新入社員が入社してきて早くも1カ月が経過した。研修期間も終わり、本配属が開始される企業も多い。しかし、配属されてから間もなく配属部署より「新入社員から退職願いがありました…」と聞かされる人事担当者もいるだろう。新入社員がなぜ入社すぐに退職する道を選ぶのか、日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

新入社員がすぐ退職してしまう理由とは? 予期せぬ早期離職を防ぐために人事担当者が心掛けること

目次

  1. 入社直後に新社会人が転職サイトに登録した件数が過去最多
  2. 2024年卒学生の約半数が「最初の配属先が希望と異なれば5年以内に転職」
  3. 初めて就いた仕事を退職した理由、第1位は「仕事が自分に合わなかったため」
  4. 丁寧なコミュニケーションを心掛けることが大切

入社直後に新社会人が転職サイトに登録した件数が過去最多

パーソルキャリア(東京・千代田、瀬野尾裕社長)によると、同社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」に登録した数を分析したところ、23年4月に登録した新社会人が、調査以降過去最多となったことが分かった。また、2011年と比較すると約30倍にまで増加している。

4月度doda会員登録者数の推移

新入社員がすぐ退職してしまう理由とは? 予期せぬ早期離職を防ぐために人事担当者が心掛けること
2011年の会員全体の登録者数=1、2011年の新社会人の登録者数=1と定義
(出所)パーソルキャリア「新卒入社直後のdoda登録動向」

同社の分析によると、「不確実性が高まり続ける現代社会において、自身の働く将来に不安を抱くようになった。結果、転職・副業などを通じ、自己成長やスキルアップを図り、自らの市場価値を高めることを強く意識するようになっている」としている。

終身雇用は終わり、現代の新入社員は入社間もないころから転職を視野に入れ、自身のキャリアについて柔軟に考えるようになってきている。

(出所)パーソルキャリア「『新卒入社直後のdoda登録動向』最新版を発表」

2024年卒学生の約半数が「最初の配属先が希望と異なれば5年以内に転職」

配属ガチャという言葉が広く聞かれるようになった昨今、自身が希望する配属先にならなかった場合も転職を考えるケースが多いようだ。

リクルート(東京・千代田、北村吉弘社長)が運営する就職みらい研究所(栗田貴祥所長)が実施した「就職プロセス調査」によると、最初の配属先が希望と異なる場合、1~5年以内に転職したいと考える学生の合計は約5割に上った。

3月卒業時点で配属先が確定しているのは就職確定者の46.9%。配属先確定時期を聞くと、「入社後」が31.4%で最も高く、「入社を決めた後~入社前まで」が29.8%と続く。

入社を決める前までに配属先の確定を希望する学生の割合は約4割である一方、実際にその時期までに配属先が確定している学生の割合は約2割。内定承諾後に配属の希望を伝えなかった学生の約6割が「希望を伝える機会がなかった」と回答しており、企業側のコミュニケーション不足が浮き彫りになっている。

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初めて就いた仕事を退職した理由、第1位は「仕事が自分に合わなかったため」

従業員数約500人の食品関連企業(以下、A社)の具体的な例を挙げる。

入社式が無事終わり、数カ月の研修期間を経て配属された新入社員。
会社として人を育てる社風があり、先輩社員が業務について教えながら少しずつ営業として独り立ちを目指していた矢先、配属後1カ月で退職届けを提出し会社を去りました。

これだけなら「最近の若者は弱いな」「一定数の退職者は仕方ない」という意見が説得力を持つかもしれないが、A社では5年連続で配属して数カ月の新入社員が退職していた。

毎年続く新入社員の退職の要因を探ると、浮き彫りになったのが
「事前に詳しい業務の話をしていなかった」ことだ。

説明会ではA社で働く意義や社風の話が多くされ、社員にプライベートなことも聞けるように工夫して設計されていた。内定者からは「ホワイト企業だと感じたし、実際にそう」という声もあった。

しかし、実際には入社数カ月で退職する新入社員が後を絶たなかった。

新入社員が退職する最大の原因を一つに絞るとしたら、「思っていたことと違うこと」だろう。つまり「イメージと現実のずれ」だ。

その中でも最も大きく感じるずれは、「仕事のイメージ」だ。新入社員は、ついこの前まで学生で、仕事の経験が無いため、ずれの中でも仕事のイメージのずれが最も大きくなる。
仕事のイメージのずれが大きすぎると「私には向いていない」「ずっと続けたいとは思わない」と感じ、早期離職につながる。

A社ではその後、仕事の伝え方を新入社員に分かりやすいやり方に変えたことで、その年と次の年の新入社員の早期離職は無くなったようだ。

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丁寧なコミュニケーションを心掛けることが大切

A社の事例からも分かるように、実際に従事する仕事内容を事前に説明し、イメージとのギャップをいかに減らすかが肝になる。

配属についても、新入社員の希望する仕事内容を事前にヒアリングし、希望通りにならない場合は配属の理由をしっかり説明する必要がある。

どちらにおいても言えることが「丁寧なコミュニケーションを行うこと」だ。 丁寧なコミュニケーションを心掛けることで、企業・新入社員共に予期せぬ決別は避けられる。

日々業務に追われ、新入社員に対して丁寧な対応が難しい時もあるだろう。
しかし、入社して間もない会社とのつながりもまだ薄いこの期間に
「思っていた仕事内容と違う」
「自分のことを気にかけてもらえず疎外感を感じる」
「他の会社に入社した方が良かったかも」
と思われたら最後、明日から新入社員が来なくなるかもしれない。

人事担当者は、配属後に新入社員と関わる社員に対して、あらかじめどのように接するべきか周知する必要があるだろう。

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