相続サポートセンター
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相続又は遺贈により財産を取得した者が障害者又は未成年者である場合には、それぞれ下記計算式によって求めた金額を控除することができます。

今回は、具体的に数値例を使って、どのくらい税金が安くなるのか検討します。

相続人に障害者や未成年者があるという場合は、参考にしてください。

1. 障害者控除

1-1. 障害者控除の要件

相続税の障害者控除を適用させるためには、以下の要件にあてはまらなければなりません。

まずは、相続人が85歳未満の障害者であることです。

85歳以上である場合は障害者控除を受けることができません。

年齢要件をクリアしたら、次の要件を確認してください。

住所要件

要件の一つめは、日本国内に住所があることです。

日本国内に住所のない障害者の場合は、相続税の障害者控除を適用させることができません。

ただし、日本国籍を有しており、被相続人(今回相続される側の人)もしくは相続人のどちらかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所があったという場合は、障害者控除を適用できます。

障害の要件

要件の二つめは、相続や遺贈で財産を取得した時に障害者であることです。

さらに、障害者といっても、その程度や内容はさまざまであり、一般障害者と特別障害者に分けて税額の控除額が決められています。

国税庁の定めている障害者の範囲について簡単にまとめます。

次の章の計算の項目でも、一覧表にしてありますので、参考にしてください。

一般障害者とは、以下の要件をみたす人を指します。

(1)児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により知的障害者とされた方(重度の知的障害者をのぞく)
(2)精神障害等級が二級又は三級の方
(3)身体障害の程度が3級から6級の方

この他、精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が(1)または(3)に掲げる者に準ずる者として市町村長等の認定を受けている方や、戦傷病者特別援護法に基づく戦傷病者手帳を受けており、要件を満たした方も対象になります。

詳しくは、国税庁ホームページの法令解釈通達をご覧ください。

次に、特別障害者の範囲についてです。

(1)重度の知的障害者の方
(2)精神障害等級が一級の方
(3)身体障害の程度が1級または2級の方

この他、(1)または(3)に準じる者として市町村長等の認定を受けている方、原子力爆弾被爆者のうち厚生労働大臣の認定を受けている方などが対象です。

要件にあてはまるかどうかを確認したい場合は、国税庁ホームページの法令解釈通達をご覧ください。

また、規定が細かいので、はっきりとわからない場合は、お近くの税務署や相続に詳しい税理士に問い合わせてみることをおすすめします。

法定相続人であること

要件の三つめは、相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であることです。

法定相続人ではない場合、控除を受けることができません。

この「法定相続人ではない場合」というイメージがつきづらいため、一例を挙げます。

ある日、Aさんが亡くなりました。

Aさんは、友人のBさん(障害者)に自分の財産をあげるという遺言を残していました。

BさんとAさんには血縁関係はないので、Bさんは法定相続人ではありません。

もちろん、遺言に指定されたとおり財産を譲り受けることは可能です。

しかし法定相続人ではないので、障害者控除はありません。

さらに、間違いやすいパターンをご紹介します。

すでに配偶者を亡くしたCさんが亡くなり、Cさんの子供のDさんが相続することになりました。

Dさんの子、Eさん(Cさんからすれば孫)は障害者ですが、法定相続人ではありませんので、今回の相続について障害者控除はありません。

将来的に、Dさんが亡くなり、Eさんが相続することになれば、障害者控除が適用される可能性はあります。

2. 障害者控除の計算例

2-1. 計算式

障害者控除が適用されるのは85歳未満までです。

控除額は、85歳になるまでの年数に、1年あたり10万円を掛けて控除額を求めます。

障害者:10万円 ×(85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額
特別障害者:20万円 ×(85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

障害者の範囲

一般障害者特別障害者
児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者のうち重度の知的障害者とされた者以外の者精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項の規定により交付を受けた精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級又は3級である者として記載されている者精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級である者として記載されている者
身体障害者福祉法に身体上の障害の程度が3級から6級までである者として記載されている者身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級又は2級である者として記載されている者
戦傷病者手帳の交付を受けている者のうち障害の程度が恩給法に定める第4項症から第6項症等と記載されている者戦傷病者手帳の交付を受けている者のうち、精神上又は身体上の障害の程度が恩給法別表第一号表の二の特別項症から第三項症までである者として記載されている者
常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長等の認定を受けている者原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第11条第1項の規定による厚生労働大臣の認定を受けている者
精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者
精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

3. 未成年者控除

3-1. 未成年者控除の要件

未成年者控除の要件は、

・財産を相続または遺贈により取得したときに日本国内に住所があること
・相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること
・なおかつ未成年(20歳未満)であること

の3点です。

住所に関する要件については、相続または遺贈により財産を取得した時点で、日本国内に住所を持っていない場合でも要件をクリアできる場合があります。

日本国籍を持っている場合と持っていない場合で要件が違いますので、詳しくは「国税庁のホームページ」をご確認ください。

また、財産を相続した時に20歳未満であれば良いので、相続した後に誕生日を過ぎたとしても未成年者控除を適用することができます。

4. 計算式

相続税の控除額は、20歳になるまでの年数に10万円を掛けた金額になります。

10万円 ×(20歳 - その相続人の年齢)= 未成年者控除額

5. 注意点

未成年者は単独で法律行為を行うことができないので、遺産分割協議の際は特別代理人を選定し、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。

特別代理人とは、法定代理人とは別の人のことを指します。

法定代理人は、基本的には未成年者の親です。

どのような場合に特別代理人が登場するかというと、具体的には夫、妻、未成年の子供という家族のうち、夫が亡くなって、妻と未成年の子供が法定相続人となった場合が挙げられます。

両親ともに亡くなった場合も、未成年者が法定相続人になりますが、単独では法律行為ができないので特別代理人が必要です。

特別代理人は、相続人である未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所によって選任されますが、その際に候補者を決めておく必要があります。

特別代理人には資格は不要ですが、利害関係のない人でなければなりません。

簡単にいえば、今回の遺産相続とはなんら関係のない人を選ぶということです。

無関係な人に遺産分割協議の特別代理人を引き受けてもらうのは気がひけるかもしれませんが、特別代理人の制度は未成年者本人の利益を図るための措置なので、利害関係のない人を候補者としてください。

また、借金が多いので遺産相続を放棄したいという場合も、未成年者本人が家庭裁判所に申述することはできず、特別代理人を立てる必要があります。

未成年者は単独で法律行為を行うことができず、相続の時も特別代理人が必要という点を覚えておきましょう。

6. 余った控除額は扶養義務者から控除可能

障害者控除・未成年者控除で、それぞれ適用者の相続税額を上回る控除額があった場合には、その上回った税額分を扶養義務者から控除することができます。

この場合の扶養義務者とは、配偶者又は民法に規定する親族のことをいい、直系血族と兄弟姉妹がこれに該当します。

また、扶養義務者が2人以上いる場合には、それぞれの控除額の配分は協議によって定めることができます。

7. まとめ

今回は、相続税の障害者控除・未成年者控除についてご紹介しました。

福祉的観点からこのような減税措置が定められています。

要件にあてはまる場合は活用を検討してみてください。

住所・居住要件、障害に関する要件など、不明な点があれば、税務署や税理士に相談しましょう。
(提供:相続サポートセンター