プライベートバンク
(画像=g0d4ather/Shutterstock.com)

保有金融資産が100万ドル(約1億円)以上ある「富裕層」。2018年の世界の富裕層人口は約2210万人、その保有する金融資産総額は全世界の家計金融資産の約50%にも上るといわれています。この富裕層人口はさらに増加すると見込まれており、富裕層を対象とするプライベートバンク市場は拡大していき、競争も激しくなっています。

目次

  1. 一般銀行とは別世界!世界のプライベートバンクランキングは?
  2. プライベートバンクを知るには、その歴史をひも解くとわかる
  3. プライベートバンクはどんなサービスを提供する?
  4. 「運用」「ファミリー」「ビジネス」の3本の柱で成り立っている

一般銀行とは別世界!世界のプライベートバンクランキングは?

これまで世界のプライベートバンク市場はアメリカとヨーロッパを中心に発達してきました。預かり資産額のランキングを見ても、UBSやモルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカといったアメリカやスイスの金融機関が上位を占めています。1位のUBSのほかにもスイスからは、クレディ・スイス、ジュリアス・ベアなど複数がランクインしており、プライベートバンク市場で大きな力を持っています。

THE OWNER編集部

日本での富裕層人口は約110万人で、アメリカ、中国に次いで世界第3位の規模を誇っています。しかし、日本では今まで富裕層ビジネスはあまり広がってきませんでした。しかし、ここにきて、こうした日本での富裕層向けビジネスや、近年増えてきた若年層の富裕層の取り込みが活発に行われています。

日系のプライベートバンクの利用者も増えていますが、同時に日本で活動を広げているのがアメリカやスイスの金融機関。UBS(スイス)は日本でのプライベートバンキング部門で新卒採用を始め、ゴールドマン・サックス(アメリカ)は日本にウェルス・マネジメント部を立ち上げました。ほかにも両国のプライベートバンクが数多く参入しており、日本でもプライベートバンクの波が広がりつつあります。

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プライベートバンクを知るには、その歴史をひも解くとわかる

ところで、プライベートバンクとはどのような歴史のもと成長を遂げたのでしょうか。プライベートバンク発祥の国、スイスの歴史をひも解くと、自ずとその存在意義とサービス内容が見えてきます。

息子の頭上に置いたリンゴを矢で射抜いた話が有名なウィリアム・テル。実は彼はスイス反乱軍の兵士で、彼らがオーストリア・ハプスブルグ家との戦いに勝利し、スイスは独立を手にしました。スイスの戦いの強さは各地で話題となり、産業の育ちにくかったスイスは、各国に傭兵部隊を送ることで国を保つこととなりました。

これに伴い、ジュネーブやチューリッヒといった都市で送金を取り扱う為替業や傭兵のポートフォリオ管理などの金融業が栄えていき、プライベートバンクの元となる銀行が生まれました。さらに、宗教革命で迫害された富裕層が、その財産を逃避させるためにスイスのプライベートバンクを使うようになり、それをきっかけにスイスでは財産の守秘義務を守る法令が制定され、現在のプライベートバンクにつながるようなサービスが発展を遂げたのです。

その後、1815年のウィーン会議でスイスは国際的に「永世中立国」と認められました。銀行法が整備されたことも手伝い、スイスは自国の不安定な状況から資産を守りたいヨーロッパ中の富裕層の資産を受け入れていくことになったのです。こうして、スイスのプライベートバンクには資産保全や運用のノウハウなどが長きに渡って蓄積されていき、世界一といわれるほどの発展を成し遂げてきたのです。そのため現在でも、最先端の金融テクノロジーや高い専門性、洗練された人的サービスを持ち、世界最高の資産サポートを提供し続けています。

プライベートバンクはどんなサービスを提供する?

プライベートバンクは一般的に保有資産100万ドル(約1億円)以上の富裕層だけを対象とする銀行サービスで、ウェルス・マネジメントとも呼ばれています。保有資産については金融機関によっても基準は異なりますが、口座開設の最低預金額は米ドルで100万ドル、日本円で1億円が目安と言われています。顧客には担当者が付き、主として多様なリスクから富裕層の資産を守りながら運用し、後継者へと受け渡す橋渡しを務めますが、そのほかにもあらゆる悩みにワンストップで対応します。

大口の預金者となると、特別なコンシェルジュサービスも提供されます。海外出張時の渡航手配や現地での宿泊先やレストランの予約。場合によっては、提携先として有望な企業の紹介まで手掛けることもあります。そのほか、企業経営をしていくうえでの財務相談や相続対策、後継者選びやその引継ぎ計画といった、特にファミリービジネスならではの相談事には長い歴史から得たノウハウを持っています。その流れで、子弟教育のための海外留学手配などもお手のものです。そんな特別な存在のプライベートバンクですから、当然手数料もそれなりに発生します。

「運用」「ファミリー」「ビジネス」の3本の柱で成り立っている

プライベートバンクのサービス体制は「運用」「ファミリー」「ビジネス」の3本の柱で成り立っています。まず「運用」はリスクマネジメントや資産運用を行います。投資のアドバイスなどもこの「運用」の一つです。

続いて富裕層のさまざまなニーズに寄り添う「ファミリー」。家族の資産管理や資産承継のほかに、次世代教育や社会貢献活動のサポート、海外留学先の紹介なども行っています。

ビジネス上の課題をサポートするのが「ビジネス」。海外進出M&A、資金調達のサポートやグループ会社の紹介などを行います。これら3つを柱としながら、富裕層特有のさまざまなニーズに応えていくのです。

このように一般の銀行とは異なり、資産運用だけでなくあらゆる相談に乗り、それぞれの顧客に合ったサポートをしてくれるので、私生活でもアドバイザーとしての役割を担ってくれることもあります。また手数料が高額な分、ノウハウやサポート体制が充実しており、運用や保全といった面でもより良質のサービスが期待できます。日本でも発展しつつあるプライベートバンク、そのドアを叩いてみるのはいかがでしょうか。

文・THE OWNER編集部

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