個人事業主,経費
(画像=PIXTA)

ビジネスでは、さまざまな費用が発生する。そのうち、税務署に申告すれば国に納める税金を低く抑えられるのが「経費」だ。ただし個人事業主の場合は、プライベートと仕事の境界が不明確な場合が多く、何が経費で何が経費にならないかという判断が難しい場合が多い。そこで今回は、「経費に計上できるのはどのようは費用なのか」について詳しく解説する。

目次

  1. 個人事業主の経費の種類
    1. 事業との関連性を説明できる支出
    2. 証明できる支出
    3. 妥当な範囲の出費
  2. 個人事業主が経費にできるもの・できないものは?
    1. 個人事業主の必要経費一覧
    2. 経費にできない例
    3. 個人事業主と会社員の交通費の違い
    4. 交通費は経費として落とせる?
  3. 個人事業主なら覚えておきたい節税対策
    1. 個人事業主は確定申告が必要?
    2. 青色と白色申告の違い
    3. 経費の支払いはクレジットカードがお得?
  4. 経費を上手に使って節税を行おう

個人事業主の経費の種類

国に納付する税金の額は、収入から経費を差し引いた額をもとに決められる。つまり、経費として計上できる額が大きいほど節税につながることになる。税法上の経費として認められるためには、事業との関連性が明らかで、支出したことを証明でき、妥当な範囲の費用でなければならない。

事業との関連性を説明できる支出

経費として認められるのは、事業を行う上で発生した費用のみ。売上を得るために必要な費用だったことを、合理的に説明できることが条件だ。たとえば、事業を行うために必要な事務用品費や交通費、広告宣伝にかかった費用などは、経費になる。しかし、ペットのえさなど、プライベートな領域で発生した費用は経費として認められない。

証明できる支出

経費として認められるのは、支出したことを証明できる領収書・レシートがある場合のみだ。先方から受け取るのを忘れたり、紛失したりすれば、経費として計上できない。そのため、事業に関わる支出たあった際は、必ず領収書・レシートを受け取って、保管しておく必要がある。

ただし、単に領収書があれば良いわけではない。たとえば、取引先との打ち合わせ時に飲んだコーヒー代の領収書を提示しても、それだけではプライベートで飲んだのか、仕事の打ち合わせで飲んだのか判断できない。そのため、税理士が見た時に、どこで誰と何の目的でコーヒーを飲んだのかをすぐ理解してもらえるように、記録を付けておく必要がある。領収書の裏にメモをしておくだけでもいい。

妥当な範囲の出費

事業に関わる費用といっても、常識の範囲を超えた支出は経費としては認められない。たとえば、商談に関連する交際費として、数十万円を計上するのは常識の範囲外だろう。

個人事業主が経費にできるもの・できないものは?

では実際のところ、どのような費目が個人事業主の経費として認められるのだろうか。以下では個人事業主の必要経費の一覧や、経費にできないケース、さらに交通費の計上方法について解説する。

個人事業主の必要経費一覧

事業の内容や運営方法は異なるものの、個人事業主の主な必要経費は以下のとおりだ。

・水道光熱費・・・事業運営に必要となる水道、電気などの費用
・旅費交通費・・・移動費、宿泊費など
・通信費・・・電話やインターネットの費用
・広告宣伝費・・・広告・宣伝にかかる費用
・接待交際費・・・取引先や得意先の接待費用や、事業に関わる人との交際費用
・租税公課・・・税金や公共料金
・損害保険料・・・事業を事故や災害から守るために加入した保険料
・修繕費・・・備品の修理代
・消耗品費・・・事務用品など
・従業員への賃金や福利厚生費・・・人を雇っている場合に支払う給与や福利厚生費
・地代、家賃・・・事業を行う上で必要となる土地や建物にかかる費用
・減価償却費・・・高額な固定資産の代金を、複数年にわたって費用計上するもの
・荷造運賃・・・商品や郵便物を送付する際にかかる費用
・外注費・・・外部の業者などに業務委託したときに発生する費用
・利子割引料・・・支払利息や手形の割引料など
・雑費・・・ごみ処理代やクリーニング代など、事業に関わる費用

個人事業主の場合は自宅がオフィスを兼ねているケースが多いので、事業でもプライベートでも使うものがある。この場合は、それを「どのくらいの割合で事業に使っているか」という比率を定め、その分だけ経費に計上することになる。このような費用は「家事関連費」と呼ばれ、一定の比率を経費に計上することを「家事按分(かじあんぶん)」と呼ぶ。

経費にできない例

・自分のための支払い
健康診断の費用など、個人事業主自身のための支出は経費として認められない。ただし、従業員の健康診断費については、福利厚生費に該当するので経費として計上できる。原則として個人的な支出は経費にはできない。

・家族のための支払い
家庭用として多用される電話やインターネットの料金、私用で使った車のガソリン代、家族の保険料などは経費として認められない。

・事業主が白色申告者である場合の家族従業員に対する賃金
個人事業主の場合、親や子どもなど家族が従業員として働いていることが多い。税法では、このような「生計を一にする(生計を共にしている)」家族や親族の働き手は、「専従者」として扱われる。

この場合、事業主が青色申告者であれば「専従者給与」として全額を経費として計上できる。しかし、白色申告者の場合は専従者に対する給与は経費に計上できない。その代わり「白色事業専従者控除」が認められ、最高86万円の控除を受けることができる。

個人事業主と会社員の交通費の違い

会社員の場合、通勤費をはじめとする業務上発生した交通費は、すべて会社の経費として計上される。基本的に、会社員が個人的に交通費を負担することはない。一方個人事業主の場合は、業務上の交通費は個人事業を行う上で必要な経費と見なされる。

会社員であれば、交通費はすべて会社負担となるので、その有無は個人的な所得(給与)の額に影響しない。しかし個人事情主の場合、交通費の支払いは事業主個人の利益を圧迫するため、経費として認められている。

交通費は経費として落とせる?

ただし、個人事業主が交通費を経費として計上できるのは、あくまで事業に関連するものに限られる。たとえばプライベートな旅行で発生した交通費は、経費にはできない。

交通費については、普段からプライベートの費用と仕事上の費用を明確に分けておく必要がある。前述のとおり、経費として認められるのは妥当な範囲の支出なので、旅費交通費が常識の範囲を超えるほど高額な場合は、税務調査において指摘を受ける可能性がある。

個人事業主なら覚えておきたい節税対策

個人事業主が節税対策を行う場合は、申告方法やクレジットカードの利用法など、注意すべきポイントがある。節税対策をするか否かで、翌年の税金が大きく変わることがある。

個人事業主は確定申告が必要?

確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までの収入・支出の内容を、翌年の2月16日から3月15日までに税務署に申告する制度のことだ。会社員であれば、基本的に税務申告はすべて会社が代わりに行ってくれるが、個人事業主は自ら申告する必要がある。

青色と白色申告の違い

確定申告の方法には、青色申告と白色申告がある。

白色申告とは、1年間に発生した収入と経費、税控除項目を申告するもので、確定申告の準備や作業は比較的簡単だ。一方青色申告の場合は、収入と経費を複式簿記で記帳し、確定申告では損益計算書や貸借対照表などの提出が求められる。

青色申告は確定申告時に作成する書類は多いが、節税効果は大きい。た白色申告で確定申告を行うと特別控除額は10万円だが、青色申告であれば65万円の控除を受けることができる。同じ収支でも、青色申告のほうが白色申告よりも税金を抑えられるのだ。

さらに赤字が発生した場合、青色申告だと来期以降に発生する黒字と相殺することもできる。黒字が相殺され、最終的な利益額が少なくなれば、利益額に基づいて算定される税額も減少する。つまり、赤字を黒字で補うことで節税につながるのだ。

節税効果という点では、青色申告は白色申告に比べて50以上ものメリットがあると言われている。個人事業主として活動する場合は、まずは税務署から青色申告の承認を受けることをおすすめしたい。

経費の支払いはクレジットカードがお得?

個人事業主の場合、個人のクレジットカードではなく、事業用のクレジットカードを使って経費を支払ったほうが、確定申告での経費計算が容易になる。個人のクレジットカードを使うと、クレジットカードの明細表から、経費分を抜き出す作業が必要になるが、これには手間がかかるからだ。

事業用のクレジットカードを別途作成し、経費はすべてそのカードで支払うようにすれば、経費計算が格段に楽になる。個人的な支出と経費として計上できる支出をきれいに分けることができ、経費の計上を忘れるというミスもなくなる。

最近の会計ソフトは、クレジットカードと連動できるものが多いため、うまく活用すれば確定申告の準備や作業が楽になる。

経費を上手に使って節税を行おう

個人事業主の場合、経費の計上は翌年の節税につながる。ただし、経費として計上できる費用は厳格に定められているので、ルールに従って計上する必要がある。個人事業主は会社員とは異なり、毎年の確定申告が義務付けられている。個人事業主として活動するなら、節税効果の高い青色申告の承認を受けておきたい。ルールを正しく把握し、経費をうまく使って節税対策を行うようにしよう。

文・THE OWNER編集部

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