休業
(画像=PIXTA)

法人が活動を停止する選択肢として、「休業」と呼ばれるものがある。会社の状況次第では、休業は効果的な経営戦略となり得るため、経営者は概要をきちんと理解しておくことが重要だ。廃業との違いや手続き方法と合わせて、休業についての理解を深めていこう。

目次

  1. 法人の休業とは?
    1. 休眠の状態が続くとどうなる?「みなし解散」とは?
  2. 会社を休業するメリット・デメリット
    1. 会社を休業する5つのメリット
    2. 会社を休業する4つのデメリット
  3. 休業と廃業の違いとは?休業を選択するべき5つのケース!
    1. 会社を廃業する4つのメリット
    2. 会社を廃業する5つのデメリット
  4. 休業届はいつ・どこに提出する?法人を休業させるときの手続き
    1. 法人がみなし解散から脱する方法は?
  5. 会社の休業は慎重に検討を!休業前に理解しておきたい3つのポイント
    1. 1.休業中も必要になる業務がある
    2. 2.手続きを専門家に依頼するとコストがかかる
    3. 3.懈怠による休業は、過料が発生する恐れも
  6. 広い視野をもって、休業・廃業をひとつの選択肢に

法人の休業とは?

法人の休業とは、登記簿上の記録は残した状態で、事業活動・営業活動を一時的に停止させることだ。休業をした法人は「休眠会社」と呼ばれており、以下のいずれかのケースに該当する場合に、休眠会社として扱われることになる。

〇休眠会社として扱われるケース
・株式会社に該当し、最後に登記をした日から12年以上が経過した場合
・税務署などに対して、所定の手続きをした場合

株式会社は10年に1度のタイミングで、役員変更の登記をすることが義務づけられている。この登記を放置し、最後に登記をしてから12年以上が経過すると、自動的に休眠会社として扱われる。

また、このケースに該当しない場合であっても、株式会社は所定の手続きを行うことで、自ら休眠会社になることが可能だ。自ら休眠を選ぶ意義や手続きの内容については、後述で詳しく解説していく。

休眠の状態が続くとどうなる?「みなし解散」とは?

休眠会社となった株式会社はいくつかの工程を経て、最終的には完全に解散したものとみなされる。その工程の途中にあたる段階が、「みなし解散」と呼ばれるものだ。

この説明だけではイメージが少し湧きにくいので、実際に解散として扱われるまでの流れを以下で確認していこう。

「解散した企業」として扱われるまでの流れ概要
【1】休眠会社として扱われる登記を一定期間放置するか、所定の手続きを行うことで「休眠会社」として扱われる。
【2】法務局が整理作業を実施する数年に一度、法務局が「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」を実施する。
【3】法務大臣による公告整理作業の実施後に、法務大臣が官報公告を行う。
【4】官報公告に関する通知官報公告が行われた旨の通知が、各休眠会社に届く。
【5】「休眠会社」から「みなし解散」へ通知から2ヶ月以内に所定の手続きをしなかった休眠会社は、「みなし解散」として扱われる。
【6】解散の登記登記官が解散の登記を行う。
【7】「みなし解散」から「完全に解散」へみなし解散の状態が3年以上続くと、完全に解散した企業として扱われる。

みなし解散の状態では、まだ株式会社を継続することが可能だ。所定の手続き(※後述)をすれば再び事業を続けていけるが、みなし解散の状態で3年以上が経過すると、会社継続の決議自体ができなくなる。

つまり、同じ株式会社で事業を続けることが不可能となるため、会社の存続を希望している場合は、一刻も早くみなし解散状態を解消しなければならない。

会社を休業するメリット・デメリット

ここまでを読んで、「休業状態は会社にとって危ない」と感じている経営者も多いだろう。しかし、実は株式会社の休業にはいくつかメリットがあり、そのメリットに魅力を感じて自ら休眠会社になることを望むケースも多く見られる。

では、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのかについて、以下で詳しく解説をしていこう。

会社を休業する5つのメリット

会社を休業する最大のメリットは、法人税や消費税などの税金がかからない点だ。法人税などの税金は、会社の利益に対して発生するものなので、休眠状態でそもそも事業活動をしていない法人にはこれらの税金が課せられない。

では、それ以外のメリットについても、以下で簡単に確認をしていこう。

〇会社を休業する主なメリット
・法人税や消費税が発生しない
・自治体によっては法人住民税の均等割が免除される
・所定の手続きをすれば、いつでも事業を再開できる
・事業の再開時に、許認可を取りなおす必要がない
・解散や清算にかかる費用を削減できる

上記の「法人住民税の均等割」は、赤字経営の企業に対しても課せられる税金だ。その税額は毎年約7万円とそれほど高くはないが、赤字企業には重い負担となって圧しかかる。

実は休眠会社になると、自治体によってはこの均等割の支払いが免除される。そのため、経営者の中には新たな事業が思いつくまで会社を休業し、ビジネスの土台が整ったタイミングで休業を解消するようなケースが見受けられる。

また、解散や清算にかかる費用を削減できる点も、経営者にとっては大きなメリットだろう。たとえば、会社の清算時にはすべての手続きを自力で行ったとしても、7万円~10万円ほどの諸費用がかかってくる。一方で、休眠会社の手続きには特筆すべき費用が発生しないため、コストを抑えた形で会社を休業状態にできる。

会社を休業する4つのデメリット

前述で解説した通り、休眠会社には法人税や消費税などの税金が発生しない。ただし、不動産を所有している休眠会社については、引き続き「固定資産税」が課せられるので要注意だ。
また、会社自体は存続する形となるため、税務申告は毎年行う必要がある。そのほか以下で挙げる点も、会社を休業するデメリットといえるだろう。

〇会社を休業する主なデメリット
・不動産を取得している場合は、固定資産税が発生する
・税務申告を毎年行う必要がある
・役員地位は継続するため、定期的に変更登記が必要になる
・最終登記から12年が経過すると、「みなし解散」として扱われる

休眠会社であっても、「役員地位が継続する点」には注意しておきたい。つまり、役員としての任期が満了した場合には、変更登記を済ませる必要がある。

また、前述でも詳しく解説したが、休業状態を放置すると「みなし解散」として扱われる点は、経営者が確実に理解しておきたいポイントだ。たとえば、複数の会社を経営しており、どの法人を休眠会社にしているのかを忘れてしまった場合には、「いつの間にか解散状態になっていた…」といった事態に陥りかねない。

休業と廃業の違いとは?休業を選択するべき5つのケース!

会社の営業活動・事業活動を停止させたい場合、経営者には「廃業」という選択肢もある。廃業とは、所定の手続きを行うことによって、事業主が自主的に会社をたたむことだ。
では、ここまで解説した休業と比べた場合、廃業にはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。

会社を廃業する4つのメリット

廃業という道を選ぶと、会社そのものが消滅をすることになるため、経営者はさまざまな業務や責任から解放される。もちろん、固定資産税をはじめとした税金は発生せず、税務申告や変更登記の必要もなくなるため、会社経営における経営者の負担は一気に軽減されるだろう。

〇会社を廃業する主なメリット
・固定資産税をはじめ、法人にかかる税金が一切発生しなくなる
・税務申告や変更登記の必要性がなくなる
・経営の負担から解放される
・無理に経営を続ける場合と比べて、多くの資産を残せる

無理に赤字経営を続ける場合と比べて、経営者個人の資産を守りやすい点も廃業のメリットだ。たとえば、休業状態を解消しても赤字経営が続くようであれば、廃業によって早めに撤退を決めたほうが、経営者はより多くの資産を残せる。

会社を廃業する5つのデメリット

会社を廃業する最大のデメリットは、これまで築き上げてきた会社を完全に失ってしまうことだ。廃業をすると経営資源や事業用資産はもちろん、取引先や人脈、従業員などをすべて失う。
ほかにも、廃業には以下のようにさまざまなデメリットがある。

〇会社を廃業する主なデメリット
・経営資源や事業用資産を失う
・取引先や従業員などが離れていく
・資産を売却する際に、低く見積もられる可能性が高まる
・休業とは違い、好きなタイミングで復帰できない
・解散や清算手続きをするための費用がかかる

廃業をする際には、所有している不動産や設備などの資産を処理しなくてはならない。基本的には売却をすることになるが、廃業となれば自由なタイミングで売却をすることが難しいため、売却価格を低く見積もられてしまう恐れがある。
また、廃業後に再び同じ事業を始める際には、許認可をすべて取りなおす必要がある点もきちんと理解しておきたいポイントだ。

メリットデメリット
休業・法人税や消費税が発生しない
・自治体によっては法人住民税の均等割が免除される
・所定の手続きをすれば、いつでも事業を再開できる
・事業の再開時に、許認可を取りなおす必要がない
・解散や清算にかかる費用を削減できる
・不動産を取得している場合は、固定資産税が発生する
・税務申告を毎年行う必要がある
・役員地位は継続するため、定期的に変更登記が必要になる
・最終登記から12年が経過すると、「みなし解散」として扱われる
廃業・固定資産税をはじめ、法人にかかる税金が一切発生しなくなる
・税務申告や変更登記の必要性がなくなる
・経営の負担から解放される
・無理に経営を続ける場合と比べて、多くの資産を残せる
・経営資源や事業用資産を失う
・取引先や従業員などが離れていく
・資産を売却する際に、低く見積もられる可能性が高まる
・休業とは違い、好きなタイミングで復帰できない
・解散や清算手続きをするための費用がかかる

上の表は、ここまで解説してきたメリット・デメリットをまとめたものだ。休業と廃業を見比べてみると、どのような場合に休業を選ぶべきなのかが見えてくる。
たとえば、以下のようなケースに該当する場合は、廃業ではなく休業を積極的に検討しておきたい。

〇休業を選択するべき主なケース
・体調不良などが原因で、一時的に会社を経営できないとき
・赤字経営を解消する目的で、新たなビジネスを考えているとき
・事業承継をしたいものの、後継者がなかなか見つからないとき
・取り組む事業が増減する過程で、特定の会社を経営する必要がなくなったとき
・一時的に「経営から離れたい」と感じているとき など

新たな会社を設立する際には、登記費用などのコストが新たに発生してしまうため、一時的に営業活動・事業活動を停止させたい場合は「休業」を考えたいところだ。その一方で、新たな気持ちで事業にチャレンジをしたい場合には、精神的にもスッキリする「廃業」のほうが適している可能性がある。

休業届はいつ・どこに提出する?法人を休業させるときの手続き

数ある法人手続きの中でも、会社を休業させるための手続きは比較的シンプルだ。期限は特に決められておらず、休業を決めたタイミングで以下の書類を提出すれば手続きは完了する。

〇法人を休業させるときの手続き

提出先提出書類
管轄の税務署・異動届出書
・給与支払事務所等の廃止届出書
・消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書
都道府県税事務所・市区町村役場異動届出書
管轄の年金事務所健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

また、休眠会社を再開させる際にも、手続きの内容は基本的に同じだ。異動届出書に「休眠解除の旨」を記載し、関連の役所に対して必要書類を提出する。

〇休眠会社を再開させるときの手続き

提出先提出書類
管轄の税務署・異動届出書
・給与支払事務所の開設届
・消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書
都道府県税事務所・市区町村役場異動届出書
管轄の年金事務所健康保険・厚生年金保険適用事業所届

法人がみなし解散から脱する方法は?

みなし解散として扱われている法人が事業を再開させるには、以下の工程が必要になる。

会社継続の登記に必要な手続き概要
1.株主総会の開催会社を継続する旨について、株式総会で決議を行う。そのほか、新しい役員の選任や定款変更の決議も必要になる。
2.清算人と代表清算人の登記みなし解散として扱われると、代表取締役と取締役は退任したことになる。そのため、新たに登記をするためには、清算人と代表清算人の登記を済ませる必要がある。
3.会社継続の登記会社継続の登記と、役員変更の登記を申請する。

上記を見てわかる通り、休眠会社を再開させる手続きよりも複雑であり、さらに約8万円の登記費用が発生する。つまり、将来的に再開する予定の法人がみなし解散として扱われると、時間とコストを大きく無駄にしてしまう恐れがあるため要注意だ。

会社の休業は慎重に検討を!休業前に理解しておきたい3つのポイント

法人の休業に関しては、ここまで解説した以外にも理解しておきたいポイントがある。休眠会社になることを考えている経営者は、以下の点もチェックしたうえで検討を進めてほしい。

1.休業中も必要になる業務がある

これは前述でも解説した内容だが、法人を休業させたからと言ってすべての業務から解放されるわけではない。中でも必ず行う必要がある「税務申告」と「役員変更登記」の2つは、常に意識しておきたい業務だ。

また、休業が長期間に及ぶ場合は、みなし解散とならないように管理をする必要性も生じてくる。これらの業務から完全に解放されたい場合は、「廃業」を検討する必要があるだろう。

2.手続きを専門家に依頼するとコストがかかる

上記で解説した「法人を休業させるときの手続き」「休眠会社を再開させるときの手続き」には、基本的にコストは発生しない。ただし、これらの手続きを司法書士などの専門家に依頼するとなれば、話は変わってくる。

専門家への依頼コストを抑えたいのであれば、休業手続き・再開手続きは自分で行わなくてはならない。提出書類はそれほど多くないが、書類の準備や提出にはある程度の手間がかかるため、忙しい経営者は念のためスケジュールを確認しておこう。

3.懈怠による休業は、過料が発生する恐れも

懈怠(けたい)とは、ある義務が課せられているにも関わらず、それを何らかの事情で怠ることだ。休眠会社の中には「登記懈怠」や「役員選任懈怠」が原因で、自動的に休業状態になる企業も存在する。

自動的に休眠会社として扱われるのであれば、「手続きをする必要はないのでは?」と感じる方もいるだろう。しかし、これらの懈怠に対しては、ペナルティとして「100万円以下の過料」が発生する恐れがあるので細心の注意が必要だ。

実際に過料が科せられるかどうかはケースバイケースだが、手続きを怠って不要なリスクを抱え込む必要はない。そもそも、登記や役員選任は株式会社の義務であるため、将来的に休業を予定している場合であっても、きちんと取り組むようにしよう。

広い視野をもって、休業・廃業をひとつの選択肢に

「休業」や「廃業」と聞くと、多くの方はマイナスイメージを持つかもしれない。しかし、会社の現状や今後の計画によっては、休業・廃業によって一時的に活動を停止したほうが、メリットが大きい場合もある。

特に休業に関しては、本記事で紹介したようにさまざまなシーンで活用できる制度だ。計画的に休業と再開を繰り返せば、コストを抑えた形で赤字経営から脱却できる可能性もあるだろう。「休業や廃業は逃げの手段」と悪いように考えず、広い視野をもってさまざまな選択肢を検討してもらいたい。

文・THE OWNER編集部

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