M&A
(画像=Andrey Popov/stock.adobe.com)

会社買収を通じて事業拡大に成功するケースはたくさんある。会社買収の方法やメリット、リスクについて解説する。また、会社買収を検討中の経営者に向けて、具体的な会社買収の流れや失敗パターンも紹介しよう。

目次

  1. 会社買収とは?会社合併との違いも解説
  2. M&Aが増加している社会的背景
  3. 会社買収の方法は2種類!株式譲渡と事業譲渡の違い
  4. 敵対的買収とは?中小企業のM&Aではほとんどない?
  5. 会社買収の2つのメリット 時間と工数の節約に
    1. 1.時間を買える
    2. 2.相乗効果を狙える
    3. 知らないと怖い会社買収に潜むリスク
  6. M&Aによる従業員のメリット・デメリット
  7. M&Aによる顧客のメリット・デメリット
  8. M&Aによる地域社会のメリット・デメリット
  9. M&Aによる行政機関のメリット・デメリット
  10. 会社買収のよくある失敗2パターンと対策事例
    1. 1.属人性が強く、買収後に事業が回らなくなる
    2. 2.企業文化が合わず、買収後に人材が流出する
  11. 会社買収を成功させる3つのポイントとは?
    1. 1.買収の目的を明確にする
    2. 2.専門家を交えて計画を立てる
    3. 3.キーマンへの根回し
  12. M&A成功・失敗の具体的事例
    1. M&A成功事例:ソフトバンク
    2. M&A成功事例:楽天
    3. M&A失敗事例:マイクロソフト
    4. M&A失敗事例:パナソニック
  13. 会社買収8つのステップをすべて紹介!
    1. 1.情報収集
    2. 2.M&A仲介業者の選定と契約
    3. 3.買収候補先の探索
    4. 4.トップ面談
    5. 5.基本合意契約
    6. 6.デューデリジェンス
    7. 7.条件交渉
    8. 8.最終譲渡契約・クロージング
  14. 会社買収は事業の成長速度を加速させる
  15. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
  16. 監修者紹介

会社買収とは?会社合併との違いも解説

会社買収には、発行済株式の過半数を買い取ることで子会社化する株式譲渡と、特定の事業にまつわる資産・負債等を買い取ることで事業を引き継ぐ事業譲渡の2つがある。一般的に会社買収という場合は、前者の株式譲渡を指す場合が多い。

株式譲渡と事業譲渡の違いについては、後の章で詳しく解説する。

会社買収と似た言葉に会社合併がある。しかし、会社合併と会社買収では目的や意味合いが異なる。会社合併とは、複数の会社を1つに統合することをいう。

会社合併には、新設合併と吸収合併の2つがある。新設合併では、A社とB社が新設法人C社を立ち上げ、それぞれの資産や負債をすべてC社に移転し、A社とB社は消滅してC社だけが残る。吸収合併では、A社とB社のうちどちらかが残り、もう一方は消滅する。

これに対して、会社買収では、A社もB社も法人格を残すことが一般的だ。たとえば、A社がB社を買収する場合、B社は会社としての法人格を有したままA社の傘下に入ることになる。B社がA社の子会社になると言い換えることもできる。

法人格が消滅して2つの会社が完全に融合するのが会社合併、株式を買い取って支配下に置いたり事業の一部を買い取ったりするのが会社買収と覚えておくとわかりやすいだろう。

M&Aが増加している社会的背景

M&A情報データサイト・レコフデータの調査によると、日本におけるM&Aの件数は2019年に4,088件となり、過去最高を記録した。

また、中小企業のM&Aについて、中小企業庁がM&A仲介を手掛ける大手3社の成約組数をまとめたデータによると、2017年の中小企業のM&Aは526件だった。2012年の157件に比べて3.3倍超の増加を見せている。この傾向は増加しているものと推察される。

中小企業において、昨今M&Aが活発化しているのは、深刻な後継者不足が理由として挙げられる。帝国データバンクが実施する「後継者不在企業動向調査(2018年)」によると、後継者不在率は66.4%にものぼるとされる。

また、M&Aが行われる理由は売却側の状況だけではない。M&Aで他社を子会社化することで、買収側はたくさんのメリットを享受できる。たとえば、会社買収で得られるメリットには、新規事業のノウハウや人材、技術力、顧客リスト、シェア、情報力などがある。

会社買収の方法は2種類!株式譲渡と事業譲渡の違い

続いて、株式譲渡と事業譲渡という会社買収の2つの手法の特徴や違いを解説していく。

株式譲渡とは、その名の通り株式を買い取る買収方法だ。A社がB社を買収する場合、B社はA社の子会社としてグループの傘下に入る。B社の経営権はA社が獲得する。この場合、対価の支払先はB社の株主だ。中小企業では、経営者が株主であることが多い。

一方、事業譲渡とは、特定の事業だけを買い取る買収方法だ。たとえば、B社が「a事業」「b事業」という2つの事業を行っている場合、A社が「b事業」のみを買収するといったことが可能だ。

事業譲渡では、「b事業」にかかわる資産や負債、権利や人材などを買い取る。B社は「a事業」を行いながら存続していくため、対価の支払先も経営者個人ではなくB社だ。

株式譲渡と事業譲渡のどちらを選択するかは、売却側の意向が大きくかかわってくる。後継者のいない経営者が会社を丸ごと手放したいと考えているなら、株式譲渡を望むだろう。逆に特定の事業のみ売却したいというニーズもある。

敵対的買収とは?中小企業のM&Aではほとんどない?

上場企業の株式譲渡では、しばしば友好的買収・敵対的買収という言葉が使われる。敵対的買収とは、現在の経営陣の同意を取り付けないまま、株式を買い集めて経営権を獲得することをいう。

最初にM&Aが頻繁にメディアで取り上げられるようになったのは、敵対的買収が盛んに行われた時だった。その理由もあって、未だ、「M&A=敵対的買収」のイメージが強く、嫌悪感を示す経営者もいる。

しかし、中小企業のM&Aでは、ほとんどが友好的買収だ。友好的買収では、経営者が納得のうえ、株式を売却する。友好的買収は、売却側・買収側の双方に利益をもたらす経営戦略の1つだ。特に後継者不足が深刻な今、買収によって何とか商品・サービスが世に残り続けるという例も少なくない。

会社買収の2つのメリット 時間と工数の節約に

続いては、会社買収の2つのメリットを解説する。

1.時間を買える

会社買収のメリットに「時間を買える」ことがある。新規事業を始めようと思った時、ゼロから事業を立ち上げるには大きな労力が必要だ。事業として成立し利益を生み出すまでには、情報収集、商品開発、人材育成、ノウハウの蓄積といった膨大な時間がかかる。

しかし、同一の事業で成功している会社を買収することで、事業が成熟するまでの「時間を買える」のである。これは会社買収の大きなメリットだ。

2.相乗効果を狙える

会社買収が成功すれば、相乗効果によって既存事業にレバレッジをかけられる。たとえば、既にとある地域で成功している場合も、別の地域に進出を試みた場合、市場調査などに時間がかかる。しかし、別の地域で似たような事業を行っている会社を買収すれば、比較的安全に事業規模を拡大できる。このような同業種で規模拡大を狙う方法を、水平型M&Aと呼ぶ。

商品の開発・製造を行っている会社が、販売している会社を買収する場合もある。開発から販売まですべてを自社で担うことで、消費者の声をダイレクトに開発に活かしたり、製造コストを削減したり、効果的な広告戦略をとれたりといったメリットがある。このように事業の川上から川下までを自社で担う戦略として足りない機能を他企業で補うアプローチを垂直型M&Aと呼ぶ。

水平型M&Aにしろ垂直型M&Aにしろ、相乗効果によって事業が大きく成長する可能性がある。既存事業の幅を広げたいと思うなら、会社買収は効果的な手法だ。

知らないと怖い会社買収に潜むリスク

続いては、会社買収のリスクについて解説する。

会社買収のうち特に株式譲渡では、会社の歴史をすべて引き継ぐことになる。税務申告に問題はないか、裁判を抱えていないか、買収前に専門家を呼んでデューデリジェンス(DD)を行うことが一般的だ。デューデリジェンスとは、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを事業・財務・法務・人事・ITなど様々な観点から調査することを指す。しかし、デューデリジェンスでもすべてのリスクを見抜くのは難しい。もし買収後に問題が起きた場合、経営権を獲得している以上、買収側が責任を負うことになる。

たとえば、市場に出回った欠陥品を回収したり、従業員への未払い残業代を過去にさかのぼって支払ったりといったリスクが想定される。禍根を残さず買収を成功させるためにも、売却側の経営者の姿勢や人柄にも十分注意を向け、慎重にデューデリジェンスを行うことが大切だ。

M&Aによる従業員のメリット・デメリット

会社買収は、従業員にもメリットをもたらす。まず、それぞれの会社が持つノウハウを統合することで、業務の標準化を進められる。また、異なる企業文化が融合し、多様な人材同士が働く中で、より高い成長を実感できるかもしれない。

さらに、M&Aによって会社の業績が上向くことで、職場環境が改善されたり、福利厚生が充実したりといったメリットがある。

M&Aによって、職場が増えて業務内容が多様化すれば、対人関係で悩んだ時や業務が自分に合わないと感じた時、「配置転換」も期待できる。さまざまな意味で、会社買収は従業員の選択肢を増やしてくれるだろう。

M&Aによる従業員のデメリットは、企業文化が異なることで現場に摩擦が生まれてしまうことだ。成長意欲の高い職場と成長意欲の低い職場では、「水は低きに流れる」と言われるように、成長意欲の低い方に引きずられてしまうかもしれない。

M&Aにおけるこういったリスクを最小限に抑えるため、買収先の企業文化が自社とマッチするかどうか、慎重に見極めることが大切だ。

M&Aによる顧客のメリット・デメリット

M&Aによる顧客にとってのメリットは、何といっても商品・サービスが継続されることだろう。中小企業のM&Aにおいて、買収される側は「存続できない理由」を抱えていることが多い。事業を存続できない事情とは、後継者の不在や経営不振などさまざまだ。

なんにせよ、会社買収が実施されなければ、商品・サービスの提供は断たれていたことになる。行きつけのレストランや薬局、馴染みのある商品がなくなると、生活が不便になるだけでなく、喪失感を覚える人も多い。

M&Aによって商品・サービスが継続されることは、顧客にとっての何よりのメリットだ。

また、スケールメリットを活かして資材を大量発注したり、卸業者を通さないことで仕入コストを下げることに成功すれば、より安価で商品・サービスを提供できるようになる。さらに、継続的に利益をあげることで、品質改善や研究開発に対してコストを割けるようになるかもしれない。

長期的な視点からも、商品・サービスがより良いものになるという意味で、顧客にはメリットがあるといえるだろう。

M&Aによって顧客が被る可能性のあるデメリットは、会社買収によって馴染みのある商品・サービスの良さが失われてしまう可能性があることだ。そうすると、顧客離れを引き起こして、経営にダメージを受けかねない。会社買収をする時は、買収先の商品・サービスの何が顧客に受け入れられているのか、正しく理解するよう努めたい。

M&Aによる地域社会のメリット・デメリット

会社買収によって地域に根差した商品・サービスが継続することは、地域社会にもメリットをもたらす。

まず、地域活性化の観点があげられる。地域にある個人商店や中小企業は、すばらしい品質や技術力を持つにもかかわらず、後継者難から廃業を余儀なくされるケースがある。会社買収によって会社が存続すれば、地域活性化に貢献できるだろう。

また、税収の観点からも地域社会にはメリットがある。会社が廃業すれば、地方税を受け取ることはできなくなるが、会社が存続して利益が出れば、地方税を受け取り続けることができる。会社買収は、地方財政を支えることにもなるだろう。

M&Aによる地域社会のデメリットは、会社買収によって商品・サービスの良さが損なわれ、事業を存続できなくなれば、地方活性化や地方税の納付が望めなくなる点だ。

M&Aによる行政機関のメリット・デメリット

中小企業の倒産や廃業を防ぐため、政府は事業承継支援に力を入れている。会社買収によって貴重な技術力が継承されていくことは、日本経済の活性化というメリットをもたらすだろう。

一方で、無理な会社買収のせいで技術力が活かせず、事業そのものが立ち行かなくなれば、日本全体にとっても損失となる。

特殊な技術力や、他にない強みを持つ商品・サービスの存在は貴重だ。こういった会社を買収した場合、短期的な視点にとらわれず、長期的に事業を継続させていくことに目を向けるべきだ。

会社買収のよくある失敗2パターンと対策事例

続いて、会社買収の失敗パターンと対策方法を解説する。

1.属人性が強く、買収後に事業が回らなくなる

事業内容や技術力に魅力を感じて会社買収を実行したものの、十分に組織化されておらず、経営の舵を切るのに四苦八苦するというケースがある。中小企業の中には経営者の影響力が非常に大きく、経営者が抜けることで現場が回らなくなってしまうことも決して少なくはない。

会社買収を実行する前に経営者の役割や影響力を十分把握し、場合によっては長い時間をかけて買収をした方が、スムーズにいくこともある。組織化されているかどうか、属人的でないかどうかは、しっかりチェックしておきたいポイントだ。

2.企業文化が合わず、買収後に人材が流出する

企業文化が合わなくて会社買収後に従業員同士の衝突が起こり、キーマンとなる人物や技術力を備えた人物が退職してしまうというパターンもある。企業文化は目に見えないものだが、甘く考えていると痛い目を見ることになる。

特に技術力の高い従業員の場合、勤め先の選択肢は他にもあるというケースが少なくない。それでも会社に残っているのは、人間関係や企業文化など目に見えないものに魅力を感じているからだ。会社買収でそれが失われると、早々に見切りをつけて辞めていく従業員も存在する。

人材の流出を防ぐには、キーマンとなる人物や特定の技術力を持つ人間とは丁寧に面談等を行い、しっかりコミュニケーションをとっておくことが大切だ。また、会社買収を実行する前に、風土や文化に目を向け、相性をチェックする視点も持っておきたい。

会社買収を成功させる3つのポイントとは?

会社買収を成功させるには、次の3つのポイントは最低限押さえたい。

1.買収の目的を明確にする

「利益が出ているから」という理由で安易に会社買収を実行することは失敗のもとだ。「買収によってスケールメリットを獲得する」「技術力を得て、既存商品を強化する」「ターゲットとする消費者により高い満足度を届ける」といった目的なくして、会社買収の成功はあり得ない。

目的によって、どのぐらいの資金を会社買収に投じられるのか、絶対に押さえておきたいキーマンは誰なのか、買収後の企業文化のすり合わせはどの程度行うのかは変わってくる。買収によって自社がどのように事業展開していきたいのか、経営方針を明確にして会社買収を行うことが大切だ。

2.専門家を交えて計画を立てる

会社買収には、法務的・税務的視点が欠かせない。自分たちで契約書等を作成して会社買収を実行しても、あとからトラブルになることがほとんどだ。必ず専門家の意見を踏まえ、しっかりとした計画を立てて会社買収をする必要がある。

会社買収を実行したあとのキャッシュフロー計画書を作成し、会社買収に要した資金をどの程度で回収できるか、ある程度目処を立ててから会社買収を実行しなければならない。売却側は会社の価値を上乗せするため、最大限利益が出た場合のキャッシュフロー計画書を作成することも多くある。

買収側は売却側の意向をくみつつも、厳しい視点でキャッシュフロー計画書をチェックし、必要に応じて疑問点を投げかけながら、現実的な計画へと落とし込んでいくようにしたい。

3.キーマンへの根回し

会社買収は、一般的に実行直前か実行直後まで従業員に秘密にされることが多い。しかし、キーマンへの対応には注意が必要だ。特定の技術力を持つキーマンの存在も含めて会社買収を実行する場合、事前にキーマンの意向を尋ねておいた方が安心だろう。

二人三脚で事業を運営してきた現場責任者、経営者の片腕である役員など、キーマンを事前にピックアップし、キーマンには他の従業員より早い段階で相談するなど、配慮が必要だ。キーマンへの根回しによって、今後もキーマンが事業のために尽力してくれるかどうかは大きく変わってくる。

M&A成功・失敗の具体的事例

会社買収を上手に活用すれば、会社を飛躍的に成長させることができる。一方で、投資に見合ったリターンを得られないケースもある。

ここでは、具体的な会社買収の成功事例・失敗事例を紹介する。他社の成功要因・失敗要因を知り、自社の経営判断に活かしていくことが大切だ。

M&A成功事例:ソフトバンク

ソフトバンクは、会社買収を繰り返す中で成長してきた企業の1つだ。創業者の孫正義氏は、類まれな先見の明によって、数多くの会社買収を成功させてきた。まさに「M&Aで時間を買う」ことで圧倒的な成長スピードを実現したケースと言えるだろう。

すべては紹介しきれないが、転換期ともなったいくつかの会社買収の事例を紹介する。

ソフトバンクは、2004年に約3,400億円で日本テレコムを買収した。日本テレコムは、企業向けデータ通信サービスを提供しており、大手企業を中心に約17万社の顧客を持つとされていた。これによって、法人向けサービスに一気に乗り出すことができた。

また、2006年には、英ボーダフォンの携帯電話事業を約1兆7,500億円で買収している。さらに2016年には、英半導体設計大手のARMを3兆3,000億円で買収した。2020年現在、ARMのチップは世界中で数十億個のデバイスに搭載されており、大成功を収めていると言えるだろう。

M&A成功事例:楽天

楽天は、「あおぞらカード」をあおぞら銀行、オリックス・クレジット、オリックスから2004年に74億円で買収し、カードローン事業に着手した。

カードローンの利用目的に、ショッピングや旅行を挙げる利用者が多く、楽天市場や楽天トラベルといった自社サービスと親和性が高いと判断しての買収だった。

この他にも、楽天証券、楽天カードなどの金融事業に力を入れることで、楽天は着実にサービスを拡大していったと言えるだろう。

M&A失敗事例:マイクロソフト

マイクロソフトは、ノキアの携帯電話事業を2014年に72億ドルで買収した。しかし、その後76億ドルもの減損を計上し、2015年には携帯電話事業の大規模なリストラを発表。2016年には携帯電話事業から徹底した。

M&A失敗事例:パナソニック

パナソニックは2009年に、三洋電機を約4,000億円で買収した。その後の投資額も含めると、三洋電機の買収に投じた金額は約6,600億円とも言われている。

しかし、韓国電池メーカーに押される形で、三洋電機の主力商品だったリチウムイオン電池事業の不調が続く。サムスンの台頭によってシェアを奪われ、巨額の赤字を計上することとなった。

会社買収8つのステップをすべて紹介!

最後に、会社買収の流れを解説する。

1.情報収集

まず、会社買収の目的を明確にし、会社買収についての情報収集を行う。この段階では、インターネットや書籍、知人への相談などで、基本的な内容を理解しておけば問題ない。

税務的な内容や法務的な内容は、概要さえ理解しておけば、実際に買収を実行する際は専門家に依頼できる。それよりも、会社買収によって事業にどのようなメリットがもたらされるか、どんなリスクが存在するか、経営者として考え抜いておくことが大切だ。

2.M&A仲介業者の選定と契約

M&Aをする時は、仲介業者を通すことが一般的だ。友人や知人であっても、仲介業者を通さずに買収を実行すると、後々トラブルが発生することが多々ある。M&Aにはさまざまな法務的・税務的リスクがあることから、専門家を通すことは必須といえる。

M&A仲介業者はたくさんあるため、最初から1社に絞らず、視野を広げて根気よく探すことが大切だ。情報量や強みはもちろんのこと、担当者との相性もしっかりチェックしたい。

会社買収では、知識やノウハウだけでなく、細やかな気配りが大切になってくる。コミュニケーション能力に不安を感じた場合や人柄を信頼できない場合、相性が悪いと感じた場合は、妥協せず他の担当者を探すべきだろう。

M&A仲介業者が決まったら、M&A仲介契約を結ぶ。この時点で、秘密保持契約もあわせて締結することが多い。

3.買収候補先の探索

M&A仲介業者と契約したら、二人三脚で買収候補先を探索していくことになる。すぐに条件に見合う買収候補先が見つからないこともあるが、条件を調整しつつ、根気よく探すことが大切だ。また、少しでも気になった候補先があれば、思い切って面談してみる姿勢も大切だ。

買収候補先を探索する際には、企業名を伏せた「ノンネームシート」を提示されることが一般的だ。ノンネームシートには、事業の特徴や強みなど、買収を決めるうえで判断ポイントになる情報が記載されている。

ノンネームシートで興味のある買収候補先が見つかった場合、相手側に確認し、お互いにネームクリアして次のステップに進む。

4.トップ面談

まずはトップ面談を行い、お互いの相性を確認する。トップ面談の時点では、細かな条件交渉はせず、お互いの事業の概要を語ったり、買収で期待される相乗効果について話したりすることが大切だ。

トップ面談には、お互いの経営方針や姿勢を確認する意味もある。この段階では価格交渉などデリケートな話題は避けた方が無難だ。

トップ面談後、お互いの希望が合えば、「意向表明書」と呼ばれる資料を提出する。意向証明書には、買収方法や買収価額などの条件提案を記載する。なお、意向証明書の提出は省略されることもある。

5.基本合意契約

売却・買収に向けてお互いに動き出すことが決定したら、基本合意契約を結ぶ。基本的に、これ以降はお互いに売却先・買収先の探索をしないという独占交渉権が付与されることが多い。

6.デューデリジェンス

買収側が弁護士や公認会計士などの専門家をともない、デューデリジェンスを実施する。デューデリジェンスでは、公認会計士が過去の決算報告書をチェックしたり、税金の未払いがないか確認したり、弁護士が違法行為や訴訟履歴がないかを確かめたりする。

7.条件交渉

デューデリジェンスが終わると、専門家からデューデリジェンスのレポートが提出される。それに基づいて、最後の条件交渉を行う。お互いの疑問点はとことん話し合い、不安を解消しておくことが大切だ。

8.最終譲渡契約・クロージング

条件交渉が終われば、最終譲渡契約を結ぶ。その後、個人的な資産に関する手続きや、法人印の引き渡しなど、もろもろの手続きを終わらせることをクロージングという。契約手続きとクロージングを同日に行う場合と、期間をおいて行う場合がある。

会社買収は事業の成長速度を加速させる

会社買収は、事業展開を加速させる効果的な戦略の1つだ。会社買収によって、機を逃さず新規事業に参入したり、事業規模を一気に拡大したり、相乗効果を獲得したりできる。

一方で、専門的な知識が必要であり、法務的・税務的リスクも大きいため、専門家の力を借りて慎重に進めることが大切だ。

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文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

監修者紹介

斎藤弘樹
株式会社日本M&Aセンター 地域金融1部 部長
斎藤弘樹 (さいとう・ひろき)
一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。 2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。
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