クラウド会計
(画像=PIXTA)

近年、さまざまなモノやサービスがインターネットと連携するようになり、世の中の「クラウド化」が進んでいる。これに伴って、クラウド型会計ソフトを導入する会社が急速に増加している。煩雑になりやすい経理・会計業務を簡略化や、作業の効率化を多くの会社が望んでいるのだ。

この記事では、クラウド会計とはどのようなシステムなのか、どんなメリットやデメリットがあるのかを解説し、おすすめのサービス提供会社も紹介する。

クラウド会計とは?

まずは、「クラウド」という言葉の意味を理解しておこう。近年よく聞かれるようになったクラウドは、英語で「雲(cloud)」を意味する言葉だ。インターネットの世界で使われる用語であり、「クラウドコンピューティング」と呼ばれることもある。

クラウドとは、インターネットなどのネットワークにつながったサーバーなどが提供するサービスを、ユーザーの手元にあるPCやスマホなどの端末で利用できるものを指す。クラウドで提供されるサービスを、クラウドサービスと呼ぶ。

クラウドが普及する前は、PCなどでソフトを利用する場合、ソフトをPCにインストールしたり、ライセンスを購入したりしなければ、サービスを利用できないことがほとんどだった。クラウドの登場により、これらの作業を行わなくても、PCで利用できるサービスが数多くリリースされている。

たとえば、Gmailなどのフリーメールサービスは、わざわざメールソフトをPCにインストールしなくても、メールサービスを利用できる。このように、普段意識していない身近なところにも、クラウドサービスが導入されているのだ。

クラウドサービスは手元にないシステムを遠隔で操作するものなので、「クラウド=雲」と名付けられたと言われている。基本的に、インターネット環境と端末さえあれば、どこからでもサービスを利用できる仕組みだ。

経理業務を効率化するシステムのこと

クラウド会計とは、クラウドを利用した会計システムのことだ。前述のとおり、インターネットを経由してサービス提供元のサーバーにアクセスすることで、そこにある会計アプリや会計ソフトを利用できる。

従来の会計ソフトは、専用のソフトを購入し、社内のPCにインストールしなければ利用できなかった。クラウド会計サービスは、ソフトを購入してインストールする必要がなく、サービスの提供者に使用料を支払えば、ネット経由ですぐにサービスを利用することができる。

クラウド会計サービスでは、クラウドならではのさまざまなメリットを体感できる。これまで経理担当者が面倒だと感じていたり、不安に思っていたりすることの多くを改善したサービスと言えるだろう。クラウド会計の魅力については、後述する。

クラウド会計ソフトの導入が必要

クラウド会計サービスを利用するためには、専用ソフトのインストールを必要とする。ただし、このソフトは従来のインストール型ソフトとは異なり、あくまでもサーバーのサービスを利用するために導入するソフトだ。

クラウド会計ソフトは、PCだけでなく、スマホやタブレットに対応しているものもある。ネット環境さえ整っていれば、ネットを経由するだけで、どこからでもサービスを利用することができる。

クラウド会計のメリット

クラウド会計システムを導入すれば、会計業務においてさまざまな恩恵を感じられるだろう。以下にメリットを列挙する。

1.常に最新の状態でサービスを利用できる
これまでのインストール型会計ソフトは、最新版を購入しても、バージョンが更新されるたびに買い換えなければならないものがほとんどだった。常に最新の状態でサービスを利用するためには、手間とコストがかかっていた。

クラウド型なら、バージョンが更新されてもサーバー側でその都度反映されるため、常に最新バージョンのサービスを利用することができる。最初に専用ソフトを端末へインストールする場合でも、基本的にはそのソフトを更新する必要がない。

PCを買い換えたり、別の端末で利用したりする場合でも、インターネットを経由してサーバーにアクセスすることさえできれば、時間や場所を問わず最新のサービスを利用できる。

2.デバイスやOSを選ばない
クラウド型は、ソフトのインストールが原則不要なので、端末の種類を問わずに利用できる。アカウントとパスワードさえ覚えておけば、自宅のPCや外出先のスマホ・タブレットからでも、サービスにアクセスすることができる。

会社のPCに不具合が発生して使えなくなったり、自宅でリモートワークを行わなければならなくなったりした際でも、クラウド型なら問題なく会計作業を行える。出張先からアクセスが必要になった場合などにも役立つだろう。

Windowsだけでなく、Macで利用できることも魅力だ。従来のインストール型会計ソフトは、それぞれのOSに対応したものを購入する必要があったため、社内で複数のOSを利用している場合は、その分コストがかかっていた。クラウド型ならどのOSでも利用できるだけでなく、基本的にOSがバージョンアップしても利用できる。

3.銀行口座やクレジットカードとデータを連携できる
大半の会社は、現金よりもクレジットカードや銀行口座を利用した取引が多いだろう。クレジットカードの利用履歴や銀行口座の入出金履歴などの膨大なデータを、インストール型会計ソフトに入力する手間に関して、頭を悩ませている経理担当者は少なくないはずだ。

クラウド会計ソフトなら、ネットバンクやクレジットカードのデータと連携できるため、ネット経由で明細を自動取得してくれる。取引明細の自動取り込みや自動仕訳といった優れたシステムは、経理業務における大幅な工数の削減を実現し、業務の効率化につながるだろう。

この仕組みを利用するにあたって、金融機関へ届出などを提出する必要はない。金融機関のIDやパスワードがわかっていれば、あとはシステムが自動で明細を取り込んでくれる。また、取引内容に応じて勘定科目を推測し、自動で仕訳を作成する機能まで備わっているサービスも多い。

あくまで勘定科目を推測するものであり、仕訳の精度はサービスによって差があるが、手動で仕訳のルールを設定できる機能も備わっているなど、自社に合わせてカスタマイズできることも嬉しいポイントだ。

4.法改正にも自動で対応
2019年10月1日から実施された軽減税率制度のように、会計にかかわる法改正が行われると、取り扱う商品に適用する税率の把握や、適用税率ごとに区分した記帳など、日々の会計業務においてさまざまな対応が必要になる。

従来の会計ソフトでは、このような法改正が実施されるたびに新しいソフトを購入したり、更新されたプログラムをインストールしたりといった作業が発生していた。クラウド型なら、法改正への対応をサービス提供会社側で行ってくれるため、ユーザー側は特に何もする必要がない。

常に最新の法令に合わせてデータを出入力することができるため、サービス導入後に消費税の増税などが行われたとしても、煩雑な作業に頭を悩ませる必要がなくなるのだ。

5.データ消失のリスクを軽減できる
従来型のソフトでは、入力したデータはPCに保存されるため、PCにトラブルが発生するとデータが消失してしまうおそれがある。そのため、外付けのハードディスクなどにデータを移すなどしてリスク管理を行うが、データの移行自体にも時間や労力を奪われることになる。

クラウド型ソフトに入力したデータは、PCなどの端末ではなく、クラウドサーバーに保存される。会社のPCにトラブルが発生しても、データ自体はサービス提供会社が管理しているため、データ消失のリスクを大幅に軽減できる。

6.複数人が同じデータにアクセスできる
クラウド型サービスでは、データをサーバーで一元管理しているため、複数人で同じデータを管理することができる。何人かのユーザーが同時にアクセスしていようが、更新が常に反映されるため、複数の端末が同期しているような仕組みの中で作業ができる。

これによって、外出先からでも決算の状況を確認したり、勤怠管理・出勤登録・経費申請などの作業を行ったりすることができる。税理士にアクセス情報を知らせておけば、事務所から直接データへアクセスしてもらえるため、会計データの受け渡しが不要になり、税理士と会社のコミュニケーションがより円滑になることもメリットと言えるだろう。

7.他サービスとの連動性に優れている
クラウド型ソフトは、POSレジや請求書作成システムなど、他のクラウド型アプリや業務改善アプリとスムーズに連携する。レジのデータや発行した請求書のデータを、売上として自動的に計上してくれるため、ミスが発生しにくい。

他にも、経営管理システムなどのサービスと連携させれば、入力作業や訂正工数などに関しても大幅な削減が期待できる。

クラウド会計のデメリット

近年導入する会社を急速に増やしているクラウド会計サービスだが、従来型の会計サービスと比較して、劣る点もいくつか存在する。以下に挙げるデメリットを理解し、自社に向くシステムであるかどうかをしっかりと見極めることが重要だ。

1.インターネット環境がなければ使用できない
クラウド型サービスは、利用するたびにネット経由でアクセスすることになるため、ネット環境が利用できなると、サーバーにアクセスすることができないため、サービスを利用できなくなる。

従来型のシステムであれば、データを社内のPCに保管しているため、PCの電源さえ落ちなければ、基本的に作業を行うことができる。クラウド型の場合は、会社のネット環境にトラブルが発生してしまうと、そのネットワークにつながっていた端末からは、サービスを利用できなくなってしまうのだ。

また、サーバー側のシステムトラブルが発生した場合や、サーバーメンテナンスが行われている間も、利用することができない。このように、ネット環境やサーバー側の都合で、利用したくてもできない状況が起こり得る。

2.維持費が発生する
従来のインストール型ソフトは、基本的に買い切り型なので、最初のソフト購入費以外にコストはかからない。クラウド型の場合は、月額や年額で使用料を支払いながらサービスを利用する仕組みなので、導入後も一定のランニングコストがかかる。

インストール型とクラウド型を数年間使い続けると、維持費だけを比較した場合、クラウド型のほうが割高になるケースが多い。

3.操作性が悪い
多くのクラウド型ソフトは、会計の知識が乏しい人でも使いやすい設計になっている。このこと自体はメリットと言えるが、従来のインストール型に慣れている人にとっては、データ入力の回りくどさや操作性の悪さを感じることもあるだろう。

インターネット経由であることも、動作が遅くなる原因の1つだ。ネットの速度が遅い場合は、入力したデータが画面に表示されるまで若干のタイムラグが生じることがあるなど、ネットの接続環境に依存する部分も大きい。

このように、実務の現場で実際に端末を扱う人にとっては、特に導入初期段階でストレスを感じやすいシステムと言える。

4.セキュリティ面に不安がある
クラウド型はサーバーにデータを保管するため、ハッカーから攻撃を受けたり、サーバーに重大なトラブルが発生したりした場合、情報が社外に流出する可能性がある。もちろんサービスを提供している各社は、それぞれ厳重なセキュリティによってサーバーを保護しているが、それでも情報漏えいの可能性はゼロではない。

また、ネット環境さえあればどこからでもアクセスできるため、ログイン情報も厳重に管理しておく必要がある。インストール型でもログイン情報の管理は同様に重要だが、クラウド型と違いデータにアクセスできる端末が限られているため、セキュリティ面ではインストール型のほうが安全と言えるだろう。

おすすめクラウド会計サービス3選

ここでは、クラウド会計サービス最大手の3社を紹介する。他にも多くの会社が同様のサービスを展開しているが、初めて導入する場合や選択に迷った場合は、この3社を優先的に検討してみるといいだろう。

freee

2019年12月に東証マザーズへ上場した「株式会社freee」が提供するサービスで、クラウド会計ソフトの名が世に広まるきっかけとなった先駆者的な存在だ。直感的な操作ができるインターフェースなど、初心者にもやさしい設計が特徴である。

サービス開始当初はフリーランス向けの仕様だったこともあり、スマホアプリ機能が充実している。仕訳入力から申告まで、一連の作業をすべてスマホで完結できることは、freeeの大きな魅力と言えるだろう。

現在では法人向けの機能も充実しており、NPO法人や監査のある大企業向けのプランも用意されている。

会計ソフト freee (フリー) | 無料から使えるクラウド会計ソフト

マネーフォワード

2017年9月に東証マザーズへの上場を果たした「株式会社マネーフォワード」が提供する、総合型のクラウド会計サービスだ。ある程度の会計知識を有する人向けに開発されており、機能面やサポート面など、全体的にバランスの取れたサービスと言えるだろう。

基本的な機能は満足のいくレベルで備わっており、他社の会計ソフトからインポートできる機能も充実している。日々のバージョン更新がこまめに行われていることや、他の連携サービスと相性が良いことも評価できる。

バックオフィスの業務効率化なら「マネーフォワード クラウド」

弥生会計

個人向け確定申告ソフトや会計ソフトで有名な「弥生株式会社」が提供する、法人向けのクラウド型ソフトだ。インストール型の弥生ソフトに慣れている経理担当者なら、仕様をそのまま移行したようなシステムなので、ストレスなく操作できるだろう。

いくつかあるプランの中でも、充実サポートが付帯したトータルプランを選べば、電話・チャット・遠隔サポートが受けられるだけでなく、経理業務に関する相談にも乗ってくれる。サポートを重視したいなら、クラウド型の弥生会計がおすすめだ。

クラウド会計ソフト「弥生会計 オンライン」|経理・会計ソフトなら弥生

クラウド会計を導入して経理業務の効率化を図ろう!

クラウド会計は、従来のインストール型会計システムとは異なり、ネットを介した情報管理ができる会計サービスである。サーバー上でデータを一元管理することで、従来型にはないさまざまなメリットを享受できる。

従来型のほうが使いやすい面もあるため、導入を検討する際はメリット・デメリットをよく比較することが重要だ。初めて導入する際は、「freee」「マネーフォワード」「弥生会計」といった大手のもの検討するといいだろう。

文・THE OWNER編集部