【DX人材の中途採用】事業とITの両面でリーダーシップロールを担った経験者は引く手あまた

照沼 貴大 代表取締役

【PROFILE】主に部長格以上の経営幹部・中核人材採用とキャリア構築を支援。前職リクルートグループのエグゼクティブサーチ企業のRGF Executive Search Japanでは、未上場企業~売上高数兆円規模の事業部門・取締役経営層のサーチ案件を対象とするチームの複数新設、自社採用含めチームマネジメントに従事。Executive MBA保有。

DX人材の獲得競争が激化する中、多くの企業が苦戦を強いられています。ある上場企業の経営層は、30人以上の候補者と初回にカジュアル面談を行ったが1人の採用にも至らなかったと嘆きます。DX分野は圧倒的な売り手市場であり、特にミドル・エグゼクティブクラスの採用難度は極めて高く、この傾向は今後も続くでしょう。

求職者の視点では、優秀な人材は複数の企業から日常的にアプローチを受けています。特に事業とITの両面でのリーダーシップロールを担った経験を持つ人材は引く手あまたです。例えば、AI、BPR、クラウドなどのスキルを持つ人材が転職サイトに登録すると、3日で100件以上のスカウトが届くこともあるそうです。

また、希少なスキルを持つ人材は、日常的に多様なチャネルからスカウトを受け取るため、転職サイトに登録する必要さえないようです。

彼らは、DXビジョンの明確さ、経営トップのコミットメント、組織の柔軟性などを総合的に判断し、転職先を比較検討しています。実際に面談を行うのは3 ~5社程となる傾向があるため、企業は意中の人材にとってのトップ3 ~ 5社に入る努力が求められます。

DX分野での人材獲得競争を勝ち抜くには、人材市場における自社の立ち位置を正しく把握した上で、経営戦略に沿った人材採用戦略を描くことが重要です。

経営層自らがDXのビジョンを候補者のキャリア観や目的に紐づけて語り、候補者の心に響くメッセージを対面と非対面で発信できるかが鍵となります。

また、人材の専門性を存分に発揮できる環境の整備が欠かせません。競争力のある報酬パッケージだけでなく、DXを促す組織構造、トライ&エラーを奨励する人事評価制度、学習機会の提供など、トップダウンでの変革に踏み切る覚悟を、行動で示す必要があります。

人材獲得における競争相手を知り、自社のDXビジョンを魅力的に伝え、活躍の場を用意するなどの継続的な取り組みこそが、DX人材の獲得競争を勝ち抜く源泉となるでしょう。

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