暖簾分けによる多店舗展開には、商業圏の拡大やスケールメリット、リスクの分散など、さまざまなメリットが期待できる。しかし、その進め方を誤れば足をすくわれる恐れもある。今回は暖簾分けについて、フランチャイズとの違いも踏まえながら解説していこう。
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そもそも「暖簾分け」とは?
暖簾分けとは、店で長年働いた従業員に対し、同じ屋号を使って独立して商売を始めることを認めることだ。
古くから「暖簾」は、商家の入り口に掲げられてきた。元々は日よけや目隠しが主な目的だったが、閉店後に暖簾をしまうことから営業中の証としても用いられている。また、屋号や店名、業種を表す役割もあり、言わば広告媒体としての役割も担っている。
今でも個人商店・飲食店などで暖簾を目にすることはあるが、次第に「暖簾」という言葉は概念的な意味合いも持つようになった。「暖簾を守る」「暖簾に傷がつく」といった言い回しがあるし、M&Aの際の会計処理に「のれん」という勘定科目が用いられるのはよい例だろう。単なる印ではなく、店の信用や格式など、目に見えない価値を表しているのである。
つまり、暖簾分けは、そうした店の信用や格式を守っていく手段であると言える。暖簾分けを繰り返すことで、店の認知度やブランド力が上がり、店の伝統を受け継いでいくことができるのだ。