ちょっと小金を稼いだら散財してしまい、従来ほど売れなくなってしまうと途端に破綻してしまう経営者がいる。お金を稼ぐ能力と、使う能力はまったくの別物である。それ故に、稼ぐことはできても使い方が下手であるため破綻してしまうことも少なくないのだ。そうならないためにも経営者は、出費をする際に「変動費」と「固定費」に分解して使うスキルが求められる。
お金は才能とスキルの要素で成り立っている
これは科学的根拠に基づく話ではないが、筆者の個人的意見では「お金の管理」は才能とスキルの要素で構成され、お金を稼ぐ能力と使う能力は別物と思っている。
筆者は過去に「お金の才能」について思い知らされる体験をしたことがある。東京で金融・経済番組を制作する企業で働いていた。その際、世界学術ランキングトップ5に入る米国の有名大学院MBAホルダーの投資家が、数十ページに及ぶ投資レポートにザーッと目を通す「スキミング」をしてこう述べた。
「P.7とP.64の説明と図解で使われている数字の整合性が取れていない。それからP40のグラフがP13のテーマを示すには○○の手法がより適切だ」と即指摘をしたのである。
10年経過した今でも、あの光景は目に焼き付いている。常人離れした情報処理能力とロジカルな思考、膨大な情報を端的に表現する言語能力を前に、人間の才能のすごさを垣間見えたものだ。
この事例で言えば、まず情報処理速度が常人離れしていることは「才能」にカテゴライズされるべき項目だ。スキミングだけで、あれだけの数値データや情報をインプットし、完全なる理解に昇華、さらにはその思考を他者に分かる形で言語化するにはスキルだけでできる芸当ではない。
一方、情報を効率的かつ網羅的、論理的に咀嚼する力は、学習によって後天的に獲得した「スキル」といえる能力だろう。この投資家とて教育の力なくして、完全に自力でこの領域にたどり着くことはなかったはずである。そしてこの投資家がみせた芸当は「企業の投資情報」という「お金」という対象に対する才能とスキルだ。
人間は能力の多くと生後、後天的に獲得する特徴を持っている。だが、その獲得プロセスの効率性や結果のレベルに差をつける要素が「才能」だ。お金についても「才能とスキル」の要素で成り立っているといえよう。