食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈モモは上げても小幅な上げに、ムネは概ね横ばい〉
8月の鶏肉需給は、盆休み前の手当ての動きに加え、南海トラフ地震臨時情報や台風などの影響で欠品を防ごうと、モモ、ムネともに引合いが強まった。盆休み明け以降も台風の発生などで天候が読み難く、末端では在庫を多めに確保する動きがあるようで、9月に入ってからも引合いは継続している。相場動向をみると、モモは盆休み前こそ日経加重平均で602円まで下げていたものの、休み明け17日には618円と反発した。当初は、月末にかけてジリ下げが予想されていたものの、実際は下げに向かうことはなく、日によっては620円を上回る日もみられた。一方、ムネは引続き安価なアイテムとして堅調な需要に支えられ、休み明け以降は、概ね360円前後で推移した。

この結果、8月の月間平均は日経加重平均でモモが613円(前月613円)で前月並みの価格を維持し、ムネは359円(355円)とわずかに上げた。正肉合計は972円(968円)。一方、前年同月比では、モモが60円安、ムネが24円安と引続き前年価格を下回っている。

[供給見通し]

日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、9月の生体処理羽数は前年同月比2.4%減とする一方、処理重量は同0.2%増でほぼ前年並みと予測している。地区別にみると、北海道・東北地区は羽数1.2%減、重量2.1%増、南九州地区は羽数3.9%減、重量1.5%減と予測。とくに南九州地区は、猛暑による影響などで羽数、重量ともに前年を下回るとしている。ただ、10月は南九州地区で羽数1.3%増、重量2.2%増と回復傾向となる見込みだ。

農畜産業振興機構の需給予測によると、9月の鶏肉輸入量は前年同月比17.0%増の5万6,600tに上ると予測している。7月のブラジルの船積み数量が4.7万tに上っており、これが入荷してくるため。この先の輸入量は、国内の堅調な需要に加え、為替が円高に振れたことなどを受け、安定したボリュームが入ってくるものとみられる。

[需要見通し]

9月に入ってから、モモ、ムネともに足元の動きは悪くなく、全般的に上手く回っているもよう。盆休み明け以降は、消費者の財布の紐がよりいっそう固くなるため、量販店では、食肉のなかでも手ごろな鶏肉のフェースを広げるケースもみられるようだ。ただ、例年であれば、月後半から秋冬の商材に棚替えが進む時期となるが、ことしは昨年同様、全国的に気温が高く、厳しい残暑が続くことが予想される。そのため、本来であればモモの荷動きが期待されるところだが、鍋物需要などが本格化するのは来月以降にズレ込むものとみられる。

一方で、ムネや副産物関係は、他畜種からの需要シフトの流れもあり、引続き値ごろ感のあるアイテムとして堅調に推移するとみられる。副産物では、これから秋冬に向けて手羽元の引合いがよりいっそう強まってくることが予想される。

[価格見通し]

9月最初の2日の相場は日経加重平均でモモ617円、ムネ357円でスタートした。翌3日にはモモ622円、ムネ366円とそれぞれ5円、9円上げた。モモは、ここから年末に向けて上げ相場となることが予想されるが、9月は残暑が続くことからも大幅な上げは考え難く、上げても小幅な上げにとどまりそうだ。ムネも、昨今の需要環境を考えると下げ要因はなく、年間を通じて堅調に推移することが予想される。このため、相場も大きな上げ下げはなく、安定した展開になるものとみられる。

これらを勘案すると、9月の月間平均は日経加重平均でモモが620~630円前後(農水省市況640~650円前後)、ムネは360~370円前後(370~380円前後)と予想する。

〈畜産日報2024年9月5日付〉