世の中には様々なビジネスがあり「怪しい」「悪いことをしているのでは?」と思われるものも少なくない。多くの人は直感に従い、怪しいと感じるビジネスには距離を置く。しかし、経営者はそうであってはいけない。怪しげに思えるものでも、首を突っ込んでみると極めてまっとうであり、ビジネスチャンスがある場合も存在する。
だが、顧客はそうではない。怪しいと感じれば敬遠されて、売上につながらない。ゆえに経営者は「怪しく見られない」ことに留意する必要があるのだ。
今回は、怪しいと思われないビジネスについて解説する。
「怪しい」と感じる要素
人が「怪しい」と感じる要素は「よくわからないものである」ことだ。「部分的」であっても、怪しいと感じられてしまってはアウトだ。たとえば、インターネットが登場した時、多くの人はすぐにサービスを利用しなかった。「詐欺が多い」「ウイルスに感染するのが怖い」などの怪しさが理由である。
筆者はネットが登場した時にすぐ飛びついて使っていたのだが、これまでウイルスにかかることなどはほとんどなかった。過去に一度だけ感染してしまったが「ポンポンと画面に花火が打ち上がるビジュアルが表示され、その実行ファイルをメールで勝手に送信する」というジョーク色の強いものであった。
ファイルが改ざんされたり、クレジットカード情報が抜かれたりということはなかった。が、一度インパクトのある事件が起こると「インターネットは怖い」という強烈なネガティブイメージを持たれて敬遠されてしまうのだ。
また、「自称」だけでは怪しいと思われてしまう可能性がある。SNSなどでは「○○万円稼いでいます」「こんなコンサルをします」と吹聴する人をよく見かけるが、その証拠は一切示されていない事が多い。
「自分がビジネスで優れた人物なので、あなたをコンサルティングします」というものの、その優れた実績をメディアに取り上げられたわけでもなければ、客観的な証拠もない。
今はネットユーザーもひところに比べてリテラシーを高めている。「どうせウソでしょ?」と疑念からはいるので、まずはそこを払拭するものを示さなければ話は始まらないのである。
怪しいと思われてしまうビジネス業態
そもそもビジネス業態が怪しいと思われてしまうものもあることを、理解する必要がある。
・アフィリエイト、情報商材
・ネットワークビジネス
・簡単に稼げる投資
これらが実際に危険かと言うと、まったくそのような根拠はない。一部の詐欺を働く人物の風評被害を受けてしまっている、といっていいだろう。
言うなれば「歌舞伎町界隈の飲み屋」のようなものだ。ほとんどの飲食店がまじめに経営をしているにも関わらず、一部のボッタクリバーがニュースに取り上げられることで「歌舞伎町界隈の飲み屋は全部ボッタクリ」などと思う人も出てきてしまう。
当たり前の話だが、これは思い込みであり、事実とは異なる。実際、筆者は過去に歌舞伎町の居酒屋で懇親会に参加したが、料理とも価格も極めて全うであった。
これらのビジネスも実例を理解すれば、怪しくもなんともないのだ。
・コンビニ:他社製品を販売する点でアフィリエイトと同じモデル
・電子書籍や英会話など:情報商材である
・ネットワークビジネス:友達紹介キャンペーン
世の中にはこうした「怪しい」とされていたはずのビジネスも溶け込んでいる。怪しく見られるものと、見られないものがあるということだ。
怪しく見せないための努力
それでは誠実に取り組んでいるビジネスを顧客に怪しまれないためにはどのようにすればよいのだろうか?例として挙げられるのは、
・第3者からの評価を見せる
・怪しい表現を使わない
・誠実なパーソナリティを出す
といったことである。1つずつ解説したい。
第3者からの評価を見せる
まずは「自称」を卒業して、第3者からの評価を見せることだ。
今はネットリテラシーが高く、相手の疑いを晴らすところからビジネスはスタートする。コピーライティングの世界には「(人は)読まない・信じない・行動しない」という3つの原則がある。「信じない」の壁を超えるためには、第3者からの評価や実績の証拠を出すことである。
筆者が経営しているビジネスで言えば、「高級フルーツギフト」である。その証拠として実際に大企業の顧客が利用している実績や大手メディアに取り上げられた事例などをサイトに掲載している。
「安物ではなく、本当に高級フルーツを取り扱っている」と信じてもらうためにも、こうした証拠や第3者評価は必須である。また、オンライン英語教育ビジネスも手掛けているが、筆者の「英検1級・TOEIC985点・米国大学留学・外資系勤務経験・英語学習本の商業出版」という実績を出すことで「英語を教育するだけの力がある」ことを見せるようにしている。
まずは自称を脱却するべく、第3者からの評価を見せることが重要だ。
「怪しい」カテゴリーから抜けるために怪しまれる表現を使わない
自分のビジネスを紹介する時に「怪しい」カテゴリーから抜けるためにも怪しまれる表現を使わないことだ。
「○○コンサルタント」と名乗る人は少なくないが、もはや「コンサルタント」というキーワード自体が「胡散臭いと感じるキーワード1位」とメディアが取り上げたことも話題になった。箔をつけようと「コンサルタント」と名乗ることがリスクになっているわけである。
そもそも、「コンサルタント」が顧客の課題や問題をヒヤリングして、具体的な解決法を示す職業と定義するなら、世の中はほとんどの職業がコンサルタントになるはずだ。英会話スクールのスタッフも生徒の悩みを聞いて適切なコースを提供している「コンサルタント」のはずだし、クライアント先に訪問して自社製品を提案する営業マンも「コンサルタント」だ。
「コンサルタント」が怪しいと思われてしまう一つの理由には「具体的でない」「パッと聞いて何をしているのか分からない」ことが原因であろう。それなら、コンサルタントと名乗るのをやめて、別の名称で具体的な活動名を盛り込むとよいだろう。
「転職コンサルタント」ではなく「転職支援」や「転職アドバイザー」にするだけで、胡散臭さが少々晴れるのではないだろうか。
誠実なパーソナリティを出す
この世は信用経済だ。ビジネスは信用がすべて。信用を築くのには時間がかかるため、クライアントや潜在顧客には誠心誠意、尽くすことである。
「営業マンは商品ではなく、その人を売れ」と言われるが、まったくそのとおりだ。まずは誠実という評価を獲得することが、怪しさを払拭するため処方箋であろう。
怪しいと思われないようにするのは経営者としての基礎
実際に怪しいビジネスではなくても、お客さんから「怪しい」と思われてしまったらアウトだ。経営者には、それを払拭する努力が求められる。
文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)