デキる経営者
(画像= jesterpop/Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子 肥後庵 代表 フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』(https://amzn.to/2U7ZeoX )など。

ちょっと小金を稼いだら散財してしまい、従来ほど売れなくなってしまうと途端に破綻してしまう経営者がいる。お金を稼ぐ能力と、使う能力はまったくの別物である。それ故に、稼ぐことはできても使い方が下手であるため破綻してしまうことも少なくないのだ。そうならないためにも経営者は、出費をする際に「変動費」と「固定費」に分解して使うスキルが求められる。

お金は才能とスキルの要素で成り立っている

これは科学的根拠に基づく話ではないが、筆者の個人的意見では「お金の管理」は才能とスキルの要素で構成され、お金を稼ぐ能力と使う能力は別物と思っている。

筆者は過去に「お金の才能」について思い知らされる体験をしたことがある。東京で金融・経済番組を制作する企業で働いていた。その際、世界学術ランキングトップ5に入る米国の有名大学院MBAホルダーの投資家が、数十ページに及ぶ投資レポートにザーッと目を通す「スキミング」をしてこう述べた。

「P.7とP.64の説明と図解で使われている数字の整合性が取れていない。それからP40のグラフがP13のテーマを示すには○○の手法がより適切だ」と即指摘をしたのである。

10年経過した今でも、あの光景は目に焼き付いている。常人離れした情報処理能力とロジカルな思考、膨大な情報を端的に表現する言語能力を前に、人間の才能のすごさを垣間見えたものだ。

この事例で言えば、まず情報処理速度が常人離れしていることは「才能」にカテゴライズされるべき項目だ。スキミングだけで、あれだけの数値データや情報をインプットし、完全なる理解に昇華、さらにはその思考を他者に分かる形で言語化するにはスキルだけでできる芸当ではない。

一方、情報を効率的かつ網羅的、論理的に咀嚼する力は、学習によって後天的に獲得した「スキル」といえる能力だろう。この投資家とて教育の力なくして、完全に自力でこの領域にたどり着くことはなかったはずである。そしてこの投資家がみせた芸当は「企業の投資情報」という「お金」という対象に対する才能とスキルだ。

人間は能力の多くと生後、後天的に獲得する特徴を持っている。だが、その獲得プロセスの効率性や結果のレベルに差をつける要素が「才能」だ。お金についても「才能とスキル」の要素で成り立っているといえよう。

恐ろしい固定費のワナ

だが、経営者がお金を上手にアロケーション(配分)するには、この投資家のようなそこまで卓越した才能は必要ない。技術、つまりは学習することで、かなりの改善を見込めるだろう。

細かいことを言えばキリが無くなってしまうが、一つ有効な手段をあげるならば「変動費と固定費に分けて考える」ことだ。特に「固定費を簡単にあげてはいけない」ことを真に腑に落ちるレベルまで理解している経営者は意外と少ない。

ちょっと事業がうまくいったら、見栄を張ってきれいなオフィスを借りたり従業員を増やしたり、社用車を高級にしたりなど軽い気持ちで固定費を増やしてしまう。

だが、事業がうまく行っている時は良くても、固定費は経営が傾いたタイミングで牙をむく。「固定費」は名前の通り、着実に利益を削る要素になる。賃料高めのいいオフィスなど借りてしまったら、支払いが厳しいからと簡単に引っ越しはできない。

退去や引っ越し、入居にも新たなコストが発生する。高級車も毎月多額のコストを生み出し、売るときには二束三文である。正社員の従業員なんて、解雇したくても社会がそれを許さないだろう。

固定費は経営が傾いた時に着実にトドメとなるため、気軽に上げてはいけないのだ。

コントローラブルな変動費

一方、変動費はどうだろう?筆者はこちらにこそ、目を向けるべきだと考える。

変動費は出費をやめれば即出血を抑えられるコストである。社員の慰安旅行や飲み会、派遣やパートなどの非正規雇用や外注スタッフなどが該当する。

「頑張ってくれた従業員に快適に過ごしてもらいたい」と今より広いオフィスを借りる代わりに、「日頃の頑張りを労う」ということで頑張りに応じて旅行券をプレゼントするなどは有効だろう。

筆者が経営する会社では、食事券を配ったところ大変喜ばれたことがあり、翌日以降は明らかに張り切って業務にあたってくれたことがある。きれいなオフィスなどに引っ越しをしても、人間はすぐに慣れてその価値がわからなくなるものだ。

それならば、散発的にインセンティブとして変動費を使って士気を高める施策に費用を投じる方が合理的であると感じる。

人の採用も今は正社員を雇うのはなかなか厳しい時代だ。育てても他社に移られてしまうし、納得感のある人事評価や人間関係、マネジメントの手間もいる。だが、外注で仕事をお願いすると、その道の専門家が変動費としての報酬で働いてくれる。筆者は過去に業務改善のためにプログラムの作り込みをクラウドソーシングしたことがある。

かなり高度な内容だったが、3日ほどであっという間に納品してくれ、サポートも丁寧であった。自社でこの作業ができる人間を雇うとかなり高コストになる。しかも、残業も土日もいとわず、クラウドソーシング上の高評価を求めて一生懸命やってくれるので、経営者からするといいことづく目だ。

固定費と変動費は内訳を理解して別管理する

経営者は「お金を使う才能とスキル」が求められる。どれだけ稼いでも、それ以上に使って資金ショートしてしまっては意味がないからだ。

そのためのファーストステップとしては、固定費と変動費に分けて考える、という即日で使えるスキルがおすすめである。

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)

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