相続財産の中には、故人が亡くなった日の時価で評価することが難しい種類のものもあります。
時間単位で金額が変動する「株式」などは、その代表格です。
今回は、株式・公社債などの評価方法について説明します。
1. 上場株式の評価方法
上場株式は、その株式が上場されている証券取引所が公表する4種類の価格のうち、最も低い株価を財産評価額の計算に利用することができます。
具体的には、下記の終値平均値が最も低いものを評価額とします。
① 死亡日の終値
② 死亡した月の日々終値の平均
③ 死亡した前月の日々終値の平均
④ 死亡した前々月の日々終値の平均
例えば、故人が3月3日に亡くなった場合は「3月3日の最終価格」「3月の最終価格の平均額」「2月の最終価格の平均額」「1月の最終価格の平均額」の中から選びます。
さらに、その株式が複数の証券取引所に上場されている場合は、納税する相続人がどの取引所の価格を採用するかを選ぶことができます。
2. 非上場株式の評価方法
非上場株式は取引所の時価がないため、評価が少し難しくなります。
相続などで株式を取得した株主がその会社の経営支配力を持っている同族株主の場合は「原則的評価方式」で評価します。
その会社の社員などの経営支配力のない株主の場合は、評価方法の簡便性も考慮して「配当還元方式」で評価します。
「原則的評価方式」は、会社の規模によって、さらに評価方法がわかれます。
同族株主の場合は規模によって異なります。
因みに会社規模は、業種別の売上高・従業員数により区分基準が設けられています。
会社規模 | 評価額計算方式 |
大会社 | A 類似業種比準方式(配当・利益・純資産価額の3つの値を類似業種から参照する) |
中会社 | B AとCの折衷方式 |
小会社 | C 1株当たり純資産価額 |
大会社は類似業種の株価を基にする「類似業種比準方式」、中会社は「類似業種比準方式と純資産価額方式の併用」、小会社は会社の総資産や負債を基にする「純資産価額方式」で評価をします。
大・中・小という会社の規模は、総資産価額・従業員数・取引金額で判定されます。
「配当還元方式」は、1年間で受け取る配当金の金額を一定の利率で還元して株価を評価する方式です。
評価とは違う観点からも考えてみましょう。
非上場の中小企業の事業継承をスムーズに行うことを目的として、相続した非上場株式にかかる一定割合の相続税の納税を猶予したり、免除したりする制度が設けられているのを知っているでしょうか。
先代が存命のうちに株式を譲る時は、贈与税にも同様の制度を利用できます。
評価のことばかりでなく、どのタイミングで事業継承をしたら一番良いのかも気にかける必要があると言えます。
制度を利用するには、後継者や従業員の雇用に関する条件などにも注意しなければければならないので、判断が難しいこともあります。
スムーズな事業継承をできるかどうか不安があるという事業主は、早めに税理士や公認会計士などの専門家に相談するようにしましょう。
贈与税や相続税の分野を得意としている専門家であれば、特に安心です。
3. 公社債の評価方法
一般投資家から資金を集めるために国や地方公共団体、会社が発行する有価証券です。
公社債は、銘柄ごとに100円単位で「割引発行の公社債」「利付公社債」「元利均等償還が行われる公社債」「転換社債」の4つに区分して評価します。
3-1. 割引発行の公社債
「割引発行の公社債」は券面額よりも安い価額で発行される債券で、券面額と発行価額の差が利益になります。
上場されている公社債は相続開始した日の市場価格、非上場の公社債は発行価額+既経過の償還差益の額-源泉所得税、が評価額となります。
3-2. 利付公社債
「利付公社債」は年に2回利息が支払われる公社債です。
発行価額+既経過の利息-源泉所得税という計算式で評価します。
3-3. 元利金等償還が行われる社債
「元利均等償還が行われる公社債」は、元本と利息の合計額が、定期的に同じ金額で支払われる公社債です。
相続開始した日の解約返礼金の金額などを用いて、定期的にお金が支払われる権利を評価する場合の方法に準じて評価するとされています。
3-4.転換社債
「転換社債」の評価は、原則として利付公社債の評価方法に準じています。
4. 投資信託の評価方法
上場株式と違って、相続開始した日の価格を基準として評価します。
具体的には下記の計算式を使います。
「相続開始した日の基準価格 × 口数 - 相続開始した日に解約した場合の所得税・信託保留金・解約手数料」
株式や投資信託などの相続財産を評価する場合、故人がどの証券取引所で、どれくらいの資産を保有していたか把握することから始めなければならないこともあります。
多くの資産を分散させて保有している場合は大変な作業になりますから、故人が存命のうちに、できるだけ確認しておくと良いでしょう。
そして、相続対策が必要になりそうだと判明した場合は、早めに専門家に相談することが得策です。
(提供:相続サポートセンター)