墓
(画像=PIXTA)

遠く離れた故郷にお墓があって、十分に供養や管理ができない、お墓を継承する人がいないという理由から「墓じまい」を行う人が増えています。墓じまいとは、受け継いできたお墓を撤去することです。撤去した後、古いお墓から取り出した遺骨を新たに通いやすい墓地や永代供養墓に移動する、いわばお墓の引っ越しも、最近では墓じまいに含まれるようになりました。多くの手続きが必要であり、費用もかかる墓じまい。最新の段取り方法について解説します。

墓じまいには「改葬」と「墓終い」の2種類がある

現在のお墓や遺骨を別の場所に移し、元の墓地を更地に戻すことを「墓じまい」と言います。「墓じまい」には、お墓の引っ越しである「改葬」とお墓の継承者(墓守)を立てず、先祖代々のお墓を終い、お墓をなくす「墓終い」があります。どちらにするかは、遺骨をどのように供養するかを考えて決めることになります。

お墓には、「墓地の使用権利者」がいます。権利者が墓じまいをする本人でない場合、どのように墓じまいをするのかを決める際は、トラブルを避けるために必ず親戚一同に確認をし、同意を得ておくことが重要です。

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墓じまいの段取り方法は?

具体的に墓じまいをするには、どんなことをすればいいのでしょうか? 墓を建てるルールは墓埋法という法律で決められており、「墓地以外の場所へ遺骨を埋めてはいけない」ことになっています。そのため、墓じまいをする際もいくつかの手続きが必要になります。

まず、取り出した遺骨をどこに移すのか、行き先を決めます。改葬の場合は納骨堂や樹木葬など、墓終いであれば、同じ寺院の永代供養墓やお墓を立てない散骨という方法もあります。

次に、墓じまいをする墓地の管理者に、改葬・墓終いの意思があることを連絡します。境内墓地の場合は、住職の許可をもらうことになります。その際、檀家を離れる費用として「離檀料」を請求されることもあります。

基本的に改葬は自由に行うことができ、離檀料にも法的根拠はありませんが、これまでお世話になった寺院とのトラブルを避けるためにも、墓じまいの事情を早めに説明し、丁寧な対応をすることが大切です。

改葬をする場合の具体的な手続きとしては、まずは役所で「改葬許可書」を交付してもらうことが必須です。「改葬許可書」の交付を受けるためには、自治体によって違いはありますが、基本的には以下の3点が必要です。

・「改装許可申請書」:各市区町村の役所で入手します。自治体によってはHPからダウンロードできることもあります。
・「埋葬(埋蔵)証明書」:現在の墓地の管理者に発行してもらいます。
・「受け入れ証明書」:改葬先の墓地の管理者に発行してもらいます。

書類の手続きが完了したら、古いお墓から遺骨を取り出す際に「閉眼法要」を行い、墓石の「魂抜き」「お性根抜き」をします。

閉眼法要・魂抜きが終了したら、遺骨を取り出して引越し先へ移動します。この作業は、石材店に依頼します。新しいお墓では、「開眼法要」をして墓石に魂を込めます。これを行うことで、単なる石の建立物が宗教的意味合いのある墓石になります。ただし合祀墓や樹木葬など、すでに開眼法要が済んでいるところへ納骨する場合は、新たな開眼法要は不要です。

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墓じまいの面倒なところは?

墓じまいを始めてみると、書類での手続き以外に気をつけなくてはならないポイントがあります。改葬の場合に注意することは、引越し前と後の宗派の違いです。宗派によっては、違う宗派からの改葬を受け入れない、または受け入れの条件として、宗派を変え新たな戒名をつける必要があることも。境内墓地や寺院の納骨堂へ改葬する際は、事前に宗派を確認しておくことをおすすすめします。

一方、公営墓地や民間霊園は原則として宗旨・宗派は不問です。宗派が問題になりそうな場合は、そのようなお墓への改葬を検討してもいいでしょう。

墓じまいにかかる費用は?

墓終いと改葬のどちらも、離檀料、閉眼法要の費用、遺骨を取り出す費用、墓石除去など古いお墓を更地に戻すための費用がかかります。改葬の場合は、さらに引越し先の新しいお墓を建立する費用がかかります。そのほか、墓地の管理費なども必要になるので、かかる費用を計算してプランを立てましょう。

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墓じまい代行業者にどこまで頼めるのか?

行政の手続きや寺院への連絡など、墓じまいはやるべきことが多く、かなりの時間を要します。そこで利用を検討したいのが、墓じまい代行サービスです。

代行サービスに頼めるのは、行政への書類提出代行や、遺骨の取り出し、墓石の解体・処分、墓地を更地に戻すこと、取り出した遺骨の受け渡しなどです。基本的には寺院への連絡や交渉は含まれないので、この部分を人に頼みたい場合は弁護士に依頼することになります。特に離檀料に関する交渉をお世話になった寺院とするのは気が重いという人は、弁護士を立てることを検討するといいでしょう。

代行サービス業者の中には、墓石販売や散骨ビジネスを目的としているところもあるので注意が必要です。直接問い合わせをして、本当に必要なサービスを提供してくれる業者を選びましょう。

核家族化が進んだ現代では、昔のようにお墓を先祖代々継承していくのは難しくなっています。寺院との交渉や役所の手続きなど、墓じまいには多くの労力が必要です。遠方で管理できない、継承者がいない場合は、自分が元気なうちに墓じまいを検討してみてはいかがでしょうか。

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