これまでのコンサルタントとしての経験では、不動産投資を検討する人のうち、実際に投資を行う人の比率は決して高くありません。感覚的には10人に1人もいないのでは、といったところでしょうか。
もちろんとても大きな額の投資でかつほとんど借入をともなうものとなりますので、慎重にならざるを得ないというのは理解できますが、ここまで実際に投資に踏み切る方が少ないのはなぜなのでしょう。
一言で「不動産投資」といってもアパートやマンション、ビルやシェアハウスといった投資種別があまりにも多くて初心者の方は何を選べばよいか、判断がつかないからではないでしょうか。実際に投資種別を理解して投資している方は上級者の一部で、多くの初心者の方は融資が付きやすい、とか不動産会社に強く勧められたから、という理由で投資種別を選定していることが多いように思います。昨年シェアハウスの不正融資問題が社会問題となりましたが、投資家のうちシェアハウス投資について理解して、敢えて投資したくてされた方はほとんどいらっしゃらなかったのではないでしょうか。
不動産投資に成功する人とそうでない人の違い
不動産投資に成功する人はアパートやマンション、ビルといった投資種別をよく研究し、投資種別ごとの特徴やメリット・デメリットをよく理解した上で投資を行っています。その上でインカムゲインやキャッシュフローを最大化するために自身の属性や融資の難易度などを分析してレバレッジの利いた投資を進めていきます。例えば1つ目の投資を不動産会社に勧められるがままに、キャッシュフローが低い区分所有マンションを購入してしまうと、2つ目、3つ目と増やすことが難しくなってしまいます。
また同様に1つ目の投資をシェアハウスにした投資家はサブリース先の破綻によって投資開始後すぐに不動産投資が立ちいかなくなったことは記憶に新しいところです。本来はサブリースによる不動産投資を行う場合は、サブリース先の経営破綻に備えた準備をすることが必要となります。
不動産投資に成功する人の中でも複数規模になってくると投資種別を絞って買い進めることによって、不動産を選別する目利きが上達してより良い不動産へ投資することが可能となります。またより上級者になってくると投資種別を一部組み替えることによってインカムゲインだけでなくキャピタルゲインも得るようになります。
不動産投資レベル別!投資種別を徹底解説
そこで今回は、初級→中級→上級と不動産投資のレベルをステップアップする際の投資種別について解説したいと思います。
1.初級者は一棟アパート」、「区分所有マンション」
まずは大事な1つ目の投資です。一般的には一棟アパートか区分所有マンションかのどちらかとなります。参入しやすいのは区分所有マンションです。価格も小さいものだと数百万から始めることが可能です。
その反面、デメリットとしてテナントが退去したら収入が0になってしまうことと、金融機関の担保評価が低いので買い進めて投資規模を大きくすることが難しいこと、土地の持ち分がほとんどないので投資期間の出口戦略が見極めにくいことなどがあげられます。
それに比べて一棟アパートは価格が数千万円からとハードルが上がりますが、複数室あるためテナントの退去による収入減少がある程度抑えられることや、投資期間の出口戦略として土地で売却するという事が可能となります。
2.中級者は「一棟ビル」、「ロードサイド店舗」
当初の投資が当初計画通りに進みだし、数カ月から数年金融機関への返済が進むと次の投資に踏み出すことが可能となります。もちろん投資種別を変えずに専念する人も多いのが現状ですが、リスク分散という点においては不動産投資のポートフォリオが居住用の区分所有マンション一点集中だと将来の人口減少局面においてはリスクヘッジも考えたくなります。
その場合に事業用不動産投資である一棟ビルやロードサイド店舗も有力な選択肢となります。いずれも法人がテナントになるので家賃滞納のリスクは低減しますし、賃料の広さ当たりの単価はもちろん居住用不動産よりは高くなります。
3.上級者は「町屋投資」、「太陽光発電」
上級者ともなると投資種別ごとの投資規模を増やすことはもちろん、不動産投資のポートフォリオを分析し、目標ポートフォリオを実現するために不動産会社に投資種別を指定して情報提供を求めたり、どの金融機関がどの投資種別に対して強いかなども理解して進めることになります。
また購入一辺倒ではなく、経営環境を見て資産の組み替えを行うことによってインカムゲインだけでなくキャピタルゲインまでも得ることを目指します。このステージになってくると投資の中にも節税の要素もあわせて目指すようになることから、近年の京都や金沢などの町屋不動産投資や太陽光発電投資がブームのようになったこともうなずけます。
ただ、いずれの投資も旅館業法や太陽光発電に関するFIT法など不動産と異なる知識もあわせて必要となる点で上級者以上の投資種別と言えます。
まとめ
上級者ともなると不動産投資とはいってもすでに事業経営の域に突入することとなります。よってよく言われる「不動産投資はいつ法人化するのが最適か?」という議論もここに答えの一つがあるわけです。つまり上級者レベルまで進めたいのであれば1つ目の投資を行う時から法人で投資するべきとわかります。
どんな事業でも同じことが言えますが、成功の近道などあろうはずがなくその事業ドメインに精通するほかありません。不動産投資においても不動産実務や銀行融資はもちろん、何より投資種別について誰よりも理解を深めた人が成功するという事は間違いありません。
最後に上級者レベルで事業経営という志向になられると、その先には財務内容を強化することによる個人連帯保証の解除などテーマがよりレベルアップしますし、そのころにはおそらく次世代への事業承継も考えないといけなくなっていると思われます。
(提供:税理士法人M&Tグループ)