矢野経済研究所
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2022年のニューロモデュレーション装置市場は前年比103.4%の60億6,000万円

~保険適用のニューロモデュレーション治療が一定の広がりを見せる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のニューロモデュレーション市場を調査し、各種のニューロモデュレーション装置市場、治療法の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

ニューロモデュレーション装置市場推移、予測

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1.市場概況

ニューロモデュレーションは、デバイスを用いた電気・磁気による刺激や薬物投与により、神経活動を調節する治療法で、装置を用いて微弱な電気刺激を行ったり、薬剤を持続的に投与することで中枢神経系の機能を修正・制御し、疾病や障害の治療を行う。ニューロモデュレーションを行う治療装置は、外科的手術が必要な(侵襲)装置と不要な(非侵襲)装置に大別される。

難治性てんかんに対する迷走神経刺激治療(VNS装置)や、難治性の慢性疼痛に対する脊髄刺激治療(SCS装置)、パーキンソン病や本態性振戦に対する脳深部刺激治療(DBS装置)などが外科的処置が必要な治療であり、既に国内においては保険適用下で実施されている。また、うつ病や双極性障害、統合失調症などの諸症状に対する電気けいれん刺激治療(ECT装置)や、薬物療法では期待される治療効果が認められないうつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS装置)が非侵襲の治療として保険収載されている。
これら5種の装置を対象とした2022年の国内ニューロモデュレーション装置市場は、メーカー出荷金額ベースで前年比103.4%の60億6,000万円と推計した。ニューロモデュレーション治療への理解は進んでおり、装置の導入が進展することで、2023年の同市場規模を同101.7%の61億6,000万円と予測する。

2.注目トピック

治療法の作用機序の解明

ニューロモデュレーションに関する治療に関して、その効果や安全性などが臨床研究などによって検証され、実際の治療として医療現場に広がっていく一方、治療法の作用機序については、一定の仮説がありながらも詳細は不明であることが多く、疾患への適応の拡大や診断を行う上での課題となっている。

DBS(脳深部刺激治療)に関しては、効果や問題点についての膨大な臨床的知見が蓄積されている.しかしパーキンソン病の運動症状に対する効果は明らかであるものの,DBSの作用機序についてはまだ十分に解明されていない。
ECT(電気けいれん刺激治療)は高い有効性があるものの、その作用機序には不明な点が多い。ECTの作用機序解明が重要な理由としては、ECTの即効性と高い治療効果、副作用が発現した神経基盤に対する理解が進むと、即効性と高い治療効果を持ちつつより副作用の少ない治療法の発展につながる可能性があるということが挙げられる。ECTの作用機序に関する1つの仮説としては、基礎研究の知見から特に海馬における神経可塑性が重要であるという可塑性仮説が挙げられる。海馬の可塑性への誘導は、新しい抗うつ薬のターゲットとして認識され、臨床試験も行われている。だが、可塑性に関しては、重要な部分が神経新生なのか、シナプスの変化などその他の可塑性変化なのかはまだ分かっていない点があり、さらなる研究が必要なのが現状である。また、ECTはうつ病のみならず、精神病症状や緊張病症状、パーキンソン病の運動症状にも効果があるが、これらの症状改善に関する神経基盤は異なる可能性が大きい為、今後の研究が期待されている。

このように、既に保険適用下にあるニューロモデュレーションに関する治療法に関しても、仮説やそれを証明する研究は豊富にあるものの、確定的な作用機序が無いものが多いのが現状である。作用機序の解明は、適切な診断法の開発や、他疾患への適応拡大などに大きく寄与することにつながる。治療の普及とあわせて、それらの治療実績を集積し、より効率的な新たな治療法の開発を進めていくことが、ニューロモデュレーション治療を普及してく上でも重要であると考える。

3.将来展望

ニューロモデュレーション装置市場は、今後も増加傾向で推移すると予測する。
内訳をみると、DBS装置市場が市場を牽引していくと見られ、存在感をさらに示していく見込みである。このほか、SCS装置、VNS装置も新規導入と装置交換の需要が継続し、一定の需要が続いていくと考える。
一方、2019年に保険適用となったrTMS装置は、保険適用下での運用に関する各種制限の影響で、市場伸長について当面は限定的となる見込みである。ただし、薬剤抵抗性を持つ患者は相応に存在し、rTMS治療への需要も高いので、規制緩和や販売準備中の新製品が上市されることで、現状の予測以上の存在感を市場で示す可能性も考えられる。

調査要綱

1.調査期間: 2023年9月~11月
2.調査対象: ニューロモデュレーション装置取扱企業、関連学会他
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<ニューロモデュレーション装置市場とは>
ニューロモデュレーションは、デバイスを用いた電気・磁気による刺激や薬物投与により、神経活動を調節する治療法で、装置を用いて微弱な電気刺激を行ったり、薬剤を持続的に投与することで中枢神経系の機能を修正・制御し、疾病や障害の治療を行う。
本調査におけるニューロモデュレーション装置市場は、DBS(脳深部刺激治療)装置、SCS(脊髄刺激治療)装置、VNS(迷走神経刺激治療)装置、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激治療)装置、ECT(電気けいれん刺激治療)装置を対象とし、メーカー出荷金額ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
DBS(脳深部刺激治療)装置、SCS(脊髄刺激治療)装置、VNS(迷走神経刺激治療)装置、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激治療)装置、ECT(電気けいれん刺激治療)装置

出典資料について

資料名2023年版 ニューロモデュレーションに関する市場動向調査
発刊日2023年11月30日
体裁A4 112ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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