補助金・助成金の中には、中小企業を積極的に支援しているものがある。国や自治体を中心に数多くの制度があるため、要件に該当する企業も多いはずだ。そこで今回は、特に押さえておきたい補助金・助成金制度をケース別に紹介しよう。
雇用に関する補助金・助成金
人材の雇用にはコストが発生するが、雇用を対象とした支援制度も少なくない。その中でも、特にチェックしておきたい3つの制度を見ていこう。
1.トライアル雇用助成金
この制度は、35歳未満の人材を雇用する際、原則3ヵ月間のトライアルを実施することで、1人あたり月額4万円の支援を受けられるものだ。さらに、対象となる人材が母子家庭の母、もしくは父子家庭の父にあたる場合は、月額5万円に増額される。
ただし、要件に該当する雇用者であり、かつ雇用者本人がトライアル雇用を希望する必要がある。要件は細かく定められており、以下でその一部を紹介しよう。
- ・紹介日時点で、就労経験がない職業に就くことを希望している
・学校卒業後3年以内で(紹介日時点)、卒業後安定した職業に就いていない
・紹介日前日の時点で、離職期間が1年を超えている
上記を見てわかるとおり、育児のために退職した女性やフリーターなど、さまざまな人材が対象となる。ほかにも要件が定められているため、対象人材の雇用を検討している企業は厚生労働省の公式ページで確認しておこう。
実施者 | 厚生労働省 |
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対象者 | ・3ヵ月のトライアル雇用をする事業者 ・雇用者がトライアルを希望している事業者 ・その他、雇用者に関する要件あり |
支給金額 (中小企業) |
1人あたり月額4万円(最長3ヵ月間)。 母子家庭の母、父子家庭の父を雇用する場合は、月額5万円。 |
公式ページ | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html |
2.特定求職者雇用開発助成金
もともとは「三年以内既卒者等採用定着奨励金」として実施されていた、既卒者や中退者の採用・定着を目的にした制度。名称は変わったが支給金額に大きな違いはなく、要件を満たした中小企業には以下の金額が支給される。
対象者 | 1年定着後 | 2年定着後 | 3年定着後 |
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既卒者 (卒業後3年以内) |
50万円(※) | 10万円 | 10万円 |
高校中退者 (中退後3年以内) |
60万円(※) | 10万円 | 10万円 |
※「若者雇用促進法に基づく認定企業(ユースエール認定企業)」の場合は、10万円が加算される
この制度は「既卒者コース」と「高校中退者コース」に分けられており、それぞれに要件が定められている。また、従来の制度から要件がやや変更されているため、公式ページでしっかり確認しておこう。
実施者 | 厚生労働省 |
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対象者 | ・既卒者や高校中退者を採用する事業者 ・上記の人材を、1年以上定着させた事業者 ・これまで既卒者や高校中退者を、新卒枠で採用したことがない事業者 |
支給金額 (中小企業) |
1人あたり年間10万円~70万円。 人材が定着した年数によって変わる。 |
公式ページ | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158397.html |
3.雇用調整助成金
経済上の理由により、現在の事業活動や雇用を維持することが難しくなった事業者は、ぜひこの制度を確認しておきたい。売上高や生産量など細かい要件が定められているが、雇用を維持した企業に対して以下の金額が支給される。
対象となる費用 | 支給金額 |
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【1】教育訓練の実施費用 | 1人あたり1,200円(1日) |
【2】休業を実施した場合の休業手当 【3】教育訓練を実施した場合の賃金相当額 【4】出向を行った場合の出向元事業主の負担額 |
中小企業は左記費用の3分の2 (それ以外の企業は2分の1) ※対象労働者1人あたり8,335円が上限(1日) |
従業員に対して「一時的な雇用調整(休業や教育訓練など)」の実施が必要になる点は、この制度で注意しておきたいポイントだ。しかし、上記【1】~【3】は3年間で最長150日分(年間では最長100日分)、上記【4】も最長1年間支給されることを考えれば、受給を目指して計画を立てる価値はあるだろう。
実施者 | 厚生労働省 |
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対象者 | ・経済上の理由で、雇用の維持などが難しくなった事業者 ・一時的な雇用調整を実施する事業者 ・その他、経営状況や雇用に関する要件あり |
支給金額 (中小企業) |
一時的な雇用調整の内容により異なる。(1人あたり1日8,335円が上限) 教育訓練を実施した場合は、1人あたり1日1,200円を加算。 |
公式ページ | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html |