税理士
税理士は、みんな相続税のことを熟知しているというわけではありません。
税理士のうち、税理士試験で相続税法を合格しているのは約1割。
また、一般の税理士にとっては “依頼されること自体が少ない” という理由もあります。
相続専門ではない税理士にとっては相続税の依頼は「2~3年に1回くらい」の案件になるため、知識だけでなく経験面においても不十分なのです。
以上のような理由から、「相続税は相続専門の税理士に依頼するのが良い」となっており、実際、同業の税理士から当社へ依頼されることもよくあります。
(それだけ特殊なものですので、もしお付き合いのある税理士さんがいらっしゃる場合でも相続税限定でお気軽にご相談下さい。相続に関係のない勧誘などは致しません)
2-4. 相続税に強い税理士は税務調査の確率が大きく減少します
相続に強い相続専門の税理士とそうではない税理士は何が違うのか?ですが・・・
ここには “決定的に大きな差” があります。
私たちの場合は特に、申告書を提出する時点で「税務調査が入ってこないような申告」を行っているのです。
それが書面添付制度というものなのですが、これは“私たちの名前で責任持って正確な申告し、この申告については私たちが責任を持ちます” という品質証明書のようなものです。
申告内容に十分な自信がなければこの制度は利用できませんので、税理士なら誰もが利用しているものではなく、全体でもわずか10%程度のようです。
(もし申告ミスがあれば税理士側にペナルティが課せられることもあるため、9割の税理士は利用しません。) 税務署は申告が怪しいところを狙って調査に入るわけですから、この制度を利用した申告分に関しては「正しく申告している品質保証付き」なので一番後回しにして当然です。
“99%税務調査に入られない”というのは、以上のような理由があります。
実際のところ、費用以上に大事なのは、どれだけ相続の専門知識やノウハウがあるのかです。業界トップクラスの私たちなら、税務調査対策はもちろん、数々の節税によって費用以上の金額は簡単に元が取れます。
3. 相続税申告の税理士報酬の相場
相続税申告にかかる税理士の報酬金額は、相続財産の総額に連動して変わることがほとんどです。
インターネットで料金表を公開している税理士事務所の価格帯を調査した結果を、次の表にまとめます。
ただ、相続税の申告についてはいまだに料金表を作っていない税理士事務所も多く、ホームページを見ても、料金は応相談としか書いていないケースも見受けられます。
また、銀行に税理士を紹介されるケースも多いですが、銀行紹介の税理士は報酬が高額すぎることが多いので、絶対に避けるべきだと思います。少なくとも、依頼前にインターネットで税理士の相見積りをとるようにしましょう。
相続税の申告は、動く金額が大きいので、たくさん稼ごうと相場より高い金額を提示する税理士も多いのが現状です。
このページの後半で、弊社の料金表も参考に掲載しておりますので、こちらと比較して大幅に高い料金提示だった場合は、ぜひ一度弊社までご相談ください。
4. 書面添付制度の対応の有無は必ずチェック
書面添付制度とは、簡単に言いますと「私たち税理士が納税額が正確であることを責任を持って書面で説明しますので、税務調査を実施する代わりに、税理士が税務署で調査を受けます」という制度です。
(税務調査が必ず来なくなるわけではありません)
相続税の申告を税理士に依頼する場合には、この書面添付制度が含まれている料金かどうか?を確認してください。
税務調査への安心度が格段に違いますので、書面添付制度ありの料金で税理士の報酬を比較しましょう。
そもそも、書面添付制度に対応できない税理士は、選考対象から外してしまって良いと断言できます。
相続税の申告は、税務調査の実施確率が他より格段に高いです。
税理士の書面添付制度を利用して税務署に申告しましょう。
5. 当社(相続サポートセンター)の料金表
まず、遺産総額に応じて基本料金が定められており、そこにお客様の財産種類(土地の数や非上場株式の有無など)や相続人の数、申告期限まで時間があるか、間際なのか、といった状況を勘案して、最終的な報酬が決められます。
申告書作成には3ヶ月以上かかるような場合も珍しくなく、税理士と契約した後になって途中で数十万円以上の追加費用を請求する税理士もいます。
依頼する税理士を決める前に、追加費用なしの最終的な報酬の総額を確認しておくことが大事です。
6. 税理士の選び方・判断基準
6-1. 相続税に精通した税理士ですか?
実は、税理士の試験は制度上、「相続税法」を一切勉強しなくても資格をとることができます。
もちろん、相続税法をしっかり勉強し、その難関試験を通過した税理士もいます。
税理士先生に、試験ではどの税法に合格しましたか? と直接聞けるわけでもないのでその見極めはとても難しいでしょう。
本当に相続税に精通した税理士かどうかを確認するために便利な質問は、「過去何件くらい・年間何件くらい相続税の申告書を作成されていますか?」というものです。これなら失礼にあたりません。
相続税の申告は一人の税理士が数多く経験するものでもないので、月1件、年間12件以上あれば、最低限はクリアです。数十件以上の経験があれば十分でしょう。
相続税の申告で絶対に損をしたくない、詳しい税理士に相談したいという場合は、相続税申告を専門に取り扱っている事務所がお薦めです。
相続税申告を専門とする税理士事務所はここ数年で増えてきました。 弊社、相続サポートセンター(ベンチャーサポート相続税理士法人)も相続専門税理士事務所のひとつです。
6-2. 書面添付制度に対応していますか?
書面添付制度の対応の有無は必ずチェックに書いたとおり、相続税の申告は、税務調査の実施確率が他の税金より格段に高くなっています。
書面添付制度を積極的に活用してくれる税理士に申告を任せましょう。
実はこの制度、税理士の調べ漏れがあったり間違った記載をした場合には、その税理士自身が懲戒処分にされる可能性があるため、税理士にとってもリスクが大きいのです。
相続税の申告に自信を持っていて積極的に書面添付制度を活用してくれる、経験豊富な税理士を見つけましょう。
6-3. 見積書と請求書の金額は同じですか?
専門家が数ヶ月に及ぶ依頼を受けたときの悪しき慣習として、契約後の報酬の増額があります。
報酬の増額には、事前の説明もあり納得できる内容のものもあるでしょうが、契約前に最大金額を知りたいのが人情でしょう。
最終的に支払う金額が見積書にすべて記載されているかどうかは、契約前にしっかりと確認しましょう。
6-4. 税金以外の相談もできる専門家がいますか?
相続の手続きは、税金だけで完結するものではなく、預金・保険の名義変更から、不動産の登記変更な、様々な作業が同時に発生します。
理想を言えば、依頼した一人の専門家にすべての手続きの窓口となってもらえることですが、相続税申告・預金解約・不動産登記は、それぞれ税理士・行政書士・司法書士とお手伝いするのに必要な資格がそれぞれ別なのです。
だからといって3社別々に相続手続きの依頼をすると、ご家族の状況などの同じ説明を別々の専門家に3回もしなくてはなりません。
専門家の事務所の中には、弊社、相続サポートセンター(ベンチャーサポート相続税理士法人)のように、税理士がすべての窓口となって、必要な専門家が面談に同席できるような、いわゆる「ワンストップサービス」をウリにする事務所もあります。
相続手続きをまとめて依頼したい方は、そのような事務所を選んで探してみてください。
6-5. 税理士をしがらみで選んでいませんか?
上で述べた4つの税理士の判断基準を満たすために、一番問題となるのが「知り合いの紹介」です。
- 銀行の紹介の税理士
- 毎年確定申告でお世話になっている税理士
- 遠い親戚や、友人の親族の税理士
- 別の会合などで関係が深い税理士
信頼できる税理士・知っている税理士に依頼したい気持ちはわかりますが、場合によっては納税額が100万円以上かわり、その後の税務調査確率も大きく変わるという相続税申告の特殊性を知ったうえで、相続税に精通した税理士にぜひ依頼してください。
依頼される税理士にとっても、相続税を納めるあなたにとってもそれが最良の選択となるはずです。
東京、大宮、横浜、名古屋、大阪の5拠点で年間の相続税申告1000件を超える実績。きめ細かいフォローでお客様の心理的な負担や体力的な負担を最小にすることを心がけている。監修『プロが教える!相続・贈与のすべて』 コスミック出版
(提供:相続サポートセンター)