業界再編と企業戦略
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調剤薬局業界のみならず、伝統的な業界から比較的新興の業界に至るまで、さまざまな業界で再編が行われている。業界再編が起きた代表的な業界における2000年頃から上位集中度の変化を下記図①にまとめた。業界再編は、プレイヤー数の減少と上位企業へのシェアの集中が特徴として見られる。本稿では、業界再編に関し、次の点を考察してみた。

業界再編と企業戦略
(画像=Futureより)

【A】業界再編はなぜ起きるのか( 業界再編の背景・理由)
【B】業界再編はどこで、どのように起きるのか(業界再編のメカニズム)
【C】業界再編にどう取り組むのか(業界再編への対処)

【A】業界再編はなぜ起きるのか

端的に言って、業界再編はその業界を取り巻く事業環境および業界構造の変化によるものが大きい。ハーバード大学のマイケル・ポーター教授の「5つの力」が業界構造の変化を語るフレームワークとして有益である(図②参照)。

業界再編と企業戦略
(画像=Futureより)

「業界内での脅威」
業界内でプレイヤー同士が差別化されていない場合、競争の軸は価格中心になる。価格優位性をつくるためにスケール(規模の経済)を働かせる力が強まり、業界再編の一因となりうる。例えば、完全に自由化され、価格競争が激しいアメリカの航空業界では、大手企業といえども再編に巻き込まれている。

「買い手の交渉力」
再編に影響を与えている例としては、小売業態が巨大化している業界の卸企業やメーカー企業がある。国内の医薬品卸業界では、ここ20年間で351社あった企業が92社に減っている。

「売り手の交渉力」
再編に影響した例としては、石油を精製・加工している石油化学業界における、1990年代以降の企業統合、事業統合、営業譲渡、生産面での提携などがあげられる。

「新規参入の脅威」
外資参入や、資本力を持つ異業種・隣接業種からの参入などが該当する。学習塾業界・予備校業界・通信教育業界などはそれぞれが事業ラインを広げ、備校業界・通信教育業界などはそれぞれが事業ラインを広げ、各業界での再編を引き起こしている。

「代替品の脅威」
特に技術革新による新商品、新サービスの登場による場合が多い。身近な例ではパソコン、携帯 電話、さらにはスマートフォンがそれぞれの前の技術の代替商品となり、旧技術の業界での再編を進めた。前出の石油化学業界も、シェールガスという代替品の登場により更なる再組も予想されている。

【B】業界再編はどこで、どのように起きるのか

各企業は業界再編そのものを狙って再編活動を着手するのではない。業界再組は自社の永続的な利益確保や成長確保の手段として、競合企業との関係を見直していく中で起きる。そういった意味で、ビジョンと先見性をもった会社・経営者が業界再編を主導していることが多い。一方、事業承継者不足などで投資ファンドや競合企業に事業の後継を委ねた会社が、ある業界における再編の重要な分水嶺になるケースもある。

投資ファンドが同業界の競合企業とは統合したくないというオーナー・経営者から一時的に株式を保有し、業界再編の触媒として役割を果たしたケースはいくつかの業界で見られる。他方、不祥事を契機に、大手企業の一角が同業内企業に救済支援が行われることで、予期しなかった再編へ発展していくケースもある。

人材派遣業界、インターネット業界、食品業界などでこのようなケースが過去に見られた。業界のライフサイクル別に見てみると、成長業界では早期にクリティカルマスを達成することを狙ったスピードを追求した再編、成熟業界ではマーケットシェアを確保し、コスト優位を確保するための再編、衰退業界では競合プレイヤー数を減らし残存者価値を高めるための再編など、いずれのフェーズでも再編は起きうる。

また、業界内のプレイヤーの規模別に見ても、業界上位同士の合併・統合、上位による下位企業統合、中位企業 同士の統合による大手一角への参画など、まさざまである。さらに、規制緩和や行政指導といった国の力が働く場合にも新規参入プレイヤーの登場と業界再編を引き起こす。こう考えてみると再編が起きないと、言い切れる業界はむしろ数少ないと言える。

【C】業界再編にどう取り組むのか

厳しい業界環境の中で生き抜くためには、大前提として業界の中でも差別化された明確な自社の戦略的ポジショニングを持つことが必要である。ユーザ・ユーザ業界から見て、他の競合プレイヤーと比べ、提供価値に差がないようであれば、コストで規模の経済性が働く大手の会社には勝てない。企業の経営者・参謀は、再編されるよりも再編する方になりたいと思っている。

先駆けるための処方箋としては、多くの業界で先端市場となっているアメリカ市場で起きていることをウォッチし ておくこと、想定しうる業界シナリオとそれが起きた時の対応策を準備しておくこと、自社と競合プレイヤーの事業上の強み弱み、将来の事業性を客観的に評価できることなどがあげられる直前だけで成長したら、どれくらいまで成長できるのか、競合企業が他社と連携した際には自社へのインパクトは定性的・定量的にもどんなことが想定されるのか、など、中長期的な視野に立ち「机上で」備えられることは備えておく必要がある。言わずもがなだが、業界再編を視野に入れた健全な財務体質も重要な備えである。

木部賢二(マネージャー 株式会社ピー・アンド・イー・ディレクションズ)