相続割合
(画像=Jacob Lund/Shutterstock.com)

少子高齢社会に突入した昨今、相続は多くの方にとって身近な話題となっています。しかし実際の相続現場を見てみると、親族や関係者同士でトラブルが生じているケースが多々あります。

一度相続トラブルが発生してしまうと、相続を円滑にできない可能性が高くなるため、しっかりと対策を講じる必要があります。そこで今回の記事では、よくある相続トラブルの事例を基に、相続割合を決めるための考え方を探ってみたいと思います。

目次

  1. トラブルの多い相続問題
  2. 相続のもつれで起きるこわい現実
    1. 1.親族同士の関係性が悪化する
    2. 2.遺産分割が長引き互いに疲れ果てる
    3. 3.相続税や所得税に関する特例を活用できなくなる場合もある
  3. 相続で共通するトラブルの原因9つ
    1. 1.前妻の子供がいる
    2. 2.内縁の妻がいる
    3. 3.相続人の中に介護に携わった人がいる
    4. 4.遺言の内容が明らかに不平等
    5. 5.遺言に第三者に遺贈をする内容がある
    6. 6.相続財産に不動産がある
    7. 7.相続財産が一部の相続人により使い込まれた
    8. 8.相続人の一部が行方不明
    9. 9.被相続人に多額の負債がある
  4. トラブルを勘案した相続割合の決定方法
    1. 遺言により公平な観点で相続割合を決めておく
    2. 遺言がない場合は法定相続分に基づいて割合を決定する
    3. トラブルが生じたら早めに弁護士に相談
  5. 相続で疲弊しないためにも事前に相続割合は決めておこう

トラブルの多い相続問題

「相続トラブル」という言葉をよく聞きますが、実際のところ本当に相続では頻繁にトラブルが生じているのでしょうか?

家庭裁判所が平成30年度に受け付けた遺産分割の事件数を見ると、合計で1万3,040件に上ります。一年間で1万件を超える相続トラブルが生じていると考えると、相続の場面では頻繁にトラブルが生じていると判断できるでしょう。

平成20年度の遺産分割の事件数が1万197件であったことを踏まえると、この10年で大きく相続トラブルの件数が増加したことも見て取れます。今後も少子高齢化の影響で、ますます相続トラブルは身近なものになると考えられるでしょう。

参考:遺産分割事件数―終局区分別―家庭裁判所別 平成30年度

相続のもつれで起きるこわい現実

相続のもつれを放置すると、非常にこわい現実が待ち構えています。この章では、相続トラブルのもつれで起きる3つのこわい現実をご紹介します。

1.親族同士の関係性が悪化する

相続のトラブルがもつれることで、最も危惧すべきことは親族同士の関係性悪化でしょう。「元々仲が悪かったから、相続の時にそれが表面化しただけでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし実は、元々仲が良い親族同士でも相続トラブルがもつれることで、関係性が大きく悪化するケースは多々あります。最悪の場合、絶縁状態となりその後一切の関わりがなくなるリスクもあります。

普段から関わりがなかったり、仲が悪かったりするなら尚更です。関係性が悪化することで、葬式などの行事を円滑に進めることができなくなったり、最悪の場合訴訟に発展したりする場合もあります。

2.遺産分割が長引き互いに疲れ果てる

相続のトラブルがもつれるほど、遺産分割の話し合いも長引きます。遺産分割の話し合いが長引くということは、それだけ悩みごとも長引くことを意味するため、段々と精神的に疲弊していきます。

精神的に疲れ果ててくると、仕事や普段の生活にも支障が出てきます。収入が減ったり規則正しい生活を送れなくなったりすれば、最悪の場合は大きな病気にかかるリスクすらあります。

特に、相続人が高齢者の場合、相続トラブルによる精神的な疲れは大きな負担となるでしょう。相続トラブルによって疲れがたまり続け、相続人自体が寝たきりになるなどのリスクもあるので十分な注意が求められます。

3.相続税や所得税に関する特例を活用できなくなる場合もある

資産を相続する配偶者や子供にとって、相続税の負担はとても大きなものです。そこで国は、「相続税の配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」などの特例を設けており、こうした特例を活用することで相続税の負担を大幅に低減することが可能となっています。

また、相続により取得した土地や株式などの財産を売却した場合、相続税額のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例を使えば、所得税を節税することも可能です。

しかし、こうした特例を活用するには、期限内に申請する必要があります。期限内に申請するには、原則遺産分割協議が終了している必要があります。

つまり、相続トラブルが長引いて遺産分割協議が終わらないと、節税につながる特例を活用できなくなってしまいます。相続人同士で足を引っ張り合うと、全員が損をする結果に終わるので要注意です。

相続で共通するトラブルの原因9つ

では、なぜ相続の場面ではトラブルが生じてしまうのでしょうか? さまざまな事例に共通して見られる相続トラブルの原因を9つに分けて解説します。

1.前妻の子供がいる

相続トラブルであるあるなのが、被相続人と前妻との間に子供がいるケースです。兄弟姉妹の間で親の遺産を分け合おうと思ったら、突然会ったこともない前妻の子供が相続権を主張してくるケースは多々あります。

このケースがトラブルになる原因は、お互いの感情です。前妻は法律上赤の他人となりますが、前妻の子供は変わらず被相続人の子供となるため、相続する権利を持っています。一方で親と一緒に育ってきた兄弟姉妹からすると、一度も会ったこともない上に、親の世話をしなかった前妻の子供に遺産の一部を分け与えることに対しては中々受け入れられないのが普通です。

このように、「前妻の子供」と「現在の妻の子供」の間で相反する考え方を持つため、相続トラブルに発展するのです。

2.内縁の妻がいる

婚姻の届け出は行っていないものの、実質的に夫婦として一緒に暮らしている「内縁の妻」がいる場合も、相続の際にトラブルに発展しやすいです。

こちらのケースでは、「内縁の妻」と「前妻の子供たち」の間でトラブルに発展します。法律上、内縁の妻には原則相続権は生じません。しかし生前に生計を共にし、生活を支えた内縁の妻からすると、ほとんど生活に関与していない前妻の子供たちにすべての財産を持っていかれるという事実は、受け入れ難いものでしょう。

一方で、前妻の子供たちからすると、法律的に相続権のない内縁の妻に対して遺産を分け与えたくはないと考えます。

両者の考えが真っ向から対立する結果、相続トラブルに発展します。

3.相続人の中に介護に携わった人がいる

相続人の中に被相続人の介護に携わった人がいる場合、他の相続人との間でトラブルとなる可能性が高いです。

たとえば、相続人の一人である長女が、被相続人である親の介護に付きっきりだったとしましょう。長女からすると、他の兄弟たちよりも親の介護に貢献したからより多くの財産を相続したいと考えます。一方で他の兄弟たちからすると、介護を理由に自分たちの取り分が減ることには我慢がならないという場合が多いです。

この結果、介護に携わった相続人とそれ以外の相続人との間で意見が対立し、遺産分割協議が長引く傾向にあります。

4.遺言の内容が明らかに不平等

相続トラブルは、遺言でしっかり相続の割合を決めていないから起きるというイメージがあります。しかし遺言が存在しても、その内容が明らかに不平等であればトラブルに発展する可能性が高いです。

たとえば世話をしてくれた子供にほとんどの財産を相続させ、それ以外の子供にはほとんど資産を残さない旨が書かれている場合、子供たちの間でトラブルが生じるでしょう。

法律上、兄弟姉妹を除いた法定相続人に対しては「遺留分」として、最低限相続できる資産の取り分が決まっています。遺留分の制度を使えば遺言の内容に関係なく最低限の資産は相続できるものの、遺言で多めにもらえるはずだった相続人は受け入れられない可能性があります。

円満な話し合いや説得を経ずに遺留分減殺請求を行うと、遺産を最低限確保できる代わりに対立が激化し、兄弟姉妹間で絶縁状態となる場合もあります。

5.遺言に第三者に遺贈をする内容がある

遺言関係で大きな問題になり得る内容といえば、第三者への遺贈です。

通常は、配偶者や子供などの限られた親族間で相続は行われます。しかし、遺言の中にまったくの他人に遺産の大半を与える旨が書かれていた場合、本来の相続人たちの取り分は大幅に減ってしまい、遺贈の相手と大きなトラブルに発展する可能性があります。

最悪の場合、「愛人」にほとんどの資産を分け与える内容が書かれているケースもあります。一応こうしたケースでも、遺留分減殺請求により法定相続人は最低限の遺産を引き継げます。しかし、まったく関係がない上に妻にとっては夫を奪った相手に遺産の大半を取られるとなると、到底受け入れられない結果となるでしょう。

6.相続財産に不動産がある

相続財産に土地や家屋といった不動産がある場合、かなりの確率でトラブルに発展します。トラブルに発展する可能性が高い理由は2つあります。

1つ目の理由は、現金とは異なり法定相続分に応じて分けることができない点です。現金なら1,000万円ずつといった形で分けることができます。しかし不動産の場合はそれができません。たとえば3,000万円の価値がある家屋を、3人で1,000万円ずつ分けるのは現実的に不可能でしょう。

このような場合、不動産を相続する人が、他の相続人に対して法定相続分の現金を支払う形で問題を解決することもできます。しかし不動産の相続人が現金を持っていなければ不可能です。また、不動産を売却して現金を分け合うという方法もあるものの、不動産を売却したくない相続人がいると揉めてしまいます。

2つ目の理由は、不動産の価値評価方法が複数ある点です。たとえば土地一つをとっても、「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあり、相続人の間でどちらの方法を採用するかで意見が別れる可能性があります。

相続において不動産は、平等に価値を分けにくい上に、その価値を評価する方法もさまざまあるため非常に厄介な存在です。しかし大半の相続では、財産の中に不動産が含まれているため、不動産を理由としたトラブルは避けにくいのが現状です。

7.相続財産が一部の相続人により使い込まれた

一部の相続人により、相続財産が勝手に使い込まれていたことによりトラブルに発展するケースもあります。

たとえば親(被相続人)と同居している長男が、親が認知症であることを良いことに、勝手に相続財産を使い込む場合などが最たる例です。このとき、使い込んでいた分だけその相続人が引き継ぐ資産の金額を減らすことができれば問題ないでしょう。

しかし大抵の場合、使い込んでいたとしても当の本人は使い込んでいた分は別として、法定相続分の額を相続する旨を主張するため、それ以外の相続人との間でトラブルに発展します。

8.相続人の一部が行方不明

相続人の一部、たとえば被相続人の次男が行方不明となっている場合、その対応をめぐってトラブルに発展する可能性があります。そもそも法律的には、たとえ行方不明だとしても相続する権利を持っています。

そのため、本来は戸籍をたどるなどの方法で行方不明の相続人を見つけた上で、遺産分割を実施する必要があります。もしくは「失踪宣告」という手続きを行わなくてはいけません。

しかし遺産分割を急ぐあまり、行方不明の相続人を無視して相続の手続きを進める場合もあります。ですが、行方不明の相続人を無視して相続の手続きを行うと、遺産分割協議の効力自体が無効となってしまいます。

このように、相続人の一部が行方不明となると、面倒な手続きが増えたり、円滑に遺産分割を進めることができなくなったりなどのトラブルが生じます。

9.被相続人に多額の負債がある

相続というと、現金や土地、建物などのプラスの財産を引き継ぐ行為であるとイメージされていますが、借金などのマイナス財産も相続の対象となります。

負債の額を資産が上回っていれば多少なりとも資産が残るものの、そうでない限り相続人は借金を背負うことになってしまいます。一見すると厄介なトラブルですが、他のトラブルと比べると比較的対処しやすいです。というのも、「相続放棄」という制度を活用すれば借金などを引き継がなくて済むためです。

ただし相続放棄を行うと、プラスの資産を相続する権利も失います。どうしても手放したくない資産(親が残した土地など)がある場合は、その対応をめぐって相続人の間で意見が対立する可能性もあるため注意です。

トラブルを勘案した相続割合の決定方法

相続を円滑に終わらせるには、「トラブルを未然に防ぐ」・「トラブルが生じても、なるべくもつれさせない」という2点が重要となります。その上で、トラブルを勘案した上で相続割合を決定しなくてはいけません。

遺言により公平な観点で相続割合を決めておく

トラブルを回避する上でもっともおすすめなのは、あらかじめ遺言を作成しておき、その遺言に基づいて相続割合を決定する方法です。

相続割合をはじめとして、相続の内容を決定する方法には「法定相続分」や「遺産分割協議」などがあるものの、最も優先されるのが「遺言の内容」です。つまり、法律に基づいて作成された遺言書を作成しておけば、基本的にはその内容に沿って相続を円滑に実施できるわけです。

ただし、前述したとおり遺言書の内容をめぐってトラブルに発展するケースもあります。遺言書の内容をめぐってトラブルを防ぐためには、公平な観点で相続割合を決定することが重要です。

トラブルを未然に防ぐ上で、遺言書作成で意識したいポイントを下記にまとめたので参考にしていただければと思います。

  • 愛人などのように身の回りの世話をしていない相手には基本的に遺贈しない
  • 内縁の妻など、身の回りの世話をしてくれた相手には多少残しておくのもアリ
  • 身の回りの世話をしてくれた相続人には多めに財産を残す
  • 各相続人について、最低でも遺留分に該当する財産は残す
  • 不動産の価値を算定した上で、公平に相続割合を定める

遺言がない場合は法定相続分に基づいて割合を決定する

あらかじめ遺言書で公平な相続割合を決めておくのが一番ですが、相続の時点で遺言がない場合はどうすれば良いのでしょうか?遺言がない場合は、民法で規定されている「法定相続分」に基づいて相続割合を決定するのがベストです。

法定相続分は、被相続人との関係性に応じて割合が決まっているため、比較的理にかなった相続割合となっています。そのため、最初から法定相続分に基づいて割合を決定すれば、円滑に相続の手続きを終わらせることができます。

トラブルが生じたら早めに弁護士に相談

たとえ遺言があろうと、法定相続分に基づいて相続割合を決めようとしても、一部の相続人が反対した場合や、思わぬ人物(内縁の妻など)が相続する権利を主張した場合、トラブルとなり円滑に相続が進まなくなります。

仮に相続のトラブルがこじれてしまったら、早い段階で弁護士に相談するのがベストです。相続人同士で感情的に言い争いを続けると、相続の手続きを進められない上に、関係性も悪化してしまいます。

しかし冷静かつ公平な立場から判断できる弁護士を介入させることで、相続人同士が落ち着いた上で平和的にトラブルを解決できる可能性が高くなります。

相続で疲弊しないためにも事前に相続割合は決めておこう

相続では多額の資産が絡んでくるため、たとえ仲が良い同士でも大きなトラブルに発展します。一度こじれてしまうと、各種特例が活用できなかったり、関係性が悪化したりなど、百害あって一利なしです。

無駄に疲弊しないためにも、今回ご紹介した方法でトラブルをなるべく発生させない形で、相続割合を決定しておくのがオススメです。

なお万が一トラブルが生じた際には、悪化する前に弁護士に相談することで円満な相続を実現できるでしょう。

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