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「将来的に相続が発生するときに相続税を払うか、それとも生きているうちに贈与税を払っておくか?」は節税対策を考えるときに問題になるテーマですね。

特に気になるのが税率ですが、相続税、贈与税ともに最大税率は55%にもなりますから、これら2つの税金の計算方法を理解しておくことは大切です。

この記事では、相続税と贈与税の具体的な計算方法や、節税対策の基本的な考え方について解説させていただきます。

1. 相続税と贈与税はどんなときにかかる?

相続税がかかるのか、それとも贈与税がかかるのか分かりにくいケースもあります。

まず、それぞれで課税対象となる財産などについて確認しておきましょう。

1-1. 相続税と納税義務者

相続税は、死亡した人の財産を遺言や相続によって受け取った場合、もらった財産に課されます。

ただし、財産の合計額が、「基礎控除額」を超えない場合などは課税されません。

基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で表されます。

定額3000万円に、法定相続人一人当たり600万円が加算されることになります。

相続税の納税義務者は、遺言で財産をもらった人や、法定相続で財産を受け取った相続人です。

1-2. 相続税のかかる財産

相続税のかかる財産は、本来の相続財産に加え、生命保険金や退職手当金などのみなし相続財産、さらに、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産の3種類です。

生命保険金や退職手当金などは、被相続人が所有していた財産ではなく、死亡したことが原因で支払われるものですが、相続人が受け取るため相続財産とみなされます。

また、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産も、課税対象です。

財産の名義にかかわらず、実質的に財産を管理していたのが被相続人なら、課税の対象です。

1-3. 相続税のかからない財産

墓所や霊廟、祭具など葬祭関係の財産、生命保険金や死亡退職金などのうち非課税限度内の額は、相続税がかかりません。

死亡保険金も死亡退職金もそれぞれ、500万円×法定相続人の数までは非課税です。

1-4. 贈与税と納税義務者

年間110万円を超える財産をもらった場合、もらった人が負担するのが贈与税です。

1月1日から同じ年の12月31日までの1年間に、贈与を受けた財産の合計額が課税対象ですが、基礎控除額が110万円あるため、差し引いた残額に対して税が課されます。

1-5. 贈与税がかかる財産

原則として、贈与された財産に対して課税されます。

ただし、次のような場合には、贈与された財産とみなされます。

自分で掛金を負担しなかった生命保険や損害保険の保険金、相場より著しく低い金額で贈与された財産、無償で免除をしてもらった借金、無償で贈与された不動産や株券、返済義務のない借金などが該当します。

なお、知らずに名義を変更してしまうケースも考えられますが、贈与税の申告期限前や、税務署から贈与税の更正・決定を受ける前なら、名義を元に戻せば贈与税の対象にはされません。

1-6. 贈与税がかからない財産

贈与されても、贈与税の対象とならないものや、一定の額まで非課税になるもの、別の税金がかかるものがあります。

なお、非課税になる贈与は、扶養家族に対する生活費や教育費、結婚費用などがありますが、のちほど紹介します。

公職選挙法の規定に従う選挙運動の寄附金、通常の見舞金や贈答、心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権などは課税の対象になりません。

一方、法人からの贈与は、贈与税ではなく所得税がかかります。

1-7. 生命保険金は3種類の税金の対象

死亡保険金や満期保険金など生命保険からの給付金は、保険料を支払った人と受け取った人の組み合わせで、対象となる税金が異なります。

亡くなった人が保険料を払っていた場合は、非課税額を超えた部分が相続税の対象です。

一方、保険料を別の人が払っていた場合は、所得税か贈与税の対象です。

受け取った人が支払者でなければ、贈与税がかかります。

例えば、夫が支払っていた保険から妻の死亡保険金が支給された場合に、子が受け取れば贈与税の対象です。

逆に、受け取った人と支払者が同じ場合は、所得税の対象です。

例えば、夫が支払っていた保険から支払われる妻の死亡保険金は、夫の所得税の対象となります。

2. 贈与税の税率と相続税の税率どっちが低いの?

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まずはそれぞれの税金の税率について知っておきましょう。

贈与税、相続税ともに渡す財産が多くなるほど税率が高くなる累進課税の仕組みを採用していますから、税率を比較するときには「実際にいくらの財産を渡すのか」を具体的に計算してみる必要がありますので注意してください。

贈与税、相続税の税率は以下のようになります。

※()内の金額は実際に計算する際に、「課税対象額×税率」の金額からさらに差し引きする控除額です。

2-1. 贈与税の税率

贈与税の税率には、一般贈与税率と特例贈与税率の2種類があります。

20歳以上の子供や孫に財産を贈与するときには特例贈与税率で、それ以外の場合には一般贈与税率で計算を行います。

それぞれの税率をみると以下のようになりますが、基準となっている金額は「贈与した金額-基礎控除」で計算した金額です。

※()内は相続税のときと同様の控除額です。

▲特例贈与税率

200万円以下:10%(0円)
200万円超~400万円以下:15%(10万円)
400万円超~600万円以下:20%(30万円)
600万円超~1000万円以下:30%(90万円)
1000万円超~1500万円以下:40%(190万円)
1500万円超~3000万円以下:45%(265万円)
3000万円超~4500万円以下:50%(415万円)
4500万円超:55%(640万円)

▲一般贈与税率

200万円以下:10%(0円)
200万円超~300万円以下:15%(10万円)
300万円超~400万円以下:20%(25万円)
400万円超~600万円以下:30%(65万円)
600万円超~1000万円以下:40%(125万円)
1000万円超~1500万円以下:45%(175万円)
1500万円超~3000万円以下:50%(250万円)
3000万円超:55%(400万円)

2-2. 相続税の税率

1000万円以下:10%(0円)
1000万円超~3000万円以下:15%(50万円)
3000万円超~5000万円以下:20%(200万円)
5000万円超~1億円以下:30%(700万円)
1億円超~2億円以下:40%(1700万円)
2億円超~3億円以下:45%(2700万円)
3億円超~6億円以下:50%(4200万円)
6億円超~:55%(7200万円)

なお、上の一覧で基準となっている金額は「遺産-基礎控除」で計算した課税対象額のことです。

この相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×相続人の人数」で計算します。

例えば、遺産が1億円で相続人が3人いるときには「課税対象額=1億円-(3000万円+600万円×3人)=5200万円」となりますから、税率は30%ということになります。

3. 税率の比較は具体的な金額を想定して行う必要がある

上でも少し説明させていただきましたが、贈与税や相続税は累進税率の仕組みを採用しています。

そのため、税率について比較するときには実際に渡す具体的な金額まで想定して比較する必要があります。

例えば、1億円のお金を2人の子供に分け与えることを考えてみましょう。

贈与は生前に行われますから、10年間毎年同じ金額を分け与えるものとします(1億円÷10年間÷2人=1人につき毎年500万円)

3-1. 贈与税の場合

贈与税の金額=(贈与額-基礎控除110万円)×税率-控除額

1年あたりの贈与税の金額=((500万円-110万円)×15%-10万円)×2人=48万5000円

10年間の贈与税額合計=48万5000円×10年間=485万円

税金の負担率は、485万円÷1億円=4.85%となります。

3-2. 相続税の場合

相続税の金額=(遺産-基礎控除)×税率-控除額

相続税の金額=(1億円-4200万円)×30%-700万円

相続税の金額=1040万円

税金の負担率は、1040万円÷1億円=10.4%となります。

3-3. 贈与税は何年間かけて節税対策するのかが重要

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上の例では、相続税の負担率は10.4%、贈与税の負担率は4.85%ですから、圧倒的に贈与税の方が有利なように見えます。

しかし、これは節税対策の期間として10年間を想定した場合の負担率です。

贈与税の場合には基礎控除が1年ごとに決まっていますから、何年間かけて節税対策を行うのか?によって税金の負担が全く違ってくるので注意しなくてはなりません。

例えば2年間しか節税対策の期間がないとすると、1年あたりの贈与額は1億円÷2年間÷2人=1人につき2500万円となります。

こうなると贈与税の負担額は以下のようになります。

1年あたりの贈与税の金額=((2500万円-110万円)×45%-265万円)×2人=1621万円

2年間の贈与税額合計=1621万円×2年間=3242万円

この場合の税金の負担率は3242万円÷1億円=32.42%にもなってしまいますので、生前贈与のみの形で節税対策を行うのは有効ではないでしょう。

3-4. 生前贈与は財産がたくさんある人に向いている節税対策

上の税金負担率だけを見ると、生前贈与はできるだけ長い時間をかけてたくさん行っておいた方が良いようにも見えますね。

しかし、大多数の人にとっては、生前贈与による節税対策よりも、相続税による節税対策の方がメリットは大きいというのが実際のところです。

というのも、相続税は「3000万円+600万円×相続人数」で計算する基礎控除を超える金額の遺産がある人にのみかかる税金だからです。

ごく簡単にいうと、例えば奥さんと子供2人がいるという人の場合は、相続税の基礎控除額は4800万円ありますから、遺産の金額が4800万円より大きくない場合にはそもそも相続税を負担する必要がありません。

生前贈与による節税対策は、「ある程度大きい金額の財産を所有している人向け」とイメージしておくとよいかもしれませんね。

3-5. 単純に税率だけを比較してもあまり意味がない

また、相続税は相続が発生したタイミングでまとめて財産に課税されますが、贈与は生前に行われるものですから、「全財産を一度に誰かに渡してしまう」ということは通常考えられません。

このように、贈与税と相続税とでは税金計算の前提となっている状況がまったく違いますから、単純に税率票だけをみて「どちらの方がお得」といったように考えるのはあまり意味がないでしょう。

相続税と贈与税のどちらを負担するのがお得なのか?が気になる方は、あなたご自身の具体的な状況(遺産として残す金額や、家族構成など)をあらかじめ伝えたうえで、専門知識を持った税理士に相談してみることをおすすめします。

4. 財産を受け取る人がだれか?も重要

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財産を受け取る人が誰なのか?も重要です。

財産を受け取る人と財産を渡す人との関係によっては、大幅な節税になる方法が認められるケースがあるからです。

例えば、相続税には「配偶者控除」という非常に節税効果が大きい特例があります。

ごく簡単に説明すると、配偶者が実際に相続する遺産が1億6000万円を超えない場合や、1億6000万円を超える金額を相続する場合でも、遺言等ではなく法律のルールにのっとって相続分を決める場合には、配偶者に対する相続税は課税されないことになります。

具体的には次の①、②のいずれか少ない金額で計算します。

①配偶者控除額=相続税の税額×配偶者の法定相続分(最低1億6000万円)÷課税価格の合計

②配偶者控除額=相続税の税額×配偶者の課税価格÷課税価格の合計

4-1. 配偶者に相続税が課税されるケースは非常にまれ

遺産の金額がよほど大きい場合でない限り、亡くなった人の配偶者に対して相続税が課税されるケースは非常にまれ、ということが言えるでしょう。

なので、相続する人が配偶者のみである場合には、長年かけて生前贈与を行うことにどれだけ意味があるかは疑問です。

このように、相続人となる人がだれか?によっても相続税と贈与税のいずれの負担をするべきかは判断が異なりますから、具体的な状況を説明したうえで専門家のアドバイスを受けるのが適切です。

4-2. 扶養家族への贈与なら、生活費や教育費は必要な範囲まで課税されない

扶養家族なら、生活費や教育費として受けた贈与は課税されません。

通常で必要と認められる範囲内までの生活費や教育費に対しては、妻や子供たちなど扶養家族への贈与は、贈与税がかかりません。

しかしながら、教育費や生活費として与えられた財産を、ほかの用途に使った場合は課税されます。

例えば、貯金をした場合や住宅を購入する資金に充てた場合は、贈与税の対象です。

また、進学や就職などに際し、数年分の教育費や生活費をまとめてもらった場合には、もらった年に使わなければ、残った部分は贈与税の対象になります。

なお、後述する一括贈与の非課税を適用することもできます。

4-3. 障害のある方への贈与なら、最高6000万円まで課税されない

障害者のなかでも重い障害のある方なら、より高額の非課税の対象となります。

身体障害2級以上や精神障害1級、重度の知的障害、常に病床にあり複雑な介護を受けなければならないなどの重い障害がある方の場合、生活費として3000万円までは贈与に課税されません。

特に、これらに該当する方のなかで精神に障害がある方については、6000万円まで課税の対象外です。

なお、適用を受けるためには、信託銀行に資金を信託します。

税務署には、金融機関を通じて障害者非課税信託申告書を提出しなければなりません。

信託された資金は、生活費や医療費として定期的に払い出しが行われます。

5. どのような形の財産を渡すか?も重要

どのような種類の財産を渡すのか?も重要です。

土地や建物といった不動産を渡す場合には各種の特例が認められるケースが多く、場合によっては税金の負担を大幅に少なくできることがあるためです。

以下では特に節税効果が高い、相続税に関する「小規模宅地等の特例」について説明させていただきます。

5-1. 小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例は、亡くなった人が居住用の宅地として財産を所有していたときに使える相続税の計算方法です。

相続税の計算は遺産の金額がいくらか?をまず計算してから税額を計算していきますが、この「遺産の金額がいくらか?」を計算する際に、居住用に使っていた宅地については最大80%の評価減を受けることができるのです。

例えば、1億円の居住用不動産は80%にあたる8000万円を減額して、2000万円の評価額で相続税を計算することができるというわけですね。

また、ここでいう居住用宅地とは自分が住んでいるマイホームに限らず、賃貸アパートなどの形で所有している不動産も含みます。

不動産投資を行っている方も活用できる方法ですから、適用の要件などについては理解しておくと良いでしょう。

5-2. 小規模宅地等の特例の適用要件

小規模宅地等の特例を適用してもらうためには、次のような条件があります。

 ①居住用に使っている宅地で、宅地面積が200~400㎡までであること
 ②相続人が配偶者や同居の親族であること
 ③相続税の申告期限までに遺産分割協議が完了していること

①については、宅地を4種類に分けてそれぞれ限度面積と減額割合を計算する必要があります。

例えば、亡くなった人や親族が自分で住んでいたマイホームの場合には、限度面積は330㎡まで80%の減額を受けることができます。

実際の宅地の面積が500㎡で、金額が1億円だったとすると、遺産としての評価額は1億円-(1億円×330㎡÷500㎡×80%)=4720万円まで下げてもらうことが可能になります。

このように、小規模宅地等の特例は宅地の形で財産を所有している人にとっては非常に大きな節税効果を見込める方法です。

しかし、相続税の申告期限までに遺産分割ができていない場合や、後で見るように相続時精算課税制度を選択した場合には利用できなくなりますので注意が必要です。

6. どのような目的で財産を渡すか?も重要

住宅資金や教育資金、結婚や子育て資金としての贈与なら、一定額まで贈与税がかからなくてすみます。

6-1. 住宅取得資金としての贈与なら1200万円まで

父母や祖父母から住宅購入資金を贈与してもらう場合は、1200万円まで非課税でもらうことができます。

非課税になるためには、各種の条件があります。

もらう人が20歳以上で、所得が2000万円以下のほか、取得する住宅の延床面積や築年数、工事の発注先などに関する条件があります。

非課税限度額は、省エネ住宅かどうかによって、住宅取得の契約年度ごとに異なった額が定められています。

2020年3月末日までに契約の場合は、省エネ住宅なら3000万円、その他は2500万円まで課税されません。

その後は、年度を追うごとに限度額が低くなっていきます。

非課税になる額を差し引いた後の税額がゼロとなる場合でも、必ず贈与税の申告が必要です。

6-2. 配偶者への住宅資金贈与なら2000万円まで

親から子供へ住宅資金を贈与する場合、1200万円まで税金がかかりません。

これに対して、夫婦間の場合は課税されない上限が2000万円まで増額になります。

また、これに合わせて1年に110万円までの暦年贈与を適用することができます。

したがって、夫婦間なら合計2110万円まで贈与を非課税とすることができます。

住むための家や敷地を贈与する場合も、固定資産評価証明書などの評価額が2000万円まで非課税です。

なお、20年以上の婚姻期間があることが条件で、一回だけ適用されます。

該当する家には、贈与された翌年3月15日までに居住する必要があります。

必ず贈与税の申告が必要です。

たとえ非課税を適用すると税額がゼロになる場合でも、申告しなければ適用になりません。

6-3. 教育資金の贈与なら1500万円まで

扶養家族への教育費の贈与は基本的に課税されませんが、贈与した年に使い残した額は、課税の対象です。

しかしながら、一定条件を満たせば、教育資金の一括贈与は1500万円まで課税されません。

父母や祖父母から、30歳未満の子供や孫への贈与が前提です。

一括贈与であることを証明するためには、金融機関と契約して「教育資金口座」を開設・管理し、教育費として使用した領収書を提出しなければなりません。

課税の対象とならないようにするためには、申告が必要です。

金融機関を通じて、教育資金非課税申告書を提出します。

教育資金に該当する費用についても、範囲が決まっています。

入学金や授業料、施設費、試験料などが対象です。

また、学用品や給食費、修学旅行費など教育に必要な費用も対象です。

学習塾や水泳教室、学習塾、スポーツや文化芸術に関する習い事でも、一般的に必要な費用は対象になります。

6-4. 結婚・子育て資金の贈与なら1000万円まで

扶養家族なら、生活費や教育費のほか、結婚や出産の費用も贈与税の対象とはなりません。

ただし、結婚や出産の都度の贈与が前提です。

しかしながら、一定の条件を満たす結婚・子育て資金の一括贈与なら、1000万円の贈与まで税金がかかりません。

父母や祖父母からの、20歳以上50歳未満の子供や孫への贈与が前提です。

妊娠や出産、育児の範囲は、不妊治療や妊婦健診、分べん費、産後ケア、子供の医療費、幼稚園や保育所の保育料などが対象です。

なお、結婚に対しては、300万円までの贈与が非課税です。

婚姻1年前からの挙式費用や、衣装代などの婚礼や結婚披露宴の費用、また、新居の家賃や敷金などが対象です。

一括贈与であることを証明するためには、金融機関と契約して「結婚・子育て資金口座」を開設・管理し、結婚・子育て資金として使用した領収書を提出しなければなりません。

贈与税の対象とならないためには、申告が必要です。

金融機関を通じて、結婚・子育て教育資金非課税申告書を提出します。

相続税の申告期限まであまり期限がない方や、節税対策を何から始めたらよいかわからない…という方は、相続対策に詳しい税理士に相談してみることをおすすめします。

7. 節税対策は相続税と贈与税のトータルで考える

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ここまで見てきたように、自分の財産を別の人に無償で渡すときにかかる税金には、贈与税と相続税の2つがあります。

贈与税は生きているうちに財産を渡すときにかかり、相続税は亡くなった後に財産を渡すときにかかりますから、節税対策はこの2つの税金の負担をトータルで考えて行うことが必要です。

具体的には、相続が発生するまでまだかなり時間があると思われるケースでは、生前贈与を活用してできる限り財産を家族などに分け与えておいて、最終的に残った財産に相続税を計算する、という形をとることが税金の負担軽減につながります。

7-1. 暦年贈与とは?

「毎年、少しずつ贈与すれば贈与税はかからない」というのは多くの人が一度くらい耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは「暦年贈与」と呼ばれる方法ですが、受贈者(もらう人)1人あたり基礎控除と呼ばれる非課税枠があり、1年で110万円とされています。これを上手に使えば少しずつ相続財産を減らして相続税を減らすことができ、かつ贈与税も回避できるということになります。

7-2. 暦年贈与の活用方法

暦年贈与による対策に向いているのは「相続開始までに時間がたっぷりある人」です。たとえあげる相手が1人か2人であっても、10年、20年といった時間をかければかなり相続財産総額を圧縮することができます。また「あげる相手が多い人」も向いているといえます。あくまでも贈与税の基礎控除は「もらう人ごと」にカウントするので、1年の間であってもたとえば5人の相続人に110万円ずつ贈与すれば、年間550万円ずつ相続財産を圧縮できるわけです。つまり、それほど相続開始までの猶予がない人でも割と早いペースで相続税対策を進めることができます。ただ、相続開始前の3年以内になされた贈与は「相続財産に持ち戻して考える」ということになっているため、生前贈与で相続税対策をするのであれば早く始めるに越したことはありません。

7-3. 連年贈与とは?

暦年贈与の利用で気をつけておきたいのが、贈与の時期、やり方です。あまりにも毎年決まった時期に決まった金額を贈与していると、税務署は「実は最初から全額を贈与するつもりだったのだろう」とみなします。これを「連年贈与」といいますが、そうなると基礎控除は最初の1回分にしか適用されず、その後贈与された全額に対して贈与税が課税されてしまうのです。

7-4. 連年贈与とみなされないための対処方法

では、連年贈与とみなされないためにはどうすればよいのでしょうか。1つめは「贈与する金額を毎年変える」ということ、2つめは「贈与する時期を毎年変える」ということ、3つめは「途中で贈与しない年をはさむ」ということです。このように不規則な形で贈与すれば今度は税務署側が連年贈与だったことを証明しなければならないので贈与税は課税されない可能性が高くなります。

相続税節税効果の高い「暦年贈与」ですが、使い方には工夫が必要ですので、税理士とよく相談の上で慎重に行うようにしましょう。

7-5. 相続時精算課税制度とは?

このように、贈与税と相続税の対策をトータルで考えるときに有効な方法として、相続時精算課税制度というものがあります。

相続時精算課税制度とは、ごく簡単にいうと「事前に届け出を行っておくと、生前贈与にかかる贈与税は、相続が発生するときまで納付を待ってもらえる」という仕組みのことです。

なお、「納付を待ってもらえる」というのは、本来は贈与税として負担するべきところを相続税として負担する形を選択できるという意味です。

相続時精算課税制度を使った場合、2500万円までの生前贈与であれば贈与税を負担する必要がありません(2500万円を超える贈与を行った場合、一律20%の税率で贈与税がかかります)

贈与税の基礎控除額は年間110万円しかありませんから、1回あたりの贈与金額は少なく抑える必要がありますが、相続時精算課税制度を使うとこの点はある程度クリアできるというわけですね。

7-6. 相続時精算課税制度のデメリット

上のようにメリットの大きい相続時精算課税制度ですが、次のようにデメリットとなる部分もあるので注意しておきましょう。

 ①一度選択したら撤回できない
 ②贈与税の申告は毎年行う必要がある
 ③小規模宅地等の特例を使えない

以下で順番に説明させていただきます。

◼︎一度選択したら撤回できない

相続時精算課税制度は、いったん利用する意思表示をすると、後から撤回するということができません(実際には「相続時精算課税制度選択届出書」という書類を税務署に提出します)

相続が発生するまで想定よりもかなり長い時間が経った場合には、相続時精算課税制度を選択するよりも、暦年課税の形で生前贈与を継続的に行っておいた方が得だった…というケースも生じえます。

◼︎贈与税の申告は毎年行う必要がある

相続時精算課税制度の適用を選択した場合、贈与を受けた金額が基礎控除額(110万円)に満たない場合にも毎年税務署に対して贈与税の申告を行わなくてはなりません。

贈与税申告書の作成はそれほど難しいものではありませんが、あまり経験のない人は面倒に感じることもあるかもしれませんね。

なお、贈与税の申告は毎年2月1日~3月15日の間に行う必要があります。

◼︎小規模宅地等の特例を使えない

相続時精算課税制度は、小規模宅地等の特例と併用することができません。

小規模宅地等の特例は最大80%だけ相続財産評価額を下げることができる、非常に節税効果の大きい方法です。

財産を主に不動産の形で持っている人の場合は、相続時精算課税制度を選択するかどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。

なお、相続時精算課税制度は「1人の贈与者の贈与」についてのみ選択する形をとりますから、例えばAさんからの贈与については相続時精算課税制度を選択するけれど、Bさんからの贈与については暦年贈与を選択する、といった形も問題ありません。

8. まとめ:相続税や贈与税の対策は専門家に相談しよう

今回は、相続税と贈与税の税率や、負担金額についてさまざまな側面から比較してみました。

本文でも説明させていただいたように、これら2つの税金は具体的な状況や財産の金額を想定して税負担額を比較してみないと、どちらの方がお得か判断しにくい税金です。

また、贈与税についてはいつの時点で節税対策を開始するか(相続が発生するまでにどれぐらいの時間が残されているか)によっても節税対策の効果が大きく変わるのにも注意しなくてはなりません。

近い将来に相続が発生することが予想される方は、相続対策を専門としている税理士に相談することも検討してみてくださいね。
(提供:相続サポートセンター